無気力な僕がAqoursのマネージャーになってしまった件について   作:希望03

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こんにちは、希望03です。
前書きという前書きは特にありません。読んでいただければ嬉しいです。
どうぞ。


第55話 再演

 

~優馬家・優馬の部屋~

 

優馬「はぁ…」

 

曜の家で曜に迫られて、それを助けてくれた千歌からも迫られ、逃げて、ばったり会った梨子にも今日の事を問い詰められ、また逃げて…

迫られては逃げて、というのを繰り返していたおかげで俺の心身は心なしか悲鳴を上げていた。

正直なところ、明日も学校というのは辛い。

逃げ続けてきた俺のせいなのだが、彼女たちに会うのが気まずい。

行ったところでお互いに話せなくなるのではないか?

…まぁ、曜や梨子は意外にも気さくに話しかけてくれると思うが、千歌はどうだろうか?

意外にも繊細な千歌の事だ。

話すことはおろか、俺と目を合わせてくれることすら怪しいところだ。

 

優馬「はぁ…しんどいな…」

 

考えれば考える程、憂鬱になっていくし、思い詰めれば思い詰める程、自分を追い詰めてしまう。

 

優馬「今日はすぐ寝よう…」

 

時刻は18時。

夕食を食べるにしてもかなり早い時間ではあるのだが、もう俺には今日一日が重たすぎた。

夕食を食べて、ゆっくり風呂に浸かり、寝てしまおうと考えたその時だった。

 

「~♪~♪」

 

俺の携帯の着信が鳴った。

こんな唐突にかつ絶妙なタイミングでかかってくる電話といえば、恐らくは…

 

優馬(あの人だろうな…)

 

その予感は正解だった。

携帯に表示されていた名前には鹿角聖良、と表示されていたのだった。

 

優馬「…もしもし」

聖良『も、もしもし…!』

 

俺は何回も電話をしているためか、流石に聖良さん相手でも慣れてきたのだが…

どうにも聖良さんの反応を見るにまだ電話には慣れていない様子だった。

いい加減何回も繰り返してるんだから、慣れればいいのに…

なんて考えているのは、聖良さんには秘密にしておく。

 

優馬「それで…ご用件は?」

聖良『あ、えっと…予備予選のライブ、拝見させていただきました。』

優馬「…なるほど、それで?またダメ出しを?」

聖良『そんなつもりで電話はかけませんよ…私をどんな女だと思っているんです?』

優馬「いやぁ…腹黒い女?」

聖良『…へぇ』

優馬「…すみませんでした。」

聖良『…まぁいいでしょう。話が進みませんし』

 

流石に言いすぎた。

いくら聖良さんが相手とは言え、言って良いことと悪いことを履き違えてしまった。

一瞬、電話越しとはいえ、場が凍り付いたような気がして、気だけで殺されるかと思った。

 

聖良『それで予備予選でのAqoursのライブの事ですが…』

優馬「…」

聖良『すごく良かったです!!』

優馬「…そうですか、ありがとうございます。それでは」

聖良『ちょ、ちょっと待ってください!これで終わりなわけないでしょう!?』

優馬「え、でも話の大半は終わったも同然じゃありません?」

聖良『…まぁそうですけど』

優馬「…すみません、流石に調子に乗り過ぎました。それで?」

聖良『そうですね…』

 

そうして、聖良さんは俺が思っていた以上に、Aqoursのこの前のライブを絶賛してくれた。

どうやら長年、スクールアイドルをしている聖良さんの目から見てもかなりの出来だったらしい。

こうして聞いているとやはり俺だけの主観的な評価だけでなく、周囲からの第三者的な評価というのは非常に嬉しい。

しかも、ライバルであるSaint Snowからだ。嬉しくないわけがない。

しかし、ここまで純粋にライバル相手の素晴らしいところを評価できるというのは聖良の人徳の厚さなのだろう。

本当に感心するばかりである。

 

聖良『…きっと、予備予選、通過していると思いますよ。』

優馬「ありがとうございます。それでは…」

 

そうして、俺が電話を切ろうとしたその時だった。

 

聖良『ちょっと待ってください。』

優馬「…?」

 

内心、俺はまたかよ…と思ったのだが、聖良さんが発したその声はさっきのような感じではなく、ものすごく真剣な声色だった。

だからか、一瞬、俺は凄んでしまった。

 

聖良『…優馬さん、何か、また悩みを抱えてませんか?』

優馬「っ!」

 

見抜かれていた。

別段、聖良さん相手に声色を変えていたわけじゃなかった。

いつも通りを意識していたはずだし、そこまで会話はなかったはずだった。

しかし、彼女に見抜かれていたのだった。

 

優馬「…なんで分かったんですか?」

聖良『ふふっ、お姉ちゃんですから!ね?』

 

優馬(…なんだか、敵わないな。この人には。)

 

優馬「じゃあ…聞いてくれますか?」

聖良『…もちろん。』

 

そうして俺は今日起きた全てを聖良さんに話す覚悟を決めた。

 

優馬「実は昨日、Aqoursのメンバーでもある俺の友人に迫られてしまったんです。」

 

聖良『…は?』

 

優馬「その反応は仕方ないですよね、意味分からないでしょうし」

 

聖良『い、いやそうじゃなくて…ま、まぁそれは置いといて…それでその友人ってもしかして千歌さんの事…ですか?』

 

優馬「いえ、違いますよ。その幼馴染の渡辺曜という奴です。」

 

聖良『あぁ…あの子…』

聖良『…それで一体どうして?』

 

優馬「話すと長くなるんですけど…俺が予備予選やら学校説明会やらで動き過ぎて、学校で疲れ果てていた時でした。」

優馬「曜からそんなに疲れているなら私の家でゆっくりしていきなよ、と言われて、ほいほいとついて行ってしまったんです。」

 

聖良『…』

 

優馬「まさか曜からは何もされないだろう、と思っていたんです。でも俺のその考えは甘いものでした。」

優馬「俺も言われるまで気付かなかったんですけど、実は曜と千歌の2人と昔の幼馴染だったみたいで昔から仲良く遊んでいたみたいなんです。」

優馬「曜に関してはその時から、俺のことが、好きだった、と言われて…戸惑っていたら」

 

聖良『…迫られた、と。』

 

優馬「…そうですね、まぁ完全に俺の不注意でしたけど…」

 

聖良『それでどうしたんです?はねのけたんです?』

 

優馬「…いや、もう曜の想いに委ねよう、と」

 

聖良『…それは曜さんの想いを踏みにじるのをためらった、ということですか?』

 

優馬「…そうです。すみません、情けない男なんです。」

 

聖良『そんなことありませんよ…そんな追い詰められたら逃げ場がないでしょうし…』

 

優馬「ありがとうございます。そう言っていただけるだけで少し心が軽くなります。それで話の続きなんですけど…」

 

聖良『あ、はい…それで?』

 

優馬「もう完全に曜に主導権を握らせてしまった時でした。曜の部屋の扉が開いて、千歌が現れたんです。」

優馬「俺自身も何が何だか、分からないまま、千歌に助けられて、曜の部屋を出たんです。」

 

聖良『…』

 

優馬「単純に嬉しかったです。でも、バスの中でほっとして冷静になった時でした。」

優馬「千歌から曜の家にいた時のこと、そして何をされていたのか、というのを問い詰められました。」

 

聖良『あぁ…なるほど…』

 

優馬「嘘をつくわけにもいかないですし、ちゃんと曜の家にいた理由を伝えました。それと…千歌と幼馴染だ、ってことも」

優馬「でもその時でした。昔の千歌のことを話した瞬間、鬼気迫る表情をして、こっちを見たんです。」

優馬「…どうやら曜の言っていたことに嘘が含まれていたみたいで、俺に好意を持っていたのは曜だけではなかったみたいなんです。」

 

聖良『はぁ…』

 

優馬「…すみません、まるで自惚れのように語っていますけど、本当の事なんです。」

優馬「それで千歌からも」

 

聖良『迫られたんですね?』

 

優馬「…という程でもありませんでしたが、ずっと好きで、昔から結ばれる運命だと思っていた、と言われました。」

 

聖良『…それで受け入れたんですか?』

 

優馬「…そんなわけないじゃないですか、普通に考えてみてもスクールアイドルとして活躍している彼女と、俺とじゃ釣り合いませんよ…」

優馬「でも…振ることも無く、かといって受け入れるわけもなく、俺はその場を立ち去り、逃げたんです…」

 

聖良『…なるほど』

 

優馬「…ごめんなさい、まだ話が続くんです。」

 

聖良『いいですよ。それで続きとは?』

 

優馬「はい。千歌から逃げて、家に戻ろうとした時でした。」

優馬「目の前から梨子が現れたんです。」

 

聖良『…まるで狙ったように』

 

優馬「俺も俺でその時はもう心身共に疲労困憊で一刻も早く、家に帰りたくてしょうがなかったんです。」

優馬「でも、引き留められてしまったんです。よっぽどひどい顔していたみたいで。」

 

聖良『でも、引き留められた、ということは』

 

優馬「多分想像通りですよ。」

優馬「もちろん問い詰められましたよ。どこに行ってたの、と。」

優馬「でも、逃げました。彼女の好意からも。」

 

聖良『…』

 

優馬「…それで今に至る、というわけです。」

優馬「明日からどう接すればいいのか分からなくなってて、あはは…」

 

聖良『…上手く良いアドバイスは言えませんけど、これだけは言えると思います。』

聖良『もうそんなグループにいるのやめてしまえばいいのに』

 

優馬「え?」

 

聖良『あ、すみません、もうこんな時間…ここで切りますね?おやすみなさい』

 

すると、聖良さんは電話を切ってしまった。

 

優馬「やめて、しまえばいいのに…」

 

それができたら苦労はしていない。

でもやめてしまえばやめてしまったらで彼女たちが悲しんでいる姿を見るのは辛い。

結局、結果というのは何も変わらない。

 

優馬「はぁ…もう生きるの辛いな…」

 

その一言は誰にも届くことなく、消えていったのだった。

 

 

~翌日・浦の星学院・2年教室~

 

あれから夜が明けて、朝になり、学校に向かったが、やはりと言うべきか寝つきが悪く、この日もまだ疲労感が残っていた。

それでいて教室に入れば、周りの喧騒はいつもどおりなのだが、周りは心配しているような様子であった。

それもそうだ。

昨日の騒動のおかげでいつも仲の良い千歌、梨子、曜の三人がこの雰囲気を作っているのだから。

おかげさまでクラスの雰囲気もギスギスしてしまう。

どうにかしてほしいと言わんばかりにこちらを見ているが、俺にはどうすることもできない。

なぜならこれを作り出してしまった張本人でもあるから。

 

優馬「はぁ…耐えられないな…」

 

~放課後・スクールアイドル部部室~

 

時は放課後。

あれから何時間経っていたのだろうか。

この雰囲気、空気感は学校の終わりまで続いていた。

なんとか俺はこの空気を耐え抜いて、真っ先に部室へと向かった。

そして、俺は取り急ぎパソコンを開いた。

なんでか?

それは今日が予備予選の結果発表の日だからだ。

そうして俺が準備をしていると、徐々に1、3年生も部室へと集まり出した。

 

ダイヤ「あら…早いですわね?」

優馬「まぁ…なんだろ、居てもたっても居られなくて…ってとこかな?」

 

果南「ゆうもなんだか染められてるねぇ」

優馬「…そうかもね。」

 

花丸「良いことずら!それってつまり…オラの虜、ってことだもんね?♡」

善子「はぁ?何言ってるのかしら、このずら頭は?」

ルビィ「はぁ…不毛な争いだなぁ…お兄ちゃんはもうルビィの虜なのに…」

花丸「2人とも負け犬の遠吠えずらね。」

優馬「流れるように修羅場を作らないでいただけます?」

 

鞠莉「でも、優だけ?千歌っちとかは?」

優馬「…あぁ、ちょっとね。」

鞠莉「…ふぅ~ん?♡」

優馬「…?」

 

いつもの和やかな雰囲気が俺の中で戻りつつ、皆と話していると発表の時間となった。

 

優馬「…来ないな」

ダイヤ「…はぁ、もうしょうがないですわ。ここは先に見てしまいましょう?」

優馬「え、でも…」

鞠莉「もう!早く結果みましょ!気になって仕方ないの!」

優馬「…そう、だね。」

 

そうして俺は鞠莉の我儘加減に若干の憤りを感じつつ、ラブライブのサイトを開いたのだった。

 

優馬「…」

 

ゆっくりと流れる通過者。

まだAqoursの名前は出ない。

やはりこういう時間は少なからず緊張してしまう。

しかし、頭の中ではこびりついているかのように昨日の出来事がフラッシュバックされる。

なぜだか分からないが、どうしても彼女たちがいないことが気にかかってしまう。

すると

 

ルビィ「あ!」

 

後ろからルビィちゃんの声が聞こえた。

それに思わず驚きつつ、目の前の画面に意識を傾ける。

するとそこには通過者リストの中にAqoursの文字が見つかったのだった。

このリストに表示されている、つまりは

 

優馬「通った…」

 

 

予備予選の通過がこの瞬間、決まったのだった。

 

 

~浦の星学院・屋上~

 

時は遡り、優馬がちょうど急いで部室へと向かった時だった。

それと同時刻前後、屋上には3人のスクールアイドルが佇んでいた。

それがまさに千歌、梨子、曜の3人だった。

 

曜「…話があるからって、どうしたの?千歌ちゃん。」

 

梨子「…」

 

千歌「とぼけないでよ…全部聞いたんだからね?」

曜「…あー、優とのあの部屋での一件の事?それとも、昔話?」

千歌「…」

曜「それとも…全部?」

千歌「っ!」

曜「…あははっ、その表情…優から全部、聞いてるんだね~」

梨子「ねぇ…勝手に話を進めないで…どういうことなの?」

千歌「…昨日、優くんが放課後、居なくなったのは知ってる?」

梨子「うん、家見たら電気がついてなかったから…」

千歌「実はその時「私の家にいたんだぁ♡」…」

梨子「…は?」

曜「だって…昼休みの時、千歌ちゃんと梨子ちゃん、ずっと揉めてるんだもん。優が疲れ果てて、しんどそうにしてるのに…だから、私の家でゆっくり休んでもらおうと思って♡」

梨子「なにそれ…」

曜「…なに?優を独り占めするのがそんなに悪い?」

梨子「…」

 

曜「…千歌ちゃんも梨子ちゃんも…鞠莉ちゃんもダイヤさんも果南ちゃんも…花丸ちゃんも善子ちゃんもルビィちゃんも…」

 

曜「どれだけ優に甘えてたと思ってるの?」

 

曜「優は皆の甘えをマネージャーだからって必死に受け止めて…悲しませないように必死に動いてた…」

 

曜「なのに…皆は気づかないで…」

 

曜「独り占め?馬鹿なこと言わないで。私は優に少しでも休んでほしかっただけ。」

 

梨子「…でも、その気持ちに多少は私利私欲の考えがあったでしょ」

 

曜「あって何が悪いの!?」

 

曜「皆だってそうだった!私があれからまた我慢して…部活に、優のために打ち込んでいたのに、皆は違った!」

 

曜「…そうだよ。私だって独り占めしたかった。でも、皆とは違う。」

 

梨子「…」

 

千歌「…じゃあなんで過去の話を持ち出したの。言わなくても良かったじゃん!」

 

曜「優に見つかったんだよ。私たちの写真。」

 

曜「私が立てかけてる写真。それを見られて、事情を聞かれたの。」

 

千歌「…じゃあ、なんで嘘をついたの?」

 

曜「…嘘?」

 

千歌「昔から優くんの事が好きだったの、曜ちゃんだけだって…」

 

曜「あぁ…」

 

千歌「私、言ったよね!?昔、曜ちゃんに千歌が優くんの事、好きだって!」

 

曜「…」

 

千歌「それなのに…自分だけ良いように言っちゃってさ…」

 

曜「…だからなに?」

 

千歌「え…?」

 

曜「恋は戦争。千歌ちゃん、知らないの?」

 

千歌「そ、れはそうだけど…」

 

曜「そんなに言うなら自分が始めから言えばよかったのに…」

 

千歌「っ!」

 

梨子「とりあえずこの辺でやめておきましょ?ここで争っていても何も解決はしないと思うし…」

 

曜「…それもそうだね。じゃあ部室、戻ろっか。」

 

千歌「…」

 

 

その時、千歌の口からは一筋の赤く、綺麗な血が滴り落ちた。

誰にも気付かれることなく…




再演、これがまた一波乱起こすのか。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。

現時点で貴方が考える優馬が付き合う相手は?

  • 高海千歌
  • 桜内梨子
  • 渡辺曜
  • 松浦果南
  • 黒澤ダイヤ
  • 小原鞠莉
  • 津島善子
  • 国木田花丸
  • 黒澤ルビィ
  • 鹿角聖良
  • 鹿角理亜
  • 誰とも付き合わない
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