無気力な僕がAqoursのマネージャーになってしまった件について   作:希望03

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こんにちは、希望03です。
大なり小なり、人は何かを抱え込む生き物なんです。

それではどうぞ。


第61話 抱えていたもの

~北海道・函館空港~

 

聖良からの電話があってから急いで準備を済ませて、彼女たちは函館に来ていた。

節約に節約をしてきた部費のおかげもあって、意外とすんなりとここまで来ることができた。

 

しかし、着いたはいいものの

 

鞠莉「…ここからどうすればいいのかしら」

 

皆、聖良の家には一度も行ったことはない。

なんなら函館に来たのも初めてである。

何も知らない以上、ここから動けずにいた。

 

すると、千歌の携帯が鳴った。

 

千歌「はい…」

 

聖良『もしもし、聖良です。もう空港に着きましたか?』

 

相手は聖良だった。

事前に千歌から何時ごろの出発で、何時ごろ到着するのか、というのを聞いていたため、函館空港の近くで待機していたらしい。

 

聖良『…着いているみたいですね。すぐにそちらに向かいます。』

 

そう言われて、およそ5分後、言葉通り、聖良がやってきた。

 

聖良「お待たせしました。」

 

やはりライバル校ということもあるが、それ以上に優馬との件について、あれだけ言われた相手ということもあり、聖良が現れてから空気がギスギスとしていた。

 

聖良「…はぁ、行きましょう。ここで立ち往生していても仕方がないですから。」

 

聖良の一言により、空気感は変わらないまま、聖良の家へと向かうこととなった。

 

 

~函館・鹿角家~

 

聖良の家は和やかな雰囲気に包まれた居心地の良い喫茶店だった

 

花丸「お、おいしそうずらぁ~…」

善子「ずら丸!絆されてる場合じゃないわよ…!」

ルビィ「なんだかもう2人とも馴染んでるよ…」

 

聖良「…こちらです。」

 

案内されたのはその奥の部屋だった。

 

~鹿角家・聖良の部屋~

 

聖良「狭くてすみません…」

 

ダイヤ「いえ、お気になさらず…」

果南「それで前に言ってた見せたい物っていうのは?」

聖良「…そうですね、まずそれからでしたね」

 

そうして聖良が差し出したのが、まさに小学校低学年くらいの姿の優馬と昔の鹿角姉妹との写真だった。

 

千歌「っ!これ…」

曜「優…?」

鞠莉「…」

 

ダイヤ「…なぜこんな写真を貴方が持っているのですか?」

 

聖良「その説明を致しますから、慌てないでください。」

ダイヤ「…」

 

聖良「あれは小学4年生の時でした…」

 

~回想・聖良 side~

 

あれは冬から春に変わり、積もりに積もっていた雪が徐々に解け始めてきた時期でした。

入学式も済み、春先のバタバタが少し落ち着いてきた頃、ある転校生が私たちの学校にやってきたのです。

 

名前は空条優馬。

クラスも違うどころか学年すら違う始末、そのためか当時はあまり興味がわきませんでした。

ただ全校集会の時に話していたからか、ある程度、学校での知名度は高かったんです。

 

当時、俗に言う転勤族だった優君は数年間過ごしてきた故郷を離れて、私たちの学校に転勤してきたみたいでした。

 

興味が湧かなかったものの衝撃的なことがその日に起きたのです。

それは。隣に空条家が引っ越してくる、という内容。

最初は誰?と思いましたが、そう言えば転校生の苗字が空条だったことからもしかしたらと思い、隣の家に訪れるとそこにいたのは学校で話題沸騰になっている転校生、空条優馬がいたのです。

 

優馬「…」

聖良「っ!」

 

当時はまだ小学4年生、物珍しさに好奇心が湧いていたので、いつになく話しかけたのです。

 

聖良「あ、あの!同じ学校の4年生で…その、い、家!隣、なので…な、仲良くしてね!」

 

当時の私は人見知りも激しかったので、こんなに話せたのも奇跡に近かったんです。

それなのに彼は…

 

優馬「…そう」

 

それだけ言って、扉を閉めてしまいました。

その態度に憤りを少し感じたものの、あの無表情な顔つき、同学年にはない異色な雰囲気…色々な要素が絡み合って、なんだか心配になったのです。

しかし、それを食事の席で話した時

 

理亜「お姉ちゃんにそんな態度をとるなんて許せない!」

 

と、理亜は私以上に怒り始めたのです。

理亜は実際にその姿を見たことがなかったので、その話を聞いてから優君を毛嫌いするようになりましたが、それでも私はあの顔と雰囲気がどうしても気がかりになってしまい、今でいうストーカーまがいなことをしていたのです。

 

そんなことを始めてから、色々な情報を得られるようになりました。

 

優君は学校でも話さない人で、転校初日にはたくさんの人が机にいたはずも今ではすっかりいなくなってしまったこと。

 

それでも、そのクールさから私の同学年や先輩、後輩の一部や同級生の一部からは人気があったこと。

 

授業では話を聞いているか分からないけれど、テストは満点、聞き分けの良い子でもあったらしく、先生からの評判も良い。いわゆる優等生らしいという事。

 

知れば知るほど、すごいなぁ、と思う事ばかりではあったけど、結局その異色な雰囲気につながる手がかりは一切分からないままでした。

 

ダメ元で理亜にも聞きましたが、優君の話題を出すだけで嫌悪感を丸出しにして、嫌身を連ねていたので、大した成果は得られませんでした。

 

それからさらに数日、情報収集は続けていたものの、やはり成果は全く上げられず、ただただ日は過ぎるばかりでした。

しかし、そんな中、ある転機が訪れたんです。

 

それは私がお店の手伝いのために買い出しへ出かけていた時でした。

お使いも終え、歩いて帰っている中、その帰り道の公園がなんだか騒がしかったのです。

 

聖良「何かあったのかしら…」

 

そうしてちょっと不安になりつつ様子を見てみると、どうやら喧嘩をしているようでした。

 

聖良「なんだ、喧嘩でしたか…」

 

そう思い、帰ろうとした時でした。

 

理亜「やめてよ…!やめて…!」

 

嘘、と思い、引き返すとそこにいたのは理亜でした。

一緒にいたのは私の1個下だろう同じ学校の男の子が理亜をいじめていたんです。

 

私は助けなきゃ、と思い、理亜の下に駆け出そうとしたその時でした。

 

優馬「…ねぇ、君たち何してるの?」

 

そこにいたのはあの転校生、優君でした。

 

「うるせえよ!お前に関係ないだろ!」

「そうだそうだ!あっち行け!」

 

優馬「そうもいかないよ。そもそも自分より年下の子をいじめてて、恥ずかしいと思わないの?」

 

「な…!う、うるさい!」

「ね、ねぇ、もうこっちも一緒にいじめようよ!」

 

どうやら優君の同じクラスの子らしく、優君に標的を変えて、殴ろうとしたその時でした。

 

「パシャッ」

 

写真の音がして、優君の方を見ると携帯を構えて、また再度

 

「パシャッ」

 

と撮ったのです。

 

「なにすんだ!」

 

優馬「いや写真だよ。見ればわかるでしょ?」

 

「やめろ!消せよ!」

 

優馬「もう遅いよ。バックアップ処理もしてあるから一生消えない。ちなみに言うと、さっきその子にしていた暴力行為も、今、僕にしようとした暴力行為も全部動画、写真に収めてあるから。」

 

優馬「これを先生、君たちの親に見せたらどうなるかな?」

 

優馬「…君たちも馬鹿じゃないんだ。これが見られたらどうなるか、分かるよね?」

 

優馬「謝れ。そして早く消えろ。」

 

「う、うぅ…ご、ごめんなさい…」

「ご、ごめんなさい…」

 

そうして優君のファインプレーのおかげでいじめっ子たちは理亜に謝罪し、帰っていきました。

それでも理亜が泣いていたので駆け寄ろうとしたのですが、それよりも先に優君がそばにいて、理亜の頭を撫でていたのです。毛嫌いされているのも知っていたのに…

 

理亜「ひっぐ…ぐす…うえぇ…」

優馬「…怖かったね。もういないから、安心して。」

 

あの時の優君の顔は学校で見ていた無表情なんかではなく、朗らかな優しい微笑みでした。

 

理亜「…う、うわぁぁぁぁぁん!」

 

理亜もそれに安堵したのか、ただただ優君を抱きしめて、泣き続けていました。

 

その一件以来、理亜をいじめていた子達はすっかり理亜を目の敵にすることはなくなりました。

理亜も理亜で…

 

理亜「お兄ちゃん!一緒に帰ろ!」

優馬「…うん」

聖良「…」

 

こんな風にあれだけ嫌悪感を出していた優君の事をお兄ちゃん、と呼び、よく話すように、そして遊ぶようになりました。それは理亜だけでありません。

 

聖良「優君、いつもありがとうね。理亜の面倒見てくれてて…」

優馬「そんなことないよ。苦労だと思ってない。それに、聖良とも遊べるし、ね。」

聖良「っ!///もう!馬鹿!///」

 

私も私であの一件でようやく打ち解けるようになったのです。

お互いがお互いにとても良い関係性を築けていました。

 

そうしてさらに月日が経ったある日、いつも通り3人で遊んでいた時でした。

 

聖良「…ねぇ、優君?」

優馬「…?」

聖良「なんで、内浦ってところから函館に引っ越してきたの?なんでずっと無表情なの?」

 

私は当時、転校してきたあの時から疑問に思っていたことを優君にぶつけたんです。

言いにくいと分かっていたんです。でも、それでも知りたかったから…

すると、優君はすごく思い詰めている様子でぽつぽつと話し始めました。

 

優馬「…まず、引っ越した理由から、ね。」

 

優馬「僕が引っ越した理由は説明もあった通り、親が転勤族で、今回も仕方がなかったんだ。」

 

ここは聞いた話の通りだった。でも、段々と優君の表情が曇ってきたように感じた。

 

優馬「でも、もう一つあって、それは僕のせいなんだ。」

聖良「…え?」

優馬「僕のせいで、内浦に居づらくなってしまったからなんだ。」

 

始めは耳を疑った。

無口で無表情で一見不気味に思われる人だけど、誰にでも優しくて温かい人が自分のせいで居場所を失くしてしまうということに。

 

その話の続きを聞いていると

まず優君には大切な人がいて、その大切な人を優君の何気ない言動一つで傷つけてしまって、病気にしてしまった…

そのおかげでその親からはすごく不気味がられ、挙句それは内浦全体に広まってしまった。

中には擁護してくれる人もいたけれど、それでもその嫌悪感は消えることがなかったという。

 

優馬「…そうして、僕はここに逃げて来たんだ。情けないよね。」

聖良「…」

優馬「…あと、無表情の理由、だよね。」

 

すると、またぽつり、ぽつりと話してくれた。

 

優馬「僕が無表情なのも臆病者の表れだよ。この件で僕は誰かと親しくすることと同時にその人を傷つけてしまう、とそう思ったんだ。」

 

優馬「…結果、僕は人と接するのが怖くなった。」

 

優馬「だから、なるべく誰とも関わらないように。自分の弱さが悟られないように。気づいた時には無表情の仮面を被ってたんだ。」

 

聖良「…」

 

優馬「これが真実。ごめん、本当は弱い生き物なんだ、僕は。」

 

なんで謝るのか、なんでそんな悲しいこというのか。

私には理解できなかったです。だから、気づいた時には

 

聖良「っ!」

 

泣きながら私は優君を抱きしめてました。

 

優馬「…聖良?」

 

聖良「大丈夫、私も理亜もずっと、ずっと優君の味方だよ…どんなに周りが優君に怖い思いさせても、嫌っても…私たちは何年、何十年経っても、ずっと味方だよ…」

 

 

深い話をしたのはこれが最後でした。

それから月日がさらに流れて、時期は学年が一つ上がる春頃でした。

気付いた時には、優君は転校し、函館を離れてしまいました。

 

 

~回想終了・聖良の部屋~

 

「「「「「「「「「…」」」」」」」」」

 

聖良が話し終えると、ただただ沈黙が流れるばかりだった。

 

聖良「…これで分かりましたか?どれだけ優君が辛い思いをしてきたのか」

 

聖良「優君はずっと前から苦しんでいたんです。あなたたちと離れてからも、ずっと…あの出来事を優君は忘れることなんてありませんでした。」

 

聖良「だから、ずっと自分の言動が、行動が、人を傷つけてしまわないように…そうずっと考えながら、ここまで生きてきたんです…」

 

聖良「だから、以前、Aqoursの皆さんにお会いした時に、優君がいて、始めは驚きました。こんなところにいるなんて思いもしませんでしたから」

 

聖良「けれど、久しぶりに会った優君の顔つきは私たちが会ったあの頃とは全く違っていて、本当に楽しそうでした…」

 

聖良「悔しかったですけど、それでも笑って、誰かのために動いているその姿が本当に嬉しかったんです。」

 

聖良「なのに…なのにっ!」

 

「「「「「「「「「っ!」」」」」」」」」

 

聖良「貴方たちのせいで…また、優君は塞ぎ込んでしまったんです…!」

 

「「「「「「「「…」」」」」」」」

 

千歌「ご、ごめn「貴方が謝るべきなのは私じゃないでしょう!?」っ!」

 

 

聖良「…考えを改めてください。これで何も治らないようであれば…貴方たちの事、私たちSaint Snowが許さない…!」

 

 

そう言い、彼女はただただAqoursを涙ながらに睨みつけるのだった。




いかがだったでしょうか?
優馬と共に実は聖良も抱えていたんですよね。
なんとも言えない。もどかしさ。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。

現時点で貴方が考える優馬が付き合う相手は?

  • 高海千歌
  • 桜内梨子
  • 渡辺曜
  • 松浦果南
  • 黒澤ダイヤ
  • 小原鞠莉
  • 津島善子
  • 国木田花丸
  • 黒澤ルビィ
  • 鹿角聖良
  • 鹿角理亜
  • 誰とも付き合わない
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