無気力な僕がAqoursのマネージャーになってしまった件について 作:希望03
迷いはもう、ない。
それではどうぞ。
~沼津・バス停前~
今日一日の練習も終わり。
そしてそれは同時に今日一日の終わりでもある。
沼津組である善子と曜は徒歩で家へと戻っていった。
あの電話から数日、何か変わったかと言われれば何も変わらない。
曜は相変わらず“いつもの”曜だった。
善子も心配してくれているようで僕にちょくちょく声をかけてくれる。
正直、なんで前みたいに感情を、想いを教えてくれないんだ、って心にショックがあるから心配してくれるだけでも嬉しい。
けれど、僕は悟ってしまった。
『多分』、曜の想いは僕に教えてくれないんだろう、と。
これまでは曜の事が気がかりでずっと気を向けてしまいがちだった。
けれど、今日はまた違うことが起きた。
それは…
果南「…」
梨子「…」
果南と、梨子からの告白。
まさか今日一日だけで2人から告白されるとは思わなかった。
きっと果南も梨子も色んな想いや葛藤があって、今日に至ったんだろう。
『ずっと、ずっと!優君の事が、大好き…!大好きなの!』
『好きだよ、ゆう。大好き。』
優馬「…」
覚悟を決めた。
それを伝えた時、確かに決めなくてはならない。彼女たちに必ず本当の気持ちを伝えなくてはならない。
そう、決めた。
だけど、こういった告白だったり、色んな想いを見てしまうと僕は揺らいでしまう。
…『好き』という気持ち。
それは暖かな光のようなもの。
それと同時に扱い方を間違えてしまうと刃物に変わり、いつかそれが人を傷つけるものに変化してしまう。
それを僕が、知っているから。
果たして僕が歩み寄っていいのだろうか、彼女たちの想いを受け止められるのか。
「…優さん?」
優馬「…」
「優さん!バス来たずらよ!」
優馬「…」
花丸「優さん!!」
優馬「うおっ!?」
花丸「こんな至近距離で声かけていたのに気付かなかったずら…?」
優馬「…ごめんね、花丸ちゃん。皆は…」
花丸「もう乗ってるずら…マルも乗ろうとしたら優さんが俯きながらずっと考えこんでいたから…」
優馬「…そ、っか。」
ちらっとバスの時刻表を見る。
そこにはまだこの後、この時間帯に2,3便はあるのが見えた。
優馬「花丸ちゃん。」
花丸「…?優さん?」
優馬「ごめんね、待たせちゃって。先に、皆で帰っていいよ。僕はなんだか疲れちゃって、一休みしてから次の便で帰るよ。」
頭はもうオーバーヒート気味、いつ爆発してもおかしくなかった。
だから、もう1人でゆっくりしたかった。
そんな感じで1人、バスの外で俯いていた時だった。
花丸「…」
優馬「え…?」
花丸ちゃんがこちらに歩み寄った。
それと同時にバスの扉が閉まってしまった。
優馬「な、「なんでって聞こうとしてる?」…花丸ちゃん。」
花丸「…もし、1人になりたい、っていうならごめんなさいずら。でも、そんな思い詰めてる優さんをオラ、オラは…見てられないずら…」
優馬「…」
花丸「…言いたくなかったら言わなくても大丈夫ずら…誰にだって言いたくないことはあるずら。」
花丸「善子ちゃんだってマルが再会した時、あんなことをしてた理由を教えてくれなかったし…ルビィちゃんもあんなに独占欲が強い子だと思わなかったずら…」
花丸「だから、だから…人って誰にも知られたくない一面がある…それはもちろん、オラにだってあるずら。」
優馬「…」
花丸「言って欲しいなんてオラは思ってない…でも、そばにいるのはオラの自由、だよね…?」
優馬「…そう、だね。」
花丸「…えへへ、やったずらぁ~…」
そう言って、花丸ちゃんはバス前のベンチに腰を掛けた。
花丸「ずっと立ってるのは疲れるから座らないずら?」
優馬「うん、座ろうか…」
花丸「…」
優馬「…」
残ったところで特にどちらかが話すということも無かった。
僕も花丸ちゃんも積極的に会話するタイプではない。
どちらかと言えば聞き手に回ることが多い僕らだ。
だから、別にこの空間が居心地悪い、ということは無い。
今、花丸ちゃんは隣で本を読んでいて、僕はスマホを弄る。
お互いあまり干渉もしないからむしろ居心地は良いかもしれない。
だからこの状態のまま、バスが来るまで続く、そう考えながら過ごしていた矢先だった。
花丸「優さん。」
優馬「…?」
本を読み終えたのか、読んでいた本を閉じ、花丸ちゃんがこちらを向いていた。
花丸「優さんは…“恋をする”ことって意味があると思うずら?」
優馬「意味?」
花丸「うん…恋って色々なものがあるずら…」
花丸「相手の事が好きっていう純愛、きっと叶うことが無いと悟ってしまうけど好きという気持ちを諦められない悲愛、好きすぎるが故に憎さに変わってしまう憎愛…色々な形の愛があって、それに準じた恋がある…けど、それってオラたちが生きていくうえで必要な物、意味があると思うずら?」
そう、彼女は悲し気な表情で、今にも消え入りそうな声で、僕に聞いた。
それはあまりにも高校生とは思えない程、儚げで、哀しみに包まれていたものだった。
優馬「…意味は、無いと思うよ。」
花丸「…そっか」
優馬「正直、“僕が”恋をすることの意味は理解できない。誰かを好きでいることはとても素敵だけどそれと同じようにとても怖いものだって学んでるから。」
花丸「“僕が”…それは…奏、さん?の話ずら?」
優馬「…そう、だね。」
多分、初恋。
あの頃は何も考えることなく、ただ彼女の傍に居たかった。
ただ、彼女に振り向いて欲しかった。
好き、と伝えたかった。
けれど、それは間違いだった。
僕みたいな
それは人とは違う。
優馬「…誰かの事を想うこと、好きになること。とても素敵で輝いて見える。けれど、それは自らが視野を狭めるのと一緒だ…だから僕はあの時…」
彼女を、殺してしまったんだ。
僕が彼女に恋をしていなければ、想いを抱いていなければ…
そんな後悔が拭いきれていない。
花丸「…優さんの言い分は分かったずら…じゃあ、なんで優さんは覚悟を決めたの…?」
優馬「それは彼女たちに「優さん自身は?」え?」
花丸「優さんの想いは、優さんの恋慕はどこにあるずら?」
優馬「…僕は関係ないよ。皆に対しての誠意として応えなくちゃならないんだから…」
花丸「…関係なくないずら!それでオラたちが喜ぶと思ってるの!?」
花丸ちゃんが出してるとは思えないくらい大きな声だった。
驚いたと同時に僕の心を大きく抉るようなそんな言葉。
優馬「実際…喜ぶ、でしょ…?」
花丸「…オラたちを甘く見ないで欲しいずら!そんな中身がない答えを出されても嬉しくない…それはオラだけじゃない!皆、同じずら!それが本当に優さんの誠意なの!?」
優馬「…」
気になる人はいる。
でも、僕のこの想いはきっと誰も傷つけない『正解』じゃない。
だから、想いは捨てなくちゃならない。
ちゃんと誰も傷つかない“理想的”で“論理的”な『正解』を出さなくちゃならないから…
優馬「…あれ?」
頬を伝う一筋の涙。
気付けば僕は泣いていた。
花丸「やっぱり、本心じゃ、ないんだね…?」
優馬「…本心さ。僕は、関係ない。皆が傷つかないように、誰も泣かないように、誰も辛い思いをしないようにするために僕は…」
止まらない。
止まれ、止まれと頭で考えていても、涙は溢れるばかり。
余りにも情けない。
年下の女の子を前にして、僕は何を泣いているんだ。
泣き止め、泣き止んでくれ。
そう、思っているのに、止まらないんだ。
花丸「…」
優馬「…っ」
すると、花丸ちゃんは僕のことをそっと、抱きしめてくれた。
花丸「…怖かったんだね。ずっと。」
優馬「…う、あ…」
花丸「…自分の気持ちで、想いで誰かを傷つけてしまうのが、ずっと怖かったんだね。」
優馬「…ご、め」
花丸「謝らなくても大丈夫ずら…オラたちは優さんがどんな答えを出してもちゃんと受け止めるし、応援する…だって、オラたちは大切な仲間、ずら!」
優馬「…あ、あぁ…うあぁぁぁぁぁ…」
今まで必死にこらえていた涙が溢れだした。
まるでダムが決壊したように、心のダムが決壊した。
そうして、僕が落ち着くまで数十分はかかった。
優馬「…ごめん、情けないところを見せちゃったね。」
花丸「全然大丈夫ずら…むしろ役得ずら!」
優馬「そ、そっか…」
花丸「…だから、もう優さんの想いのままに動いていいんだよ。」
優馬「そう、だね…」
花丸「うん…周りを気にしないで、ちゃんと自分の想いと向き合って、ね?」
優馬「…ありがとう、花丸ちゃん。」
花丸ちゃんのおかげで踏ん切りはついた。
もう、迷いはない。
気になる、なんて抽象的で、曖昧な答えは無い。
僕は…
花丸「…じゃあ、オラも踏ん切りをつけなくちゃ!」
優馬「え?」
踏ん切り?何のことだろうか、そう考えていた。
すると、花丸ちゃんは口を開いた。
花丸「…私は…ううん、国木田花丸は、空条優馬さん、貴方の事をお慕いしています。初めて出会った時から、ずっと、ずっと大好きで、愛しています。だから、付き合って、ください!」
優馬「っ!」
それは彼女からの精一杯の、覚悟を持った告白だった。
声は震えていて、手も震えていて、今にも泣きそうだけど出来る限りの笑顔での告白。
僕は、一瞬、心を奪われてしまった。
けれど、僕は
優馬「…ありがとう、花丸ちゃん。すごく、嬉しいよ。」
花丸「…っ」
優馬「でも、ごめんなさい。その気持ちには答えられない。」
花丸「…そ、っかぁ…そうずらかぁ~…」
優馬「…」
目の前の女の子は、とても良い子で、努力家で、愛らしい女の子。
告白されてすごく嬉しいし、ドキドキもする。
けれど、僕はもう決めてるんだ。
花丸「…すぅ…はぁ…理由、ききたいずら。」
優馬「…僕は花丸ちゃんの言葉に助けられた。花丸ちゃんのおかげでようやく迷いが消えた。本当にありがとう。だからこそ、僕は……に好きだ、と伝えたいってそう決めた…それだけだよ。だから、ごめん、気持ちには答えられない。」
花丸「…うん、それなら良かったずら!本当に、良かった、ずら…」
僕がそう伝えた時、花丸ちゃんは笑っていたけれど、目から涙が溢れていた。
優馬「花丸ちゃん…」
花丸「…あはは、気にしないで欲しいずら!ちゃんと優さんの力になれて、嬉しいし…」
優馬「…」
心が痛い。
けれど、この痛みから逃げちゃ駄目なんだ。
ちゃんと向き合わなければならないんだ。
花丸「…オラ、多分、諦めきれないずら…叶わないって分かっていても、多分、追い続けちゃうずら…それでも許して、くれるずら?」
優馬「…光栄だよ。」
花丸「…ありがとうずら!」
終始、笑顔だった。
涙目だけど、必死に堪えて、溢れていたけど、最低限に抑えながら、ずっと笑顔で…
とても、可愛くて、綺麗だった。
花丸「…最後に良いずら?」
優馬「…うん、僕にできることなら」
花丸「ありがとう…じゃあ、目を瞑って欲しいずら」
優馬「うん…」
そうして、目を瞑った瞬間だった。
花丸「んっ…!///」
優馬「…っ!」
僕の唇に何か柔らかいものが触れた。
それは僕よりも柔らかくて、小さい、唇のような…
優馬「…って、今…!」
花丸「…何も、言わないで、許して欲しいずら。」
そう言って、彼女は沼津の街に走ってしまった。
最後に彼女の顔をよく見れなかった。
それにちゃんと感謝を伝えきれてないな、とも思った。
だから、聞こえないかもしれないけれど…
優馬「…花丸ちゃん、ありがとう。こんな僕を、好きでいてくれて…」
いつか届いて欲しい、と思いを込めながら彼女に向けて、感謝をした。
~沼津・花丸視点~
花丸「はっ…はっ…」
息が続く限り、オラは走り続けた。
さっき起きたことが真実だ、と受け入れたくなくて、無我夢中になっていた。
止まってしまうと、オラはまた泣いてしまいそうで。
花丸「う、あぁ…あぁぁぁぁぁ…!!」
~沼津・公園~
花丸「…」
ベンチに座った。
どこまで走ったんだろう。
気付けばこんなところまで走っていた。
花丸「オラ、フラれたんだぁ…」
ようやくさっきまでの夢みたいな出来事がオラの中に落とし込まれた。
そう、オラは大好きな人に、初恋の人に、想いを伝えて、フラれた。
花丸「…分かっていたはずだったのになぁ」
泣かないって、決めたのに。
考えれば考えるだけ、悔しくて、悲しくて、涙が止まらない。
『ありがとう、花丸ちゃん。』
花丸「…バカ、バカ、バカぁ!!」
初めて会った無気力な人。
どこか不思議な雰囲気で、周りの人とは違って、でも、とても優しくて、いつも笑いかけてくれて…
一目で恋に落ちた、初恋の人。
花丸「…もう、オラの初恋は終わったんだ。」
この1年間、ずっと想い続けて、ずっとアプローチを掛けてきたけど、それももう終わった。
初恋としての1年間は、もう終わったんだ。
花丸「…でも、これが間違いだなんて思ってないよ。」
恋を教えてくれた人。
オラは、私は、花丸は、多分、いや絶対、これからも諦めきれずに貴方を追いかけちゃうと思う。
でも、もう追いかけるだけ。
決して手は出さないし、アプローチもかけない。
花丸「気持ちだけ、ずら…」
もう、分かった。
オラはエールを送る側に回らなきゃいけないんだって。
花丸「だけど、今は、今だけは…」
今日だけは恋に破れた悲しい1人の女の子として
悔しくてエールなんて送れない卑しい女の子でいさせて、ね。
いかがだったでしょうか?
青春っていいですよね。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願い致します。
現時点で貴方が考える優馬が付き合う相手は?
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