ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る   作:竜羽

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大変お待たせ致しました。徐々に更新頻度が遅くなっているのが不安です。簡潔まで遠いですが、頑張っていきます。


32話 悪魔メフィスモンの計略

 デジモンが嫌いになった。

 進化していない幼年期だという理由で、僕と仲間達は襲われ、仲間たちは全員ロードされた。運良く逃げられたけれど、僕は一人で生きていきて行く羽目になった。

 それも長くは続かず、絶対に逃げられないほどの圧倒的な格上のデジモン、メフィスモンに捕えられた。

 そしてそのまま、様々な実験の材料にされた。

 

 人間も嫌いだ。

 メフィスモンの傍らには黒い恰好をした人間がいた。

 受けさせられた実験はメフィスモンだけじゃなくて、その黒い人間も関わっていた。

 むしろその黒い人間こそが、僕に実験を施してきた。

 

 痛かった。

 熱かった。

 寒かった。

 息苦しかった。

 怖かった。

 

 いろんな実験を受けさせられて、色んな思いが湧き出してきた。そしてその思いは最後には、一つの真っ黒で苦しい嫌なものになった。

 

 憎い。

 デジモンが憎い。

 人間が憎い。

 ──―全部が、憎い! 

 

 嫌なものはあっという間に僕を飲み込んで、体が全部飲み込まれる感覚を最後に、記憶がなくなった。

 気が付いたら、僕はシスタモンという二体のデジモンに抱えられて、メフィスモンの住処から、連れ出された。

 その先で、天使型デジモンに心の中の真っ黒なものを消す光を浴びせられ、嫌なものが薄まり、苦しくはなくなった。

 

 それでも、デジモンと人間が嫌いだという思いは消えなかった。

 

 だから、助け出してくれたシスタモンや天使型デジモン達も、かくまってくれた人間たちも嫌いだと突き放した。

 

 その中には、おかしな連中がいた。

 互いをパートナーだというデジモンと人間だ。

 まるでメフィスモンとあの黒い人間を思い出させる。

 しかも、そのうちの一人はデジモンと人間が共存できる世界を目指すって言った。僕にとっては悪夢の世界だ。だから噛みついてやった。その人間は気にも留めなかったから、ますます嫌いになった。

 そのあと、色々戦いがあったようだけど、僕には関係ない。

 逃げ出そうにも、メフィスモンがすぐそばにいるような感じが消えないから、無駄だと思った。

 どうせ、何もできない。何も変わらない。

 

 案の定、僕が隠れていた金属の箱はメフィスモンに見つかって壊された。

 一緒に隠れていた人間達は、突然現れたメフィスモンに怯えて、震えているだけで、僕は捕まってしまった。メフィスモンが立ち去るその直前、一人だけ立ち上がって、こっちに手を伸ばしている人間がいたけれど、特に気にも留めなかった。

 

 次に目の前には、僕がかみついた人間がいた。

 そして、僕に向かって真っ黒な蛇みたいなものがたくさん噛みついてきて、また真っ黒で苦しい嫌なものに飲み込まれていった。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッッッ!!!!!!」

 

 無数の蛇がコロモンに殺到し、ベビーピンクの小さな体の中に入り込んでいく。

 それはコロモンにとてつもない痛みをもたらし、悲痛な叫びが響き渡る。

 

「何をしているんだ!?」

「実験ですよ」

 

 顔を険しくして問い詰めるハジメに、メフィスモンは笑みを浮かべながら答える。その声音からは愉悦で堪らないという感情が透けて見える。

 

「私はあなた達に負けてから、データの塵となり、どことも知れぬ亜空間を漂っていた。普通のデジモンならば意識はすぐに霧散。消滅してしまう恐ろしい場所です」

 

 朗々と自分の境遇を語り始めるメフィスモン。

 明らかに時間稼ぎをしようとしているので、構わずにハジメはドンナーを発砲するが、魔術の防壁で防がれる。

 

「しかし、私の意識は消えなかった。受け継いだ〝全ての命への憎しみ〟が、魂ともいうべきものを持続させ続けたのでしょう。いつ消えるともしれぬ放浪であろうと、我が憎しみは不滅ということです」

 

 銃弾が防がれるのなら、ハジメはミサイルポッドを展開し、一斉発射する。

 それに対してメフィスモンは指をパチンと鳴らす。すると瞬時に暗黒呪文弾『ヘルマニア』が生成され、ハジメのミサイルをすべて迎撃してしまう。

 

「そして放浪の果てに、私は出会ったのですよ。強大なる暗黒の力に!!」

 

 語りながら感極まったメフィスモンが両手を上げると同時に、全ての蛇がコロモンと同化し、漆黒の闇へと変わる。

 徐々に闇は巨大な肉体へと変化していく。

 それはまさに、暗黒進化だった。

 

「グオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」

 

 闇が一体のデジモンの姿になる。がっしりとした強靭な青黒い肉体に、鋭い三本の角が生えた強固な頭部。鋭い爪をもった全身が凶器のような、恐ろしい攻撃性能の恐竜型デジモン。

 ウイルス種のグレイモンへとコロモンは強制的に進化させられた。しかも、X抗体を持つグレイモンだ。

 ハジメは知らないが、王都へ襲来したグレイモンと同一個体だった。

 

「これこそが暗黒の力!! 肉体を失っていた私に新たな肉体を与えた素晴らしい力ですよ。私はこの力を自在に操るために、研究してきたのです」

「デジモンの強制進化。ウルの町でカブテリモンたちにもやった無理やりの進化か!? それが、デジモンにどれだけの負担をかけると思っていやがる!!」

 

 ウルの町で襲い掛かってきたカブテリモンとエアドラモンを、イービルスパイラルで強制進化させたのと似た光景に、ハジメの怒りが爆発する。

 正気をなくし、凶悪な姿に変えられたコロモンを救うために、ハジメは切り札を開放する。

 

 技能〝ハイブリット化〟──『モード・ブラックメタルガルルモン』発動! 

 

 ブラックメタルガルルモンの力を宿した鎧を身に纏い、全ての武装を展開し、メフィスモンへ攻撃する。

 

「おっと、研究成果はまだこんなものではありませんよ。清水君」

「ああ」

 

 メフィスモンが促すと、清水が懐から何かを取り出した。

 それは、ハジメ達のデジヴァイスと同じデザインの、黒と灰色のカラーリングのデジヴァイス。だが、そこからは禍々しい暗黒の力が発せられている。

 清水が暗黒の海で手に入れた、暗黒のデジヴァイスだった。

 

「いけ、グレイモン!!」

 

 清水の命令にグレイモンは瞬時に動いた。

 ハジメの放った銃弾、ミサイル、氷結レーザーからその身を挺して二人を守ったのだ。

 グレイモンはところどころに傷を負いながらも、立っている。

 

『なんだと!?』

 

 デジモンを肉壁のように扱うその所業に、清水のことを目指す夢の方向は違うが、デジモンへの愛情を持っていると思っていたハジメが絶句する。

 

「勘違いするなよ。俺は別にグレイモンを傷つけたわけじゃない。むしろこいつならこの程度で傷つくはずがないと、確信していたから命令した。そして──」

 

 清水が暗黒のデジヴァイスを掲げると、デジヴァイスの画面から黒い光が放たれる。

 デジヴァイスの光と共鳴するように、グレイモンも再び暗黒の闇に覆われ始める。

 

「これがこいつの本当の姿だ。進化しろ、グレイモン!!」

 

 グレイモンがさらなる暗黒進化を始める。

 肉体の各所が機械化され、より強力な戦闘力を獲得。

 背中には空中を飛行できるエネルギーブースターを展開。左腕には強化改造されたトライデントアーム『アルタラウス』が装備される。

 かつてハイリヒオ王国の王都で出現した、サイボーグ型デジモンの完成形。

 

「いけ、メタルグレイモン」

「グオオオオオオオオッ!!」

 

 清水の命令にメタルグレイモンは忠実に動き出す。

 王都に出現したときは、まだメフィスモンの研究途中だったため、飛行できず、必殺技も使えない不完全な進化だった。だが、今は違う。

 メタルグレイモンはエネルギーブースターを点火させ、空中へ飛翔する。

 

「きゃあっ!?」

「愛子!」

 

 メタルグレイモンが飛行することで発生した猛烈な風圧に、小柄な愛子が吹き飛ばされそうになる。

 ピッドモンが咄嗟に体を抱える。

 ハジメも二人が飛ばされないように、アーマーに包まれた体で守る。

 そんな彼らの様子を気にもとめずに、メタルグレイモンは飛行を続け、この場で戦っている者たちへとその姿を見せつけていく。

 

 オロチモンとの戦いを制したばかりの香織たち。

 負傷した勇者パーティーと騎士、冒険者たち。

 結界に守られ、治療を受けていたウルの住人。

 

 彼らの頭上を禍々しい姿で飛行するメタルグレイモンは、飛行する風圧だけで力のない者たちを吹き飛ばしていく。

 そして、ぐるりと一周したメタルグレイモンは、攻撃対象の位置を完全に把握。

 全ての敵を殲滅できる攻撃が可能な高度まで飛び上がると、左腕のアルタラウスの砲身を地上に向けて、エネルギーを充填し始める。

 

「ウイルス性のエネルギーを撃つ砲撃、『パンデミックデストロイヤー』。破壊力も抜群だが、災害級の感染力と毒性がある。このまま撃てば北山脈を含めたこの辺一帯は死の大地になるだろうな」

「そんな!?」

 

 清水の言葉に絶句する愛子。ハイリヒ王国の食糧事情の大部分を担う穀倉地帯がそんなことになれば、王国の人間は飢餓に陥ることになる。

 

「清水!! そんなことをして何になる!!? お前の夢になんの関係がある!!」

 

 ハジメが問い詰めるが、清水は何も言わずににやりと笑う。そんなことを聞いている場合かと、ハジメを嘲笑うかのような笑みだった。

 

「せいぜいあがきたまえ」

 

 メフィスモンがそう言い残すと、転移魔法を発動させてその場から消え去った。

 

「くそ!」

 

 悪態をつくハジメ。

 現れたと思えば、すぐに姿を隠す。メフィスモンと清水の意図が読めない。

 とはいえ、今はメタルグレイモンのパンデミックデストロイヤーを止めなければならない。もう発射まで時間は残されていない。

 

「来てくれ、ワーガルルモン!!」

「おう!!」

 

 パートナーの名前を呼ぶと、ワーガルルモンはすぐにハジメのそばに飛んでくる。

 飛行するメタルグレイモンの姿は見えていた。オロチモンとの戦いで疲弊しているが、まだ戦いは終わっていないと、駆けつけてきたのだ。

 

「なんとかあの攻撃を止める。行けるか?」

「当たり前だ。まだまだ戦える!」

「よし、頼んだ」

 

 背中のエネルギーウィングを起動させ、空中のメタルグレイモンに突貫する。

 その様子をハジメは地上から観測し、ワーガルルモンのサポートを行う。

 展開していたミサイルポッドから冷凍ミサイルを発射。ワーガルルモンを追い越し、メタルグレイモンの肉体に着弾。体の一部を凍らせるが、充電されるエネルギーの熱量ですぐに溶けてしまう。

 

「時間稼ぎにもならないか。発射はもう止められない。砲撃の向きを上に向けろ!」

「わかった!」

 

 ハジメの指示に従い、ワーガルルモンはアルタラウスの砲身の下部に割り込む。

 

「『カイザーネイル』!!」 

 

 必殺の爪の斬撃でかちあげて、砲撃の角度を上に向けようとするが、体格はメタルグレイモンが大きく、機械化された強靭な肉体は多少ブレるが、すぐにもとの位置に戻る。

 

「だったら!」

 

 ワーガルルモンは砲身に取り付き、力尽くで砲身を上に向けようとする。

 サジタリウスの出力を上げて、なんとか動かそうとする。だが、メタルグレイモンも対抗して、エネルギーブースターの出力を上げる。二体の力は拮抗し、砲身は動かない。

 

「ぐあああああっ!?!?」

 

 しかも、砲身にチャージされているエネルギーのウイルスが砲身に触れているだけのワーガルルモンへと侵食し始め、苦痛を与える。

 

「ワーガルルモン!」

「手伝う」

 

 そこにエンジェウーモンとクレシェモンが駆けつける。

 飛行能力のないクレシェモンには、飛行能力を与えるカード『白い羽根』で付与された翼がはためいている。

 

「砲身に触るな! ウイルスに侵される!」

「だったら背中を押す」

「私はウイルスを浄化するわ」

 

 ワーガルルモンの警告に従い、クレシェモンは砲身に触らないように、ワーガルルモンの背中を押すことで力を貸し、エンジェウーモンはこれ以上ワーガルルモンがウイルスに侵されないように、浄化の光でウイルスを消し去る。

 それでも砲身はあまり動かず、浄化の光もワーガルルモンの侵食を抑えるだけ。

 ワーガルルモンたちが疲弊しているのもあるが、暗黒進化したメタルグレイモンの力が桁違いだ。それはつまり、コロモンが抱いていた憎しみも強いということだった。

 

「もう、間に合わないッ。こうなったら!!」

 

 砲身の射角を動かすのは間に合わないと悟ったワーガルルモンは、その場を離れて、砲撃の射線上に出る。

 それと同時にメタルグレイモンのアルタラウスから、全てを侵食し、毒で汚染する最凶の砲撃『パンデミックデストロイヤー』が放たれた。

 

「『アルナスショット』!!」

 

 それに対して、ワーガルルモンのサジタリウスから二連のレーザー砲『アルナスショット』が放たれ、メタルグレイモンの砲撃と激突する。

 地上への砲撃を、空中で相殺するつもりなのだ。

 だが、ワーガルルモンのレーザー砲は急所を狙い撃つ、いわばスナイパーライフル銃のような武器だ。それに対して、メタルグレイモンの砲撃は戦艦の大砲。絶大な破壊力で広範囲を殲滅する。正面からぶつかれば、勝ち目はない。

 それでも、少しでも勝てる可能性を信じて、ワーガルルモンは攻撃を続ける。

 それは仲間たちも同じだった。

 

「私も援護する。『ダークアーチェリー』!」

「聖なる力で少しでも威力を落とす。『セイントエアー』!」

 

 クレシェモンが闇のエネルギーの矢で援護し、エンジェウーモンの聖なる力が二体の力を増幅、『パンデミックデストロイヤー』のウイルスを浄化する。

 それでも、砲撃は止まらない。

 

「俺達も力を合わせる! 『清々之咆哮』!!」

「『シルバーブレイズ』!」

 

 少し遅れて駆けつけたフレアモンたちも、ワーガルルモン達と力を合わせる。

 地上でも香織達がハジメのもとに駆けつけ、手持ちのカードや魔法でデジモン達の援護を始める。

 

「全武装一斉射撃!」

「カードスラッシュ! 『攻撃プラグインA』!」

「〝蒼龍〟! 〝雷龍〟! ──魔法合成〝蒼雷龍〟!!」

「吹き荒べ頂きの風 燃え盛れ紅蓮の奔流 〝嵐焔風塵〟!!」

 

 遠距離の攻撃手段や援護のカードがあるハジメ達はそれらを惜しみなく使う。

 

「この未来もダメです。こっちも。なんとか、何とかなる方法を探さないとッ……」

 

 未来視の固有魔法を持つシアは残った魔力を振り絞り、この場を切り抜ける方法を未来探す。

 そして、雫もまた手持ちのカードを取り出して、何とかしようと足掻く。

 

「あの海で決めたのよ。諦めたくないって。絶対に諦めてたまるもんですか」

 

 戦いへの恐怖から心に傷を負い、PTSDを発症するほどまでに追い込まれていた雫。だが、暗黒の海での戦いで、「大切な人に居なくなってほしくない。大切な人と一緒に居たい」という心の中にあった願いを自覚。一歩を踏み出したことで、彼女は恐怖を乗り越えてデジモンテイマーになった。

 目の前に迫る恐怖に屈しない希望の光を見つけた彼女は、ついに心の傷を克服したのだった。

 

 迫りくる災害の一撃を打ち消すために奮起するハジメ達。

 絶望的な状況にあっても、彼らは踏ん張り続けている。

 その諦めない不屈の心と思いに、応えようとする存在があった。

 

「見てくださいノワール姉さま! チンロンモン様からお預かりしていた光のスピリットが!」

「私たちがどれだけ使おうとしても、ウンともスンともいわなかったのに」

 

 少しでもメタルグレイモンの攻撃範囲から人を逃がそうとしていたシスタモン姉妹。彼女達の懐から、眩い光が発せられていた。

 それは彼女たちがチンロンモンの命によって、この世界を調査しに赴く際、手助けになるようにと授けられた力の結晶。

 シエルが持っていたものと同じ、古代のデジタルワールドを救った伝説の十闘士デジモンのスピリットだった。

 

「光の闘士──エンシェントガルルモンの力を宿した、光のスピリット」

「ノワール姉さまの持つビーストのスピリットと、私のヒューマンのスピリット。私たちを進化させてくれるのでしょうか?」

「それはどうかな~」

 

 ノワールとブランがそれぞれ持っていたスピリットを取り出すと、二つのスピリットは勝手に浮かび上がった。

 一つはオオカミのような獣の姿をした、荒々しい野生の力を宿したビーストスピリット。

 もう一つは、人狼のような姿をした、人としての理性と知性を宿したヒューマンスピリット。

 二つのスピリットは、二人の手から離れてワーガルルモン達の元へと飛んで行く。

 スピリット達が向かう先にいたのは、ワーガルルモンだった。

 

「何だ!?」

 

 突然飛来してきたスピリットに驚くワーガルルモン。

 そのせいでパンデミックデストロイヤーを抑えていたワーガルルモン達の攻撃が途切れてしまう。

 迫りくる砲撃。だが、それはスピリットが発する光がかき消す。

 

「これは、聖なる光!?」

「とてつもない力だ」

 

 聖なる力に属するデジモンであるエンジェウーモンとペガスモンは、発せられる力の性質を察する。

 原理としてはエンジェウーモンが聖なる力でパンデミックデストロイヤーのウイルスを浄化しようとしたのと同じだ。しかし、光の浄化力とエネルギーは圧倒的に上であり、ウイルスの浄化だけでなく、砲撃そのものを吹き飛ばしてしまった。

 スピリットはそのままワーガルルモンの前で、一つの光になり巨大な姿に変わっていく。

 

 二振りの黄金の剣を携えた雄々しい人狼。

 その身に白く輝く鎧を身に纏った古代デジタルワールドを救った、光の闘士。

 全ての獣型デジモンの祖となったと言われる『光り輝く至高の獣』。

 

「エンシェントガルルモン。究極体。古代獣型デジモン。必殺技は『シャープネスクレイモア』と『アブソリュート・ゼロ』。しかもハイブリット体ということは、浩介達が進化したレーベモンと同じ、十闘士デジモンなのか……ッ」

 

 突然現れたエンシェントガルルモンのデータをDアークで読み取りながら、その姿を久しくしていなかったワクワクした表情で見上げる。

 他の面々も、エンシェントガルルモンの雄姿に見入る。

 メタルグレイモンも、未知の存在であるエンシェントガルルモンを警戒する。

 

 一時の静寂に包まれるが、変化はすぐに訪れた。

 エンシェントガルルモンの肉体が光の粒子に崩れ始めたのだ。

 出現した十闘士であるエンシェントガルルモンは、遥か古代に生きた過去の存在。レーベモンのように依り代となる存在がスピリットをまとって進化したのではなく、スピリットから一時的に蘇った不安定な存在だった。

 

 そんな不安定な状態だったが、その力は今まで見てきたデジモンの中でも群を抜いていた。

 おかげでハジメ達は最大の窮地を抜け出すことができた。

 しかも、エンシェントガルルモンの力はまだ終わっていなかった。

 その手に持った二振りの大剣を掲げると、眩い光を発した。

 まるで、夜明けの朝日のような温かい光は、ハジメ達とメタルグレイモンを包み込む。

 一体何が起きているのかと身構えるハジメ達だったが、光の効果はすぐに表れた。

 

「この光……傷が治っていく!?」

「それだけじゃない。力も戻ってきた!!」

 

 パンデミックデストロイヤーのウイルスに侵されていたワーガルルモンの腕を始めとした、デジモン達の傷が回復していく。

 さらに力の回復までもたらした。それが顕著だったのは、ペガスモンだった。

 金色の翼が純白に染まり、聖獣の体が人のものへと変わっていく。

 

「ペガスモンが、エンジェモンになったわ!」

 

 テイマーの雫が歓喜の声を上げる。

 ここにエンジェモンは完全復活を遂げたのだった。

 

 一方、メタルグレイモンは光に包まれたことで、苦しみに呻き声をあげていた。

 エンシェントガルルモンの光は浄化の光。その身に宿った暗黒の力を浄化され、力を削がれて苦しんでいた。

 

 そして、エンシェントガルルモンはその姿を光の粒子に変えて、消えていった。

 残されたのは二つのスピリット。

 それは持ち主であったシスタモン姉妹の元へは戻らず、ハジメの手に飛んできた。

 

「うおっ!? な、なんだ?」

 

 驚く彼の前で、二つのスピリットは彼のDアークへと吸収された。

 

 

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 絶望的な危機に陥ったハジメ達。

 もはやこれまでと思われたが、光のスピリットからエンシェントガルルモンが一時的に顕現するという奇跡のような事態により、またもや奇跡的に逆転を果たした。

 

 しかし、それすらも悪魔の計略の中だった。

 

「メタルグレイモンのデータ収集完了。これで残るはあと一つだ」

 

 森の木々に身を隠しながら、戦闘を見ている黒いフードの人物がいた。

 メフィスモンと転移したと思われていた清水だった。

 

「最初はグレイモン」

 

 清水が呟くと、空中にディスプレイのような画面が浮かび上がり、グレイモンのデータが表示される。

 

「次はガルルモン。モノクロモン。エアドラモン。カブテリモン。クワガーモン。そして、スカルグレイモン」

 

 続けて七体のデジモンのデータが表示されると、グレイモンのデータに次々と統合されていく。

 このデータは清水が集めたデジモン達のデータだった。

 メフィスモンがデジタルワールドから捕まえてきたデジモンもいれば、檜山に寄生していたアイズモンの目を通してトータスで見つけた迷いデジモンもいる。

 

「さらに収集したばかりのメタルグレイモン」

 

 加えて、収集したばかりのメタルグレイモンのデータも統合される。

 

「残るは最後の一体。それでこいつは、完成する。それももうすぐだ」

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 エンシェントガルルモンの光によって、エンジェモンが復活する光景を見ていたピッドモンの背後。

 眩い光によって濃くなったピッドモンの影が揺らめき、そこから黒い腕がずるりと伸びてきた。

 腕は掌をピッドモンの背中に向けると、そこから真っ黒な蛇が飛び出した。

 

「シャアッ!」

「ぐぅ、な、なに!?」

 

 突然、後ろから蛇に噛みつかれたピッドモンが、痛みに顔をしかめながら振り向くと、地震の影の中から伸びてくる黒い腕に気が付く。

 

「お、お前はまさか!?」

「光があれば影がある。私の最後の目的を果たさせてもらいましょう」

 

 腕の下からズズズッと姿を現したのは、転移したと思われていた、メフィスモンだった。

 

 




〇デジモン紹介
エンシェントガルルモン
レベル:究極体
タイプ:古代獣型
属性:データ
“光”の属性をもつ、古代デジタルワールドを救った伝説の十闘士デジモン。遥か古代に存在した初めての究極体で、「光り輝く至高の獣」と呼ばれていた。エンシェントガルルモンの能力は、その後“獣型デジモン”に引き継がれていった。先の聖戦ではエンシェントグレイモンと共に最後まで生き残り、ルーチェモンを封印したと言われている。必殺技は2本の大剣で眩い輝きと共に一閃し敵を切り裂く『シャープネスクレイモア』と、絶対零度の超凍気と超光で完全に電子の動きを停止させてしまう『アブソリュート・ゼロ』。



没案として、メタルグレイモンの姿を見た光輝が王都のときと同じように倒せると思い込んで、聖剣を振りかぶって特攻するという、勇者終了ルートへの誘惑が湧きましたが、踏みとどまりました。

三年前から構想を練り続けてきたウル編のラストバトルまでもうすぐですので、頑張っていきます。
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