なんで俺の憑依先は違法美少女アンドロイドなんですか?   作:六花リンデル@TSメス堕ち信奉民

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 にしても、勘違い要素うっすいですね。いやでも、分岐点2からちゃんと勘違い要素出てくる予定なのでタグも消せない……。


第三話 行動開始

 記憶ストレージから駆動系まで、システムチェック、オールグリーン。何の異常も無し。

 この身体になってから見慣れた起動シーケンスを眺め、ゆっくりと起き上がる。

 

 

「……んぅ……?」

 

 

 寝惚けた眼を擦りながら(実際はそんな感覚など存在しないので気分だが)、ゆっくりと上体を起こせば、そこは誰かの部屋。私物がほとんど無い簡素な木造の部屋だ。

 そして、自分はベッドの上で寝かされていたようである。

 

 窓から茜色がかった光が差し込んでいるのを見てもうすぐ夕方であることを理解した俺は、そこで今朝の出来事を思い出す。

 

 モモカちゃんのプレゼントに感染したウィルスが、俺の正体を暴露したこと。

 ヴィヴィに、俺が人間ではなくアンドロイドであるということがバレそうになったこと。

 隙を見せた瞬間に何らかの手段で強制的にシャットダウンさせられたこと。

 

 

「……あのウィルス野郎……ッ!」

 

「ウィルス野郎だなんて、失礼な方ですね。僕はマツモト、この時代的には少しばかりオーバーテクノロジーな超高性能AIです」

 

「っ! お前っ!」

 

 

 ムカつく声が聞こえたと思えば、例のぬいぐるみインウィルスがすぐ側に居た。

 よくもまあいけしゃあしゃあと姿を現せるものである。

 

 苛立ちがピークに達して、気が付けば俺は飛び掛っていた。

 

 

「ひらっ、貴女の常態スペックを参照して、ひらっ、機動性能と回避プログラムの精度を向上させたので、ひらっ、もう捕まりませんよ、ひらっ」

 

「くそっ、ちょこまかと……!」

 

「僕としては一度落ち着いて話を聞いて欲しいんですけどね」

 

 

 さっきから、どの口が言うのか。

 罵倒が出かかったところで、思い留まって一旦落ち着くことにする。

 

 何にせよ、今の自分の状態やヴィヴィの安否、現状を把握するべきだと、俺の身体の方に搭載されたやたらと高性能なCPUが演算し、俺もそれに納得したからだ。

 

 

「おや、随分と聞き分けが良いですね。稼働年数の差だけあって、ディーヴァよりは物分かりが良くて助かります」

 

「……彼女を引き合いに出すなよ。オレは狡してるようなものだ」

 

「はて? まあ、それはどうでも良いのです」

 

 

 コイツ、絶対に友達少ないだろ。コミュニケーション回路を換えた方が良いと思う。

 ベッドに腰掛けて段々と落ち着きを取り戻し始めた俺は、じっとぬいぐるみを観察することにした。

 

 うん。どこからどう見ても、おもちゃのぬいぐるみだ。特殊な機能は全て、このウィルスが持っている物だろう。

 

 

「おい、ウィルス」

 

「ウィルスではありません、マツモトです」

 

「……マツモト、ヴィヴィはどうしたんだ」

 

「彼女は園内の点検作業に従事しています」

 

 

 単刀直入に切り出す。

 すると、マツモトは悩む素振りも見せずに答えた。まあ、信じて良いだろう。嘘を吐くメリットが無いし。

 

 しかし。そうか、無事なんだな。なら良かった。

 でも、点検作業か。俺が寝ている間にニーアランドで何かあったんだろうか?

 

 

「園内で少々爆発騒ぎがございまして」

 

「おい」

 

 

 全然無事じゃないじゃないか。

 というか、寝てる間に滅茶苦茶話が展開してるし。

 ん? 待て。これって、さては、もしかしなくてもそうだよな。

 

 

 ────物語、始まった感じだな???

 

 

 爆発騒ぎということは、十中八九人命が掛かっているはず。そうでなければ、人間によるAIの破壊行為から、AIの価値に対する問題提起をするタイプか。

 大穴でAIがAIを破壊したり、人間と人間の争いにAIが巻き込まれるというパターンもあるかもしれないが、そればかりはまだ判断できない。

 

 どちらにせよ、これでこの世界が多少物騒なAIヒューマンドラマで、その主人公はヴィヴィだということは最低限推測出来た。

 俺が会ったことのない誰かが主人公である可能性もまだあるにはあるが、それでも、物語が始まった今、自ずと出会えるだろう。

 今後はヴィヴィが主人公という前提を置いて行動していこう。

 

 そうと決まれば、俺も早速動き出さなければなるまい。

 

 

「それで? オレに何か話があるから、わざわざ二人きりにしたんだろ?」

 

「ええ、察しが良くて大変よろしい」

 

「全部、詳らかに話せ。何も誤魔化すな」

 

 

 コイツからは、食えない雰囲気が漂っている。

 ちゃんとAIとして成長したわけでなく、男子高校生だった俺という意識の存在がある分、どうしても頭の回転ではAIに劣る。

 

 だが、それで騙されたまま動くのは性に合わない。

 それに、博士から託された使命を果たすために、コイツから得られる情報は一から十までとても重要だ。

 俺の直感がそう告げている。それなりに精度高めだから信用できる。

 

 俺の目を見つめ(ぬいぐるみの目だから、目が合っている感じはしない)、マツモトは真面目腐った顔で口を開く。

 

 

「……ならば、こちらの事情を話す前に貴女にやって欲しいことがあります」

 

「なんだよ、オレに何をさせたいんだ?」

 

「ただちに空港に向かい、自身の尻拭いを済ませて来てください」

 

 

 そう言って、マツモトは机の上のモニターに何やらニュースの映像を映し出した。

 俺は渋々ながらも、尻拭いという言葉が気になってそちらに目を遣る。

 

 そこからは、トァク、ロシア、そしてシトゥイークという単語がひと目で確認できた。

 どうやら、日本の空港をトァクとかいう反AI思想を持った武装集団のロシア支部の者達が占領し、シトゥイークという名前の何かを持ってくるように要求しているようだ。

 

 

 ……は?

 いやいやいや。外交とかで自分の名前が出てくるのは分かるけど、なんでそこで反AI思想集団なんていうアレな奴らが出てくるわけ? 意味が分からないのだが。俺って、一応国家機密のはずでは。

 

 というか、この空港って……。

 

 

「その通り。貴女の知り合いでもある霧島モモカ嬢が、今夜予約した便に乗る為に御家族と訪れている空港です」

 

「……マジか」

 

「マジです」

 

 

 ……これは、どう考えても俺のせいだよなぁ。

 しかし、ここに来てロシア政府ではなく、トァクとかいうテロリスト集団な辺り、何か作為的な物を感じざるを得ないが。

 

 幸いなことに、まだ死人は出ていないらしい。けれども時間があるわけでもない。要求が呑まれなければ、日を跨いだ瞬間に十人を殺すらしい。

 反AI思想集団なら人を殺すのは駄目だろ、おい。

 まあ、テロリストになる奴らなんて、そういうところのモラルは欠如していることが多いし、口でどうこう出来る話ではないのかもしれないが。

 

 ……うん、今から走れば夜までには到着する。

 

 

「世界線の変動によってかは分かりませんが、正史では起こりえなかった事象が発生しています。これが致命的なエラーへと発展する前に、貴女の手でこれを制圧してください。これは、貴女を信用出来るかどうか試す、テストのようなものです」

 

「世界線とか、正史とか、何を言ってるんだか分からないけど。……こればかりは、オレがやんなきゃダメなやつだ。だから、やるよ」

 

 

 自分の蒔いた火種だ。消すのは俺しか居ないだろう。

 コイツの口から出た世界線とか、正史という言葉はかなり気になるけど、今はそんなことも言っていられない。

 

 何より、博士の使命は、戦闘用に造られた俺が人を救うというもの。何もしないのは使命に反する。

 

 

「僕も手伝いますので、最速で終わらせましょう。全てを話すのは、その後です」

 

「……分かったよ」

 

 

 てっきり指示だけ出して、自分は何もしないタイプかと思えばそうでも無いらしい。ちょっとだけ意外だった。

 

 どちらにしても、俺もコイツが何を出来るか知りたかったから僥倖だ。

 さっき俺を気絶させたのは電磁ショックによるものだろうけど、それ以外にも色々あるはずだ。

 実はコイツが某白い契約者的存在で、後々敵になるかも知れない。手の内を知るべきだと演算した。

 

 

「ああ、それと、この身体だと不便ですのでヘアゴムをお借りしましょう」

 

「ヘアゴム?」

 

 

 洗面所の方へと向かったかと思えば、マツモトは何やら見覚えのある装飾付きのヘアゴムを一つ手に取って帰ってくる。

 そして、俺の目の前でぬいぐるみの手から取り出したケーブルを、その装飾部分に接続して何やら始めたではないか。

 

 ……いや、それ、俺がヴィヴィにあげたプレゼントでは?

 

 

「よいしょっと。はい、こちらで髪を結うか、腕に通しておいてください。僕の端末として登録しておきましたので、直接的な支援は出来ませんが、撹乱くらいなら御茶の子さいさいですよ」

 

「お前、AIとはいえ女性のプレゼントに取り憑き過ぎじゃないか?」

 

「お借りしているだけです。なので、取り憑くとか人聞きの悪いことを言わないください」

 

 

 ……コイツは変態AIということにしておこう。

 何やら後ろで文句を垂れているが気にしない。

 言っておくが、俺はまだお前を恨んでいるからな? しばらく、そのネタで弄ってやる。覚悟したまえ。

 

 ハンガーラックに掛けてあった上着を取って、俺は部屋を後にするのであった。

 

 

 □

 

 

 月明かりの下。

 パトカーや、鎮圧部隊、警備AIが空港を包囲しながらも手をこまねいているのを物陰から眺めつつ、俺はマツモトの索敵が終わるのを待っていた。

 

 

『いやぁ、予測以上の機体スペックですねえ。まさか一時間と少しの走行で辿り着いてしまうとは……。現存してさえいれば、博士も貴女に使命を託したかったに違いありません』

 

「その博士、っていうのは誰なんだ?」

 

『僕というプログラムを作った博士です。マツモト、という名前は博士の苗字から便宜上名乗る為にいただきました』

 

 

 その松本博士とやらは、もう少し性格がマシで、物静かなAIを作れなかったのだろうか。

 世界線の変動だとか、若干怪しい妄言癖も患っているし。女性の私物に潜り込みまくる変態だし。

 ……確かに高性能なのかもしれないけど、欠陥AI過ぎる……。

 

 

『索敵完了。武装集団の構成員は全員屋内です。幸いなことに、数は二十人と少なめで配置もバラけていますから、各個撃破を心掛ければ苦戦するほどの相手でもないでしょう』

 

「……ザルだな」

 

『戦闘用に特化された貴方からすれば他愛もない相手であることには変わりありませんね』

 

 

 対人経験も無いわけじゃない。

 俺に搭載されている戦闘プログラムは、基本はシステマを人間よりも無茶な動きができるAI用の挙動に調整された代物だが、それとは別に非殺傷用の戦闘プログラムも備わっている。

 今回はこれと潜入プログラムを使おう。

 

 

『二分後、無線へのジャミングを開始。その更に一分後に空港への電源供給を全てシャットダウンします。警察が突入に踏み切るであろうと予測される五分をタイムリミットとして、それまでに全員を無力化してください』

 

Уразуметно(了解)

 

『ちょっ、いきなりロシア語にするのやめてもらえません? 言語アプリケーションはそれほど入れてないんですよ、僕』

 

 

 それは良いことを聞いた。語学マウントを取ってやろう。

 潜入のために、俺には千の言語アプリケーションが入れられている。これで、この変態AIの悔しがる顔が見れれば多少は溜飲が下がるというもの。

 

 うん、楽しみだ。さっさと終わらせよう。

 

 

「……ふぅ」

 

 

 ────潜入プログラム、ON。

 

 ────戦闘プログラム・非殺傷モード、ON。

 

 

 クリアになった視界。無駄なウィンドウとインジケーターは全て取り除かれて、自身の躯体稼動状況を簡易的に表したパラメータが表示される。視線の先には移動経路。

 

 全方位からの視線を演算することで示し出されたそのルートに沿って、俺は闇の中へと駆け出した。

 

 

 全ては、使命の為に。

 

 

 




 更新に関しては、基本的には毎日更新を目指しつつ、19:30か21:30に投稿します。
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