ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る 作:竜羽
投稿できない間、お気に入り数が600を超えてびっくりしました。本当にありがとうございます。
ちょっと短いですが楽しんでください。
あと今回は次回予告ありです。
「ハジメ、君」
変わり果てた姿のハジメを前にして、香織は呆然としていた。
「あれがガブモンのテイマーなのか?」
「そうだ。どんな姿だろうと俺にはわかる」
ワーガルルモンがはっきりと断言する。テイマーとの繋がりがあるということもあるが、自分をデジタマから孵したハジメを見間違えるはずがなかった。
「ウアアアアアアッッ!!!」
倒れていたハジメの体から、再び魔力が溢れ出す。その魔力で発動する魔法は〝電子錬成〟。詳しい原理はわからないが、劣化版とはいえメタルガルルモンの武装を再現した魔法だ。その魔法によって鎧は修復され、あっという間にさっきと同じ黒いメタルガルルモンのような姿になってしまった。
「目を覚ましてくれ、ハジメ!俺だ!ワーガルルモンだ!!助けに来たんだ!!」
「ウオオオオオッッ!!」
ワーガルルモンが呼びかけるが、ハジメは応えない。代わりにまるで狼のような咆哮を上げるとワーガルルモンに飛び掛かってきた。
右腕を振り上げてワーガルルモンを斬り裂こうとする。
「ぐっ」
ワーガルルモンは左手でハジメの右腕を掴む。
ならばと、今度は左腕を振るうがそちらもワーガルルモンの右手で抑え込まれる。
ハジメとワーガルルモンはプロレスで言うところの「手四つ」の状態となり、ギリギリと力比べをする。
「この力、人間の力じゃない。一体、ハジメに何が」
ハジメの力は明らかに人間のレベルを超えていた。近接格闘戦闘を得意とするワーガルルモンには及ばないが、成熟期デジモンに匹敵、あるいは超えかねないパワーだ。
膠着状態が続くかと思われたが、ハジメの体から魔力が迸り、再び〝電子錬成〟が発動する。
鎧の各所にミサイルポッドやビームランチャーが構築されていく。
ベヒモスとの闘いのようにメタルガルルモンの武装を再現しているのだ。
構築された武装がワーガルルモンに照準を定める。
「ッ!?すまないハジメ」
ワーガルルモンは瞬時に反応し、ハジメを通路の奥に投げ飛ばす。
ハジメは投げられながらも照準を修正し、ミサイルやビームを発射した。
「伏せろ!」
「きゃ!?」
ワーガルルモンは香織とテイルモンを抱きしめる。
その背中にハジメの攻撃が直撃した。
「ワーガルルモン!?」
「大丈夫だ。ダメージはない」
心配そうにするテイルモンに、大丈夫だと答えるワーガルルモン。
やがて攻撃が止んだ。
香織達を離し、ハジメの方を向く。
「なんで?なんでハジメ君があんなことに」
「わからない。でも俺のやることは変わらない」
ワーガルルモンは両腕の鉤爪を開き、ハジメに向ける。さらに背中のサジタリウスも変形させ、アルナスショットの砲身を六つ展開する。
「ハジメ!俺はお前を助けるためにお前と戦う!!」
「ウアアアアアアッッ!!!」
ハジメが咆哮を上げ武装を乱射する。それらをアルナスショットで撃ち抜きながら、ワーガルルモンが駆けだす。
今ここに、テイマーとパートナーデジモンという、本来ならば戦うはずのない両者の戦いが始まった。
■■■■■
オルクス大迷宮深層最下層。
ハジメ達のいる階層から数えてちょうど90階層下にあるそこは、オルクス大迷宮の本当のゴール。1階層から100階層までのチュートリアルを突破し、他の大迷宮の試練の総仕上げとなる101階層から200階層を突破した者のみがたどり着ける場所で、オルクス大迷宮を作り上げた者が人生の最後を過ごした豪邸が立っている。その後数千年、この場所に辿り着いた者はたった一人。その一人も訪れたのは300年も昔。今では誰もいない豪邸は静寂に包まれていた。
『──センサー反応』
はずだった。
静かな豪邸の中の一室。突然、無機質な音声が響き渡る。若い青年のような声だ。
『110階層にて登録されているパターンを検出。数は3。うち1つは照合率56%のため断定不可能。うち2つ。どちらも照合率90%以上。──デジタルモンスターと断定』
デジタルモンスター。
このトータスにおいて、ハジメ達しか知るはずのないその存在を、音声は告げる。
『条件が満たされました。オルクス大迷宮は難易度を変更します。それに伴い迷宮制御管制ユニット起動。フリージア、起きなさい』
「──はい」
音声以外に、新たな声。涼やかな女性のものだ。
すると部屋の中に明かりが灯る。明かりが照らすのは一つの棺。真っ白な2メートルもある棺が明かりの中でゆっくりと開いていく。
そして、その中から姿を現したのは、メイド服を身に纏った美しい少女だった。
闇の中に照らされた明かりに映える真っ白な髪。作り物めいた整った美貌。真紅に輝く瞳は、もしも見る者がいれば虜にする妖しさを放っている。
「オスカー・オルクス様の最高傑作。オルクス大迷宮特殊管制制御ユニット兼対エヒトエルジュ使い走り木偶人形殲滅アーティファクト、【フリージア】。起動します」
『起動後、オルクス大迷宮の対デジモンテイマー仕様へと移行しなさい』
「了解」
誰も知らない迷宮の最深部で、迷宮の創設者が残した意思が動き始めた。
■■■■■
「そんな、なんでこんなことに」
一方、戦う二人に対し、香織は動けないでいた。
ハジメが生きていてくれて嬉しい。だがまさか殺意と共に襲い掛かれるなんて思わなかった。しかも殺意を伴って容赦なく攻撃してきたことに大きなショックを受けていた。
そんな香織をテイルモンは心配そうに見つめる。
(無理もないか)
あれほど助けることを切望していたのに、まさかその相手に襲い掛かられるなんて。あまりに報われないではないか。
なまじその思いに胸を打たれてパートナーになっただけに、胸が痛む。
香織とテイルモンが動けないでいる間にも、ハジメとワーガルルモンの戦いは止まらない。
銃火器を撃ち合いながら距離を詰める二人。
弾幕の数ではハジメが上だが、脚力に優れるワーガルルモンの方が速い。ミサイルが命中する前に撃ち抜き、銃弾より早く動くことで躱していく。そうしてハジメの懐に近づいたワーガルルモンは再び腕を振るい、鎧と武装を破壊する。
だが、ハジメもただではやられない。
今度は〝錬成〟の魔法を発動させ、ワーガルルモンの足元の地面を変形させる。ベヒモスを拘束した時のように、今度はワーガルルモンを拘束するつもりだ。
(ここで戦うのはまずい)
狭い通路では壁や天井の間隔が近い。ハジメの錬成から逃げられるような、広い場所に移動しなければ。それに戦いに香織達を巻き込みかねない。特にショックを受けている香織は戦わせられない。
ワーガルルモンは絡みついてくる変形した地面を、腕を振るって破壊する。そして再びサジタリウスを広げ、ハジメに掴み掛る。
そのままハジメを掴んだワーガルルモンは、ハジメを掴んだまま通路を飛翔。戦いやすい広い場所へと移動し始める。
その場にはへたり込んだ香織とテイルモンが残された。
ワーガルルモンはハジメを捕らえたまま、迷宮の中を驀進する。ハジメは抵抗してくるが、かまわず進み続ける。進みながら空気の流れや音の反響から、広い部屋を探す。程なくしてちょうどいい場所を見つけたワーガルルモンはそこに向かった。
やがて目当ての広い部屋、まるで球体の中のようなフロアに到達すると、ハジメを放り投げる。
ハジメは放り投げられながらもくるりと態勢を整えると、手足を地面について着地する。
ワーガルルモンはサジタリウスを広げたまま空中にとどまり、様子を見る。
「ここでやろうぜ。ここなら思いっきりやれる」
「ウウゥ」
ハジメは再び魔力を迸らせる。しかも今度はそれと同時に赤い電撃も放出し始める。
「アアアアアアアアッッ!!!」
咆哮と共に、ハジメの周囲の地面が槍のように飛び出す。しかもその槍はハジメの体から流れた電撃が纏っていた。
ワーガルルモンは知らないが、それは二尾狼を捕食することで奪った〝纏雷〟という魔法であった。ハジメは迷宮内で魔物の肉を食べることで、魔物が持つ固有魔法を奪ってきたのだ。本人は意識がなかったために覚えていないが、本能でそれらの魔法を使っている。しかも本来なら身体に電撃を纏う魔法を発展させ、錬成で変形させた物質にも纏わせてみせた。
電撃を纏った岩の槍が空中のワーガルルモンに迫る。
ワーガルルモンは身を翻して躱す。そしてハジメに肉薄しようとするが、槍から電撃が解き放たれる。
それはまるで紅い光の雲。迷宮の中で発生するはずのない雷鳴が響き渡る。
電撃を受けながら、ワーガルルモンはその中を突き進む。
「ウオオオオオッッ!!」
電撃の中から飛び出したワーガルルモンは右手を握り締め、ハジメに殴りかかる。
そのままハジメを殴り飛ばすワーガルルモンだが、その顔は苦虫を噛み潰したようだ。
(くそ、なんでこんなことに!!)
やはりテイマーを殴るという、パートナーデジモンとして受け入れられない状況に、心が悲鳴を上げている。
しかもずっと待ち望んでいた再会だったのに、こんな状況になるなんて。こんな理不尽はないと、目に見えない運命というものをワーガルルモンは呪う。
一方、再び殴り飛ばされたハジメは、今度は空中に空気の足場を作り着地した。
これは蹴り兎の固有魔法〝空歩〟。空中に足場を作ることができる固有魔法だ。
「あれもこの世界でハジメが覚えた魔法なのか?」
警戒を強めるワーガルルモン。
ハジメは〝電子錬成〟を発動。今度は自分の周囲にミサイルポッドやビームランチャーを大量に生み出す。その総数は100を超えている。
ハジメ自身も銃火器を身に纏い、さらに口内に冷気をチャージし始める。
絶対零度の吐息、メタルガルルモンの必殺技《コキュートスブレス》だ。
「これは、まずいな」
ワーガルルモンが冷や汗を流す。自分は大丈夫だろうが迷宮が壊れる可能性がある。
今のハジメは、火力だけなら完全体のマシーン型デジモンに匹敵するかもしれない。
「この迷宮には香織達もいるんだ。壊させはしない!!」
サジタリウスの光翼のうち、二つを分離。両手に持ち、繋げることで巨大な光の刃《カウスラッガー》となる。
「《カウスラッガー》!!」
そのまま《カウスラッガー》を投擲。ブーメランのように弧を描きながら飛ぶ刃は、空中に浮いている兵器群を破壊していく。
さらに二つの光翼を《アルナスショット》に変形させる。
「《アルナスショット》!!」
さらにワーガルルモンは跳躍。残った二つの光翼で飛翔しながら《アルナスショット》を乱射。兵器群を破壊しながらハジメに向かっていく。
ハジメは兵器群を破壊されながらも残ったものを順次発射する。
そして、ワーガルルモンに向かって《コキュートスブレス》を放った。それに対しワーガルルモンも必殺技で対抗する。
「《カイザーネイル》!!」
振るわれた鉤爪の斬撃と、押し寄せる冷気のブレスとミサイル、ビームがぶつかった。
■■■■■
ハジメに襲われたショックから呆然としていた香織。その傍らでテイルモンはどうすればいいのか悩んでいた。
(こういう時どうすればいいのか。人間との、テイマーとの関係は私には早すぎるぞ)
頭を捻り悩むテイルモン。その時だった。
香織がスッと静かに立ち上がった。
「香織?」
テイルモンが声をかけるが、香織は応えない。そして次の瞬間──
「うわあああああああああああああああんんんっっ!!!!???バジメくううううううううんんんっっ!!??」
大号泣し始めた。
「か、香織!?」
テイルモンは突然の香織の行動にびっくりして目を丸くする。
「ごめんね、ごめんねええええええええ!!!!??わたしが、わたしたちがだすけられなかったからあああああああ!????うわあああああああああああああああんんんっっ!!!!???」
わんわんと泣き続ける香織。ワタワタと慌てるテイルモン。
しばらく香織の泣き声が迷宮の中に響いた。
だが、それも五分ほど後になるとぴたりと止んだ。
「え、か、香織?」
「あーすっきりした!さあ、私たちも戦いに行こう!!」
恐る恐るテイルモンが話しかけると、香織は言葉通りのとてもすっきりした顔をしていた。
「だ、大丈夫なのか?」
「うん。ごめんね、テイルモン。突然泣いちゃって」
テイルモンに申し訳なさそうに謝る香織。
「いや、いいんだ。でもその、本当に大丈夫なのか?」
「うん。もう大丈夫」
香織は僅かに目元に残っていた涙を指で拭う。
「ハジメ君に攻撃されたのはショックだったし、悲しかった。ハジメ君を助けられなかったんだって落ち込んだ。
でも、そうやって落ち込んでいても何も変わらない。ハジメ君がどうしてあんなふうになっちゃったのかわからないままだよ。
それに私よりも深いショックを受けているはずのワーガルルモンが戦っているのに、落ち込んだままじゃ何のためにここまで来たのかわからないよ。だから私は戦うよ」
毅然とした態度で言う香織。だがテイルモンは気が付いた。微かに彼女の手が震えていることに。
(まだ辛いんだ。でも無理やり自分を奮い立たせて、あの人間を助けるために、望まぬ戦いに挑むんだな)
落ち込んだ心を、無理やり納得させて立ち上がる。
ただの強がりにしか見えないが、テイルモンは香織の強さを感じた。
(だったらパートナーデジモンである私がやるべきことは)
香織の心に応えるため、テイルモンは一歩踏み出す。
「わかった。テイマーの香織が決めたのなら私も戦う。一緒にあいつを助けよう」
「うん。お願いね。テイルモン」
頷き合う香織とテイルモン。
そして二人は迷宮を駆ける。ワーガルルモンの気配を感じ取れるテイルモンが先導し、彼女たちは戦場へ向かう。
「待っててハジメ君。今度こそ、助けるから!」
〇デジモン紹介
ネフェルティモン
レベル;アーマー体
タイプ:聖獣型
属性:フリー
“光のデジメンタル”のパワーによってテイルモンが進化したアーマー体デジモン。光のデイメンタルの力で強力な光の力で闇を浄化する能力を得ている。
必殺技は額の飾りから高熱の赤い光線を出す『カースオブクィーン』と、デジ文字が刻まれた古代碑文の巨石を召喚して敵を攻撃する『ロゼッタストーン』。
〇次回予告
立ち上がった香織。香織のために戦うテイルモン。香織は一枚のカードで起死回生の一手を繰り出す。
二人を信じ一か八かの賭けに出るワーガルルモン。
そしてワーガルルモンはハジメの暴走の真実を知る。
だが、ハジメは更なる苦しみに苛まれてしまう。その時、香織の愛がハジメを包み込む!
次回「一枚のカード放つ光 今、ハジメに愛を」
今、冒険が進化する。