ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る   作:竜羽

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感想・評価・お気に入り登録ありがとうございます。
遅れましたが、あけましておめでとうございます。
ギリギリ二月に投稿できました。
遅くなり申し訳ございません。オリジナル展開ってやっぱり書くのに時間がかかってしまいます。




31話 魔竜決戦 少女達の奮闘

 もともと、檜山がどうやってオロチモンを操っているのか、ハジメ達は疑問に思っていた。

 ハジメ達と同じようにデジヴァイスを使っている様子はないし、清水が闇魔法で魔法を操っているような気配もなかった。

 だから、ハジメ達が知らない方法で操っているのかと思っていた。

 直接相対したとき、香織はその方法を何となく理解できた。

 

「エンジェウーモンとシンクロできるようになってから、何となく邪悪な力がわかるようになったんだ」

 

 檜山を油断なく押さえつけながら、香織は説明していく。

 ライセン大迷宮でシンクロしてから、ハジメ達はパートナーデジモンの力や能力の一部を、自分自身の力として扱えるようになった。

 ハジメなら、ガルルモンの俊敏性。

 ユエなら、クレシェモンの氷と闇。

 シアなら、フレアモンの炎。

 そして、香織はエンジェウーモンの聖なる力。

 ウルの町に来てから相対したメフィスモンは、聖なる力とは対極に位置する邪悪な暗黒の存在。メフィスモンとの邂逅で、香織は邪悪な力に敏感になっていた。

 その感覚が、檜山の今の状態を教えてくれた。

 

「その感覚を頼りによく見てみれば、その右腕がオロチモンに繋がっているのがわかった。でも、その繋がりはあなたにオロチモンの力が流れ込んでいくだけ。私にはあなたはオロチモンの端末にされているようにしか感じられなかった」

「は、はぁ?! 俺が端末? 何言ってんだ、あいつは俺の下僕なんだぞ!?」

「ならどうやってあのオロチモンを操っているの?」

「この右腕に念じれば、あいつは俺の思い通りなんだよ!!」

 

 そう言って檜山は右腕をふるう。

 その動きが読めていた香織は檜山の頭から手を放し、距離を取る。

 油断なく武器を構えながら、香織は檜山に事実を突きつける。

 

「じゃあ、ここにオロチモンを呼んでみて。そうすれば私達なんて簡単に倒せるでしょ?」

 

 ──まあ、無理だけどね

 

 最後に香織は彼女らしくない、挑発的な物言いを付け加えた。

 それを聞いた檜山は一瞬で激昂した。

 

「上等だ!!! お前もそこの金髪女もぶっ倒して、俺の性奴隷にしてやるよ!!」

 

 下卑た笑みを浮かべながら、右腕を掲げる檜山。

 腕の形に纏まっていた蛇達が蠢き、口を開けてシャーシャーという気味の悪い声を上げた。

 

「ひゃははは!!! すぐにオロチモンが来てお前ら全員を叩きのめすぜ!!」

 

 勝ち誇る檜山だったが、オロチモンがこちらに来る気配はなかった。

 すぐに嗤いを止めて怪訝な顔をする檜山。すると、蛇達が突然解けてしまった。

 

「は、はぁあああ!?!?」

 

 驚く檜山をよそに、蛇達は檜山の意思に関係なく動き、なんと檜山の体に絡みついてきた。

 

「な、なんなんだこれはぁ!?!?」

 

 予想外の事態に檜山は戸惑う。

 蛇達は檜山の様子にかまわず、絡みついていく。

 頭、首、胴体へと蛇は伸びていき、口を大きく開き、牙を突き立てる。

 

「ぎゃひぃいいいいい!?!」

 

 自分の手足だと思っていた無数の蛇に噛みつかれ、半狂乱になる檜山。

 それが決定的な隙になった。

 

「今。カオリ!」

「聖なる光よ、《セイントエアー》!!」

 

 香織は魔力を練り上げて、エンジェウーモンの聖なる力を解き放った。

 あらゆる邪悪な力を弱らせる、清浄なる空気。

 それは味方には活力を与え、暗黒の力を鎮静化させる。

 エンジェウーモンよりは効果は落ちるだろうが、檜山の腕の蛇程度ならたちまち力を失う。

 そうして弱ったところに、

 

「〝風刃〟」

 

 ユエが風の刃を無数に飛ばし、蛇達の頭と右腕の根本をまとめて切り落とした。

 切り落とされた蛇達は力を失い、闇となって溶けて消えていった。

 

「ひぃ、お、俺の腕がぁあ!? まだぁ!!?」

 

 二度目の腕の切断にさらに取り乱す檜山。そこに香織は愛銃のリヒトの銃口を向けて、発砲した。

 

「ッ!?」

 

 放たれたゴム弾が檜山の側頭部に当たり、意識を奪った。

 

「どうする?」

「縛って騎士団に引き渡すよ。一応、元神の使徒だし、愛子先生とか光輝君が庇うと思うから」

「……そう」

 

 宝物庫からロープと手錠と口枷を取り出して檜山を拘束する香織の横で、ユエは蛇が消えた地点へ目を向ける。

 

 結局、あの蛇達はオロチモンを操っていると檜山に思わせるためのカモフラージュであり、檜山を操る道具だったのだろうか。

 それにしては、どうにも手が込んでいるように思えた。

 適当な魔道とかを渡しておけばそれっぽく見えるし、そのほうが簡単だ。

 メフィスモンが狡猾な策略を張り巡らせる策略家だとハジメから聞いていたので、まだ何か策があるのではないかと思った。

 それは香織も同じだったので、騎士団に拘束した檜山を引き渡した後、再び戦いに赴くのだった。

 

 なお、頭に絡みついていた蛇が切り落とされた際に、檜山の頭髪も切断されてしまった。

 奇しくも、どこぞの勇者と同じ、頭のてっぺんの髪がつるりと光るトンスラ頭になったのだった。

 

 

 

 

 

 ドタバタしていたせいで、蛇の一匹が、夜の闇に紛れてその場を離れたことに、誰も気が付かなかった。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 ハジメと清水の戦い。愛子はピッドモンの後ろから、自分の生徒同士が戦うという状況に心を痛めながら、せめて教師として目を離すわけにはいかないと見守る。

 

「行け!」

 

 魔物をけしかける清水。

 その動きはさっきまでのような、闇雲に襲い掛かってくるようなものではなかった。

 それぞれの攻撃のタイミングを時間差でずらした波状攻撃を行ったり、死角に回り込んで注意を逸らそうとしたり、高い連携を取っている。

 魔物の本能に任せた単調な攻撃ではなく、清水が司令塔となって指示を出すことで、戦闘力が跳ね上がった。

 

 それに対してハジメは、手数を増やすためにもう一丁の銃であるシュラークを取り出して応戦する。

 一番身軽なオオカミ型の魔物でも、正確無比な精度で放たれる銃弾を躱すことはできず、次々に倒れていく。

 だが、どこに隠れていたのかと思ってしまうほど、魔物が際限なく現れる。

 間違いなく清水の最後の手勢。この戦いを制するために、本気で臨んでいた。

 

 それでも、ハジメには届かない。

 

「〝纏雷〟」

 

 バリバリッとハジメの体から電撃が放たれる。ハジメに噛みつこうとしたオオカミ型の魔物が、ハジメの放電に巻き込まれ、感電して地面に転がる。

 感電した魔物に目もくれず、ハジメはさらに空間を蹴り駆け抜ける技能〝天歩〟を発動。三次元的な動きで、魔物の連携を超える動きを行う。

 

「空跳ぶとかありかよ!?」

 

 ハジメの三次元的な動きに、ついに清水の余裕が崩れる。

 対応するには飛べる手駒をけしかけるしかないが、すでにプテラノモンと飛行型の魔物は全滅している。

 これまでの一連の襲撃で、魔物の数はかなり減っており、ついに息切れし始めたのだ。

 

「クソッ。行けキメラ共!!」

 

 ここで清水はカトレアたちが使役していた魔物、キメラをけしかけてきた。気配を消していた二体のキメラがハジメの背後に現れて、鋭い爪を振り下ろしてきた。

 主であるカトレアとミハイルがいなくなった魔物達だが、清水は密かに闇魔法による洗脳を施していた。魔人族達が、意に反する行動をした時のための保険だったが、思わぬ使い道になった。

 

「南雲君!」

 

 愛子が焦燥に満ちた警告を発する声が聞こえる。しかし、ハジメは左腕の義手でキメラの腕を逆に掴むと、苦も無く振り回す。

 

 ハジメからすれば、例え動いていなくても、風の流れ、空気や地面の震動、視線、殺意、魔力の流れ、体温などがまるで隠蔽できていないキメラは、隠れていないに等しかった。

 

 そのままハジメはキメラをもう一体のキメラや他の魔物に振り下ろし、まるでモグラたたきのように叩き潰していく。

 掴まれたキメラは逃げ出そうともがくが、義手はビクともしない。キメラはハジメの打撃武器として振り回され、最後には頭から地面に叩きつけられ、動かなくなった。

 ハジメの義手は頑丈なだけでなく、魔力を注ぐことで〝金剛〟と〝剛力〟を主とした、強力な効果が発動するアーティファクトだ。キメラの力程度では逃げ出すことなんてできない。

 とっておきの隠し玉をつぶされた清水が次の手を打とうとするが、それよりも先に〝天歩〟の派生技能[+縮地]でハジメが接近。清水の持つ杖を蹴り上げる。

 

「ぐあっ!?」

 

 杖はハジメの蹴りに耐えられず真っ二つに折れてしまう。清水も蹴りの勢いに耐えられず、地面に倒れる。

 何とか起き上がろうとするが、眉間にドンナーの銃口が突きつけられる。

 

「終わりだ清水。お前の負けだ」

「……ああ。俺の負けだな」

 

 清水はハジメの言葉にうなずく。

 

「だが、オロチモンは俺が操っているわけじゃない。俺を抑えても意味はないぜ」

「大丈夫だ。あそこには香織達がいる。あいつらは強い」

 

 微塵も動揺せずに、言い切るハジメ。そこにあるのは仲間への絶対的な信頼だった。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 オロチモンと対峙するワーガルルモン達。

 シスタモン姉妹とマミーモンが援軍に駆けつけてくれたが、オロチモンの強大な力に攻めあぐねていた。

 

「『カイザーネイル』!!!」

 

 ワーガルルモンが両手の鍵爪でオロチモンを斬り裂こうと接近する。

 しかし、尾を縦横無尽に振り回し、先端にある『アメノムラクモ』の刃で、逆に斬り裂こうとしてくる。

 

「くっ!」

 

 やむなくワーガルルモンは必殺技でオロチモンの尾を数本斬り裂き、防御する。

 だが、すぐに別の尾が振るわれ、やむなく背中のサジタリウスのブースター機能でその場を離脱する。その隙に切り落とされた尾が再生し、ダメージがなくなってしまう。

 

 他のデジモン達も各々で攻撃しているが、ワーガルルモンと同様に、オロチモンの圧倒的な手数と再生能力に攻めあぐねていた。

 

 〝このままでは勝てぬ〟

 

『ヒルコブレス』を避けながら、戦況を把握しているティオは呟く。

 彼女の言う通り、オロチモンは桁違いのスタミナを持っており、ワーガルルモン達が疲弊しているのに対し、全く力の衰えが見えない。今は拮抗しているが、やがて力尽きて、オロチモンに負けてしまう。

 

「ハジメさんに知恵を借りられればいいんですけど……」

 

 弱気になったシアがそう呟くも、清水と戦っているハジメがこちらに加勢に来る気配はない。

 シアのそんな不安が、同調しているフレアモンに伝わってしまい、一瞬の隙ができてしまった。

 

「ッ、シア?」

 

 パートナーの不安を感じ取り、思わず目を向けてしまったフレアモン。そこにオロチモンの首の一つが迫りくる。

 

「《円月蹴り》!!」

 

 間一髪、ワーガルルモンがオロチモンの首を蹴り飛ばす。デジモンの中でも一、二を争うほどと称される脚力から繰り出された蹴りにより、オロチモンの首は力を失う。

 ワーガルルモンのおかげでフレアモンは危機を脱した。

 

「大丈夫か?」

「ありがとうワーガルルモン」

「よかった。だけど、まずいな」

 

 徐々に追い込まれ、肉体的にも精神的にも負けそうだ。だけど──

 

「だけど、俺たちは負けられない。負けられないんだぁ!!!」

 

 ワーガルルモンが咆哮とともに叫ぶ。

 

「おおおおおっ! 《カイザーネイル》!! 《カウスラッガー》!!!」

 

 両腕の爪撃と背中の『サジタリウス』から射出鋭い刃が、オロチモンを切り刻む。

 その傷はすぐに再生するが、構わずワーガルルモンは怒涛の攻撃を仕掛け続ける。

 〝絶対に勝つ〟という思いを乗せた全身全霊の攻撃と、その叫びはみんなの心に勇気をもたらす。

 

「そうです。負けられないんです!」

 〝ああ。そうじゃな〟

 

 さっきまで心折れかけていたシアとティオは、気を持ち直した。

 

「そうですね。負けられません。ね、お姉ちゃん!」

「あたしら来たばっかだし、このまま負けたらいいとこなしじゃん」

 

 シスタモンブランは抱えた槍を構え直し、オロチモンに突撃する。

 妹の攻撃を、姉のシスタモンノワールが銃を乱射しながら援護する。

 

「……まるで、あいつらみたいだ」

 

 その姿にマミーモンは過去に自分たちと戦った少年達の姿を重ねる。

 絶望的な状況を目の前にしても、諦めずに戦い抜いた姿。敵として相対していたから分かる。ああいう奴らは、簡単に負けないと。

 

 そして彼も、愛銃の『オベリスク』を構え、オロチモンへの攻撃を再開する。

 

「誰も諦めていない! どんなに敵が強くても! 絶対に諦めない!」

「それは私たちも同じ!」

 

 エンジェウーモンとクレシェモンも、それぞれの弓に矢をつがえて放ち続ける。

 

(そうだ。諦めない。諦めなければ、何とかなる。打開策は──ある!)

 

 奮闘しながら、ワーガルルモンはこの状況を打開する策があることを確信していた。

 そして、諦めなかったことが、その策へと繋がった。

 

「みんな!」

「お待たせ」

「町の人を襲っていた魔物やデジモンは全部片づけたわ!」

 

 香織とユエ、そして雫を乗せたペガスモンが加勢に来た。

 檜山を引き渡した後、香織とユエは清水がけしかけてきたプテラノモンと魔物と戦う雫たちに加勢。全て倒した後、休む間もなく駆けつけてきたのだ。

 

「待っていたぞ! 雫、ペガスモン!!」

 

 ワーガルルモンは彼女達の参戦に、ずっと待っていた打開策の最後のピースが揃ったことを確信した。

 

 香織とユエはペガスモンから降りると、自分のパートナーのもとに駆け寄る。

 一方、雫とペガスモンはシアとティオに近づく。

 

「シア! 香織とユエのところに行って。作戦があるの」

「作戦ですか?」

「簡単に説明するわ。ティオさんも聞いて」

 

 それから雫は二人に手早く香織達の作戦を説明する。

 

「毒を含んだブレスに、たくさんの首と尻尾の剣。ダメージを受けても再生する巨大な体。一見すると隙が無い、最強のデジモンにだけど、無敵じゃないわ。傷がついているのがその証拠」

 

 雫の言う通り、すぐに再生してしまうが、確かにオロチモンには傷がついている。

 それは攻撃に対する防御力が、こちらの攻撃力よりも低いということ。

 

「だったら、再生を上回る攻撃で一気に倒せばいい。そのための手段が香織とユエ、そしてシアたちにはあるわ」

「あ! た、確かに!」

 

 そう言われたシアは以前ハジメ達から聞いた、オルクス大迷宮での戦いを思い出して、一枚のカードを取り出した。

 

 それは《トリニティバースト》のデジモンカード。

 

 効果は三体のデジモン達による三位一体攻撃。

 遥かに格上の究極体デジモン、メタリックドラモンに対して、ハジメ達は力を合わせて戦い、最後はデジモン達の力を一つにしたこの技で勝利を掴んだ。

 その時のデータがハジメ達のデジヴァイスに残されており、それを解析して再現できるようにカードにしていたのだ。

 

 メタリックドラモンをも倒した《トリニティバースト》なら、確かにオロチモンを倒すことができる。

 これが使えるのは、当時技を使ったハジメ達と、完全体まで進化できるようになったシア。

 この場にはワーガルルモンがいるが、テイマーのハジメがいない。だから、ハジメの代わりをシアとフレアモンが務めなければならない。

 そして、香織達が準備を整える間、他のメンバーでオロチモンの攻撃を抑える必要がある。

 

 説明を終えた雫はほかのメンバーにも伝えるために、ペガスモンに乗って戦場を翔ける。

 シアもフレアモンとともに香織達の元へと合流するためにその場を離脱。ティオと共にオロチモンに向かっていった。

 

 やがて、雫たちの手で全員に作戦が伝えられた。

 ここから、香織達の反撃だ。

 

「まずはワーガルルモンと一緒にオロチモンを抑え込む!」

「そういうのは俺の得意分野だ! 《スネークバンテージ》!!」

 

 香織の指示にマミーモンが両手から大量の包帯を蛇のように伸ばし、オロチモンを絡め取ろうとする。

 それに対して、オロチモンは尻尾のアメノムラクモで包帯を切ろうとする。

 

「させるかぁ!! 行け、《カウスラッガー》!」

 

 しかし、ワーガルルモンがサジタリウスから射出した鋭い刃で、尻尾を斬り飛ばす。すぐに再生するが、その前にマミーモンの包帯がオロチモンを拘束する。

 尻尾は先端を一まとめに拘束することで、切り裂かれるのを防ぎ、さらに首を三つも包帯で覆いつくしている。マミーモンの巧みな仕事だ。

 その隙をついて、ワーガルルモンが両手と右足で包帯で覆いつくされた首を抑え込み、拘束を強める。

 

 ならばと、オロチモンは残った五つの首の口を開いて、《ヒルコブレス》を放とうとする。

 

「はい、お口はチャックね♪」

「静かにしていてくださいね」

 

 そうはさせないとシスタモン姉妹が口を攻撃する。ノワールが二丁拳銃で、二つの首の口の中へ弾丸を撃ちこみ、ブレスを妨害する。ブランは手に持った三叉槍を口の先端に突き刺すことで、ブレスを吐き出すための開閉を封じた。

 

 これで残った首は二つ。

 

「ペガスモン!」

「《シルバーブレイズ》!!」

 

 ペガスモンの額から放たれた聖なる光線が、ブレスを放とうとしていた首の一つを撃ち抜き、妨害する。

 

 〝我が焔を喰らうがよい!! 〟

 

 残った最後の首には、ティオが渾身のブレスを浴びせる。

 炎に焼き尽くされて首が消失するが、すぐに再生を始める。しかし、そうはさせないとティオは炎の盾を構えながら体当たり。再生するたびに、盾の炎で焼き尽くし、妨害する。

 

 他の面々も再生を妨害したり、拘束をほどかれないように強めたり、残った死力を尽くす。

 

 全員が稼いだ時間。その思いを受け取った、三人の少女と三体のデジモンが、とどめの切り札を使う。

 

「カードスラッシュ!」

「トリニティ!」

「バースト!!」

 

 香織、ユエ、シアのデジヴァイスから蒼、緋、緑のエネルギーが放たれ、デジモン達に宿る。

 エネルギーと共にトリニティバーストのカードのデータを受け取った三体が、その身を高純度のエネルギー体へと変化させる。

 そのまま三体は一つとなり、拘束されているオロチモンへ向かっていく。

 

「みんな離れてください!!」

 

 〝未来視〟を使って、《トリニティバースト》に巻き込まれないタイミングを計っていたシアの声に、オロチモンを拘束していた面々がその場を離れる。

 そのおかげで少し拘束を抜け出せたオロチモンだが、《トリニティバースト》はすぐそばまで来ている。

 瞬時に回避は間に合わないと判断したオロチモンは、《ヒルコブレス》で迎撃する。

 

 しかし、《トリニティバースト》は一瞬の拮抗も許さず、《ヒルコブレス》を吹き散らし、オロチモンへ直撃する。

 エンジェウーモンの聖なる力が、オロチモンの暗黒の力への特攻となったのが大きかった。

 オロチモンは再生する隙も与えられず、デジモンの命ともいえるデジコアを吹き飛ばされていった。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 オロチモンが倒されたことを、パートナーであるワーガルルモンの視界を介して把握したハジメ。

 これで全ての戦いが終わった。

 

「これでお前達の戦力はゼロだ」

「みたいだな。正直、オロチモンにはもっと手古摺ると思っていたぜ」

 

 ドンナーの銃口を向けられている清水だが、何故か冷静さを保っている。

 それを訝しむハジメ。これ以上何かされる前に意識を奪おうと、引き金に指をかける。

 装填されているのは実弾ではなく、香織が檜山の意識を奪うときに使ったのと同じゴム弾だ。清水のことをハジメは殺すつもりはなかった。

 清水には黒幕だと思われるメフィスモンについて、知っていることを喋ってもらう必要がある。

 それにやり方は間違えているが、デジモンを愛し、デジモンとの未来を夢見ている同士だ。

 できれば、分かり合いたいと思う。

 そのためにも、今は意識を奪って抵抗できないようにしようとした。

 

「でもな」

 

 しかし、引き金が引かれる前に、清水はハジメに向かってにやりと笑った。

 

「まだ、戦いはまだ終わってねえぜ」

 

 その瞬間、清水の姿が一瞬で消えた。

 

「何!?」

 

 ハジメは咄嗟に改造を施したアーティファクトのゴーグルを装備し、清水の姿を探す。愛子たちからも清水の姿が消えたのは見えたので、周囲を見渡して清水の姿を探す。

 

 ハジメはすぐに清水の魔力反応を見つけた。

 なんと清水は十メートルほど上空に浮かんでいたのだ。

 そして、そのそばには女性のような風体の堕天使型デジモン、メフィスモンがいた。

 先ほど清水が一瞬で消えたのは、メフィスモンが魔術で清水を転移させたからだ。

 

「メフィスモン!」

「またお会いしましたね。テイマーの少年」

 

 ハジメに対して大仰にお辞儀をするメフィスモン。

 遅れて清水とメフィスモンが浮かんでいることに気が付いた愛子たち。ハジメ達から聞いていた一連の事態の黒幕という話と、清水の隣にいることから、愛子は清水を誑かしたのはメフィスモンであると考え、恐怖を抱きながらも声を張り上げる。

 

「あ、あなたが清水君を諭したのですか!?」

「おや、あなたは確か清水君の教師でしたか? 諭したとは人聞きの悪い。私はただ彼に未来への選択肢を提示しただけ。そのために協力すると申し出たのは彼のほうですよ」

「そうだぜ先生」

 

 清水がメフィスモンの言葉に、揺るぎのない信念を込めて同意する。

 

「俺は全部自分で考えて、決意して、実行してきた。ウルの町を襲うことも、魔人族にくみすることも、世界の破滅を願うメフィスモンに協力することも!! そこに伴う痛みも、苦しみも、責任も俺のものだ」

「そ、そんな……」

「愛子ッ」

 

 生徒が自主的に悪魔のようなメフィスモンに協力していたということに、愛子は強いショックを受けて崩れ落ちる。咄嗟にピッドモンが支える。

 愛子に代わって、ハジメが前に出る。両手の武装をドンナーからメタルストームに切り換え、防御のためのシールドを発生させるクロスビッドに、ガルルバーストのミサイルポッドが装備された鎧を身に纏う。

 清水の時とは違い、ハジメの完全武装形態だ。

 

「ようやく出てきたかメフィスモン。ここでお前を止めてやる」

「ふふふ。せっかちですねえ。ギャラリーはまだ揃っていないというのに」

 

 ハジメと異なり、余裕の笑みを浮かべるメフィスモン。

 

「早くやりたいというならば仕方ありませんね。ここまでコツコツと重ねてきた仕込みを、披露するとしましょうか」

 

 メフィスモンが両手を広げると、一つの小さな魔法陣が展開される。

 そこに何かが転移してきた。

 

 形は丸い。色はピンク。そして、二本の触角が生えている。

 

「コロモン……だと? ──まさかそいつは!?!」

 

 訝しんでいたハジメだが、あのコロモンの正体に考えが行き当たった。

 

「そうです。あなたたちがずっと私から隠し、守っていたコロモンですよ」

 

 ニヤニヤと笑いながらコロモンの正体を告げるメフィスモン。

 

「さあ、次の戦いを始めようぜ。南雲」

 

 清水の宣言と共に、地面から無数の蛇が飛び出し、コロモンに殺到し始めた。

 




〇デジモン紹介
メタルグレイモン(ウィルス種)(X抗体)
レベル:完全体
タイプ:サイボーグ型
属性:ウィルス
体の半分以上が機械化されてしまったサイボーグ型の最強デジモン。数々の戦いをくぐり抜け、その体を機械化することによって生き長らえている。メタルグレイモンに進化するためには、襲い来る強敵を倒し勝ち抜かなければならない。また、メタルグレイモンの攻撃力は核弾頭1発分に匹敵するといわれている。胸の部分にあるハッチからミサイルを発射する。
X抗体によるデジコアの覚醒によって、各種機械部分がアップデートされ、特に左腕の強化改造されたトライデントアーム『アルタラウス』は、ブリッツモードとブラストモードを切り替えることが出来る。また、最大出力で音速を超えるエナジーブースターも装備した。必殺技は限界速度で飛行し、ブリッツモードで敵を貫く『エネルギアブリッツ』と、ブラストモードでウィルス性のエネルギーを撃ち放つ『パンデミックデストロイヤー』。この技のウィルスは災害指定される程の感染力と毒性を持っており、かすっただけでもデジコアの構造データを腐らせてしまうという。



実はちょっと三章の章タイトルから神山を抜きました。流石に長くなりすぎたので、プロットから神山に行く展開を省きました。
当初の予定ではウルの異変を抑えてから、ハジメがわざと王都に連行されて、勇者と公開試合をするという展開にしようとしたんですよ。
そこで、勇者が二回目のトンスラされたり(代わりに今回檜山がトンスラしました)、着せ替え光線銃で魔法少女ミルキー☆彡コウキになったり、ミレニアムファルコンに乗ったハジメに逃げられたりするっていうネタをやろうと思っていたんですよね。
でもさすがにそんなにやるとさらに長くなるので、また別の展開で王都に行くプロットにしました。

さて次回からがっつりとメフィスモンを絡めていこうと思いますので、気長に待っていただければと。
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