ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る 作:竜羽
何とか12月中に更新できました。
いつもよりも短いですが、キリがいいので投稿します。
戦いが始まる前。ハジメは清水の相手をするのは自分だと決め、みんなに知らせていた。
何せ、一番目的がわからないからだ。
檜山はまだわかりやすい。アイズモン、今は進化したオロチモンを従えているとはいえ、言動と雰囲気から、自分の力を誇示したいのが見え見えだった。
だが、清水からは目的を察せられる気配がまるでしなかった。もちろん、脅されていやいや従っている可能性もあるが、ハジメは何となくだが、清水には何か秘めた目的があるのではないかと感じていた。
だから、多数のアーティファクトを抱えている自分が相手をしたほうが、臨機応変に対処できるのではないかと考えた。
オロチモンをはじめとしたデジモン達の相手を雫達とデジモン達に、檜山の相手を香織とユエに任せて、ハジメは清水の手の中から愛子を救い出し、彼の真意を問いかけていた。
「──世界最強のデジモンテイマーになる。それで、デジモンを馬鹿にした世界に復讐することだ」
そうして返ってきた清水の言葉に、ハジメは目を見張る。
ハジメの動揺を感じたのか、笑みを浮かべながら、清水は話を続ける。
「覚えてないよなあ、南雲。小学生のとき、俺もお前と同じクラスだったんだぜ?」
「何?」
まったく覚えのない事実に、ハジメの動揺は大きくなる。
わざわざ世界最強のデジモンテイマーになると言った後なのだ。小学生の時の同じクラスとは、ハジメがデジモンテイマーになった小学5年生のころを指しており、あのクラスに清水幸利も在籍していたという意味だろう。
ハジメと同級生だったということは、つまり清水はずっと前からハジメがデジモンテイマーでパートナーデジモンがいたことを知っていたのだ。
「最初は松田。そのあとにお前。いつの間にか塩田と北川。ああ、別クラスの李(ジェンリャのこと)もだったか。で、夏休みの後にデジタルワールドに。ずっと羨ましかった」
その言葉はハジメにはとても身に覚えがあった。
ガブモンのデジタマを見つけたあの夜、タカトとメガログラウモンの姿がとても羨ましかった。だからこそ、
「「デジモンテイマーになりたかった」」
清水とハジメの口から全く同じ言葉が出てきた。
二人は全く同じ思いを抱いていたのだ。しかし、そのあとに待ち受けていた運命は正反対だった。
「そして、お前はデジモンテイマーになれた。だが、俺はなれなかった」
それが今の二人の立ち位置を分けた。
「勘違いしないでくれ。別にお前たちに嫉妬しているわけじゃない。羨ましかっただけだし、暴れるデジモンとか、デ・リーパーとかを倒してくれたんだから、むしろ感謝している。むしろ、お前たちのことはいつか俺にもパートナーデジモンができるかもっていう希望にも思えたんだ。でも──―」
そこで清水は言葉を切ると、夜空を見上げた。そこには一つの星もない暗黒が広がっている。
「デジモンは姿を消した」
「それは──―」
ハジメは言葉に詰まった。
デジモンがいなくなったのは、デ・リーパーとの戦いでリアルワールドとデジタルワールドを隔てる次元の壁を強固にしてしまったからだ。ハジメ達テイマーズがそのことを知ったのは、戦いが終わった直後だった。だから、ハジメ達に責任なんてない。それでも、責任を感じてしまう。
「それだけならまだよかった。急に現れたんだ。またデジモンが出てくるかもしれないからな。でも、俺たちの世界の連中は……ッ」
そこで清水の顔が怒りに歪む。
「デ・リーパー事件を全部デジモンのせいみたいに言いやがった!! あれのどこがデジモンだよ!!! 全然違うだろうが!!!」
闇夜に響く清水の慟哭。それは離れたところで戦っていや香織達だけでなく、結界で守られていた人々まで届いた。
「いくら俺が違うと言っても信じようとしない!! 親や学校の先生みたいな大人だけじゃねえ!! 一緒にデジモンカードで遊んだ奴らも、だんだんそれを信じ始めて、カードを捨てていきやがった!!!」
清水が語るその光景は、ハジメにも身に覚えのあるものだった。
「それだけならまだ我慢できたさ。所詮他人は他人だ。違う考え方しかできねえ。俺がデジモンを信じていればよかった。お前達っていう、デジモンテイマーがいるって知っていたことにも、結構支えてもらった」
荒げていた声を落ち着かせるために、はぁはぁと息を整えながら清水がそう話す。
顔を俯かせて、自分が好きだったデジモンを否定する周囲の声から、耐えていた日々を思いながら。
「でもな、俺からデジモンを取り上げるのは違うだろ?」
そう言って、顔を上げた清水は懐から、上下に真っ二つに破れたデジモンカードを取り出した。
「俺の宝物のカードだったんだ。大事にしていたんだ。なのに、無理やり取り上げて、取り返そうとしたら、目の前で破り捨てたんだ。俺の親と兄貴は!!!!!」
怒りと悲しみがない交ぜになった叫びは、清水の無念をヒシヒシと伝えてくる。
「たかがカード。でも、人が大切にしているものを無理やり奪っていいはずがないだろ! 好きなものを否定していいはずがないだろ!! 捨てて、燃やしていいはずがないだろ!?」
そこまで言うと清水は破れたカードを大切に懐にしまうと、右手に持った杖をハジメたちに向ける。
「世界がデジモンを否定するっていうなら、俺もあいつらを否定してやる。そんなにデジモンを悪にしたいなら、俺がその願いを叶えてやる。世界最強のデジモンテイマーになって、デジモンの力を思い知らせてやる!! そして作るんだ!! デジモンとデジモンテイマーだけの世界を!! デジモンを否定する奴ら何て消してやるよ!!!」
それが清水の目的──夢だった。
それを聞いたハジメは、ドンナーの銃口を下ろし、自分のデジヴァイスを取り出して、視線を落とす。
清水が零した思いは、怒りと悲しみの叫びは、とても身に覚えのあるものだった。
デ・リーパー事件の後、ガブモンと別れた失意の中で、ハジメも似たような光景を目にし、似たような考えを抱いたことがあった。
清水と違ったのは、同じ思いを抱えるテイマーズの皆がいたことと、家族の理解があったこと。
そして香織と雫という、部外者の立場でありながらも、理解を示してくれる存在ができたからだった。
どれか一つでも欠けていたら、ハジメも清水と同じ夢を抱いたかもしれなかった。
(でも、それは──)
「それは、間違った未来だ。人間だけじゃない。大勢のデジモンも傷つく、そんな未来じゃないか!」
「間違っているかどうかを決めるのはお前じゃない。今のままじゃ何も変わらない。なら犠牲が出ようと俺が、動くんだよ!」
似たようで、全く違う道を志す二人の意見は、決して交わらない。
清水は杖を掲げ、支配下に置いている魔物を呼び寄せる。
まだまだ残っていたオオカミ型の魔物が、森の中から現れる。
それを見たハジメはドンナーを構え、クロスビッドで、愛子とピッドモンを守るシールドを展開させる。
「行け!」
「クソッ」
再び魔物をけしかけてくる清水に対し、ハジメは険しい顔で悪態をつきながらドンナーの銃口を向けた。
■■■
巨大な体とそこから伸びる八つの蛇頭。
まるで日本神話の怪物、八岐大蛇のような姿をしたデジモン、オロチモンX抗体。
それに挑むのは完全体に進化したハジメ達のパートナーデジモンの四体と、黒竜化した竜人族のティオ・クラルス。さらにティオの背中の上に乗ったシアが、サポートに回る。
「『
フレアモンが咆哮とともに火炎の衝撃波を放ち、オロチモンの首の一つへ直撃させる。
浄化力も込められた一撃は、オロチモンの首の一つを消し飛ばす。
だが、消し飛ばされたはずの首は、データの粒子が集まり、すぐに元の首を形作り、元通りに再生してしまう。
「元に戻っただと?」
その光景にフレアモンは驚愕する。
「『カイザーネイル』!!」
「『ホーリーアロー』!!」
「『ダークアロー』!!」
他のデジモン達も必殺技でオロチモンへ攻撃を放ち、時に首を破壊する。
しかし、その傷もすぐに再生してしまった。
「俺達の力を合わせても倒しきれないのか」
「聖なる力での浄化も効かないなんて」
オロチモンから放たれる力は明らかに邪悪なもの。聖なる力を持つエンジェウーモンの攻撃なら、絶大な効果を発揮するはずだが、オロチモンは何事もなかったかのように傷を再生させる。
オロチモンの再生能力に攻めあぐねているワーガルルモン達に、オロチモンは八つの首の口を大きく開き、
「みんな逃げてぇ!!!」
シアの叫び声にワーガルルモン達は咄嗟にその場を離れる。次の瞬間、
──『ヒルコブレス』
オロチモンは全ての口から毒の商機をまとったブレスを吐き出してきた。
間一髪、ブレスの範囲から逃れることができたが、ブレスが当たった地点から周囲一帯が瘴気に侵されていく。地面は黒く変色し、草木は急速に枯れて朽ちていく。
「ああッ」
〝なんと恐ろしい攻撃じゃ〟
固有魔法〝未来視〟でオロチモンの攻撃を視ていたシアは、『ヒルコブレス』の恐ろしい効果に、恐怖と怯えの入り混じった声を出す。
自然の中で育った彼女には、瘴気をまき散らすオロチモンの恐ろしさが強く感じられた。
それは竜人族としての優れた知覚能力を持つティオも同様だった。だが、ティオは恐怖を感じるだけでなく、この恐ろしいオロチモンを何としても倒さなければという決意を固める。
それはその手にある炎の盾の頼もしさがあるからか、彼女が育んできた誇りと信念からか。
〝しっかりするのじゃシア! これ以上あの攻撃をさせてはならん。この森、いや北山脈の自然全てが枯れ落ちてしまうぞ!! 〟
「はっ、そ、そうですぅ! フレアモン! あの攻撃を撃たせちゃダメです!」
ティオの発破で気を取り戻したシアはフレアモンに声をかける。
「わかった。……けど、あいつの首が多すぎる!!」
フレアモンは首を一つ破壊するが、すぐに再生してしまう。しかも、八つある首の全てには、デジモン達では対応できない。
ティオも盾の力で高めたブレスで対抗するが、追いつかない。
「『カイザーネイル』!! せめてもう少し、味方がいれば」
攻撃しながらワーガルルモンがそう零したその時、
「「『グランドシスタークルス』!!!」」
白と黒の二つの影が、オロチモンにとびかかった。
縦横無尽に駆ける二つの影。白い影がオロチモンの体表を切り裂き、黒い影から銃弾が乱れ飛ぶ。
突然の攻撃にオロチモンは頭と同じく八つある尻尾の先を鋭い刃──『アメノムラクモ』にして、周りを滅多矢鱈に斬り裂く。
刃から逃げるために二つの影は距離を取ったことで、その正体がわかった。
「お前たちは!」
「覚醒! シスタモンブランです」
「覚醒! シスタモンノワールよ」
ウィンプルを頭部に被ることで、胸にホーリースティグマを出現させ、力を覚醒させたシスタモン姉妹だった。
「俺もいるぜぇ!!」
さらに愛銃のオベリスクを乱射しながらマミーモンも現れた。
「あっちの人間どもは嬢ちゃんたちに任せろとよ!」
「私たちはこのデジモンを抑えるのが役割です!」
「こいつを操っているコスプレ野郎をぶちのめせば止まるかもしれないってさ~」
香織達からの伝言が三体によって知らされる。
「ユエ達がそう言うなら、大丈夫」
「そうね。ブレスを牽制するだけなら、何とかなりそう」
クレシェモンとエンジェウーモンは、別の場所で戦う自分たちのテイマーを信じて、気合を入れなおした。
オロチモンとの戦いは激しさを増していった。
■■■
そして最後の戦い、香織・ユエとデジモンカイザー檜山の戦い。
そこでは、檜山によって背中に短剣を突き立てられた香織の姿があった。
「くひひっ、南雲なんかの女になるからだ。安心しろよ、このまま俺の城に連れて行って一生傍においてやるよ」
香織の背中に短剣を押し込みながら嗤う檜山。その顔には、隠しきれない情欲がにじみ出ていた。檜山が香織に突き立てている短剣は、香織の急所には当たっていない。しかし、刺された相手は動きを封じる効果を持つアーティファクトだった。
戦いの隙をついて檜山は香織の背後に回り、彼女の背中に突き立てたのだ。
「……」
その様子をユエはジト目で見ていた。
「なんだ、お前。その目は。状況解ってんのかよ。にしても、助けにも入らないなんて薄情だなおい」
ユエのことを嘲る檜山だが、彼女はジト目をやめない。調子に乗っている檜山は気が付かなかった。
ユエがジト目を向けていたのは、檜山ではなかったことに。
「……いつまで遊んでいるの。カオリ」
「はぁ? 何言ってんだおまッ」
檜山は最後まで言えなかった。突然、顔を掌で掴まれたからだ。
掴んだのは、短剣に刺されて動けなくなっていたはずの、香織だった。
「ちょっと確かめたかったんだよ。腕のこととか、色々ね!」
香織は腕を大きく振りかぶり、そのまま檜山を持ち上げて、地面に叩きつけた。
「ぶへっ!? な、なんべ」
「短剣なら、服の下に来ていた防刃インナーが防いでくれたよ。ハジメ君が用意してくれたね」
短剣が刺さっていても香織が動けたことに、檜山が目を白黒させるので、淡々と香織は答える。
「それよりもさ、気が付いている?」
香織は檜山の顔を掴んだまま、問いただす。
「自分があのデジモン、オロチモンに操られているってこと」
〇デジモン紹介
今回はお休みです。
年内に更新したいですが、今年は早めに帰省する予定なので難しいかもしれません。
もうすぐクリスマス。そしてすぐに年の瀬。今年もいろいろありましたが、最後まで元気に過ごしましょう。
PS
最近、カンピオーネのOP聞いていて、ハジメが召喚前にカンピオーネになっていた二次創作とかないかなって空想しています。
ハジメが権能を得るのなら、効果は単純だけど、応用の幅がとんでもない能力とかになりそうだと思います。