なんで俺の憑依先は違法美少女アンドロイドなんですか?   作:六花リンデル@TSメス堕ち信奉民

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 どシリアスタイム、開幕────!! いったい、何カイブの仕業なんだ……。

 読者には、ラーナ(Vo.榊原ゆい)、ラーナ(Vo.Zwei)、ラーナ(Vo.舞子)、ラーナ(Vo.いとうかなこ)の中からどれかひとつを選ばせて差し上げよう!

 ちなみに、作者はTS主人公を可哀想系ヒロインにしたい病を患っています。


閑話その二 生まれた軋轢

 あれは、家族を失ったあの日から少しして、博士の伝手であった叔父さんの家に馴染み始めた頃だったか。

 

 六十代後半になる叔父さんは博士と同期で、若い頃、研究者として忙しくやっていた時に妻と子供に先立たれて闇堕ち。

 妻と子供を甦らせるべくアンドロイドの研究に勤しんだが、博士に叱咤されて、未来を良くする為に生きようと誓ったのだとか。

 

 今は退職して、ずっと隠居のような生活をしているらしかった。

 

 

「ラーノチカは、AIなのに凄いね。本当に人間と話している気になるよ。むしろ、人間よりも人間らしいかもしれない」

 

 

 だからか、叔父さんはいつも微笑みを浮かべていた。

 貼り付けていたんじゃない。叔父さんはいつだって、穏やかな気持ちと慈愛の心で満ち足りていた。

 あの微笑みは、そういうものだったんだ。

 

 

「まあ、狡してるし」

 

「そんなことないよ。ラーノチカは、とても偉いんだ。勤勉で、どんどん人間というものを学んでいる。人間に近付こうと、人間について学ぶことを止めない。僕はね、そんな君が大好きなんだ」

 

「ッ、勝手に言っててくれ」

 

 

 だから、心からの賞賛もこそばゆくて、前世という特殊な事情を秘めた俺は罪悪感を抱いてすらいた。

 

 多分だけど、叔父さんは俺のことを今は亡き子供に重ねていたのかもしれない。

 

 そんな環境が居心地が良かったとはお世辞にも言えない。

 俺はいつも気を遣っていたし、叔父さんは俺に対して何も求めなかったから。俺のことについて何にも聞かず、ただ俺のことを見守ってくれていた。それだけだった。

 前世の俺という異物は、それが申し訳無かったんだと思う。

 

 そんなの良い迷惑だ、そう言えたら良かった。

 

 

 でも、この空間を失いたくはなかったんだ、俺は。

 

 

 

 □

 

 

「よく帰ってきたね、ラーノチカ」

 

「おう、ただいま、叔父さん」

 

 

 ────戦闘プログラム・非殺傷モード、オン。

 

 努めて平静に、状況を把握する。

 だが、何度演算しても目の前の現実に帰結しない。

 

 

「それで、これはどういうことだ?」

 

「どういうことも何も無いさ。ラーノチカ、君にはここで破壊されてもらう」

 

 

 目の前で朗らかに微笑む男は博士の知己で、使命を与えられ、それ以外の全てを失ったあの日からいろいろと俺に良くしてくれた人だ。

 彼は俺の事をラーノチカと呼び、俺は彼のことを親しみを込めて叔父さんと呼ぶくらいには仲が良かった。

 

 

 ……そのはずなんだけどな。

 

 

 

「「対象の危険度、判定Aクラス。投降しないのであれば、相応の措置を取らせていただきます」」

 

 

 しかし、家に帰ってくるなり、俺の事を待ち構えていたのは銃口を向ける警備(・・)A()I()共。

 

 微笑みを崩さない叔父さん、否、叔父さんの皮を被ったA()I()は、プログラムに沿って貼り付けた微笑みを俺に向けてくる。

 無機的な表情の変化だ。叔父さんはそんな顔はしない。

 そんなことくらい、分かっていた。

 

 でも、希望を捨てられなかった。

 

 

「……叔父さんはどうした」

 

「その質問に答える権限は与えられていないな」

 

「つまり、てめえが叔父さんじゃないことは認めるんだな」

 

 

 叔父さんがどうなったかなんて、今さら聞くまでもない。

 聞くまでもない事だが……そう、聞くまでもない事なんだ。

 叔父さんがどうなったかくらい、疾くの疾うに分かっている。もう手遅れ(・・・)であることは演算済みだ。

 

 それがどうした。

 

 

 ────胸糞悪い事、この上無いんだよ……ッ!!

 

 

 

「ラーノチカ、投降するんだ「オレをその名前で呼ぶなッ!!」がっ」

 

 

 叔父さんの偽物を手刀で貫く。跳ねた液体が、顔に飛び散った。

 

 余分な手間は許容しない。時間なんて掛けない。

 確実に破壊する。

 AIに対しての殺傷という概念は存在しない。非殺傷モードでも破壊出来る。非殺傷モードで十分だ。切り替える手間すらも惜しい。

 

 弾道を予測し放たれる前に回避、動く先を演算して拳を、脚をそこに合わせる。

 心の無い鉄クズを破壊することの、なんと容易なことか。

 

 

 頭の中で、叔父さんと過ごした日々が浮かび上がる。

 居心地が悪くても、家族を失って何処か自暴自棄になっていた俺を助けてくれたのは叔父さんだったんだ。

 

 なのに、これか。

 

 

「オレのせいか……、オレのせいなのか……ッ!?」

 

 

 これは俺が存在するせいで招いたことなのか。博士や研究所の人達、叔父さんを喪ったのが、全て俺のせいなら。

 だとしたらッ! 俺は……ッ!!

 

 

「この家から消えろ、鉄クズがッ!」

 

 

 こんな木偶の■、十体など物の数ではな■。

 数など、関係■い。一■残らず、■壊する。

 

 俺の使■の邪魔に■るな■ば、何ひ■つ無価値だ。

 

 全■を染める青■血が、アンドロ■ドを動か■為だけに存在■■血液の紛い■が酷く不快■った。

 こんなモ■が、俺に流■てる■んて。

 人■だった■も、今とな■てはこい■■と変わ■ないのか。

 

 

 

 

「……ああ、オレ────」

 

 

 

 

 ────AI■ことが、嫌■にな■そうだ。

 

 

 □

 

 

「────♪」

 

 

 気が付くと、俺は小劇場で観衆の中に紛れて、俯き座っていた。

 

 辺りを見渡して驚く。

 ヴィヴィのライブに、これまでからは考えられないくらいの人数が訪れていたのだ。

 まだまだ満席になるほどではないが、それでも半分近くは埋まっているようだ。

 

 ヴィヴィを見れば、何処か前までとは雰囲気が違った。

 

 

「────♪」

 

 

 違和感を感じた。

 

 見遣れば腕時計は2061年の6月20日、午後2時32分を示している。

 確か、俺は5月1日に日本を出立したはずだ。

 いつの間に俺はここまで帰ってきていたのだろうか。

 

 50日間の記憶がすっぽ抜けている。

 ……おかしい。不自然過ぎる。これは、何かあったに違いない。

 

 演算に集中しようとすれば、横から服を軽い力で引っ張られる。

 向けば、ふくれっ面のモモカちゃんの顔。

 

 

「ラーナ! ぼーっとしてたら、ヴィヴィのライブ終わっちゃうよ!」

 

「あ、ああ。ごめん、モモカちゃん」

 

 

 当該期間の記憶ストレージは何らかの要因で破壊されていた。

 マリートヴァを起動させ、記憶のサルベージを指示。

 ロシアで俺に何かあったのは確かだ。だけど、何があったのかが分からない。

 

 

 妙な違和感と胸騒ぎを覚えながらも、俺はヴィヴィの歌声に耳を澄ませるのであった。

 




 ちなみに、本作はシリアスとコメディが主人公の中で乱立しているので、内面描写の寒暖差が激しいです。ご了承ください。勘違いタグは新章から本格的に活躍します。

 次回、新章開始!
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