ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る   作:竜羽

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プロローグから一気に飛びます。

本当はテイマーズ編をやる予定で書き貯めもしていたのですが、思ったより長くなったのと、原作がありふれなのにそっちに入るまで長々とテイマーズ編やるのはどうだろうと思い、飛ばします。

でも今話ではちょっと触れておく必要があるので少しお見せします。

ハジメのテイマーズとしての戦いは折を見て挟もうと思います。

では、タイトルからわかる通りメインヒロイン登場です。


0.5章 夢への道編―Next Dreamers―
01話 ハジメと香織


 数奇な運命の元デジモンテイマーとなった少年、南雲ハジメ。

 デジタマから生まれたデジモン――ツノモンはその後、ガブモンへと進化。

 

 ハジメはガブモンと遊び、現実世界――リアルワールドへ現れたデジモン達と戦った。

 その最中、ガブモンはガルルモン、さらにワーガルルモンへと進化していった。

 

 だが、ガブモンは他のデジモン達とは違う力を持つデジモンだった。

 そのことにハジメとガブモンは悩み葛藤することになった。

 

 そんな日々の中、デジモンの進化に関する特別な力を持つクルモンが、謎のデジモン集団デーヴァにデジタルワールドへ攫われてしまった。

 クルモンを救い出すため、ハジメとタカト達は家族へ別れを告げデジタルワールドへ旅立った。

 デジタルワールドで数々の出会いと経験を積み、ハジメ達はデジモン達との絆を確かなものとした。

 そして、デジタルワールドとリアルワールドに迫る本当の敵であるデ・リーパーを知った。

 デ・リーパーはデジタルワールドを消そうとするだけでなく、世界の境界を越えてハジメ達の住むリアルワールドにまで侵略してきた。

 家族と住んでいる世界を守るため、そしてデ・リーパーに囚われた仲間の一人である加藤ジュリを助けるためにハジメ達はデ・リーパーと激しい戦いを繰り広げた。

 

 その戦いの果てにデ・リーパーを元の原始的なプログラムに戻すことに成功。さらにデジタルワールドからデジモン達の援護でデ・リーパーはデジタルワールドへ戻されリアルワールドから消えていった。

 ジュリも無事に救出されようやく戦いが終わり、またデジモン達とのありふれた日常が戻ってきたと思った。

 しかし、それは叶わなかった。

 デ・リーパーを原始的なプログラムに戻した影響でリアルワールドとデジタルワールドの境界が強固になってしまい、ハジメ達のパートナーデジモンは幼年期に退化、リアルワールドに存在できなくなってしまった。

 

 デジタルワールドへ繋がっている最後のゲートが閉じる間際、テイマー達はパートナーとの別れを受け入れられず涙を流す。

 そんなテイマー達にデジモン達は「また会える」と告げる。

 それでも涙は止まらず、やがてデジモン達はデジタルワールドへ消えていった。

 

 こうして、ハジメのデジモンテイマーとしての物語は終わった。

 テイマーになる前のありふれた日常が戻ってきた。だがハジメも、タカト達ほかのテイマー達もいつかデジモン達と再会できる日が来ると信じている。

 その日に向けて全力で走り続ける――。

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 ハジメがガブモンと別れてから三年経ち、中学二年生になった。

 あの日からハジメは、ガブモンと再会するため全力で生きてきた。

 勉強し、体を鍛え、ガブモンのテイマーとして恥ずかしくないように頑張ってきたハジメは今――

 

「何かっこつけてんだてめぇこら!!」

「邪魔なんだよ!!」

「引っ込んでろ!!」

 

 三人の不良から殴られていた。

 

 ことの発端はハジメが学校の帰りにお婆さんと子供が不良に脅されているのに遭遇したことだった。

 子供が持っていたたこ焼きがズボンに当たってしまい、汚れがついてしまった。それに怒った不良がお婆さんにクリーニング代を要求した。

 お婆さんは子供の非を認めクリーニング代を差し出したのだが、不良たちはさらに金銭を要求。

 それを見かねたハジメが間に入り、仲裁しようとした。

 

「これ以上お金を要求してはいけない」

「クリーニング代ならそれで十分でしょう」

 

 そう伝えたのだがいきなり割り込んだハジメの言葉を不良が聞くはずもなく、殴られることになった。

 ハジメは殴られながらも倒れず、必死に言葉で不良たちを説得しようとし続けた。

 その時だった。

 

「お巡りさん!こっちです!」

 

 そんな声が聞こえた。それを聞き不良たちは慌てて逃げていった。

 それを見たハジメは力が抜けたのかその場に座り込んだ。

 

「大丈夫、ハジメ?」

 

 ハジメに一人の少年が声をかけてきた。

 

「……ジェン?」

「僕がわかる?意識は大丈夫?」

「なんとか。でもあちこち痛いや」

 

 それはハジメの親友の一人で、かつてテリアモンのテイマーだった李 健良(リー ジェンリャ)ことジェンだった。

 ハジメと同じ中学校に通っている彼は下校中に殴られているハジメを見つけ、咄嗟に警官を呼んできたフリをしたのだ。

 

「無茶したね」

「ああするしか思いつかなかった。ありがとうジェン」

「どういたしまして。立てる?」

「うん」

 

 ジェンに肩を借りながら立ち上がるハジメ。

 そこにハジメに庇われていたお婆さんと子供が近づいてきた。

 

「あの、ありがとうございました」

「お兄ちゃん、ありがとう」

 

 お婆さんと子供はお礼を言うとハジメに頭を下げる。それに対しハジメは照れくさそうにする。

 そのまま二人は重ね重ねお礼を言いながら歩いて行った。

 

 ハジメもジェンに肩を貸してもらいながら、その場を去ろうとしたその時、

 

「あの、ハジメ君……ですか?」

「え?」

 

 一人の少女が声をかけてきた。

 

 非常に可愛らしい少女だった。

 長い艶のある黒髪、少し垂れ気味の優し気な大きな瞳。スッと通った鼻梁に小ぶりの鼻、そして薄い桜色の唇が完璧な配置で並んでいる。

未だ幼さを残しているため可愛らしいという感じだが、数年後にはとても美しくなることがわかる。

 同じ中学生のようだが、制服が違うのでハジメ達とは別の中学校だろう。そんな彼女がなぜ声をかけてきて、あまつさえハジメの名前を聞いてきたのか。

 ハジメとジェンが困惑していると、少女はさらに質問してきた。

 

「あのデジモンテイマーのハジメ君ですよね?ガルルモンみたいなデジモンを連れていた!」

「ええっ!!?」

「な、なんで君がそのこと!?」

 

 ハジメとジェンは少女の言葉に驚愕する。

 

 なぜならハジメ達がデジモンテイマーであることは公式には秘匿されている。

 デジモンという大きな力を持つ存在をパートナーにしていたテイマーのことが広まれば、ハジメ達の身に危険が及ぶと、三年前の事件で繋がりを持った情報省ネット管理局の山木 満雄(ヤマキ ミツオ)達がハジメ達の情報を規制し、秘匿したのだ。

 だからこの少女がテイマーのことを知っているはずがないのだ。

 

「あの私、昔ハジメ君に助けられたんです!夏休みにデジモに襲われそうになったとき……!」

「夏休み?デジモンに襲われ……あああっっ!!?」

 

 少女の言葉を聞いてハジメは思い出した。

 少女と自分は確かに出会っており、しかも傍にガルルモンがいたことを。そして確かにデジモンテイマーだと名乗った。

 

「ハジメ、知ってるの?」

「う、うん。知ってる。僕とガルルモンが助けたんだ。二人の女の子を」

「やっぱり!ずっと探していました。私と雫ちゃんを助けてくれたことずっとお礼が言いたくて!」

「わ、わかった。とりあえず、どこか行こう」

「そうだね。どこか落ち着けるところで話そう。ハジメの怪我も治さないと」

「そ、そうだね。ごめんなさい」

 

 少女は慌ててハジメを支えるジェンを手伝うため手を貸した。

 

 三人はハジメの傷の手当てができ、尚且つ誰にも話を聞かれない場所へ行こうと、移動した。

 ジェンの太極拳の師匠であるチョウ先生の道場が近くにあったため、そこへ向かった。

 ハジメの傷も手当てがされ、少女の話を聞くことになった。

 

「私の名前は白崎香織(しらさきかおり)といいます。中学二年生です」

「同い年だったんだね。南雲ハジメです」

「僕は李 健良。それで白崎さんはどこでハジメと出会ったんだい?」

 

 ジェンが質問するとハジメと香織は話し始める。

 

「夏休みに起きたメフィスモンの事件を覚えてる?タカトとジェンが沖縄に行ったとき」

「もちろん覚えているよ。もしかしてその時に?」

「そう。あの時僕とガブモンは東京に現れたデジモンを何とかしようと戦ってたんだ。その時に女の子を二人助けたんだ」

「私、ハジメ君にお礼を言いたかった。でもいきなり消えちゃったからできなくて。あれからずっと探していたんだよ」

 

 香織は胸にあふれる思いを噛み締めるように、三年前のことを話し始めた。

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 三年前の夏休み。香織は親友の八重樫雫と幼馴染の天之河光輝、坂上龍太郎と一緒に住んでいる町から少し遠くのショッピングモールに来ていた。

 夏休みの自由研究に必要になったものを買いに来たのだ。

 その買い物も終わり少し周りを散策していた時だった。

 突然、街の建物が爆発した。

 

「きゃああっ!?」

「な、なに!?」

「ば、爆発?!」

「あっちの方だ!」

 

 龍太郎が指さしたほうを香織が見てみると、そこには炎を纏ったサンショウウオのような生物がいて、強烈な火球を吐き出していた。

 その炎が街を破壊しているのだ。

 

「何あれ?」

「ば、化け物!」

 

 周囲の人々はその姿に恐慌状態に陥り、我先にと逃げ始める。

 香織達はそんな人々の波に飲み込まれてしまう。

 

「雫!香織!」

 

 その時、香織と雫は光輝と龍太郎の二人とはぐれてしまう。

 

「あ、痛!?」

「か、香織。大丈夫?」

 

 しかも香織は逃げる人に突き飛ばされ転んでしまう。

 雫が咄嗟に駆け寄り、抱え起こす。

 

「うん。大丈夫だよ雫ちゃん」

「よかった。早く逃げましょう、きゃッ!?」

 

 逃げようとする香織と雫だが、彼女たちの近くで爆発が起こり雫は思わず香織に抱き着く。

 彼女たちが恐る恐る爆発の起こった方に目を向けると、炎を吐いていた生物がこちらに顔を向けていた。

 

「あ、ああ……」

「ひぃッ」

 

 その口の中にはすでに炎が漏れ出ており、街を破壊した火球を香織達に向かって吐き出そうとしていた。

 あまりの恐怖に二人は体が硬直してしまう。

 次の瞬間にはあの炎で燃やされ、殺されてしまうと。

 だが、その時。

 

「カードスラッシュ!強化プラグインW!」

「《プチファイアーフック》!!」

 

 青い小柄な生き物が炎の生物に殴りかかった。

 体格に差がありすぎるため効果がないと思われたが、炎の生物は殴り飛ばされてしまい二人への攻撃は行われなかった。

 

「た、助かったの?」

「あれ、何?」

 

 二人が呆然としていると二人の前に一人の少年が現れた。

 その手には水色のカラーリングに銀色の縁取りをしたデジヴァイスがある。そう、二人の前に現れたのはハジメだった。

 そして、先ほど攻撃したのはハジメのパートナーデジモン、数か月前に生まれたプニモンが進化したガブモンだった。

 だがその姿は通常のガブモンと少し違っていた。

 お腹の模様が異なっており、目つきも鋭い。さらに両腕が毛皮に覆われているはずなのに右手は毛皮がなくガブモン本来の腕が剥き出しになっていた。

 

「サラマンダモン。アーマー体。必殺技は《ヒートブレス》と《バックドラフト》」

 

 デジヴァイスで生物――サラマンダモンのデータを読み取るハジメ。

 

「やっぱりデジモンだ。でもなんでデジタルフィールドがないんだ?」

 

 ハジメは今までデジモンがリアルワールドへ現れる際に発生していた霧のフィールド、デジタルフィールドが無いにもかかわらずサラマンダモンが現れていることに首をかしげる。

 

「デジモン?あれがデジモンなの?」

「え?」

 

 香織がハジメの言葉を聞き質問する。そこでハジメはようやく近くに香織たちがいるのに気が付く。

 

「だ、大丈夫ですか?怪我とかは?」

「ううん。転んだだけで大丈夫」

「わ、私も」

「そっか。よかった」

 

 駆け寄って無事を確認するハジメに二人は答える。それにホッとするハジメだが、

 

「うわああっ!!?」

 

 そこにサラマンダモンと戦っていたガブモンが吹き飛ばされてくる。

 

「ガブモン!」

 

 ハジメはガブモンの戦いから目をそらしてしまっていたことに、ハッとして我に返るとガブモンに駆け寄る。

 

「ごめん。目を放してた」

「これくらい大丈夫さ。それより来るよ」

 

 ガブモンが目を向ける先、そこにはハジメとガブモンに対して戦闘態勢を取るサラマンダモンがいた。

 それを見てハジメの手は震え始める。

 実はハジメはこれまでデジモンと戦うとき、いつもタカト達他のテイマーと一緒だった。

 だが、タカトとジェンは沖縄に旅行に行っており、ルキは別のところにいる。

 初めての自分一人だけのデジモンとの闘いに、大きな不安と恐怖が沸き上がってきたのだ。

 

「ウウゥッ!!」

 

 逆にガブモンは戦意をみなぎらせている。

 

「《ヒートブレス》!」

「《プチファイアー》!」

 

 サラマンダモンの火球、ガブモンの青い炎がぶつかる。それは両者の間で爆発を起こし、周囲に熱と衝撃をまき散らす。

 

「きゃあッ」

「もういや!」

 

 それに香織は悲鳴を上げ、雫は恐怖で頭を抱えて蹲る。

 

「何とかしないと。怖がっている場合じゃない」

 

 そんな二人の姿を見て、ハジメは心の中の恐怖を抑え込む。今二人の身を守れるのは自分とガブモンだけなのだから。

 

「ガブモン!あいつの気を引くんだ!」

「わかった!」

 

 ガブモンはサラマンダモンの側面に回り込み、攻撃を加え始める。

 サラマンダモンはそれにつられ、ガブモンの方に顔を向け、そちらに注意を向ける。

 

「よく聞いて二人とも」

 

 その隙にハジメはしゃがみ込み、香織と雫に話しかける。

 

「あいつは僕とガブモンが何とかする。だから立てるようになったらここから逃げるんだ」

「あ、あなたは一体?」

 

 香織の疑問にハジメはデジヴァイスをぎゅっと握りしめ、二人だけでなく自分にも言い聞かせる。

 

「僕は……テイマー。デジモンテイマーだ」

「デジモン、テイマー……」

「速く離れて」

 

 そういうとハジメはサラマンダモンを引き付けているガブモンの元に向かっていった。

 あとに残された香織と雫は、座り込みながらもその背中を見つめていた。

 

 二体に追いついたハジメが目にしたのは苦戦するガブモンの姿だった。

 サラマンダモンはアーマー体のため成熟期レベルの力を持っている。対してガブモンは成熟期よりレベルが下の成長期だが、先ほどハジメがスラッシュした力を強化するオプションカードの効果で能力が強化されていた。つまり能力にそれほど差はないのだが、ガブモンに比べて体格が大きく、炎を鎧のように身に纏っているサラマンダモンの方が戦いを有利に進めていた。

 

「負けるわけにはいかない。街を守れるのは僕達だけなんだ。勝つぞ、ガブモン!!」

 

 ハジメが恐怖を乗り越え、覚悟を決めたそのとき!

 

――XEVOLUTION――

 

「ガブモン!X進化!!」

 

 デジヴァイスから光が放たれ、ガブモンが光に包まれる。

 光の中でガブモンのデータが分解され、新たに再構成されていく。

 被っていた青い毛皮は全身に広がり、一体化する。

 手足は伸び、力強く大地を駆ける強靭な四肢になる。

 両肩からは鋭い金属のブレードが伸びていく。

 これこそがハジメのガブモンが進化した成熟期。

 知性が高く、主人と認めたテイマーのために忠実に戦う孤高の獣型デジモン。その名は、

 

「ガルルモンX!!ウオオオオオッッ!!」

 

 進化したガルルモンはサラマンダモンに体当たりをして吹き飛ばす。

 吹き飛ばされたサラマンダモンはビルに激突し、しばらく痛みに呻くがすぐに起き上がり、ガルルモンに怒りに燃える目を向ける。

 

「《ヒートブレス》!」

「《フォックスファイアー》!」

 

 再び放たれるサラマンダモンの火球に対し、ガルルモンも同じく青い炎を口から吐き出す。

 先ほどは相殺された二つの炎だが、今度は青い炎の勢いが勝った。

 火球を飲み込んだ青い炎がそのままサラマンダモンに激突。再び吹き飛ばされ、今度はひっくり返る。

 

「ウウウウウッッ!!」

 

 サラマンダモンはジタバタと手足を動かして痛みに悶える。そこにガルルモンは飛び掛かり、サラマンダモンを押さえつける。

 二体のデジモンの戦いを見守っていたハジメは、この局面で使えるカードがないか確認し、手持ちのカードから一枚取り出す。

 

「カードスラッシュ!ブルーメラモン!《コールドフレイム》」

「ハアアッ!」

 

 ハジメがスラッシュしたブルーメラモンのカードの力を受けたガルルモンの口から、青い低温の炎が吐き出される。

 それを受けたサラマンダモンの炎は勢いを失い、体は凍り付いていく。

 サラマンダモンの動きが止まったのを確認したガルルモンは、一度離れると猛スピードでサラマンダモンに突進する。

 そしてすれ違いざまに肩から延びるブレードでサラマンダモンを斬り裂いた。

 高温の体が一気に冷却されたことで脆くなっていたサラマンダモンの体はそのまま真っ二つになり、データに分解されて消えていった。

 

「か、勝てた。……そうだ、あの子たちは?」

 

 ハジメが座り込んでいた二人の方を向くと、二人のそばに男の子がいて手を貸していた。

 それに安堵しているとガルルモンが近くに来た。

 

「お疲れ様。ガルルモン」

「ああ。やったなハジメ」

「うん。……僕、なんかやっとテイマーとしての自信が出てきた。君にふさわしいテイマーになるよ」

「俺にとって、ハジメは最初から最高のテイマーだよ」

 

 ハジメがガルルモンと語り合っていると、ヒュンッと何かが飛んできた。

 

「ハジメッ!」

 

 それがハジメに当たりそうになったのでガルルモンは前に出てそれ――小さな石をはじく。

 

「え?」

「よくも香織達を怖がらせたな!!」

 

 石を投げてきたのは香織と雫に手を貸していた男の子の一人、天之河光輝だった。

 

「やめて光輝君!あのデジモンは違うの!」

「暴れていたのはもういないの!」

「安心してくれ香織!雫!あんな悪そうなデジモン俺がやっつける!」

 

 香織と雫がやめさせようとするが、光輝はハジメとガルルモンをにらみつけるばかりで耳を貸そうとしない。

 

「君もそこは危ないから逃げろ!」

 

 おそらくハジメにだろう、そう声をかけながらまた石を投げる。

 ガルルモンがまたそれをはじこうとしたその時、ガルルモンの前にハジメが身を乗り出した。

 

「ハジメ!?」

「痛っ……やめて!ガルルモンを、僕のパートナーを傷つけないで!」

 

 石が顔に当たり、手で押さえながらも光輝に訴えるハジメ。

 流石に人に当ててしまったことから光輝は石を投げるのを止める。

 ハジメがガルルモンをかばい、ガルルモンが光輝を威嚇し、光輝が困惑し、香織が光輝を止めようとする中、突然ハジメとガルルモンの後ろの空間から光が漏れだす。

 

『『ハジメ。ガルルモン。一緒に来てほしい』』

 

「え?」

「なんだ?」

 

 光の中から謎の声が聞こえ、二人が困惑する中、その光は大きくなり消えた。

 香織達がその場を見ると二人の姿は消え失せていた。

 

 その後、はぐれた龍太郎も合流し、四人は帰宅した。

 

 

 

■■■■■

 

 

 

「あの時は本当にありがとう。それと天之河君が怪我をさせてごめんなさい」

 

 話し終えた香織がお礼と謝罪をする。

 

 ハジメとジェンはあの事件のことを改めて思い出す。

 

 あの後、ハジメとガルルモンは別の世界からやってきたデジモン、オメガモンに連れられ、デジタル空間を通りながら事件のことを聞いた。

 

 あの時現れたデジモン達は本物のデジモンではなく、当時流行していた電子ペット「Vペット」が変化したものだった。その黒幕がオメガモンが追っていた悪のデジモン、メフィスモンでその目的はリアルワールドの破壊だった。

 ハジメ達は事件の元凶であるメフィスモンを倒すため、オメガモンの力を借り、メフィスモンのところへ向かった。

 何とかメフィスモンを倒すことはできたが、戦っていたのが沖縄だったため帰るためにいろいろ大変であり、ハジメはすっかり自分が助けた少女たちのことを忘れていたのだった。

 

「だからあの時顔に怪我をしていたんだね。てっきりデジモンとの戦いでできたのかと思ったけど」

「……あの時の状況から仕方ないと思ったんだよ。あの男の子、天之河君だっけ、が勘違いしても仕方ない状況だったと思ったし」

 

 自嘲するように言うハジメ。

 あの時、光輝がガルルモンに石を投げたのは、街を破壊したサラマンダモンの仲間だと思ったからだ。何も知らない人から見れば、どちらも同じ危険な生き物に見えるのだ。

 ジェンも同じことを考えているのかやるせない顔をする。

 

「それでも私は知ってるよ」

「え?」

「ハジメ君とハジメ君のデジモンが私と雫ちゃんを助けるために戦ってくれたこと」

 

 そういうと香織はハジメの手をそっと握る。

 いきなり香織のような美少女に手を握られて、ハジメはどぎまぎしてしまう。

 

「あの時のハジメ君の手、震えていた。きっと怖かったんだよね?私よりも。だってハジメ君デジモンのこと詳しそうだったし、危ないってわかっていたんだよね?

それでも私と雫ちゃんを守るために立ち向かってくれて、なんて強い人なんだろうって思った。そんなハジメ君のためにガブモン君は戦ってくれた。怖いデジモンはいるのかもしれないけど、ハジメ君のガブモン君みたいな優しいデジモンもいるって、私は知っているよ」

 

 自分とガブモンのことを褒められて、ハジメは頬が熱くなってくるのを感じた。

 だからなんと言えばいいのか思いつかず、「えっと」とか「あ、あの」という言葉しか出てこず、何とか一言、

 

「あ、ありがとう……」

 

 と微笑む香織から目を逸らしながらお礼を言うのだった。

 

 それからしばらく三人はお互いのことを話し、照れていたハジメも香織と普通に会話できるようになった。

 三人は互いに名前で呼び合うほど親しくなり、時間も遅くなってきたので香織を送っていくことになり、ハジメが買って出た。

 ジェンはそんなハジメを見て、微笑ましそうに見ていた。

 

 話の続きを話しながら、ハジメと香織は香織の家の前までやってきた。

 

「今日はありがとう、ハジメ君」

「僕の方こそありがとう」

「え?私お礼を言われることしてないよ?」

「そんなことないよ。デジモンを、僕たちの友達のことをわかってくれて、本当に嬉しかったんだ。三年前の事件からデジモンは悪く言われることが増えたから」

 

 三年前のデ・リーパーによるリアルワールド侵攻事件以降、デジタル生命体の代表であるデジモンは世間から白い目を向けられている。

 いくら事件を解決にデジモンの力があったとはいえ、それは秘匿されており、一般の人々は詳しいことを知ることができない。

 デジモンカードの製造こそ止まっていないが、新しいデジモンが発表されることもなくなり、コンテンツとしては縮小傾向にある。

 デジモンを大切に思うハジメ達はこの現状に歯がゆい思いをしてきた。

 

 だから、香織がテイマーである自分の存在からデジモンを好意的に見てくれたことがとても嬉しかったのだ。

 

「私今日ハジメ君と話せて本当によかったよ。もっとハジメ君やデジモンのこと知りたいって思ったんだ。だからもしよかったらなんだけど……」

 

 香織は制服のポケットから自分のスマホを取り出すと、それをハジメに差し出した。

 

「連絡先の交換してもらえないかな?」

「う、うん。もちろんだよ」

 

 ハジメも自分のスマホを取り出し、連絡先を交換した。

 

 こうしてハジメのスマホにルキとジュリ以外の女の子の連絡先が追加された。

 

 その日の夜。ハジメは情報省ネット管理局の山木室長へ連絡を取っていた。

 

『そうか。君がテイマーであることを知る一般人の少女がいたか』

「すみません。山木さんたちが僕たちのことを隠してくれていたのに迂闊な行動をとってしまって」

『状況的に仕方ないことだ。気に病むことはない。それに君と李君以外のことはばれていないのだろう?』

「はい」

『なら問題ない。これからも秘密を洩らさないように気を付けてくれたまえ』

「……そのことなのですが、山木さん」

『なんだね?』

 

 しばし逡巡しながらもハジメは意を決して山木に告げる。

 

「白崎香織さんとその友達の二人に僕達テイマーズのことを教えたいんです」

『何!?君は何を言っているのかわかっているのか!?君たちの情報を外部に漏らせば君たちの身に危険が迫るかもしれないんだぞ』

「わかっています。でもいつまでも隠せることじゃないです。今日みたいなことがこれからあるかもしれません!」

 

 そこまで言うとハジメは一度息を落ち着ける。

 

「それにもう嫌なんです。学校や町中でデジモンの悪口を聞くのは」

 

 三年間、ずっと堪えてきたその思いを口にする。

 

「もしかしたら、香織さんみたいにデジモンや僕達テイマーのことを知ることで、理解してくれる人がもっといるかもしれない。

いつかデジタルワールドへの扉が開いてガブモンと再会した時、リアルワールドがデジモンに住みにくい世界になっていてほしくないんです!」

『……そのための第一歩が白崎香織と彼女の友人ということか?』

「はい。タカト達には僕の方から話をします。もうすぐみんなで集まる日ですし」

『もしもタカト君達が賛成しなかったらどうするんだ?』

「その時は僕のことだけでも話します。そして香織さん達が信用できるって証明して見せます」

『……わかった。私も今の世間の現状を申し訳なく思っていたところだ。タカト君達への話も協力しよう』

「山木さん。……ありがとうございます」

 

 それから少し話をしてハジメは山木との通話を終えた。

 そこで、ハジメは自分を見る両親の視線に気が付いた。

 

「ハジメ。その女の子、香織ちゃんだっけ?ずいぶん仲が良くなったのね~」

「ルキちゃんとジュリちゃんはタカト君といい仲だから、ハジメの彼女になる可能性は低いと思っていたが、まさか別の女の子にフラグを立てているとは」

 

 ニヤニヤしながらそう言うと二人は口を揃えて、

 

「「よ!流石我が家の主人公!!このまま可愛いヒロインゲットだぜ!!」」

「黙れよこのアホ夫婦!!」

 

 ハジメの怒声が南雲家に響き渡った。

 




デジモン紹介

ガブモンX抗体 世代:成長期 獣型 属性:データ

ハジメのパートナーデジモン。シャッガイとデジタールゲートによる空間の揺らぎからリアルワールドに現れたデジタマをハジメが孵したことで出会った。
X抗体という特殊なデータをその身に宿すデジモン。X抗体を宿したデジモンはデジコアの潜在能力が解放され、通常のデジモンより強力な力を持つ。
ガブモンは毛皮のデータを取り込むことで、爬虫類型から獣型へ変化。獣らしい俊敏性と野性的な戦い方を好むようになった。
必殺技は「プチファイアー」とプチファイアーを右腕に宿らせて敵を殴る「プチファイアーフック」。この技を使うために右腕は毛皮に覆われていない。


次回はまだ書き上げていないのですが、構成はできているのでお楽しみに。
しばらくはありふれへの導入とテイマーズの後日談みたいな話が続きます。
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