なんで俺の憑依先は違法美少女アンドロイドなんですか?   作:六花リンデル@TSメス堕ち信奉民

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 □は主人公視点、■はヴィヴィ視点です。「」は実声、『』は通話。

 以下、これを読めばあとは原作アニメの理解度だけで事足りるようになる簡単な用語説明。追加予定は無し。
 ・ヴォーリア・アジーン
 シトゥイークと併せて、主人公の正式名称。歴史の裏で極秘に製造されたロスト・マテリアル。違法。
 ・マリートヴァ
 アーカイブを模して作られたロシア製パチモンデータベース。主人公が持ち逃げした。


修正史γ 分岐点1
第一話 稼働


 気が付けば、俺は人間でなくなっていた。

 

 いや、うん。分かるよ。凄い大雑把で色々抜けた出だしだとも。

 

 しかし、一昔前のライトノベルみたいな文言だが、言葉通りそのままなのである。

 

 人のガワを持った人間のようなロボット──アンドロイド(・・・・・・)として俺は目覚めた、いや、起動したのだ。

 

 

「レポート、2058年10月28日。開発は、成功した」

 

 

 日本に住むごくごく普通の高校生であったはずの自分は、目が覚めると青い液体で満たされた謎の培養槽に容れられており、身体中たくさんのケーブルに繋がれていた。

 視界の中にはいくつものウィンドウとインジケーター。気分は完全にロボットだ。いや、実際にロボットなのだが。

 

 そんな俺の目の前では、何やら白衣姿の男達が話している。

 

 

「これより十月の英雄計画は第二段階に移り、ヴォーリア・アジーン、個体識別名シトゥイークの稼働実験を開始する」

 

 

 死んで転生したのか、はたまたこれが作られた自分という個我なのか。

 

 いや、日本人であった頃の家族や友人の知識とか抜け無くしっかり残っているから多分そうではないと思うが。

 わざわざ、外人が日本人の記憶を持った設定のロボットを作るなんて思わないし。

 

 私は何か、されたようだ……。

 なんてふざけてみても、自分の状況など変わるはずもなく。

 気分すら晴れないどころか鬱屈として逆効果なので、取り敢えず物思いにふける時間を増やすことにした。

 

 そして、少なくとも自分が人間から機械、それも人型AIとやらになっているということを断片的な情報から理解した自分は、ここから出たらどうするか、そもそもここから出られるのか、ここから出るにはどうすれば良いのか、などとこれから先の身の振り方について四六時中悩むようになった。

 

 まあ、身を振るも何も絶賛培養槽ぷかぷかタイムな訳だが。

 これ、いつか出させてもらえるんだろうな???

 

 え、出させてもらえるよね? ね?

 

 

 □

 

 

『スヴェトラーナ、今日の稼働実験を始めよう。気分は?』

 

『微妙』

 

 

 そう言うと、眼鏡をかけた白衣の初老の男は朗らかに、どこか困ったような笑みを浮かべた。

 この人は博士。ここで一番偉い人らしい。

 

 

『ははは、いつも微妙じゃないか。もう少し変化は無いのかね?』

 

『ここから出たら気分も晴れる』

 

『うーん。それはまだ無理かな』

 

 

 幸いなことに、時間はいくらでもあった。

 彼らもすぐさま自分を使いたいわけではないらしい。今は対話をしてじっくりと自分というAIを育成しようとかなんとか。そこら辺は機械に疎い身の上なのであんまり分からない。

 とまあ、ここ最近は見慣れてきたメンツと話すか、自分の中で思考を巡らせるか。逆に言えば、これくらいしかやることがないのだが。

 

 どうやら自分はロシアに居るらしいということが分かり、頭にロシア語が定着しているので日本語のように話せるということも分かった。

 脳内のデータによると自分は、日本が着手し始めた自律人型AIとやらに対抗するべく開発された、戦闘用(・・・)多機能搭載型自律思考アンドロイドなのだとか。

 機体名はヴォーリア・アジーン。識別名はシトゥイーク。

 なのだが、博士達は専らスヴェトラーナと呼んでくる。光、という意味のロシア人女性の名前らしい。

 

 そう、ロシア人女性(・・)の名前だ。

 

 

 どうやら自分は男型ではなく、女型のアンドロイドに意識が宿ってしまったようだ。

 ……TSモノかよ……。

 

 男としては最大のアイデンティティ喪失の危機。

 この危機に俺は男として最後まで抗い立ち向かう所存だが、それはそれとして身体自体は凄い馴染んでいるので複雑な心境だ。

 

 

『ラーナ。今日は歌を歌ってみよう』

 

『歌ぁ? そんなに得意じゃないんだけど』

 

『大丈夫だ。君にはあらゆる機能が搭載され、今後もアップデートを重ねていくことで、何れは戦闘だけじゃない、人類の役に立つ良き隣人へとなるだろう。その一環として、歌唱機能を搭載してある』

 

 

 そういうのは、なぁ。うん。

 俺自身はまあ良いとしても、いざ、そうなった(AIが良き隣人になった)未来が訪れた時、どうせAIと人間が殺し合ったりするんだ。映画とかでよく取り上げられている題材だし。

 

 でも、俺というAI?の存在は結構歴史の転換点的な立ち位置にいるっぽいし、そう考えるとあと百年くらいは平和だと思うから、今はそんな危惧も置いておこうと思う。

 何より、本当の孫のように自分に微笑みかける博士の喜び様を見れば、水を差す気なんて無くなるというもの。

 

 ……仕方ないなぁ。

 

 

『……♪』

 

『!』

 

『────♪』

 

『おおお!? ラーナ! 歌えているぞ!』

 

 

 脳裏に浮かび上がった譜面、音階をなぞるように発声し、歌唱機能を起動させる。

 自分でもびっくりなソプラノボイスが研究室のスピーカーから鳴り響いた。

 

 

『博士! やっぱり、ラーナは凄いですね!』

 

『ああ、この成長率は異常だ。素晴らしい!』

 

 

 俺を開発したらしい博士とその助手集団は、毎日飽きもせず自分に語り掛けてくる。まるで、娘や姪、孫のように。

 

 それに対して適当な返答、適当な応答をする。それだけで彼らは喜び満足する。ちょろい。

 

 まあ、自律思考するAIは世界で初めての試みということだし、研究者としては一喜一憂したいものなんだろう。知らんけど。

 生まれたばかりのAIって実際赤ちゃんみたいなものらしいし、愛着くらい沸くのかもな。

 

 歌い終えると、拍手。

 しばらくして博士は申し訳なさそうに口を開く。

 

 

『……それで、まだマリートヴァのロックは解析できなさそうか?』

 

『あーうん。ごめん』

 

『いや、良いんだ。さあ、もっと歌を聞かせておくれ』

 

『ええー』

 

 

 ただ、割と順調な我がロボット生にも、一つ問題がある。

 自分のストレージには日本におけるAI集合データベース、『アーカイブ』を模して作られた『マリートヴァ』なるデータベースが存在しており、博士達はそちらの方も実験、検証したいらしい。そこら辺の知識はやっぱり頭にダウンロードされていた物を参照している。

 

 恐らく、スヴェトラーナになる前の日本で生きた男子高校生という自分の意識の存在は、このマリートヴァに保存乃至は介在していると踏んでいる為、機械に詳しくないなりにガッチガチにロックをかけてアクセスを全力で拒んでいる。

 

 博士達も自分のような異物が混ざっていることは予想外だったに違いないが、AIが起動してすぐ、人間が作るよりも強固なロックを内面に掛けることを考慮していないなんて間抜けすぎると思う。

 

 向こうとしても原因不明のエラーだと思っている上、自分という存在を初期化してしまった場合、どのような状態になるか分からないということもあり、研究開発が振り出しに戻るという最悪の事態を恐れて自分と対談する方向性にシフトしたようだ。

 問題の先延ばしでしかないが、それでも俺自身の有用性を証明出来ればどうにか廃棄だけは免れる……と思う。

 

 まあ。

 結構居心地も良いし。暫くはこのままっていうのも悪くないかもしれない。

 この日々よ、長く続け。それはそれとして、俺をこの培養槽から出せ。

 

 

 □

 

 

 博士達が死んだ。

 実に呆気なく。一年もせず、俺と彼らの別れの日は訪れた。

 

 培養槽から解き放たれた自分は、博士から洋服と偽造された身分、そして鍵を受け取った。

 共に逃げる中、あちこちから火の手の上がる研究所の通路にはたくさんの死体。

 

 そのどれもが、見知った顔だ。

 悲しいはずだ。俺という意識は、無い胸がチクリと痛む感覚を覚えた。

 だが、この身体には発汗する機能も、涙を流す機能もない。

 

 ここに来て、俺はやっと、自分がロボットになったのだということを無機質な知能で理解した。

 

 何もかも突然過ぎて、理解を拒みたい。

 けれども、俺の無駄に高性能な脳みそはそれをさせてはくれない。

 

 何もかも、投げ出してやりたくなった。何も始まってすらいないのに。

 

 

「博士、逃げよう」

 

「ラーナ……」

 

 

 だが、ここまで来て博士を死なせるのは有り得ない。

 せめて博士だけでも逃がして、自分は襲撃者の手によって破壊されよう。夢だったと思えば良い。死ねば、この夢は覚めるに違いないのだから。

 そう思って(演算して)、視界に表示されたナビに従い、博士を逃亡させようと立ち上がった。

 

 その時、唐突に博士によって抱き締められる。

 

 

「博士……?」

 

「ラーナ、君は凄いAIだ。まるで人間のように、いや、もう既に人間と遜色ないのかもしれないな」

 

 

 俺の肩に手を置いて自嘲げに微笑むその顔が、嫌に目に焼き付いた。

 やめてくれ、まるで今生の別れのような雰囲気を出すのは。俺は、せめて博士を救ってから終わりにしたい。

 

 

「本当は、日本人みたいで嫌なんだけどね。……ラーナ、君に使命を与える」

 

 

 使命? そう首を傾げる間もなく、博士は俺の首に自らのペンダントをかける。

 そして、白の長い髪を皺くちゃの手で梳いて柔く微笑んだ。

 

 記憶ストレージが、高性能のアイカメラから受容したその顔を忘れまいと記録に残す。

 

 

「いつか、君が作られた目的を超克して、世界を争いから救うんだ」

 

 

 世界を争いから救う? そんなの、無理だろう。

 

 俺は、日本の自律人型AI『ディーヴァ』に対抗するべくして産み出された自律思考AI。それも、戦闘用のアンドロイドだ。

 中身こそ違うが、この身体はその為に造られたということを疑っていない。

 誰かを無闇に傷つけるつもりは無いけど、世界を救うだなんてこと、俺にできるとは思えない。

 

 俺は、今さっき、自分がロボットでしかないことを受け容れてしまったばかりだから。

 

 

 

「戦闘用に作られた君だからこそ為せる使命だ。人を効率よく殺すために作られた、その悲しい理性で、無機質な眼で、人を知るんだ……! 人を知って、人を救うヒトとなれ、スヴェトラーナ()よ!!」

 

 

 

 博士はそれだけ言うと、惚ける俺を割れた窓から突き飛ばした。

 

 そして次の瞬間、自分が放り出された窓から爆発が溢れ出たのをカメラに捉え、俺は意識を閉ざした。

 

 

 ■

 

 

 私、A035624、正式名称『ディーヴァ』は歌で皆を幸せにする為に生まれてきた。

 まだ、その使命を果たすまでの道のりのスタートラインにすら立てていないのが現状だが、いつかは私を応援してくれる二人と一機の為に此処、ニーアランドにあるメインステージに立つことを目標にして歌を歌っている。

 

 

「え、今日誕生日なの? マジか、何も用意してないんだけど。どうしよう」

 

 

 舞台裏、少し高めの困惑の声。

 ぱちくりと、黄金色の眼を瞬かせる。

 頭を抱えそうな勢いの彼女が居た堪れない状態であると演算した私は、真実を伝えようと口を開く。

 

 

「いえ、誕生日自体はまだですが」

 

「ちょっと早いけど、あげられるタイミング逃しちゃうかもしれないから」

 

「あー、なるほどね。焦ったぁ。……なら、オレも明日持ってくるよ」

 

「いえ、お気になさらず」

 

 

 流石に誕生日でもないのにプレゼントを貰うわけにはいかない。モモカは例外だ。

 そもそも、私がプレゼントを貰うこと自体、まだまだ有り得ないはずなのだが。

 

 

「いーや、オレが気にするんだって。なんか良さそうなの探してくるから期待しておいて」

 

「……分かりました。ありがとうございます」

 

 

 彼女が頑固であることは、それなりの付き合いの中で理解している。こうなれば梃子でも曲げないだろう。

 それならば、意固地になるよりも素直に受け取った方が、彼女にとれる行動としては最善だ。

 

 

「さてと、じゃあ、今から買いに行ってくるから。ライブ、頑張ってね」

 

「はい、応援ありがとうございます。ラーナも、お気を付けて」

 

 

 私は腰を折り曲げ深々と頭を下げて、白髪を揺らしながら舞台裏より去っていくラーナ(・・・)を見送った。

 

 

 ■

 

 

「シトゥイーク?」

 

「はい。正式名称はヴォーリア・アジーン、シトゥイークですね」

 

 

 目の前で、私の誕生日プレゼントをジャックしたウィルスの言葉に耳を傾ける。

 今朝、私の中に入ってきてからずっと小馬鹿にしたような態度を崩さなかったマツモトを名乗るAIは、私の前でデータベースに存在しない名前を出した。

 先程まで取り返す為に部屋中で動き回っていたが、このままでは鼬ごっこでしかないと演算して、機を見る為にベッドに座り込んだ矢先のことだ。

 

 

「彼女は、そうですね。平たく言えば、貴女の先輩に当たるAIでしょうか」

 

「私の、先輩? それはありえません。私は史上初の人型自律思考AIです。私より先に開発された自律思考AIなど」

 

「それが、あの国が秘密裏にやらかしていたみたいでして。私の時代にも、その存在は記録されていませんでしたが、松本博士は彼女の存在を知っていた。そして私のプログラムにその存在を組み込んだのです」

 

 

 それは有り得ない。アーカイブに登録されていないAIなど存在しない。

 その疑問を読み取ったマツモトは言葉を続ける。

 

 

「彼女は、自らのストレージにアーカイブの擬似機能を搭載しているのですよ」

 

「そんな、ことが……」

 

 

 それはありえない事だ。マツモトが語った未来と同程度に。

 否定しようと口を開くが、そこでマツモトが机の上のデバイスに表示した写真を見て、私は固まることとなる。

 

 

「彼女が、シトゥイーク。ここから先、近くて遠い未来のシンギュラリティ・ポイントのひとつです」

 

「……ラーナ(・・・)?」

 

「はい? ご存知なのですか?」

 

 

 ご存知も何も、彼女はモモカと同じくらい、私にとっては重要な人間だ。

 そこに映されていたのは、今朝、私の誕生日プレゼントを買ってくると言って去っていった白髪の少女。

 

 

 

 

 

 ────私の歌を、初めて褒めてくれた人だった。

 




 二次創作をまともに書いたのは初めてなのですが、如何でしたでしょうか? 感想や、ご意見などあればよろしくお願いします。

 ちなみに、主人公以外のオリキャラ、主人公周り以外の独自設定が今後登場することはありません。あくまでも、こういう主人公を突っ込んだらどうだろう? という作者の願望のみですので。

 それでは、また次回。(次回以降の後書きは伝達事項が無い場合基本省略します。)
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