ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る   作:竜羽

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お待たせしました。

また間が開いてしまいました。キャンプと再びの資格試験で時間が取れませんでした。
年内にオルクス大迷宮は終わらせたいんですが、どうなるやら。

しかもまたかなり短い。もうちょっと長くしたかったんですが、キリの良さを優先しました。

ではお楽しみください。


15話 一枚のカード放つ光 今、ハジメに愛を―後編―

「ぐぅ、あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

 

 氷に包まれた迷宮の部屋にハジメの苦悶の声が響く。

 ガブモンのおかげで、ハジメを突き動かしていたデジモンの戦闘衝動を抑えることができた。身に纏っていたメタルガルルモンを模した鎧は砕け、どさりと体は倒れ込む。傍らには鎧の形成に巻き込まれたデジヴァイスが転がる。

 その時、左腕の中身が空っぽだったことに、香織とガブモンの顔が青ざめるが、ハジメはもがき苦しみ始めた。しかもその体には絶えず傷が生まれ、血が魔力と一緒に噴き出している。

 

「香織、早くハジメを!」

「もうやっているの!? でも治すたびに傷が! それに魔力が溢れてくるせいで魔法が弾かれてッ」

 

 苦しむハジメを見ていられないガブモンが香織に治療を促す。言われるまでもなく治癒魔法を使う香織だが、ハジメの体から溢れる魔力が治癒魔法の邪魔をする。しかも、傷が治ったとしてもすぐにまた新しい傷が生まれてキリがない。

 香織達は知らないが、ハジメはデジモンの戦闘衝動に突き動かされていた時、デジモンのもう一つの本能に従った行動をとっていた。

 それは他のデジモンのデータを取り込み、進化を目指すという自己進化衝動。この本能に従いハジメは出会った魔物を取り込もうと、魔物の血肉と魔石を喰らっていたのだ。

 その結果、ハジメは人間のままでは使えなかったデジモンの力を扱える肉体と、エネルギーとなる魔力を得ることができた。だが、デジモンの力をワーガルルモンが取り込んだことで、行き場を失った魔力がハジメの体の中で暴れ狂っているのだ。

 

「……あれを試してみよう」

 

 香織は治癒魔法の行使を止め、別の魔法を詠唱し始める。それはかなり長い詠唱で、しばらくして完成した。

 

「──光の恩寵を以て宣言する。ここは聖域にして我が領域。全ての魔は我が意に降れ! ──〝廻聖〟!!」

 

 香織の魔法が発動する。するとハジメの体の魔力が香織の体に移動する。

 香織が使った魔法〝廻聖〟は、一定範囲内にいる者の魔力を他の者に譲渡する光属性の上級魔法だ。

 フロアに向かう途中、香織はハジメの暴走の原因が魔法によるものではないかと思った。そこでメタルガルルモンのカードで凍結させて、動けなくしてからこの魔法を使おうと考えた。ワーガルルモンの考えを聞き、デジモンのデータをロードする作戦を優先した為さっきは使わなかった。だが今ハジメを苦しめているのが魔力なら、この魔法が使えると思ったのだ。

 もっとも最近覚えたばかりの魔法であることと、自分の魔力を他者に渡すのが主な使い方なので取り込める魔力量はあまり多くない。

 それでもハジメの苦痛を取り除くために、香織はハジメの体から溢れる魔力を取り込んだ。

 

 しかし、次の瞬間、

 

「ガハッ!!??」

 

 香織は強い衝撃を受け、口から血を吐いた。そのまま力を失い崩れ落ちる。

 

「香織!?」

「どうしたんだ!?」

 

 テイルモンとガブモンが慌てて香織に駆け寄る。

 

「な、なに、この魔力? すごく、あば、れる。ガフッ」

 

 再び血を吐き出す香織。

 今、香織の体の中では〝廻聖〟によって取り込んだハジメの魔力が暴れている。比較的少ない量だったのに、ハジメの魔力は香織の肉体を破壊した。

 ハジメの魔力は、魔物の肉と魔石を取り込んだ影響で魔物と同じ性質になってしまっていた。そのためハジメが初めて魔物の肉を食べた時と同じように、ハジメの魔力を取り込んだ香織の体も破壊してしまったのだ。幸いにも直接肉を取り込んだわけではないので、ハジメと比べれば軽い傷を負った。

 

「は、はやく、ハジメ、君を、助けないと……」

 

 ガクガクと震える体に鞭を打ち起き上がる香織。そして再び〝廻聖〟を使い、再びハジメの魔力を取り込む香織。

 

「ゴホッ!?」

 

 しかし、またしても魔力によって体を破壊され、傷を負って血を吐いてしまう。杖に縋りつきながら、香織は倒れそうになる身体を必死に支える。

 

「ひか、りの……恩寵をも……って、せん……げん、する」

 

 もう一度、残った気力を振り絞って、ハジメの魔力を取り込むために〝廻聖〟を使おうとする。

 

「もうやめてくれ香織! このままじゃ香織の体がもたない!」

「そうだ! 君に何かあったら俺はハジメにあわせる顔がない!」

 

 テイルモンとガブモンが香織を止めようとする。このまま魔法を使い続けてハジメの魔力を取り込めば、彼女の体は間違いなく壊れてしまう。

 だが香織は耳を貸そうとせず、魔法を使い続ける。

 

「もう、いや、だ。ハジ、メくんを、うし、のは。なんど、だって、たすけ、なんど、てなお、す」

 

 意識も朦朧とし始める香織。

 彼女の心にあるのは大きな後悔だ。

 あのベヒモスとの闘いの時、ハジメの傍に香織もいれば、雫が動けなくなっても逃げきれたかもしれない。例え逃げ切れなかったとしても、一緒に落ちていればハジメがこんな体になって苦しむことはなかったかもしれない。

 ハジメが落ちてから彼女の心に大きく刻まれた後悔。もうこんな思いをしたくない。その思いだけで香織は魔法を使うのを止めようとしない。

 その思いにガブモンとテイルモンも、止めようとするのを止める。特にガブモンは彼女と同じくらいハジメを救いたいと思っている。だから二体は、崩れ落ちそうになる香織の体を支え始めた。

 全てはハジメを助けるために。

 だが、思いとは裏腹に彼女が取り出せる魔力は決して多くなく、ハジメの様子も変わらない。

 

「くそっ。俺には何もできないのかッ」

「何か、何かできること……え?」

 

 香織の体を支えながら何か自分にできることはないかと考えるテイルモン。ふと、彼女が香織の体を見るとそこにあった傷が勝手に治っていくのが見えた。

 

「どうして傷が? ……そういえば!」

 

 疑問に思ったテイルモンはふと思い出した。

 この奈落に来た時に最初に訪れた階層。そこにあったハジメが作ったと思われる横穴の中にあった石、神結晶から溢れていた水である神水。あれを飲んだ香織は活力を取り戻したと言っていた。実はここに来る途中でも、バッグの中から水が溢れそうになるたびに香織は飲んでいた。もしもあの水が傷を癒す効果も持っていたとしたら!! 

 

「ガブモン、香織のことを頼む!」

「え? テイルモン?」

 

 香織の体を支えるのをいったんガブモンに任せて、テイルモンはフロアの入り口に向かう。

 荷物は戦闘の邪魔になると思って入り口に置いておいたのだ。そこには当然、神結晶の入ったバッグもある。

 幸いにもバッグは、戦闘の余波に巻き込まれることもなく無事だった。

 テイルモンは神結晶を入れていたバッグを抱えると、急いで戻る。

 

「その石って」

「もしかしたらこの石の水を使えば」

 

 バッグを下ろし、神結晶を取り出す。バッグの中を見れば、滲み出した神水がある。テイルモンは神水を一掬いすると、香織の口に押し付ける。

 痛みで意識が朦朧としていたが、突然のことに驚いた香織は思わず魔法を止めてしまう。

 

「飲んで!」

「ッ!? ゴホゴホッ」

 

 香織の口の中に神水が入る。すると彼女の傷が癒えていき、意識がはっきりしてくる。

 

「な、なにこれ?」

「香織この水何かに使えないか!?」

「え? 水?」

 

 テイルモンは香織に神結晶と神水の入ったバッグを見せる。神水を飲んだことで香織の怪我が治ったことを伝える。

 それを聞いた香織は神水を使うことにする。

 テイルモンと同じように神結晶からにじみ出てきた神水を手ですくい、ハジメに飲ませようとする。

 

「飲んでハジメ君!」

「ぐああああッッ!?!!!」

 

 だが、苦しみに悶えるハジメがジタバタと暴れまわる。

 

「押さえて!」

「動くなハジメ!」

「おとなしくしなさい!」

 

 香織の指示にガブモンとテイルモンがハジメの体を抑える。

 すかさず香織が神水をハジメの口に注ぐ。だが──―。

 

 ──―ドクンッ──―

 

「ぐうわああああああああああああああっっ!!!!???」

「ハジメ!?」

「そんななんで!?」

 

 今まで以上に魔力を放出し、暴れだすハジメ。身体を抑えていたガブモンとテイルモンも跳ね飛ばされる。

 神水は高濃度の魔力の液体だ。それは生き物の体を癒すことが出来るが、今のハジメの体には癒すと同時に、魔力の活性化も起こしてしまったのだ。

 香織達は、取り返しのつかないことをしてしまったのではないかと動揺する。

 そうしている間にも、ハジメの症状は悪くなるばかり。

 

 もう香織達にできることはないのか? このままハジメが苦しむ姿を見ることしかできないのか? 

 

 だとしても──―!! 

 

 香織は何かの決意を固めるとバッグの中にある神水、さらに今も滲み出している分も飲み干し、ハジメの体に跨った。

 

「〝廻聖〟!!」

 

 再び〝廻聖〟を発動させる。

 ハジメの魔力を吸収し、また体に傷を負う香織。

 しかし、その傷も直前に飲んだ神水の効果で治る。

 

「〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟〝廻聖〟!!!!!」

 

 さっき以上に魔法を使い続ける香織。たとえ傷ついても飲んだ神水の力ですぐに治癒する。

 そんな力業で、香織はハジメを助けようと力を振り絞る。

 例え無駄なことだとしても、ハジメのためにできることをし続ける香織。ガブモンとテイルモンも香織が魔法を使いやすいように、再びハジメの体を抑える。

 

 いつしか香織は涙を流していた。ガブモンもテイルモンも。

 それはハジメをこんな目に遭わせた運命に対する憤りや、ハジメを助ける力になれない無力さ。この状況になってしまった全てのことに対して、三人ともが涙を流していた。

 

 そして、遂に香織は気力を使い果たし、苦しむハジメの上に倒れ込む。

 神水が治してくれると言っても、精神的な疲れは治らない。直前に激しい戦いも行っていたのだから、限界が来るのはなおのことだった。

 香織は苦しみに顔を歪めるハジメに、最後の力で顔を近づける。

 

「ごめ、んね。ハジ、メ、く、ん」

 

 小さく謝罪の言葉を言いながら、ハジメの唇に自分の唇を押し付けた。

 

 ハジメが暴れるため、香織の唇は噛み切られて血が流れるが、それでも香織はキスをし続けた。

 

 その時だった。テイルモンの尻尾に付いていたホーリーリングが眩い光を放ち始めた。

 

「なんだ? この光?」

 

 光に気が付いたガブモンがテイルモンの方へ顔を向ける。

 

「私のホーリーリングが、光っている?」

 

 テイルモン自身も突然のことに困惑する。

 そうしているうちに、ホーリーリングの光はどんどん強くなり、テイルモン自身を光に包み込んでいく。

 

「これってまさか、進化の光なのか!?」

「進化のカードも使っていないのに」

 

 デジモン二体が困惑する中、遂にテイルモンは光に包まれる。

 光の中でテイルモンは、ホーリーリングから流れ込んでくる力を感じていた。

 今、ホーリーリングはテイルモンとそのテイマーである香織の願いを叶える為に、その力を開放しようとしていると。だが、そのためには成熟期のテイルモンの体では、ホーリーリングに秘められたその力を完全に発揮できない。だからこそ、ホーリーリングはテイルモンに進化を促している。

 

「香織の、テイマーの願いを叶えられるなら。いいわ。私の全部の力を使って!」

 

 ──EVOLUTION──

 

「テイルモン! 進化!!」

 

 光の中で、テイルモンのデータが分解され、再構築されていく。

 流れ込んでくるホーリーリングの聖なる力を取り込み、巨大になっていく。

 四肢は強靭になり、猫のような体がドラゴンのような雄々しくなる。

 頭には立派な二本の角が生え、威風堂々とした雰囲気を身に纏う。

 背中には十枚の天使のような翼が広がり、その体と共に広いはずのフロア一杯にまで広がっていく。

 

 完全な進化ではないため、存在が安定していないが、その姿は紛れもなくテイルモンが進化した神獣デジモンの究極の形態。

 デジタルワールドの安定を司る四聖獣チンロンモンと同等の力を持ち、四大竜デジモンの一体に数えられる幻の聖竜型デジモン。

 その名を、ガブモンが口にする。

 

「ホーリー、ドラモン?」

 

 ──―クオオオオオオンン──―

 

 静かに、しかし威厳に溢れる声で答えるホーリードラモン。

 輝く体から溢れる光が、ハジメと香織に注がれていく。

 光に飲まれた二人は、暖かいものに包まれた感覚を味わった。

 あれほど暴れていたハジメの魔力も落ち着いていく。

 二人の傷も癒されていく。

 そして、二人はどちらからともなく、お互いの体に手を回して抱きしめ合った。大切なものを二度と離さないというように。

 

 二人の様子を見届けたホーリードラモンは、静かに光となって消えていった。

 その後には全てのエネルギーを使い果たして、幼年期にまで退化してしまったテイルモン、ニャロモンが眠っていた。

 

「……はあ。何とかなった、のか?」

 

 一人だけ起きていたガブモンが、ようやく一息付けたと胸をなでおろした。

 

 この日、オルクス大迷宮の底から発せられたホーリードラモンの力は、地上のホルアドの街や周辺の村に住む人々や動物、魔物さえも畏怖させた。そして、誰もが迷宮へと目を向け、中には跪いて動けなくなった者もいた。

 後にハイリヒ王国の兵が調査を行ったが、真相がわかるのはもっと先のことであった。

 

 

 




〇デジモン紹介
ホーリードラモン
レベル:究極体
タイプ:聖竜型
属性:ワクチン
神獣デジモンがたどり着くと言われる究極形態。デジタルワールドに巨大な悪のエネルギーが生まれると、どこからともかく現れてその身に宿した強大な光の力で悪を無に帰すと言われる。必殺技の『ホーリーフレイム』は全ての正義の光のエネルギーを相手にぶつけ、無に帰してしまう。
ホーリーリングの秘められたエネルギーを発揮するために、テイルモンが不完全な進化を果たし、姿を現した。その光の力でハジメの体に宿ってしまった魔物の魔力を鎮め、調和を行うことでその苦しみから救った。その際、香織も巻き込んでしまった。

〇次回予告
目を覚ましたハジメ。だが暴走していた記憶を覚えていた彼は激しく自分を責めてしまう。
そんなハジメを香織とガブモンは優しく慰め、奮い立たせる。
迷宮の攻略を開始するハジメ達にいくつもの試練が襲い掛かるが、知恵と勇気で乗り越えていく。
やがて、彼らの前に再び運命の時が訪れる。

次回「迷宮攻略開始 奈落の少女」
今、冒険のゲートが開く。


ハジカオになったかなあ?
ハジメを救うために奮闘する香織達でした。

疑似的ながらも、原作のハジメのような肉体の破壊と超回復を行った香織。
そしてまさかのホーリードラモン。思わず出しちゃいましたが、これを逃すと出せるタイミングがかなり先になるかなと思いまして、不完全ですが進化しました。
ご都合主義かもしれませんが、限界まで足掻いた香織達の心が、ホーリーリングに届いたという感じで納得していただきたいです。
ホーリードラモンの力がハジメと香織に何をもたらしたのか……。

あと章のタイトルを変えました。
1章は「01章 オルクス大迷宮編―New Tamers―」です。
英語のサブタイトルをつけてみました。
FGOのパクリみたいな感じですが、その章を象徴する単語をつけていこうと思います。これを見て先の展開の予想とかしていただけると嬉しいです。

次回、もうちょっとハジカオ続きます。そのあとはお待ちかねのあのお方です。
お楽しみに。

PS
年末に特別編を考えています。できるかわからないですが、今までの振り返りとか、お笑いコーナーとかをやりたいです。コメンテーターに原作のユエとシアを呼んで。
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