( ´ཫ`)
■
【地下バ道】
地下バ道、それはパドックで練習を終えたチームがレース会場へ向かう際に通る大きな通路、ウマ娘たちの運命の岐路である。
そんな地下バ道に、練習を終えてやって来たスペシャルウィーク。だが、光射すレース場へ続く入口の直前にて待ち構える者が一人いた。
「よう、練習終わったか?」
「貴方は……?」
「私は霧雨魔理沙、普通の魔法使いだ」
魔理沙は帽子の鍔をクイッと上げ、不敵な笑みを浮かべる。
スペはジーッと見つめた後、「あぁ!」と何かを思い出したかのようなリアクションとともに口を開いた。
「さっきしばかれてた泥棒さんですね!」
「いや違うからね? ホントいい加減にしないと魔理ちゃん怒るからね?」
「すっ、すみません……」
(スペは間違ってないわ、悪いのは全部アイツ)
「おい霊夢、憑依中でも会話は聞こえるんだが?」
(え、そうなの? ……ま、いっか)
「良いわけねぇだろ」
魔理沙と霊夢のやり取りを目の当たりにしたスペ。何となくだが、この短いやり取りから相当仲がよろしいことを察した。
「コホン、まぁそれはともかく、私はお前たちに1つ言いたいことがある」
「……何でしょうか?」
「それh(私たちチームキングは貴方達に宣戦布告しに来たのよ!!)言われちゃったよ」
「キングさん?!」
「そう、私こそがキングよ!」
(キング早い。チェンジ早い)
白黒の魔法使いの姿が一瞬で消え、キングヘイローと瞬時に入れ替わる。
「スペシャルウィークさん、私とレースを走るのは日本ダービー以来でしたわね」
「……!」
「私は短距離路線に進んだけど、今日このレース、また貴方達と同じ距離を走れてとても嬉しいわ」
「キングさん……!」
「でも勝つのは私たち、チーム"キング"よ! 絶対に負けないんだから!」
(ま、そういうことだ。せいぜい後ろから差されんよう気をつけな)
「……私も、キングさんに負けないよう精一杯頑張ります!!」
「……フッ」
キングは笑みを零すと、手を振りつつ、光射すレースの舞台へと進んで行く。
(キング、今のめっちゃカッコよかったZe)
「当然でしょう? キングだもの」
立ち振る舞いからその在り方まで完璧なキングに一切の死角はなく、いつも以上にカリスマが溢れていた。
そんなキングヘイロー達の後ろ姿を静かに見送っていた霊夢&スペシャルウィークだったが、再び彼女らの元にライバルがまた現れた。
「あら、スペちゃん?」
「あっ! グラスちゃん!!」
「私もいるデース!」
「エルちゃんも!!」
次にやって来たのはグラスワンダーとエルコンドルパサー、スペやキングと同じ黄金世代の2人であり、主にマイル〜長距離を主戦場に置く、かなり実力のあるウマ娘たちだ。
(スペ、知り合い?)
「はい! 大切なお友達兼ライバルです!」
(お、今の声、霊夢か?)
(あぁ、アンタか。竹林のボランティア)
(藤原妹紅な。……まぁ、間違ってないけど)
「略してもこたんです♡」
(グラス、私はその呼び名認めてないからな?)
ツンケンする妹紅に対し、笑顔を絶やさないグラス。相反しているようで、どこか親和性の高さが伺える、素晴らしいコンビだ。
「スペもグラスもなかなか強そうなコンビデース! しかし優勝は私たち、エルコンドルパサー&黒駒早鬼コンビが頂きマース!!」
(コンドルと天馬が手を組めば、地上と畜生界は我ら頸牙組のもの。太子様も御喜びになるだろうな!!)
(何、アンタまだ侵略考えてたの? ……スペ、少しの間だけ主導権寄越しなさい。あのバカ懲らしめるわ)
「あばばばば霊夢さんストップ! スト──ップ! 懲らしめるの待って! お願いします! 落ち着いてください!」
(……チッ、まぁいいわ。レースでボコすわ)
(上等、畜生界は実力主義の世界。私を止めたければ力ずくで止めてみな)
「なんか相方が悪者みたいになってまスが、レースの勝敗に善悪は関係ありまセーン。私はただ、勝ちに行くだけデース!」
「私たちも、エルやスペちゃんに負けないよう全力で頑張ります!」
(あぁ、勝負となっちゃ手加減無用。殺す気で来い)
「エルちゃん、グラスちゃん、他の皆さんも! 最高のレースにしましょう!」
スペの熱い気持ちにあてられた2人(4人)も、光の中へと足を踏み出す。観客席からの声援、最高のライバル、そして前人未到の超長距離タッグレース、期待と興奮に満ちた世界で2人は最高の舞台に降り立った。
「ふぅ、私たちも頑張らないと!」
「ね〜、頑張ろーねぇ〜」
「はい! がんば……ってアレ?」
キョロキョロと辺りを見回すスペ。周りには誰もいないのに、どこからか声が聞こえた。
「ここだよ〜〜♪」
背後から声がした。振り返ってみるも、誰もいない。
「えっ、えっ? どこですか?!」
「こっちこっち〜〜♪」
複数方向から声が聞こえる。けど周りに誰もいない。
「怖い! めちゃくちゃ怖いです! ホントにどこですか?!」
「ばぁ〜^」
突然スペの目の前に現れたのは黄金世代最後の一人、セイウンスカイであった。
「ぎゃああああああああああああ!!!!!!」シュン
「あ、主導権変わった」
開幕早々ドッキリをかまされ、あまりの恐怖で霊夢とチェンジするスペ。その様子にセイウンスカイは思わず笑みをこぼすも、コホンと一つ咳払いした後、霊夢の方に目を向ける。
「えーどもどもー、セイウンスカイでーす。よろしくお願いしまーす」
「……よろしく。……随分とユルいわね、緊張とかしないの?」
「そういうお姉さんこそ、レースの前にしてはかなり余裕があるように見えるけどね。場馴れしてるというか、なんというか」
「私は博麗の巫女だもの。今まで解決してきた数多くの異変に比べたら、この程度屁でもないわよ」
「さすが博麗の巫女さん、こいしちゃんの言う通り凄い人だねぇ。流石のセイちゃんも、今日ばかりはユルくいくわけにはいかなさそう」
(そんなことないよ! アナタと私の力があれば、紅白巫女相手でも楽勝だもん!)
「……やっぱ相方はさとりの妹だったわね。はぁ……厄介極まりないわ」
(ピンポンピンポーン! 正解正解大正解! 古明地こいしだよ〜!)
元気ハツラツな声が脳内に響き渡り、ため息を零す霊夢。
「こいしちゃん、チェンジします〜?」
(いや、今はスカイちゃんだからあの巫女攻撃してこないけど、私になった瞬間多分ボコボコにしてくるから、やめとく)
チラっと霊夢の顔を覗くスカイ。案の定、霊夢の顔は阿修羅のごとき形相であった。
「よく分かったわね。目を閉じた分、勘でも冴えたのかしら?」
(ほらね!)
(……えっと、あの、霊夢さん。こいしちゃんって、何者なんですか? スカイちゃんがいきなり出てきたのは?)
不思議に思うスペの問いに、霊夢は答える。
「そいつはね、妖怪なのよ」
(へぇ〜、妖怪…………妖怪ッ!?)
(そうだよ〜〜妖怪だよ〜〜!)
「ちなみにさっきの竹林ボランティアは不死人だし、アンタのお友達のマスク付けてる方の相方は畜生界のヤクザのトップよ」
(不死人!? ヤクザ!?)
「妖怪、不死人に並び立つのがヤクザって、何か腑に落ちませんねぇ〜」
「ヤクザはヤクザでも人外のヤクザだから」
「それは怖いですねぇ〜、にゃはは」
快活に笑うセイウンスカイ。妖怪を恐れる様子のない彼女の姿勢に若干の危機感を感じる霊夢であったが、直ぐに水に流す。
これは異変解決のため、一般人と妖怪が手を組むなんて普段なら絶対に許せないが、心を鬼にして堪える。
「さて、そろそろ行くとしましょうか〜」
(じゃあね〜! バイバーイ!)
セイウンスカイは霊夢とスペシャルウィークに向けて手を振った後、レース場へと向かっていった。
「私達もそろそろ行くわよ」
(はい! 霊夢さん!)
「─────ちょっと待ちなさい」
1歩足を踏み出しかけた霊夢達だが、後ろからまた別の聞き覚えのある声に呼び止められる。振り返るとそこには、紫色を基調とした不思議な服を身に纏う、金髪の女性が立っていた。
「紫、アンタも参加してたの?」
「えぇ、もちろん。放送でも名前挙がっていたでしょう?」
苦笑いを自前の扇で隠しつつ言葉を返しているのは、幻想郷の賢者"八雲紫"。この大会の企画者兼責任者であり、このタッグレースを走る選手でもある。
「ルールだけ聞いて後は寝てたから知らない」
「……ほんとこの子は、……まぁいいわ。霊夢、貴方が今回為すべき役目は分かっているわよね?」
紫の視線が霊夢に突き刺す。
「……レースを盛り上げ、
「そう、ならばよろしい」
紫は自前の扇を勢いよく閉じ、霊夢に向かって再び言葉をかける。
「とはいえレースはレース、真剣勝負である以上手を抜くつもりはありません。全力でかかってきなさい」
「望むところよ。返り討ちにしてやるわ!」
「……ちなみにアンタの相方は誰よ」
腰に手を当て、紫の顔をジッと見つめながら相方について質問する霊夢。その疑問に答えようと紫は口を開こうとしたが、言葉を発する前に相方が口を開いた。
(それはねぇ、アタシよ!)
紫のいる場所から紫とは全く違う声がした直後、紫の姿が一瞬で別の人の姿へと変化した。
「呼ばれて飛び出てぢゃぢゃぢゃーん!」
(マルゼンさん!!)
懐かしい言葉と共に現れたのは赤茶毛のウマ娘"マルゼンスキー"。独特な雰囲気を放っているが、彼女はスーパーカーに例えられるほどの速さを持つトレセン学園屈指の実力者である。
「ふふっ、憑依って面白いわね! 本当の意味で一心同体って感じで凄く新鮮だし、何より紫ちゃんとの相性が最高にバッチグーでチョベリグだわ!」
「はい?」
(そうね、ジュリ扇持ってワンレンボディコンキメてディスコで踊りだしたいくらいには最高ね)
(最高に意味が分かりません!!)
いつの間にかマルゼンの手にはジュリ扇が握られており、ノリノリで踊り出すマルゼンスキー。装備すると呪われるタイプの代物かどうかは定かではないが、とにかく意味がわからなかった。
「さぁ紫ちゃん! 私達のテンアゲノリノリパワーでレースをもっと盛り上げるわよ〜〜!」
(激ヤバ〜〜!!)
マルゼンはジュリ扇を振り回しながら、レース場へと向かっていった。
「……目も当てられないわね」
(あはは……、はい)
スペと霊夢の絆ゲージが5上がった。
やる気は下がった。
「……行きましょうか」
(…………はい)
スペシャルウィークと博麗霊夢は、レース場へと向かった。
■
「さて全員の出走準備が整い次第、レースを始めていきたいところですが……」
森近霖之助は入場口の様子を確認していると、横から"罪"の文字が入った白い袋を被った一般男性が1枚の紙を差し出す。
森近は差し出された紙を手に取り、ある程度の状況を把握すると、スタッフの罪袋さんに一礼をし、罪袋さんに紙を戻す。
「はい、全員の出走準備が完了しました! これより東方幻想杯、開幕です!」
パーパパーパパー ジャジャジャジャーン!!
パパパパー ジャジャジャジャーン!!
パァパーパーパーパーパッパー(低音)
パァパーパーパーパーパッパー (高音)
パパパパー!! (迫真)
開幕のファンファーレと同時に続々と姿を見せるウマ娘達。新衣装を身にまとい、真剣な表情でゲートに向かう彼女らに対し、会場のボルテージはヒートアップする。
「なぁ、誰が勝つと思う?」
「俺はルドルフ会長だな。7冠の皇帝は伊達じゃない」
「だが今回はタッグ戦、どんなに強かろうと相方しだいで状況は変わる」
「ウマ娘のことは分かるが、幻想少女に関してはどうしても……」
幻想少女という未知の領域に頭を悩ますトレーナー達。そこに一人、男が訪れる。
「隣、よろしいか?」
「あっ、貴方は?」
「我は八雲紫ファンクラブ会のメンバー、人呼んで"イッチ"だ。よろしくな」
罪と書かれた袋を被った上半身裸の男、イッチが得意げに名を語る。
Tトレ「俺はTトレーナー、こっちはSトレーナーだ」
Sトレ「よろしく頼む」
イッチ「こちらこそよろしくで御座る」
Tトレ「早速だがイッチ、キミに聞きたいことがある」
イッチ「何で御座るか?」
Tトレ「キミはこのレースで勝つのは誰だと思う?」
イッチ「へカーティア・ラピスラズリ」
Sトレ「即答かよ!」
Tトレ「へカーティア……というのはアレか、ゴールドシップとタッグを組んでいる人だよな?」
イッチ「そうだ。彼女こそが地球、異界、月に存在する全ての地獄を司る地獄の女神、へカーティア・ラピスラズリだ」
Sトレ「強そう(小並感)」
イッチ「ちなみにあだ名は変Tだ」
Sトレ「弱そう(小並感)」
イッチ「侮るなかれ。彼女は不毛であった東方Project最強議論を一瞬のうちにして終わらせた最強不滅の女神、舐めてると痛い目を見るぞ」
Tトレ「……ゴルシもやる気を出せば最強クラスのウマ娘、そして最強クラスの変Tが手を組んだら勝利は確実か……?」
イッチ「いや、そうとは限らない」
Tトレ「何故だ?」
イッチ「これがただのレースだったら、そのチームは最強だったかもしれん。だが今回はただのレースではない」
イッチ「特殊ルールと弾幕ごっこを絡めた総合競技、この手の戦いで最も突出しているのは我らが主人公、博麗霊夢だ」
Tトレ「博麗霊夢……!」
イッチ「彼女の弾幕ごっこの才能は天から与えられし祝福、そして1度発動させてしまえば誰であろうと触れることさえできない究極のラストワード、"夢想天生"が彼女にはある!!」
Sトレ「"夢想天生"……って、それ北斗の……」
イッチ「はいシャァアァアァアラアァァァァップ!! 次変なこと言ったらユルシマセェェン!!」
Sトレ「……はい」
イッチ「他にもフィジカルトップクラスの鬼の四天王達、守谷神社の二柱、速度なら天狗に劣らない勁牙組組長、フィジカルもスピードも優れた吸血鬼のスカーレット姉妹、我らが主である紫様など、強者ぞろい……」
イッチ「正直、誰が勝ってもおかしくない」
Tトレ「……そうか」
イッチ「ちなみにウマ娘の方だと誰が有力候補なんだ?」
Tトレ「俺からはシンボリルドルフ会長が1番、と言わせてもらう」
イッチ「ほぅ、その理由は?」
Tトレ「彼女はトゥインクル・シリーズ初の7冠を達成した最強のウマ娘の一人。あまりの強さから"皇帝"と畏れられ、"レースに絶対は無いが、彼女には絶対がある"と言われるほどの実力者」
Sトレ「皐月賞、日本ダービー、菊花賞のクラシック三冠を無敗で制覇したウマ娘は彼女だけ。まさに唯一抜きん出て並ぶ者なし!」
Tトレ「……本当はあと2人いるんだが」
Sトレ「え?」
Tトレ「いや、ここでは関係無い話だ。さて、そんな彼女だが他にも強いウマ娘は存在する」
イッチ「ご教授願いたい……!」
Tトレ「まずはあまりの速さから"スーパーカー"の異名を冠されたウマ娘、マルゼンスキー」
Sトレ「全戦全勝、2着につけた合計着差は61馬身差、その圧倒的な強さから、同じレースに出走する予定だった他のウマ娘が続々と辞退するという事案が発生するほどの化け物だ」
イッチ「……強過ぎじゃね?」
Tトレ「俺もそう思う」
イッチ「このレース、マルゼンスキーの一人勝ちでは?」
Sトレ「いや、そうとも限らない」
イッチ「……デジャブを感じる」
Tトレ「マルゼンスキーの主戦場は主に短距離〜マイル、中距離もまぁまぁ行けるが、長距離は未知の領域だ」
Sトレ「一応、長距離の有マ記念に出走する予定はあったんだけど、足に怪我を負って出られなかったんだよね」
イッチ「なんか、歴史の深みを感じる……!」
Tトレ「だろ?」
Tトレ「他にもルドルフ会長と同じ三冠ウマ娘の怪物"ナリタブライアン"や、ヨーロッパ最高峰の国際レース"凱旋門賞"で2位を勝ち取ったエルコンドルパサー、グランプリ3連覇を果たしたグラスワンダー、逃げウマ娘最強と名高い異次元の逃亡者サイレンススズカ、天皇賞・秋で伝説の名勝負を繰り広げたウオッカとダイワスカーレット、そして凱旋門賞を優勝したモン……ブロワイエをジャパンカップで破った我らが総大将スペシャルウィークなど、レジェンドクラスのウマ娘達が沢山いるぜ」
イッチ「……あの、1つ聞いていいか?」
Tトレ「何だ?」
イッチ「……歴史が長い割に、彼女たちがほぼ同年代に見えるのは気のせ」
Tトレ「シャアァアァアァアラアァァァァップッ!! 次変なこと言ったら指の骨全部折りマース」
イッチ「……はい」
Sトレ「……お、全員ゲートに入ったぞ!」
Sトレの声に反応し、皆が前のめりに顔を出す中、放送室も実況を開始する。
霖之助「ウマ娘と幻想少女が手を繋ぐ夢のタッグレース・東方幻想杯! あなたの夢、わたしの夢は叶うのか! 改めまして実況は私、森近霖之助と」
秋川「トレセン学園理事長、秋川やよいがお送りするのであるッ!」
霖之助「3番人気は同票で2つのチーム、サイレンススズカ&射命丸文チームとスペシャルウィーク&博麗霊夢チーム!」
秋川「健闘を祈るッ!」
カメラ内蔵の陰陽玉(遠隔操作可能)がサイレンススズカとスペシャルウィークの姿を映す。陰陽玉から得た映像は会場に設置されている全てのモニターと連携しており、どの観客席からもレースの様子を映すことが出来る。
森近「2番人気は、ゴールドシップ&へカーティア・ラピスラズリ!」
秋川「狂乱ッ! 器物損壊は程々にな!」
森近「1番人気はやはりこのチーム、シンボリルドルフ&茨木華扇!」
秋川「健闘を祈る!」
森近「ゲートイン完了、出走の準備が整いました!」
静まり返るレース場内、先程まで熱狂的に声を上げていた観衆も息を飲んでレースを見守っている。
誰もが夢を見た。過去に多くの戦績を修めたウマ娘達がしのぎを削って競い合う最高の舞台を。
誰もが夢を見た。数多の種族が跋扈するこの幻想郷で、最強を証明する舞台を。
誰もが夢を見た。ウマ娘と幻想少女が手を取り合い、共に勝利を目指す、そんな世界を。
君の夢は、もうすぐ叶う。
パァンッ!!
森近「スタートですッ!!!」
「月『ルナティックインパクト』」
ドゴォォォンッ!!
「「「んんんんんんんん!?!?!?!?」」」
ゲートが開かれた、それは見えていた。だが次の瞬間、巨大な天体がゲートの真上に出現し、瞬く間にゲートを破壊した。何を言ってるか分からねーと思うが、司会者も何が起きたのか分からなかった。
秋川「ゲートが爆発した!!」
森近「あーもう初手からカオスですね。お手上げです」
Sトレ「いや実況しろよ」
??? 「さぁ、いくわよん!!」
吹き荒れる土煙とターフの残骸から抜け出したのは、紅い天体を頭上に乗せた地獄の女神へカーティア・ラピスラズリ。そして憑依交代によってへカーティアからゴールドシップへと姿が変化し、誰よりも先に先頭へと躍り出た。
ゴルシ「んしゃあ!! 一番乗りィ!!!」
(ごめんねぇ、優勝したら純孤が焼肉奢ってくれるって約束してくれたの。だから負けるわけにはいかないのよん!)
クラピ「行けぇえ!! ご主人──ッ!! 」
とんでもないスタートダッシュをかましたへカーティアと、優れた脚力で誰よりも早く先頭を駆け抜けるゴルシ。完全にレースは彼女達のペースに巻き込まれた。
本来ゴルシは"追い込み"と呼ばれる、後方で脚を溜めてラストスパートで一気に追い抜く作戦を得意とするウマ娘。だが何をとち狂ったのか逃げ適正Gであるはずの彼女が"逃げ"を選択し、先頭を走っている。かなり異例の事態だ。
秋川「ゴールドシップ速い!」
森近「ゴールドシップ先頭! ゴールドシップ先頭!」
ワアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!
湧き上がる会場、普段は見られない変則的な走りに会場のボルテージは初っ端からヒートアップした!!
だが当の本人であるゴールドシップは珍しく冷静な表情をしていたッ!!
ゴルシ「·········いや、ちょっと待てよ?」
(どうしたのゴルシちゃん?)
ゴルシ「アタシ、脚質"逃げ"じゃねぇ……!!」
(え、今さら?)
今さらである。
ゴルシ「このままじゃ私が長年の研究の末に到達した黄金長方形を象る究極の走法"宇真憑依"と、黄金長方形から得た黄金の回転エネルギーを増幅させる走法"宇真脱地"がベストマッチ!! しねぇ……!」
(ゴルシちゃん?)
ゴルシ「てなわけでぇぇぇぇ! んんんんんんんチェンジ☆」
(ゴルシちゃん?!?)
推定時速約50kmあたりで突然のチェンジ宣言し、体が入れ替わるゴルシとへカーティア。そして彼女らは思い知ることとなる。走行中に何の構えもなくチェンジすることの危険性を……!
へカT「あっ」
体が入れ替わったへカーティアは途中までゴルシが受けていた空気抵抗の壁に押し返され、後方へ大きく吹き飛ばされた!!!
へカT「あばばばばばばばばは!!!!」
が、彼女は奇声を発しながら空中で回転しつつも、驚異的な肉体コントロールによって姿勢を制御し、着地まで華麗に決めた。
へカT「·····ふぅ、危なかった。もう少しで実家に帰るとこだったわ!」
とっさに出た地獄ジョークで内心笑いを堪えるのに精一杯なへカーティアだったが、一応女神なのでそれなりの威厳を保つべくキリッとした表情へと戻る。
へカT「さて、走行中の交代はそれなりのリスクがあることが証明されたところで、一気に引き離すわよん!!」
と、女神の身体能力をいかんなく発揮しようとしたが·····
「「「こんの変なTシャツヤロ──ッ!!」」」
へカT「あ」
既に爆発したゲートから脱出したウマ娘達が減速したへカーティアに追いつき、さらに全員チェンジした上でへカーティアに向けて通常弾幕発射の準備を整えていたッ!!
「「「
To be continued.
【ファルコの♡ ドキドキッ! お返事コーナー!】
ファルコ「みんなー〜ー!! 元気ーーーー!?」
ファルコ「現役最強ウマドル! スマートファルコンだよっ!」
ファルコ「ファルコが逃げたら〜〜?」
観客「「追うしかなぁぁぁぁぁぁい!!!」」
ファルコ「みんなありがと〜〜〜!!」
観客「「わぁあぁああぁああぁあああああ!!!」」
ファルコ「このコーナーでは! 皆さんから頂いたお便りにファルコがお返事するコーナーでーす!」
ファルコ「さっそくお便りが届いているので読んじゃいますね! ペンネーム『ファン第1号』さんからのお便りです!」
ファルコ「最近、私の担当ウマ娘の様子がおかしいです。放課後校舎裏に呼び出しては赤面してどっか行ったり、バレンタインの時は"本命チョコ"に見せかけた"ありがとチョコ"を渡したり、いつの間にか彼女のファン数が3兆人を超えたりと手に負えません! 私はいったいどうすればいいのでしょうか? ··········だそうですっ♡」
ファルコ「ん〜〜〜〜っとねぇ〜〜〜!」
ポチポチシュッシュッ.......
プルルルル.....プルルルルル......ガチャ
ファルコ「もしもしトレーナーさん?」
ファルコ「いま、どこ?」
END