無気力な僕がAqoursのマネージャーになってしまった件について   作:希望03

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こんにちは、希望03です。
なんで美しい物の散り際は一番美しいんですかね。

それではどうぞ。


第62話 雪降り、積もり、解け、”堕”ちる

~内浦・海岸沿い~

 

まだ夜明け前、日は浅い。

だけど今、僕は散歩をしていた。

別に理由はない。ただ町を歩きたかった、それだけだった。

今までラブライブの事、学校を救う事、そして彼女たちの事を考えて動いていた時間がもうどこにもない。

元々、日曜日はライブ前でもなければ休みの日だ。だがもう僕には関係ない。

だってもう僕は、彼女たちを裏切ったのだから。

 

優馬「…」

 

綺麗な朝日だった。

海を、大地を、そして僕の心を照らしてくれるようなそんな綺麗なものだった。

 

優馬「綺麗だな…」

 

そう呟いて、また歩き出そうとした時だった。

 

?「…」

 

優馬「え…?」

 

海岸の砂浜に目を見やるとそこには見たことのある髪色と髪型をして、見たことのある制服を着ている女の子が立っていた。

 

優馬「な、なんで?」

 

思わず声が出てしまった。

すると、その声に反応したのか、その子は振り向き、こちらを食い入るように見つめてきたのだ。

 

優馬「り、理亜、ちゃん…?」

 

理亜「に、兄、さん…兄さん!!」

 

完全に嫌われていると思っていた年下の女の子。

しかも思春期真っ盛りの女子高生が泣きそうになりながらその呼び声と共にこちらに駆け寄ってくるではないか。

 

優馬「へ、ちょ、ま…!?」

 

スマートな対応をする紳士はこれを優しく受け止めるだろう。

ただ、僕にそんなものは備わっていない。

そのため…

 

優馬「うおわぁ!?」

 

思わぬ対応にどうすることもできず、呆然と立ち竦み、その突進を受け入れてしまった。

本当、砂浜の上で助かった…

 

優馬「…!?…!?」

 

さてどうしたものだろうか。

正直、何が起きているのかさっぱり理解ができない。

今、僕は嫌われていると思っていた女の子に突然、涙目で突進をされて…

 

理亜「…っ!…っ!」

 

嗚咽なのか、それとも何かつぶやいているのか…

それが何なのかは分からないが、ともかくこの状態のまま、沈黙が続いてしまった。

しかも、何分か、はたまた何秒か、なんにせよこんな状況だ。

とにかく長く感じてしまった。

しかし、この状況をいつまでも続けさせるわけにもいかない。

と、冷静さが少しずつ戻ってきたのだった。

 

優馬「…理亜、ちゃん?」

理亜「っ!」

 

呼んだのは間違いだったのだろうか。

それとも声が嫌いなのだろうか、僕が名前を呼んだその瞬間、彼女は一度、離れた。

すると、なんとも寂しげな顔を浮かべていた。

 

理亜「やっぱり、覚えていない、んだ…」

 

と、すごく意味ありげな、深い一言をつぶやき、また再度、俯いてしまった。

 

優馬(覚えていない?ってなにを?)

 

正直、そんなことを言われても思い当たる節は見当たらなかった。

となると、全く理解ができずに立ち竦んでしまった。

 

優馬「ち、違ったかな…?いや、でも君は…Saint Snowの聖良さんの妹、ラップ担当の理亜ちゃんじゃ…?」

 

理亜「あはは…うん、そうだよ。その通り。でも、私が言いたいのはそう言う事じゃないんだ…」

 

その時、彼女はさっきと同じように無理して作ったような、でも寂し気な笑顔でこちらを見つめた。

なんだかそれが僕にとって、とても悲しくて、辛くなった。

元々、何か失っていた場所、穴が開いていた場所を鋭いナイフで深く抉られたような、そんな感覚だった。

 

優馬「じゃあ、一体どういう…」

 

理亜「…ま、その話は後にして…とりあえず話そうよ。聞きたい事、たくさんあるでしょ?」

 

いや、今話して欲しい…とは言えず、僕は理亜の提案に乗ることにした。

いずれこの事も話してくれるだろうと期待していたために。

 

優馬「じゃあ…歩きながらでもいい?」

理亜「…いいよ。案内してくれる?」

優馬「そんな説明するほど、大層なものは無いよ…」

 

元々、ただの一人散歩で寂しくもあったから、女の子1人いるだけで大分寂しさが消える。

少し、情けないけど。

そんな想いで僕は彼女とまた散歩を再開した。

 

 

そうして歩き始めて、およそ10分くらいだろう。

特に話すことも無く、ただただゆっくりと海岸沿いを歩いていた。

暇じゃないだろうか、そう思い、ふと後ろを見ると彼女は内浦を感慨深い表情で見渡していた。

 

理亜「…ここが、に…あ、あんたの育った場所なのね。」

優馬「あ…そう、なのかな。」

 

 

正直、育った場所、と言われると少し悩ましかった。

この場所は僕にとっての居場所にしていいものか、不安ではあったから。

 

理亜「…違うの?」

 

優馬「違う、とも言い切れない、かな。ただこの場所は…僕の居場所とするのは烏滸がましいというか…罪悪感でいっぱいになるんだ。」

 

理亜「罪悪感…」

 

優馬「…いや、ごめん。こんなしんみりとした話はしたくなかったんだ。歩こう。」

 

そうして僕は半ば強引に立ち止まった足をまた動かし、歩き始めた。

 

理亜「…ねぇ、あんたは今、楽しい?」

 

優馬(楽しい…か。)

 

優馬「分からない…でも、以前は楽しかったよ。」

 

理亜「そうなの?」

 

優馬「うん。毎日毎日…馬鹿みたいに大はしゃぎで…でもずっと学校を救いたい、ラブライブで優勝したい、その思いだけで本当に我武者羅に突き進んでた。」

 

理亜「…」

 

優馬「楽しかったよ…マネージャーだったけど、本当に色んな夢や輝きを見せてもらった。」

 

理亜「…その言い方じゃ、まるで過去の話みたい。」

 

優馬「…もう過去の話だよ。そんな彼女たちを、裏切ったくそ野郎だからね。」

 

理亜「そんなこと…」

 

優馬「…それがあるんだよ。」

 

理亜「あんた、辛くないの?」

 

優馬「…辛い、のかな。それもよく分からないんだ。まだ心ではAqoursの皆と一緒に学校を救おうと思ってる…いや思いたい。けれど…僕が皆の固い友情の結び目を切ってしまう、と思うと…苦しい、かな」

 

理亜「…」

 

優馬「一度は克服したはずだったんだ。皆と乗り越えられた、そのはずだった。でも…彼女たちをまた裏切ってしまった…そういった意味でもこの町に僕の居場所はないのかもね。」

 

理亜「そ、っか…」

 

その時、本当に気を使わせてしまうようで申し訳ないな、と思った。

けれど、吐き出さないと立っていられなかった。

正直、何言われても覚悟はできていた。説教を喰らおうが、励まされようが、決してこの想いは揺らぐことはない、とそう思っていた。

けれど、彼女は励ますわけでもなければ、説教をすることも無く、ただ黙々と僕の話を聞いていてくれた。

なんだかそれが無性に嬉しく感じた。

 

優馬「…じゃあ歩こっか。どうせなら学校まで行ってみる?」

理亜「…うん。」

 

 

~浦の星学院・校庭~

 

優馬「やっぱり見晴らし良いな~…」

 

目の前に広がるのはめいっぱいの朝焼けだった。

まだ時刻は6時半。

ほとんどだれも起きていない時間帯、もちろん僕もいつもであれば同じだ。

でも、そんな時間の中、僕はライバル校の子となぜか一緒に学校にいる。

今考えてみれば、不可思議ではある。

でも、なんだか昔会ったような…そんな心地よさがここにはあった。

 

理亜「綺麗…」

優馬「でしょ?僕もここからの景色は好きなんだ。心が落ち着く…」

理亜「…うん、なんだか分かる気がする。」

優馬「そっか、気に入って貰えたようで良かった。」

 

そうして僕たちはただただ目の前に広がる景色を眺めていた。

何も話すことも無く、ただ囚われていた。

 

優馬「…」

 

理亜「…ねぇ、聞かないの?私の事。」

 

優馬「え?うーん…いやいいよ。」

 

理亜「え?」

 

優馬「わざわざ北海道からここまで来たってことは何かしら事情があるだろうし…聞かない方が良いかなって」

 

理亜「優しいんだね。」

 

優馬「そんなことないと思うよ。ただ臆病なだけ。」

 

理亜「…そういうところ、本当嫌い。」

 

優馬「え?」

 

理亜「いいよ。私から話してあげる。」

 

随分とまた上から目線だった。

しかもこれまたこっちが気を利かせて聞かなかったのに、嫌いと言われてしまった。

少々、ショックだが、話してくれるなら聞かないわけにもいかない。

そうして、僕は彼女の話を聞くことに徹した。

 

理亜「単刀直入に、なんで私がここに来たか、って言う理由からね。」

 

理亜「私がここに来た理由は…兄さん、あなたに会うため。」

 

優馬「…そっか。」

 

理亜「驚かないの?」

 

優馬「驚いてるよ。顔に出ないだけ。」

 

理亜「そっか。」

 

優馬「それと早めで申し訳ないんだけど質問良いかな?」

 

理亜「うん、なに?」

 

優馬「…その、兄さん…ってどういうこと?僕、兄妹の血縁関係は無いはずだけど…」

 

理亜「そうだよね…そこも話していくつもり。」

 

理亜「じゃあなんで私が会いに来た具体的な理由ね。」

 

理亜「兄さんが覚えていないようだったから伝えに来たの。過去の抜けてる真実を。」

 

優馬「抜けてる真実?」

 

理亜「そう…じゃあこっちから質問。」

 

理亜「兄さん…自分が内浦を離れてからのこと、覚えてる?」

 

優馬「そりゃあまぁ…僕が内浦を離れたのは小学3年に上がる頃で…東京に行ったのが小学4年の時…あれ」

 

理亜「…見事に1年間、抜けてる。」

 

優馬「…嘘でしょ。あれ?」

 

理亜「その空白の1年間はね、兄さん、北海道にいたんだよ。」

 

優馬「え…?」

 

理亜「函館の私たちの家、その隣に引っ越してきた…それが兄さん…空条優馬だった。」

 

その時だった。

また千歌と曜の時と同じように記憶が呼び起こされるあの感覚。

その衝撃が僕の頭にかかった。

 

理亜「最初からあの時は無表情で無口だったけど、ある日、私が苛められているところに現れて、私を助けてくれた…それからずっと一緒にいたのに…気づいた時にはいなくなってた。」

 

理亜「ただ、それだけの1年。」

 

理亜「覚えてる?“お兄ちゃん”」

 

優馬「っ!」

 

“お兄ちゃん!一緒に帰ろ!”

“優君、帰ろ?”

“お兄ちゃん!”

“優君、私たちはずっと味方だから…ね?”

 

優馬「理、亜…」

 

理亜「…」

 

優馬「理亜…あの頃、助けた女の子って…」

 

理亜「…私」

 

優馬「それ以来、ずっと一緒にいてくれたのって…」

 

理亜「…私たちだよ。」

 

優馬「っ!そう、だった…」

 

理亜「思い、出した?」

 

優馬「全部、思い出したよ…理亜、ごめんね。」

 

理亜「っ!」

 

すると、感極まったのか。

理亜はまた会った時のように抱きしめてくれた。

 

優馬「…ごめん、理亜。今まで…僕は君たちの事を…」

 

理亜「気にしてないよ。ただずっと寂しかった…!久しぶりに会ったあの神社の時も、東京のイベントの時も、姉さまと電話してる時も!」

 

理亜「ずっと…寂しかった…会いたかった!」

 

その想いはとてつもなく強かった。

そして、その想いを知らず、今まで忘れていた僕はどういう顔をすればいいのだろうか。

理亜にも…聖良にも…

だから僕は、ずっと

 

優馬「ごめん…本当にごめん…理亜…聖良…!」

 

 

謝ることしかできずに

朝日が照らす僕たちはただただ抱き合う事しかできなかった。




いかがだったでしょうか?

なんだか本当、辛い役回りなSaint Snowですね。
雪や氷のイメージってそれだけ美しくて、泣けるんですよ。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。

現時点で貴方が考える優馬が付き合う相手は?

  • 高海千歌
  • 桜内梨子
  • 渡辺曜
  • 松浦果南
  • 黒澤ダイヤ
  • 小原鞠莉
  • 津島善子
  • 国木田花丸
  • 黒澤ルビィ
  • 鹿角聖良
  • 鹿角理亜
  • 誰とも付き合わない
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