ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る   作:竜羽

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感想・評価ありがとうございます。
タイトルですが、次回予告と少し変えました。前話の次回予告も変更しました。

ちょっと怖かったのですが、ありふれのアニメ一期を見ながら書きました。
端折っていますが、まだギリギリありかなと思います。

今回は比較的、すらすらかけました。その分長くなりましたが。
では最新話をどうぞ。ようやくアニメの一話と二話のエピソードです。


16話 迷宮攻略開始 奈落の少女

 ピチョンピチョンという水滴が落ちる音に、ハジメの意識が覚醒していく。

 

(俺は、何を……?)

 

 微睡みながら、すぐに思い出せる一番新しい記憶を探る。

 

(砂の、階層で、デジヴァイスに、ガブモンが映って、それから…………!!!?)

 

 思い出し始めれば、それからの出来事がどんどん蘇ってくる。

 光輝によりガブモンが傷つけられた場面を目撃したこと。怒りが沸き上がり、破壊衝動に身を任せて暴れてしまったこと。

 そして、それから後のことも!!

 

「うわああああああああっっっ!!??」

「きゃっ!?」

「うおっ!?」

「にゃろ!?」

 

 悲鳴を上げて跳ね起きるハジメ。それに香織、ガブモン、ニャロモンが驚き、ハジメの方を振り返る。

 

「はぁはぁはぁ、お、俺は、俺はッ……」

「ハジメェ!!!」

「ハジメ君!!!」

 

 息を荒げるハジメに、ガブモンと香織が抱き着く。

 

「ハジメハジメハジメ!!!」

「よかったッ!! よかったよぅハジメ君!!」

 

 二人はわんわんと泣きながらハジメが起きたことを喜んだ。

 

 ホーリードラモンによってハジメが癒された後、起きていたガブモンによって三人はフロアの隅に運ばれた。戦いの余波で出来た窪みを利用して身を隠すためだ。

 先に目覚めたのは香織だった。そのあとにニャロモンが意識を取り戻し、起きたことをガブモンから聞いた。

 香織は安らかなハジメの姿に安堵し、ホーリーリングの力を開放してくれたニャロモンをぎゅっと抱きしめた。

 その後、香織とガブモンは魔物の出現に警戒しつつ、ハジメの看病を続けていた。

 

「…………ッ」

 

 しばらく二人の抱擁を受けていたハジメだったが、それを振り払うと距離を取った。

 

「え?」

「ハジメ君?」

「俺は、俺は、僕、俺は!!?」

 

 右腕だけで頭を抱えて蹲るハジメ。

 

「ごめん、ごめんなさい。ああ、あああっ!! なんでなんでなんで!? こんなはずじゃなかったんだ!! 絶対守るって、大切だって決めていたのに何でこんなことになったんだああああああああああああっっ!!!」

 

 ハジメの慟哭が響き、押し殺した泣き声が漏れてくる。

 彼は憶えていた。破壊衝動に飲み込まれ暴れ回った果てに、ガブモンと香織に襲い掛かったことを。そしてその手で二人を殺そうとしたことを。

 過酷な環境に放り込まれて片腕を無くしても、原因不明の衝動に意識を乗っ取られても、自分を見失わないために心の持ちようを変えてでも、必ず戻って守り抜くと決めていたガブモンと香織を手にかけそうになった。

 ハジメの心の中にとてつもない後悔と罪悪感が押し寄せてきた。

 もう二人と一緒にいられない。またあんなことになったら耐えられない。

 思わず立ち上がって、二人の前から去ろうとするが、起きたばかりの体には力が入らず、その場に倒れ込む。

 

(なんて、無様なんだ……)

 

 思わず自嘲してしまう。そして、這ってでも二人から距離を取ろうとする。

 その姿に、ガブモンと香織は胸を抑える。

 ハジメの暴走は収まり、体は治った。でも、心に深い傷を負ってしまっているのだ。その痛みに、ハジメは潰されそうになっている。このままではハジメは孤独な道を進んでしまう。

 

 気が付けばガブモンはハジメの傍らに立っていた。

 ハジメが頭を上げれば、ガブモンが見下ろしていた。

 そしてガブモンは、ハジメの着ている服の襟元に手を伸ばすと、掴んで起き上がらせた。

 

「ガブ、モン?」

 

 ガブモンはただ何も言わず、ハジメの顔を覗き込むとにっこりと笑って──―。

 

 

 

──バキンッ

 

「ブゴッ!?」

 

 殴った。思いっきり全力で、ハジメの顔に拳を叩きつけた。

 見ていた香織が突然のことに呆然とし、殴られたハジメも目を白黒させる中、ガブモンはハジメに近づく。

 

「会うのは久しぶりだけれど、俺はハジメのパートナーだ。だからハジメが何を考えているのか、なんとなくわかるよ。また暴走して、俺や香織を傷つけるのが怖いんだろう?」

 

 ガブモンの言葉にハジメは顔を伏せる。それを見たガブモンは図星だと確信し、はぁと溜息を吐いた。

 

「バカじゃないのか?」

「ば、バカってなんだよ!?」

 

 ガブモンの言葉にハジメが声を荒げる。

 

「俺は、僕は、またおかしくなるかもしれない。今度こそ、ガブモンや香織を、こ、ころ、殺すかもしれないんだぞ!!」

 

「殺す」というところで、恐怖で言葉が詰まってしまったが、ハジメは自分の抱える危険性を言う。

 実際、今は落ち着いているが、ハジメの体がどうなっているのか分からないため、その可能性は残っている。

 

「そんなことがどうした」

 

 しかし、ガブモンは「そんなこと」と切り捨てた。呆けるハジメにガブモンは、再び襟元を掴むとずいっと顔を近づけると、声を張り上げる。

 

「そんなことがどうした! 俺はハジメのパートナーデジモンだ! テイマーのために戦い、テイマーと共に生きて、テイマーと共に死ぬ!! 俺はずっとそう考えている!! だからまたハジメが暴走しても何度でも止めてやる!! 殴って噛みついて炎を吐いてやる!! それがハジメのためだって信じている!! 何度だっていうぞ!!」

 

 ガブモンは大きく息を吸い、さっきのハジメの慟哭をかき消すように叫ぶ。

 

「俺はハジメのパートナーデジモンだ!!! テイマーのために戦い、テイマーと共に生きて、テイマーと共に死んでやる!!! 

 だから!!! ハジメも!!! パートナーデジモンの俺を信じろ!!!!」

 

 その言葉に、ハジメは心の中から湧き上がってくるものを堪えられなかった。

 

「う、うあ、うあああああああああああっっっ!!!」

 

 力が入らない体に鞭を打ち、ハジメはガブモンにしがみつき、泣いた。さっきの涙と違い、ガブモンへの感謝の涙を流した。

 それを受け止めていたガブモンの目にもやがて涙が溢れてきた。

 

「うわあああああっっ!! よがっだよがっだよぉハジメぇ!! まだ会えたあっ!!!」

「おれもよがっだぁっ!!! あいだかったああああっ!!」

「なんだよぞのおれってえっ!! 俺のまね!?」

 

 わんわん泣きながら、二人は6年ぶりの再会を喜ぶ。

 香織とニャロモンは静かに、見守った。

 

 やがて落ち着いたハジメとガブモン。

 ハジメは涙をぬぐうと香織に顔を向ける。

 

「その、香織。俺、いや、僕は」

「いいよ」

 

 ばつが悪そうに言葉を選ぶハジメに、香織は優しく微笑む。

 

「私もガブモンと同じ。テイマーとパートナーみたいなちゃんとした繋がりはないけれど、ハジメ君を愛する思いは、他の誰にも負けるつもりはないよ。だから、例え何があっても、ハジメ君を信じている。それに私は治癒師だよ? またハジメ君がおかしくなっても必ず治して見せる。それが私の誓いで、覚悟だよ」

 

 その言葉に、また涙が出そうになるハジメ。こんなにも自分を思ってくれる少女の存在が、とても眩しかった。

 香織はハジメに近づくと、その体をぎゅっと抱きしめる。まるで、ハジメの心の傷を包み込んで癒そうとするかのように。

 

「だから、もう一度言うね」

 

 さらに強く、ぎゅっとハジメを抱きしめながら、香織は告げる。

 

「ハジメ君。あなたが好きです」

「ッッ。か、かおりさん。ぼ、僕は、僕はッッ」

 

 ハジメは再び、涙を流した。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 涙を流し果てたハジメが落ち着くまで、ガブモンと香織は彼の傍に寄り添い続けた。

 ようやく落ち着いた後、窪みの中では魔物の襲撃に備え続ける必要があるので、ハジメの錬成で横穴を掘った。

 そこで改めてお互いのことを話し合った。

 ハジメはここに落ちた後のことを話し、その凄絶極まりない内容に香織がまた涙を流した。

 香織は王宮でのガブモン達との出会いと、そこからの脱出劇を離した。その最中で香織がテイルモン、今はニャロモンのテイマーになったことを知り、ニャロモンとハジメはお互いに自己紹介をした。

 

「迷宮を脱出するために、俺たちのやることをはっきりさせよう」

 

 今までのことを話した後、ハジメが提案した。なおハジメの口調は、デジモンの戦闘衝動に耐えるために変心した時のものだ。先ほどは動揺していたせいで前の口調が出ていたが、こちらの口調でいくことにした。それは辛く厳しいこの世界を生き抜こうと決めた、彼の覚悟だった。

 

「今の俺たちには二つの問題がある。それを解決しないと脱出はできない」

 

 そう言ってハジメは指を一本ずつ立てていく。

 

「まずは食料の問題。ここが迷宮のどの辺りかわからない以上、香織が持ってきた保存食だけじゃ心もとない」

「そうだね。この量だと大体三日くらいで無くなっちゃうよ」

 

 香織が鞄の中から干し肉やクッキー、硬いパンを出して予測を言う。

 

「次に魔物との闘いだ。ガブモン達はここに来てから魔物と戦っていないからわからなかっただろうが、ここの魔物はベヒモスより強い。ガブモン達が進化すれば大丈夫かもしれないが、エネルギーの消耗が激しい。最初の問題が大きくなるし、俺は腕がこんなだから進化のカードも使いにくくなった。だから俺や香織も戦えるようになる必要がある」

「確かに。ハジメが魔物を片付けていたから行きは楽だったけれど、これからはちょっと難しいな」

 

 ガブモンは無くなったハジメの左腕を見る。ガブモンが進化するには、基本的に進化のカードを使う必要がある。たまにテイマーの気迫や思いの爆発で進化することもあるが、常に起こることじゃない。

 そのためにデジヴァイスとカードを持つ両手が必要なのだが、今のハジメでは厳しい。

 例え進化できたとしても、進化のたびにエネルギーを消費してしまい、補充するための食料が必要になる。

 

「以上、二つの問題を解決しないと迷宮の探索が満足にできず、脱出の可能性が低くなる。この解決方法をみんなで考えたい」

 

 そう言うとハジメはガブモン、香織、ニャロモンを見渡す。

 三人はハジメが提示した問題の解決方法を考え始めた。

 しばらくすると、ニャロモンが尻尾をピンッと立てた。それは手足がないニャロモンの挙手だった。

 

「食糧問題についていい?」

「いいぞ、ニャロモン」

「ハジメがやったように魔物の肉を食べるのはダメなの?」

 

 ニャロモンの提案は、ある意味当然の発想だった。この迷宮にある食料になりそうなものと言えば、魔物しかなかった。だからこそ、奈落に落ちたばかりのハジメも二尾狼の肉を食べたのだ。

 

「俺が暴走していなかったらそれもよかったんだけどな。また魔物の肉を食べた俺が暴走しないとも言えないし、デジモンの体にどんな影響があるか分からない。なにより、香織にあんなものを喰わせたくない」

 

 もともと魔物の肉は食べたら肉体がバラバラになる劇物であり、神水の超回復効果を併用しないと食べられたものではない。

 しかも、体の破壊と超回復は肉体にとてつもない激痛をもたらす。ハジメのようにデジモンの力を宿していないから、暴走するようなことはないだろう。だが、そんなものを香織に食べさせるつもりはハジメにはなかった。

 

「そのことなんだけど、ハジメ君」

「どうした? 香織」

 

 香織が気まずそうに手を上げた。

 

「実は私、こんなことになっているんだ」

「ステータスプレート? これがどうした?」

 

 彼女が差し出してきた小さな金属板、ステータスプレートを見た。

 

 

 

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白崎香織 17歳 女 レベル:40

天職:治癒師

筋力:180

体力:220

耐性:1080

敏捷:230

魔力:50080

魔耐:50080

技能:回復魔法[+効果上昇][+回復速度上昇][+イメージ補強力上昇][+浸透看破]・光属性適性・高速魔力回復・魔力操作[+魔力放射] [+魔力干渉]・天歩[+空力][+縮地]・夜目・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・言語理解

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「なんでやねん」

 

 表示された内容に思わず関西弁でツッコミを入れる。香織は召喚された生徒の中でも上位のステータスだったのだが、それが爆上がりしている。特に魔力と魔耐があり得ない数値だった。

 

「香織、これは一体?」

「多分、ハジメ君の魔力を魔法で取り込んだからだと思う」

 

 話し合いの前に、どうやってハジメを助けたのかは伝えてある。香織の無茶な行動にハジメは怒りそうになったが、もとはと言えば自分が原因なので強く言えなかった。ただあまり無茶はしてほしくないことはしっかり伝えた。

 

 香織はハジメがデジモンのデータをロードされた後、魔力の暴走で苦しんだ時に、苦しみを和らげるために魔力を取り込んだ。その結果、肉体が破壊され、神水を飲むことで回復。それを繰り返した。それが魔力と魔耐の増大という結果につながったのではないかと予測される。

 

「あとハジメと一緒にホーリードラモンの光に包まれたことも関係していると思う」

「ホーリードラモン、か」

 

 ガブモンの言葉に、ハジメは感慨深げに呟く。

 ホーリードラモンはデジモンの中でも幻の存在で、デジタルワールドで出会った四聖獣チンロンモンと同格ともいわれている。その力が、自分と香織に何らかの作用を及ぼしたのだろう。よく見れば魔力だけでなく、技能まで増えている。

 魔力の取り込みと神水の回復。ホーリードラモンの神秘の力。この二つが香織に異常なステータスをもたらしたのだろう。

 ハジメのステータスプレートがあれば、もっと詳しいことがわかっただろう。しかし、ハジメの荷物は、雫を抱えてベヒモスから逃げるときに捨ててしまっている。

 

 そこまで考えて、話を戻す。

 ハジメとは異なる方法だったので香織の容姿に変化は無い。それでも、以前よりもステータスが格段に強化されている。これなら二つ目の問題も大丈夫かもしれない。

 

「私は魔物を直接食べたわけじゃない。魔力を吸収して、体が壊された。だからもしかしたらなんだけれど、魔物を食べて体がバラバラになったのは魔物の肉の魔力のせいかもしれない。それなら魔物の肉から魔力を取り除ければ、それはただの肉になって、食べても体は破壊されないんじゃないかな?」

「……一理あるな」

 

 香織の推測は納得できるものだった。もしもそれが正しければ、一つ目の問題が解決できる。

 だが、試そうにもどうやって魔物の肉から魔力を取り出せばいいのだろう? 

 ハジメと香織、それにガブモンとニャロモンも一緒になって考える。

 

「〝魔力操作〟の派生技能の[+魔力干渉]って何ができるんだ?」

 

 ふとガブモンが疑問に思ったことを香織に聞く。

 

「そういえば試していなかった。〝魔力操作〟は魔力を操作するってことだよね? さっきから変な感覚があるし」

「そうだ。集中すれば技能が使える。やってみな」

「うん」

 

 ハジメに従い香織は集中し始める。すると彼女の体から白い魔力が沸き上がり、動き始めた。そのまま魔力は動き続け、香織の右手に集まった。

 

「これならもしかして……〝光球〟」

 

 香織が魔法名を呟くと、周囲を照らす光る球が現れた。

 

「俺は試す余裕がなかったけれど、これがあれば詠唱も魔法陣も無しで魔法が使えるんだな」

「確かに、ハジメは詠唱も魔法陣も使っていなかった」

 

 ハジメとガブモンが頷く。

 

「じゃあ[+魔力干渉]は何ができるの?」

「ちょっと待ってね?」

 

 ニャロモンが当初の疑問を言うと、香織は再び集中する。

 しばらくそうしていると、香織の魔力がまた動きだした。魔力はそのまま動き、周囲を照らす〝光球〟を包み込んだ。

 すると魔力が動くたびにそれに合わせて〝光球〟も動いた。

 

「魔法を動かしているのか?」

「魔法に魔力で干渉している、ってこと?」

「もうちょっと……」

 

 ハジメとガブモンが考察していると、香織はさらに集中する。今度は香織の魔力が地面に落ちていた石を包み込んだ。

 するとなんと魔力が石を持ち上げたのだ。

 

「魔法だけじゃなくて、物質にも干渉できるのか?」

「ああっ!!」

 

 ガブモンが突然声を上げた。

 

「そういえばハジメ、左腕もないのに鎧の左腕を動かしていた。そうか、この技能を使っていたんだ」

「魔力を使って魔法、いやもしかしたら他の魔力や物質を動かす技能ってことなのか」

「それならもしかしたら!!」

 

 ハジメが[+魔力干渉]についてまとめると、ニャロモンが声を張り上げる。

 

「魔物の肉から魔力を移動できるかもしれない」

「私やってみるよ!」

 

 香織はやる気を漲らせて意気込んだ。

 

 その後、いろいろ話し合った。その結果、ハジメ達の行動方針は決まった。

 

 横穴を拠点に香織の魔物肉の無害化の練習をする。

 そのためにこの階層の魔物を倒す。

 魔物と戦うのは香織とガブモンだ。

 ハジメは暴走の影響で体調が万全ではないし、幼年期のニャロモンでは戦力にならないからだ。なお、ガブモンは横穴を出るときにガルルモンに進化した。その時は、ハジメは慣れない[+魔力干渉]の練習もかねてデジヴァイスを魔力で支えて進化のカードを使った。

 ガルルモンに乗りながら、香織は〝魔力操作〟で魔法を使い魔物を倒した。ついでに探索も進めていく。

 香織達が魔物狩りに出ている間、ハジメとニャロモンは拠点の拡張と回復に努めた。

 ハジメは戦う手段の模索もしていた。なにせステータスプレートが無いのだ。自分の力の把握に、できることをいろいろ試していった。

 

 そして、ニャロモンが回復して、白い子犬のような姿の成長期デジモン、プロットモンに進化した時、香織は魔物肉から魔力を除去することに成功した。

 魔力が取り除かれた魔物の肉は、安全の確認のためにまずはハジメが食べた。

 自分の体で人体実験のようなことをしようとするハジメを、香織達は止めようとしたが、

 

「また暴走してもガブモン達が止めてくれるんだろう?」

 

 と言われてしまっては止められなかった。

 結果として、ハジメは食べても何事もなかった。

 デジモン達も、魔力の無くなった肉なら問題なく食べられた。ちなみに最初に食べたのはガブモンで止める暇もなかった。主従そっくりだと香織とニャロモンは思った。

 これで食糧問題は解決した。

 さらに二つ目の問題も、ハジメが新たな戦い方を見つけたことで解決した。

 

 そして、ハジメ達は方針を迷宮の探索に切り替えた。

 ハジメの錬成で探索に必要な道具を揃え、戦い方も考えた。

 数日間を探索に費やした結果、上層へ繋がる道はなかった。代わりに見つかったのは、下層への階段だった。

 

「道は下しかない。つまり」

「この迷宮を攻略するしかないってことか」

「薄々わかっていたけれどね」

「でも、覚悟は出来ている」

 

 ハジメ、ガブモン、香織、プロットモンがお互いに確認を取る。

 ハジメが魔物の毛皮と錬成で作ったバッグを、ハジメと香織が背負う。二人を守るようにガブモンとプロットモンが前に出る。二体の体には、神水が入った小さな水筒が魔物の皮で作ったベルトで取り付けられている。この数日の検証で、神水がデジモンにも効果があることが分かったためだ。

 また全員が簡易的だが、魔物の毛皮で作ったコートのような服を着ている。魔物の毛皮は普通の服よりも頑丈なので、鎧代わりになるのだ。

 

「行こう。そして、必ず迷宮を脱出するぞ!!」

「「「うん!」」」

 

 こうしてハジメ達の迷宮攻略が始まった。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 時は少し遡る。

 ホーリードラモンの力は闇に潜む者たちも感じていた。

 むしろ対極の力を持つからこそ、トータスの通常空間とは異なる場所にいながらより正確に力のことをとらえていた。

 

「これは聖なる力。ホーリーリングの力ですね」

「場所はあのテイマーが落ちた迷宮。ということはやはり生きていたということだな」

 

 黒衣に姿を包む者が感じた力を特定し、悪魔の羽根を持つ者が力の出どころを伝える。

 

「それはそれは。面白くなりそうですねえ。迷宮から出てくるのが楽しみです。別個体とはいえ、ホーリーリングを持つ相手と戦う機会もありそうです」

「そういえば、お前はホーリーリングを持つ者と因縁があったな」

「ええ。大天使の二体に屈辱を味あわされました。油断があったとはいえ、我が身の無様を恥じるばかりです。──だからこそ、もう負けんよ」

 

 お道化た様に言っていた黒衣の者だが、最後の言葉を言った時に発せられた気迫からは強い決意が感じられた。

 悪魔の羽根を持つ者はそれに対し、何も言わない。因縁の相手への復讐に、思うところがあるのは同じなのだ。

 

「話は変わるが、お前が種を植え付けた者はどうなのだ? あれから進展があったのか?」

「どうやら孤立しているようですね。まあ、後ろから撃たれると思われれば仕方ないでしょう。少し見てみますか?」

 

 黒衣の者が手をかざすと、どこからともなくコウモリが集まる。集まったコウモリ達は闇の塊になると、虚空に映像を映した。

 そこに映ったのは、トータスに召喚された生徒の一人、檜山大介だった。

 

 彼はオルクス大迷宮での一連の事件の後、王国での取り調べを受けた。その結果、魔人族との繋がりはなかったとして開放された。

 そして、再び光輝達との訓練へ加わったのだが、クラスメイト達は彼にかかわろうとしなかった。

 何せ命令違反をして、いきなり後ろから最上級魔法を放ったのだ。いくらハジメが裏切り者の疑いがあったとはいえ、危険な行動をした檜山を受け入れるかは別問題だった。一緒にいれば再び後ろから魔法を撃たれるかもしれないと、遠巻きにされたのだ。

 それは学校で彼とつるみ、トータスではパーティーを組んでいる近藤、中野、斎藤の三人も同じだった。

 一応、パーティーは組んだままだが、檜山は実力を飛躍的に伸ばしており、そのせいでパーティーの連携もとれなくなった。檜山一人と三人が一緒にいるだけだ。

 はぶかれた檜山は周囲の視線にだんだん苛立つようになり、遂には暴力事件を起こしていた。

 訓練中に騎士団員を一方的に嬲るように攻撃し、苛々を発散するようになったのだ。それをメルド団長と光輝に咎められるのが常になりつつあった。

 

「ふむ。段々と力が抑えられなくなっているようだな」

「そろそろ頃合いですね」

 

 闇の中で着々と陰謀が進められていった。

 

「もう一人の方はどうだ?」

「無事パートナーと出会えましたよ。これで契約は成立。我々に協力してくれるそうです」

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 そして時は現在に戻り、さらに進んだ。

 ハジメ達が迷宮の攻略を開始してからかなりの時間がたった。

 日の光が無い迷宮の中なので正確な日数はわからないが、それでもかなりのハイスピードだ。

 もっともその道中は大変なものだった。

 

 迷宮の階層は環境が全く異なっており、全てが過酷だった。しかもその環境に特化した魔物が現れ、襲い掛かって来る。

 暴走状態のハジメは環境ごと氷漬けにしていたが、そんな力業を使えば迷宮自体が崩壊しかねない。今までの戦いで壊れなかったのが、これからもそうだとは限らない。

 なのでハジメ達は臨機応変に迷宮の魔物と戦った。

 一面が水に満たされた階層では、水の中から襲い掛かって来る魚の魔物に、電撃や氷結の技を持つデジモンのカードを使って対処した。

 

 湿度が高く、木々が生い茂る樹海のような階層では、ムカデと樹の魔物が樹海に紛れて不意打ちをしてきた。

 そこでは索敵能力を付与するサーチモンのカードを使うことで対処した。

 なお、この階層では嬉しい誤算があった。樹の魔物、いわゆるトレントはその体に赤い果実を実らせており、ピンチになると果実を投げつけて攻撃してきた。

 香織が検査したところこの実には魔力がなく、何もせずに食べることができた。しかも、その果実の味がとてつもなく旨い。瑞々しい果肉はリンゴのような見た目に反して、スイカのようだった。甘味はスイカよりも強く、それでいて後味はすっきりしていた。全員、一口食べた瞬間硬直し、次の瞬間には無我夢中で食べた。

 無害化できるとはいえ、魔物肉の味は最悪だ。そんなものばかり食べていたから、みんなこの果実の虜になった。結果、全員でこの階層のトレントを狩って狩って狩りつくした。

 途中から正気に戻ったので、いくつかはジャムやドライフルーツに加工して保存した。

 

 これらの階層以外も過酷な場所だったが、ハジメ達は知恵と力、チームワークを駆使して乗り越えてきた。

 そして、最初に流された階層から数えて50階層目に到達した。

 探索の途中、ハジメ達は今までの迷宮にはなかったものを見つけた。

 

「扉、だよね?」

「ああ。明らかな人工物だ」

 

 迷宮の脇道の突き当り、ポッカリと開けた空間に高3メートルほどの荘厳な装飾がされた両開きの扉があった。左右には二体の一つ目の巨人の石像が、門番のように置かれている。

 まるでゲームのボス部屋のようだが、探索で下の階層への階段は見つけている。だから、迷宮のラスボスというわけではないだろう。

 怪しい場所なので、無視して下層に向かってもいいが、もしかしたら途中帰還できる場所かもしれない。不安と期待の両方を感じられる、そんな扉だった。

 

「こういうのって確かパンドラの箱っていうんだっけ?」

「パンドラの箱?」

 

 ガブモンが呟いた言葉を、プロットモンが尋ねる。

 

「パンドラの箱。地球の神話で、神々が世界中の災厄を閉じ込めた箱のことだ」

「でもその箱をパンドラっていう女の人が開けちゃって、世界に災厄が解き放たれたっていうお話。その後にパンドラが箱を覗き込むと、小さな希望が残されていたんだ」

「災厄と希望が詰まった箱。この扉ももしかしたらそんな感じかもしれないな」

「なるほど。人間には面白い話があるんだな」

 

 プロットモンが納得したところで、改めて扉を見る。

 この迷宮があとどれくらい続くのかわからない。今は大丈夫かもしれないが、これから先はどうなるか分からない。何か変化が欲しいと、全員が思っていた。

 

「多数決を取ろう。この扉を開けるのに賛成する人」

 

 ハジメがそう言うと、ガブモンとプロットモンが手を上げた。ハジメも上げている。

 しかし、香織だけは腕を組んでうんうんと悩んでいた。やがて渋々と手を上げた。

 

「どうしたんだ香織?」

「気になることでもあるのか?」

 

 プロットモンとハジメが問いかけると、香織はうーんと言いながら、

 

「なんか変な予感がしたんだ。この扉の中から、こう、不俱戴天の仇と相対した時の感覚というか。雫ちゃんがハジメ君に告白した時に、感じた雰囲気に似たものを感じたんだ。いや、ただの気のせいだと思うんだけどね? だから私も賛成。この扉開けよう」

 

 あははと笑う香織。

 要領を得なかったが、ハジメは香織の予感を考える。

 香織はハジメが落ちる前日も虫の知らせを感じていた。無視するのはちょっと危険だ。

 念のため、デジモン達は進化しておくことにした。

 

「「カードスラッシュ! 《超進化プラグインS》!!」」

 

 ──―EVOLUTION──―

 

「ガブモン進化! ガルルモン!!」

「プロットモン進化! テイルモン!!」

 

 ハジメと香織が進化のカードを使い、パートナーを進化させる。

 ガブモンは蒼い毛皮を持つ狼のガルルモンに。プロットモンはテイルモンに進化した。

 

「見たことのない魔法陣だ。少なくともハイリヒ王国に伝わっている魔法じゃないな」

 

 扉を調べるハジメが呟く。王宮にあった図書を読み漁ったから、ハジメの魔法の知識はかなりあると自負している。そのハジメが全く理解できない魔法陣が扉に刻まれていた。

 押しても引いても扉は動かない。ならこの魔法陣が明ける鍵になると思ったのだが、それも全く分からない。

 

「〝錬成〟で開けるしかないな」

「じゃあ私たちはトラップに警戒するよ」

「怪しいのはこの石像だな」

「私が左を、ガルルモンは右の石像を見ていてくれ」

 

 それからハジメが〝錬成〟を使って扉を変形させようとした。すると、扉から赤い放電が走り、ハジメの手が弾き飛ばされた。

 香織が駆け寄ってハジメの手を癒していると、両隣の石像が動き始めた。

 一つ目の巨人、サイクロプス。石だったはずなのに、頭から順番に石から生身の肉体になっていった。

 

 もっとも、彼らは次の瞬間、ガルルモンとテイルモンに頭を吹き飛ばされたが。

 

 完全に石化が解かれる前に、見張っていた二体によって急所の頭を攻撃され、首の辺りが石だったため、簡単に折れた。

 まだ石の状態だった胴体は、頭を失ったことで石化が解除されることなく、砕け散った。中から体内に持っていた魔石が転がり落ちてくる。

 

 おそらくこの扉を守るために封印され、長い間その役目を果たすために待っていたのだろう。なのに碌に役目を果たすこともできずに倒された。なんとも哀れな魔物たちだった。

 

 それはともかく。

 ハジメ達は転がった魔石を手に取り、扉をもう一度見る。

 扉には何かをはめる窪みが二つあった。魔石の大きさも同じ大きさだ。つまり、

 

「これが扉の鍵なのか?」

「ゲームのお約束だね」

 

 ハジメと香織が左右の窪みに魔石をはめると、ピッタリとはまり込んだ。

 直後、魔石から赤黒い魔力が扉に迸り、魔法陣が起動する。

 

(電池を入れた電化製品みたいだな)

 

 ハジメがそんな感想を抱いていると、バキャンという音が響き、フロアの壁から光が灯り、扉が開いた。

 中は真っ暗だったので、〝夜目〟を持つハジメが警戒しながら覗き込む。香織もハジメの顔の下の位置から覗き込む。

 

「……だれ?」

 

 すると、部屋の奥から声がした。小さいが、可愛らしい女の子の声だ。

 

「キャッ!?」

 

 真っ暗な部屋の中から聞こえた女の子の声という、ホラー映画にありそうな事態に思わず、香織がハジメに抱き着く。

 香織の柔らかい体にドキドキしながら、ハジメは部屋の中央を凝視する。すると、そこには巨大な立方体の石が置かれていた。その石には何か光るものが生えており、ゆらゆらと動いていた。その正体を見極めようと、ハジメが扉をさらに開けると、部屋の中の光が差し込み、扉の中が把握できた。

 

「人、なのか?」

 

 生えていたのは人だった。

 上半身から下と両手の肘までを立方体の石の中に埋め込まれた、女の子。彼女の長い金髪が、ホラー映画の女幽霊を彷彿とさせる。その髪の隙間から覗く真紅の瞳は、扉から覗き込むハジメを捉えて離さない。随分やつれているし、髪のせいでわからないが、香織に匹敵、あるいはそれ以上に美しいと思える容姿をしている。

 

 まさかこの迷宮で自分たち以外の人間(と思われる存在)と出会うとは思わなかったハジメは、どう行動するべきか考え、中を見渡した。

 

「!? あれは……!!」

 

 そしてハジメは見つけた。石に埋まる少女の下に一つの卵が転がっているのを。

 青い六つの花、雪の結晶のような模様が描かれたその卵を見て、ハジメは直感的に思った。

 あれは、デジタマだと──―。

 




〇デジモン紹介
ニャロモン
レベル:幼年期Ⅱ
タイプ:レッサー型
属性:なし
猫のような特性を持つ小型デジモン。ホーリーリングの力を開放し、力を使い果たしたテイルモンが退化した姿。攻撃能力は全く持っていない。



プロットモン
レベル:成長期
タイプ;哺乳類型
属性:ワクチン
たれ耳が特徴的な神聖系デジモンの子供。首には神聖系デジモンの証であるホーリーリングをつけているが、幼いため神聖的な力を発揮することができない。また性質的には不安定で、善にも悪にもなりうる可能性を持っている。必殺技の『パピーハウリング』は超高音の鳴き声で、敵を金縛りにしてしまう。
プロットモンが善の進化をしたデジモンがテイルモン。だが悪の進化をしたデジモンも存在する。



〇次回予告
香織「これがデジタマなの?」
ハジメ「俺が見つけたガブモンのデジタマに雰囲気が似ている」
???「この子は私の友達。お願い。この子と一緒に、連れて行って」
ハジメ「お前は一体何なんだ?」
???「私、先祖返りの吸血鬼」
次回「吸血鬼の少女 新たなるテイマー誕生」
「「「君もテイマーを目指せ!」」」



前半はハジメを慰める香織達。香織中心にしようと思ったんだけど、ハジメとの付き合いが深いガブモンがメインになりました。でもデジモンだからこそテイマーとパートナーの絆を表現できたと思います。
その後は奈落攻略におけるもろもろの問題の解決。魔力操作が技能なら派生技能もあるんじゃないかと思い考えました。[+魔力放射] と[+魔力干渉]。
[+魔力放射]はその名の通り魔力を放出する。今後の活用法に期待ですね。
今回のメインである[+魔力干渉]。他の魔力や物質に、魔力を使って干渉できる技能。これで魔物肉の魔力を取り除くというのが、今作における独自設定と作者のアイデアです。

香織のステータスは、魔力の部分をやりすぎたかなと思いますが、それだけのエネルギーを暴走ハジメは蓄えていたということで。なにせ魔石を丸ごと取り込んでいましたからね。

久しぶりの黒幕side。ちょっとずつ彼らの正体を考察する材料を出していこうと思います。

そして50階層に到達して、あの方が出てきました。
香織が何かの電波を受信しましたが。
あと門番が原作よりも酷い扱いだけど、デジモンがいたらこうなるよね。
次回もお楽しみに。
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