無気力な僕がAqoursのマネージャーになってしまった件について   作:希望03

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こんにちは、希望03です。
美しい花に棘があるように、また美しい花には毒もあるのです。

それではどうぞ。


第57話 美しい花の毒、静かに侵食する

~回想・浦の星学院・3年教室~

 

昨日の出来事から一夜明け、私は何とか心を落ち着かせ、学校に来ることができた。

もう一度、優と話をしたかったものの足がそちらの方向へと動くことはなかった。

すると、机の中から一枚の紙きれがあった。

そこに書かれていたのは

 

ダイヤ「…今日の昼休みに理事長室、に?」

 

とのことだった。

色々なことが起きていて、何のことなのか逆に検討がつかない以上、選択肢は一つしかなかった。

 

ダイヤ「行くしか、ないですわね。」

 

 

~浦の星学院・理事長室~

 

ということで、私は理事長室前へとやってきていた。

一呼吸して、その扉を開くとそこには

 

ダイヤ「…失礼いたしますわ…って、果南さん?」

 

果南「…あれ?ダイヤ?」

 

そこには私と同じように呼び出された果南さんが先に理事長室にいました。

 

ダイヤ「果南さんも鞠莉さんに?」

果南「まぁ、そういうことになるかなぁ…とりあえず理事長室に来るように、って紙切れが私の机に入ってたから来たんだけど…やっぱり鞠莉だよねぇ…」

 

やはりそうでした。

しかし、果南さんがなぜ呼び出されたのか分からない、となると私にとってもここに呼び出された理由というのは分からないのです。

でも…

 

ダイヤ(そんなことよりもとにかく優と話をつけなくてはならないのに、よりによってこんな…)

 

正直、こんなことよりも私は優と話がしたくてしたくてたまらなかった。

昨日の優の表情、そしてあの言動。

どうしても気がかりで仕方がなかった。

そうしていつまでも当事者が来ない焦りを募らせていると諭したかのようにその扉が開いたのです。

相手は勿論。

 

鞠莉「…あら、早かったのね。ハロ~♪」

 

果南「…鞠莉、遅いよ。呼びつけといて。」

ダイヤ「…」

 

鞠莉さんでしたわ。

ようやく来た鞠莉さんはどうにも楽観的、というかいつになく機嫌が良さげのように思えました。

正直、私はそんな態度に憤りを感じました。

 

鞠莉「Oh~Sorry!ごめんねっ♪」

ダイヤ「…」

 

いつになく私の怒りがピークに達しようとした、その時でした。

まるで制止するかのように、果南さんが前へと乗り出したのです。

 

果南「…はぁ、まぁいいよ。それよりもなんで私たちだけをあんな古典的な方法でここに呼び出したの?」

鞠莉「…そうね、そのことよね。」

 

鞠莉「まず2人に聞きたいんだけど、答えてくれる?」

ダイヤ「…えぇ、良いでしょう。」

果南「まぁ…」

鞠莉「ありがと♪それで聞きたいって言う事が」

 

鞠莉「昨日の2年生の様子なんだけど、どこかおかしいと思わなかった?」

 

果南「…それって答えて良いものなの?」

鞠莉「別に誰にも言わないわよ?」

果南「…そうだね、正直、3人の空気は重かった、というか暗かったような気がする。」

鞠莉「ダイヤは?」

ダイヤ「果南さんに同意ですわ。なんだかお互いがお互いに牙を向け合っているような…そんな空間を感じましたわ。」

 

昨日の2年生たちのこと…確かに気づいていました。

しかし、他人が干渉するべきではないだろうと思い、あまり深堀はしないでいました。

ですが、それを今になってなぜ掘り下げてきたのでしょうか?

 

鞠莉「そうよね、私もそう思ったわ。その答えを聞けたところで、この動画を見て欲しいの。」

 

そうして鞠莉さんが掲示した動画が昨日の物でした。

その動画は監視カメラの映像であり、昨日設置したような新しいもののようでした。

 

鞠莉「…なんで監視カメラを設置したのか、っていうのは不問にしてね。」

 

その条件を飲んだ上でその監視カメラの映像を観てみると、そこには千歌さん、曜さん、梨子さんの姿がありました。

 

果南「これって…私たちが帰った直後?」

鞠莉「そうよ。」

 

昨日は全員がすぐ帰ったと思ったのですが、実は部室に3人が残っていたのです。

その動画を観続けると段々と緊迫とした空気になっていき、果ては言い合いが始まってしまった…まるで一種の修羅場のように。

しかもその内容というのが

 

ダイヤ「…優のこと?」

鞠莉「えぇ…そうよ。」

 

しかし、これを観させられたからといって、どうということはない。

私たちも優の事になるとたまに修羅場になることだってあります。

それなのにわざわざこのような動画を観させられても正直、困りましたわ。

 

果南「…ごめん、これが何だって言うの?こんなこと正直、結構な頻度で私たち、起こってるよね?」

鞠莉「そうね、確かにそう。じゃあもう一つ質問を加えるわ。」

 

鞠莉「…昨日の優の様子は、どうだった?」

 

ダイヤ「っ!」

果南「…え?」

 

鞠莉「…昨日、優の元気も無かったの。気づいてた?」

ダイヤ「…」

果南「言われてみれば、確かに…」

 

鞠莉「そう。なぜ、昨日から今日に至るまで優の元気がないのか、そして昨日の練習中に何か思い詰めているような表情もしていたの…まるで一人で抱え込んでいるかのように。」

 

果南「…そう、だったんだ。」

ダイヤ「…」

 

鞠莉「…そこで考えてみたの。優がなんでこのタイミングで元気がなかったのか、そして2年生がここに来てまた修羅場を形成し始めたのは何が原因なのか。」

 

鞠莉「もしかしたら、これは偶然じゃなくて、この2つに繋がりが存在するとしたらって。」

 

果南「…確かにタイミングはバッチリだし、あまりにも合致しすぎて不自然に感じる。」

ダイヤ「そうですわね…そしたらやっぱりその説は正しいのでは?」

 

鞠莉「そうね…じゃあこの説を仮説として、ダイヤや果南だったらどうする?」

 

果南「どうするって…そんなのできることならどっちも救うよ。」

 

鞠莉「…どうやって?」

 

果南「まだ大まかな内容だけど、まず2年生がこうなった原因を掴む必要があるから、それを突きとめて、解決へと導かせる。そして、2年生を優馬の元に謝りに行かせる…っていう方法かな。」

ダイヤ「…私もそれに同意ですわ。シンプルではありますけれど、それが一番ですわ。」

 

ダイヤ(…まぁ正直なところ、2年生の皆さんはどうでもいいですわ。とにかく今の優は見ていられません…そちらを助ける方が優先ですから。)

 

鞠莉「…2人はそうなのね。」

 

果南「…2人は、って鞠莉は違うの?」

 

鞠莉「えぇ…駄目よ。」

 

ダイヤ「…理由を教えていただきますか?」

 

鞠莉「…考えて見て欲しいの。優の事を。」

 

鞠莉「優は今、まさに苦しんでいる最中よ?それの原因は何か、それが今修羅場を形成している2年生なのよ?」

 

鞠莉「そんな優を苦しめている存在を…なぜ私たちが関係を元に戻すように促さなくてはならないの!?」

 

ダイヤ「そ、れは…」

 

鞠莉「だって今、優を苦しめているのは2年生のはずでしょう!?」

 

ダイヤ「…っ」

 

果南「そうだよ。それは正解だと思う。でも次のラブライブの予選があるのにこんな内輪揉めをしているようだったら、きっとラブライブは優勝できないだろうし、結果として、入学希望者だって集まらない…それが一番、ゆうにとって辛いことだと思う。」

 

鞠莉「…だから、この問題は早めに解決すべきだ、っていうの?」

 

果南「…そうだよ。」

 

鞠莉「なら解決する方向に動いたとして、また同じようなことが起きたとしたら!?これは2年生だけの問題じゃない!もしかしたら1年生の間だって起こる可能性が有る!それに…」

 

鞠莉「もしかしたら…私たちの間でも起こる可能性が有るじゃない…」

 

果南「…」

ダイヤ「…」

 

鞠莉「…いちいち一つ一つ解決したとしてもまた新たな芽が生まれてしまうわ。それならもういっそのこと…根本を断ち切らないと、いけないと思わない?」

 

私にはどう言えばいいか、分からなかったです。

果南さんの言っていることも分かります。しかし、鞠莉さんの言い分も分かります。

正直なところ、もう私の思考は停止してしまっていましたわ。

しかし、ふと感じた疑問が出てきたのです。

 

ダイヤ「…それならその断ち切る方法、というのは?」

 

鞠莉「…問題である2年生たちの事を優馬が嫌いになる、という方法よ。」

 

鞠莉「そうすれば彼女たちもきっと諦めてくれるし、近付こうとも思わなくなるわ。優に嫌われたくなどないから。」

 

ダイヤ「…ですが、それでは今度、優馬が苦しんでしまうのでは?」

 

鞠莉「なら…優を堕とすのみよ。」

 

ダイヤ「堕とす…?」

 

鞠莉「分からない?」

 

果南「つまり、ゆうを私たちの物にするってこと?」

 

鞠莉「Oh~!果南、大正解~♪」

 

優を私たちの物に…

それはずっと願ってきたもの。しかし、何をどう動いたところで今まで優は靡かずに、私たちも物にすることはできませんでした。

今さら、そんなことなんて…

 

果南「できるわけないじゃん…」

 

鞠莉「…あら?意外に腰抜けなのね?」

 

果南「違う!私は…ただ、そんなの出来ていたらとっくにしてるだけってことを言いたいの…」

 

結局のところ、今ラブライブに向けて、そして入学希望者獲得のために奔走する現状がある以上は、その忙しさを考えると、優を堕とす、などと言うことは出来る暇がまずありません。

その意味合いも込めて伝えた果南さんの一言のおかげか、数分間、無言の空間が出来上がってしまっていました。

 

果南「…私、もう行くね。」

 

鞠莉「…」

 

果南「最後に言っておくよ。これ以上…これ以上、皆がゆうの事を苦しめるようだったら…」

 

容赦はしないから。

そう言い残し、果南さんは去って行ってしまいました。

般若のような最大限の怒りが込められた顔をして…

 

鞠莉「はぁ…結局、優の事になると誰も、周りが見えなくなるのよね~」

 

それはお互い様でしょう。

そう言いたいところでしたが、この空気の中で言える程の勇気が私にはありませんでした。

 

鞠莉「ダイヤはどうする?私と一緒に優を堕としに行く?」

 

それも良いでしょう。

ずっと、ずっと恋焦がれていた相手ですもの、またとないチャンスですわ。

ただ、それが鞠莉さんと一緒、という事でなければの話ですが。

 

ダイヤ「…分かりませんわ。ただ、気持ちとしては果南さんと同じです。」

ダイヤ「優をこれ以上、傷つけるようであれば、黒澤家の力を行使してまでも彼を守りますわ。」

 

これはある種の私の決意でしたわ。

1人で戦う。彼を守るという、私の意志…

己の言葉は曲げない。一、黒澤家の女としての矜持。

ここで果たさなけれななりませんから…

 

ダイヤ「…それでは私も失礼いたします。」

 

だから…誰であろうと潰しますわ。

そう…徹底的に、ね。

 

 

鞠莉「…本当、つまらない正義感ね。心の奥底はもっと独占欲の塊だというのに。」

 

 

~浦の星学院・1年生教室~

 

昼休み。

1年生の教室では仲睦まじく花丸、善子、ルビィが昼食を食べていたが、ふと花丸が呟いた一言で話が始まったのだった。

 

花丸「…昨日の優さん、元気が無かったずら」

善子「やっぱり…そうよね。」

ルビィ「うん…」

善子「何か、あったのかしら…」

ルビィ「そう言えばお姉ちゃんも昨日、帰って来た時、顔が真っ青だったんだよね…」

花丸「そうなの!?…なんだか皆、心配ずら」

善子「…リリーたちも様子がおかしかったわよ。なんだか空気感が悪いというか…雰囲気ぎこちなさがあるというか…しかも曜の優馬に対する視線がにやにやしてて、気持ち悪かったし…」

ルビィ「…は?」

花丸「それは…気持ち悪いずら」

善子「とにかく!なんだかおかしいわ、皆…」

ルビィ「そうだよね…お兄ちゃんも元気がないし、お姉ちゃんもなんだか体調が悪そうだし…何かあったのかなぁ」

 

うーん、といった感じで、どことなく行き詰ってしまった。

色々なことを深堀していったせいなのか、余計に分からなくなってしまうようなそんな感じである。

ただ、彼女たちの根底にある考えはただ一つだった。

 

花丸「…何はともあれ、優さんには元気でいて欲しいずら。」

ルビィ「…うん」

善子「えぇ…」

 

 

そうして彼女たちは優馬に思いを馳せつつ、残りのご飯を無言で食べるのだった。

 




いかがだったでしょうか?
毒々しい。それもなんだか切ないような。

次回もお楽しみに。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

現時点で貴方が考える優馬が付き合う相手は?

  • 高海千歌
  • 桜内梨子
  • 渡辺曜
  • 松浦果南
  • 黒澤ダイヤ
  • 小原鞠莉
  • 津島善子
  • 国木田花丸
  • 黒澤ルビィ
  • 鹿角聖良
  • 鹿角理亜
  • 誰とも付き合わない

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