ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る   作:竜羽

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原作メインヒロインの登場回です。
ハジメや香織と同じく彼女もデジモンと関わることでちょっと変わっていることを表現できていれば幸いです。



17話 吸血鬼の少女 新たなるテイマー誕生

 少女が暗闇の中に封印されてから、どれほどの月日がたったのか。

 12歳の時に発現した〝自動再生〟の技能のおかげで肉体は歳を取らないので、死ぬことはない。しかし、それは同時に暗闇の中の孤独が永遠に続くことも意味した。

 得意の魔法で封印から脱出しようにも、肉体が埋め込まれた立方体には魔法を封じる効果があり、何もできない。

 ただ息をして、眠りにつく。そして起きた時に封印されている現実に絶望するのだ。

 そうして過ごしていたある時、部屋の中に突然、微かな光と共に霧が発生した。思わず久しぶりに声を出して驚いていると、霧の中から一つの卵が転がってきた。

 霧が消えた後も、卵は残っていた。

 しばらく暗闇に慣れた目で卵を見つめていた時、少女は卵に向かって声をかけてみた。

 

「……ねえ。あなた、どこから来たの?」

 

 孤独を紛らわす気紛れ。物言わぬ人形に話しかけるような感覚だった。かすれた弱弱しい声には諦めの色が強く、返事なんて期待していなかった。しかし、

 

 ──ピクピクグルングルン。

 

「え?」

 

 まるで少女の問いかけに応えるように、卵が勝手に動いたのだ。

 

「あ、あなたは……生きて、いるの?」

 

 ──クルリ。グルングルン。

 

 人が首を横に振るように、卵は左右に回った。まだ生まれていないから、生きているわけではないということだろう。

 それからも少女は眠っている間以外、ずっと卵に話しかけ続けた。卵は少女の言葉に応えるように動いた。

 囚われてからの孤独が、段々と晴れていった。

 少女がこの卵へ深い親愛を抱くようになるまで、そう時間はかからなかった。

 

 そして時は進み、今度は暗闇の中に光が差し込んできた。

 

「……だれ?」

「キャッ!?」

「人、なのか?」

 

 扉の先には、白髪の少年がいた。……あと黒髪の少女も。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 扉の中にいた、立方体に埋め込まれた少女。その近くには大きな卵が転がっている。

 思ってもいなかった光景にしばらく硬直していたが、ハジメは思い切って扉を開いて中に入った。

 

「みんな。罠がないか注意してくれ」

「わかったよ」

 

 罠の可能性もあるため、ハジメは香織達に警戒を促す。

 全員が頷いたのを見ると、扉を大きく開けて中に入る。万が一、入った後に勝手にしまって閉じ込められるのを防ぐため、錬成で扉を固定するのも忘れない。

 暴走を経てから鋭敏になった感覚を総動員して周囲の警戒をしつつ、ゆっくりと慎重に足を進める。そして、ハジメ達は部屋の中心辺りで足を止める。

 

「お前はなんだ? なぜこんなところで封印(そんなこと)になっているんだ?」

 

 警戒心MAXで問いかける。もしも不審なところがあれば、即座に部屋から脱出するという構えを取るハジメ。

 ハジメがもっとも優先するべきものは大切に思う香織達だ。もしも彼女たちに危険が及ぶようなら、少女を切り捨てて逃げるつもりだ。

 香織達も周辺を警戒する。

 少女は嘘偽りを言わないように、特に目の前のハジメに対して真摯に言葉を紡ぐ。

 

「私、先祖返りの吸血鬼。ここには、裏切られて、閉じ込められた」

 

 少女は語る。

 吸血鬼の国の王族に生まれ、国のために必死に働いていた。生まれつき〝魔力操作〟の技能を持っていたため、詠唱も魔法陣も持たない少女は天才的な魔法使いだった。しかも全属性に適性があったため、多種多様な魔法を使いこなし、戦場では一騎当千の強さを発揮した。

 だがある時、彼女の力を恐れた家臣たちにより、裏切られ捕らえられた。

 通常、反乱にあった王族は処刑されるのだが、少女には12歳の時に発現した〝自動再生〟という技能があった。その名の通り、怪我をしても瞬時に治してしまう技能で、例え心臓を貫かれても、首を落とされても時間がたてば治ってしまう。

 そのため、家臣達は少女をこのオルクス大迷宮の深層へと封印した。

 しかも裏切りと封印の陣頭指揮を執っていたのが、彼女が最も信頼していた叔父だったというのだから、その時の絶望は計り知れない。

 

「この封印、魔力を封じる。魔法を使えなくする」

 

 しかし、〝自動再生〟の技能だけは封印されることはなく、彼女は暗闇の中で永劫の生を過ごすこととなった。

 普通なら精神が狂ってしまう境遇。しかし、〝自動再生〟は精神も守るのか、少女は発狂しなかった。代わりにどんどん感情は擦り切れ、失っていった。

 

 少女の境遇を聞いていた香織は、あまりに非道な境遇に悲しんだ。

 

 ハジメは王宮の図書館で見つけた本にあった、300年前に滅んだ吸血鬼族の国の記述を思い出した。裏切られ、この奈落の底で300年も孤独に過ごすなんて、ぞっとする。

 話している間も少女の表情は全く動いていなかった。感情を失った証拠だろう。

 そんな風になっても死ぬことも、狂うこともできないなんて、とんでもない生き地獄だ。できるならば、封印から解放してあげたいと思う。

 

 だが、今の話が本当だという証拠がない。もしもハジメが一人なら、例え彼女の話が嘘で、助けたところを襲い掛かれても逃げればいい話だ。

 しかし、香織達という一蓮托生の仲間がいる。安易に動くことはできない。

 もう少し少女のことを知りたいと、ハジメはずっと気になっていたことを聞く。

 

「その卵はなんだ? もともとお前が持っていたものか?」

 

 少女の傍に転がっている卵を指さすハジメ。一目見た時から、ハジメはその卵に既視感を持っていた。6年前の初夏、ガブモンが生まれたデジタマと似た雰囲気が卵から感じられるのだ。つまりこの卵は、

 

「この子は、ちょっと前に、霧の中から出てきた。話しかけてみたら、応えてくれた。私の友達」

 

 少女の言葉に同意するように卵がクルリと回った。勝手に動く卵に、ハジメはますます既視感を感じ、ガルルモンとテイルモンに確認を取る。

 

「ハジメ。あの卵、デジモンの匂いがする」

「ああ。デジタマで間違いない」

 

 ガルルモンとテイルモンがハジメに答える。デジモンである彼らが言うのなら、間違いないだろう。霧というのは、香織がガブモン達と出会ったときに発生したデジタルフィールドだ。

 一見関係ない卵と霧のことをセットで言うということは、少女は嘘をついていないのだろう。最初の話も、嘘はないのかもしれない。

 だが、決定的な判断材料がない。ハジメが判断を悩んでいると、それを読み取ったのか少女が、

 

「私のこと、信じられないなら、いい。でも、この子は、助けて」

 

 とハジメに言った。

 自分の身よりもデジタマのことを案じる少女に、ハジメは目を見開いた。

 

 もしも少女がデジタマと出会っていなくて、孤独に押しつぶされそうになっていたなら、ハジメに泣いて縋りついてでも助けを求めただろう。そして、助けたハジメに依存しどこまでも、ハジメだけに寄り添い続けただろう。

 

 だが、デジタマとのふれあいで、擦り切れていた少女の感情が少し蘇った。

 自分と同じく、一人では動けないデジタマへの共感。たまたま転がってきたという、自分以上の理不尽によって、生まれる前から閉じ込められてしまったことへの憤り。それらが、少女に他者への思いやりを思い出させたのだ。

 

 そして、少女のデジタマへの優しさを感じたハジメもまた、嘘の可能性や決定的な判断材料のことをかなぐり捨てて、彼女を助けたいと強く思った。

 ハジメは香織達と迷宮から脱出すると決めた時に、一つ決めていたことがあった。

 それはガブモンや香織とテイルモン、離れてしまった雫や浩介たち自分にかかわる大切な者たちのためにトータスから脱出するということだ。

 かつて訪れたデジタルワールドと違い、望んでやってきたわけではないトータスに思い入れなどない。しかも香織から、自分は神の裏切り者扱いをされていると聞いた。ならば、この世界にとどまる理由など皆無だ。

 だから、香織達の安全のためなら、トータスの住人の死さえも顧みない決断をすると決めていた。

 

(なのに、その決断を一度も下すことなく、香織達を危険にさらしてまで、こいつを助けたいと思ってしまった。あれだけのことがあったのに、甘すぎるだろ!!)

 

 ハジメは自分の決意の弱さに愕然とする。

 だがその時、扉の向こうから何かが近づいてくる足音がした。

 

「魔物か?」

「俺が見てくる」

 

 ガルルモンが扉の外に出ていく。しばらくすると、扉の向こうからガルルモンの声が聞こえてきた。

 

「大変だハジメ!! デジモンが、タンクモンが現れた!!」

「なんだと!?」

 

 驚愕の声を上げると同時に、扉の向こうから砲撃の音がする。

 タンクモンとは戦車の姿をした成熟期のサイボーグ型デジモンだ。傭兵デジモンの異名を持ち、争いの場には必ず現れ、全身の重火器で敵を粉砕する。

 そのタンクモンがなぜこんなところに現れた!? 一体この世界に何が起こっているんだ!? 

 疑問は尽きないが、ここは袋小路だ。タンクモンの攻撃で崩落でも起きたら逃げられない。

 

「今行くガルルモン!」

「待ってハジメ君」

 

 デジヴァイスを手に駆けだそうとするハジメ。だがそれを香織が止める。

 

「香織?」

「その前に、ハジメ君のやりたいことをやって」

「え?」

 

 香織の思わぬ言葉に、目を見開くハジメ。

 

「なんとなくわかるよ。ハジメ君なら、何をしたいのかって。大丈夫。どんな決断をしても、私たちは信じている。だから、ハジメ君は心の思うままに進んで」

 

 微笑む香織。彼女の言葉と表情に息をのむハジメ。

 

「テイルモン! 行くよ!」

「ええ!」

 

 香織はテイルモンを伴って扉の向こうに走っていった。

 その後姿を眺めていたハジメは、一度目をつぶると、大きく深呼吸をした。そして、目を開けると取り出したデジヴァイスをしまい、扉と反対に足を向けた。

 

「あっ」

 

 そして、ハジメは少女を捉える立方体に右手を置いた。少女が大きく目を見開くのを無視して、ハジメは錬成を始めた。

 

 ハジメの体から迸る蒼い魔力。しかしそれは暴走の後、所々に紅と黒が混じるようになっている。

 それが立方体に注ぎ込まれ、立方体の形からハジメのイメージ通りに変形しようとする。しかし、立方体はまるでハジメの魔力に抵抗するように〝錬成〟の魔法を弾いた。

 この現象に、ハジメは憶えがあった。

 

 迷宮からの脱出方法を模索する際、上下の岩盤を変形して穴をあけようとした。しかし、一定のところまで変形させると岩盤は魔法による干渉を全く受けないようになっていた。どうやっても崩せなかったので、断念した。

 

 少女を封印する立方体は、迷宮の岩盤と似たような効果があるらしい。だが、迷宮ほど強固な性質じゃない。少しずつ侵食するように、ハジメの魔力が立方体の抵抗を跳ねのけている。

 

「抵抗が強い。だが!!」

 

 ハジメはさらに魔力を込める。召喚されてから尽きたことが無い魔力は、錬成をより強く発動させる。

 ハジメの体からより強く魔力が吹き上げる。部屋の中は蒼・紅・黒の3色の光に包まれていく。

 少女はハジメの放つ輝きに、瞬きを忘れて魅入った。

 そして、遂に立方体の抵抗を跳ねのけ、立方体をドロッと融解させた。

 長い間少女を捕えていた強固な戒めは、するりと解かれる。立方体から解放された少女は地面にぺたりと座り込んだ。小さな手足に、それなりに膨らんだ胸部。やせ衰えているが、神秘性を感じさせるほど美しかった。

 錬成を止めたハジメは、大量の魔力を使用した反動で疲弊しながらも、しばし見惚れてしまった。

 少女は数百年ぶりに自由になった体を、確かめるように動かす。震えていたが、ゆっくりと手を伸ばし、転がっていたデジタマを抱きしめる。

 愛おしそうにデジタマを撫でながら、ハジメの方を向き小さく、しかしはっきりと告げる。

 

「……ありがとう」

 

 その言葉にハジメは、香織と雫に告白された時のような温かい気持ちが湧いたのを感じた。

 大切に思っている香織達以外から言われたお礼にそんな感情を抱いたのは、きっとこの世界に召喚されてから碌な目に遭っていないからだ。だから、お礼の言葉がいつもより嬉しく感じたのだと、ハジメは自分を納得させる。

 

 衰弱している少女に神水を飲ませようとすると、少女がハジメの近くに寄るとハジメの手をぎゅっと握った。

 

「名前、なに?」

 

 そういえば名乗っていなかった。苦笑いしながら、ハジメは答える。

 

「ハジメだ。南雲ハジメ。お前は?」

「……ハジメ、ハジメ」

 

 少女はしばらくハジメの名前を刻み込むように繰り返し呟いていた。

 やがて完全に覚えたのか少女が自分の名前を言おうとして、思い直したようにハジメにお願いをした。

 

「名前、付けて」

「は? 付けるって、まさか忘れたのか?」

「もう、前の名前はいらない。新しい自分になりたい」

 

 少女はもう前の自分は死んだと思っている。裏切られ、封印され、永遠の孤独の生という地獄を経験したことで、もう以前の自分は死んだのだ。だったら、これから生きるにあたって、新しい自分として生きる。そのための名前を、封印から解き放ってくれたハジメから与えられたいのだ。

 

 それはハジメにも理解できることだった。デジモンの戦闘衝動に飲み込まれないように、〝僕〟ではなく〝俺〟という強い自分というものを構築した。今もこの世界を生き抜くために、強い自分でいる。

 経緯と目的が違うが、少女も似たようなものなのだろう。

 だが、ハジメは昔の自分を捨てたつもりはない。元の世界に戻った時、昔のような口調に戻そうと思っている。

 過去の自分を捨てるということは、両親のもとに生まれ育ち、ガブモンと出会い、タカト達と過ごした六年前の日々、それからの香織達との日常を捨てることになる。それをハジメは望まなかった。できるなら少女にも昔の自分を捨ててほしくない。

 しかし、少女の境遇はハジメよりも遥かに重い。だから、ハジメはとりあえず少女が自分の過去を受け止められるようになるまで、心の支えになればと名前を送ることにした。

 

 さてどんな名前がいいだろうかと、少女を眺めるハジメ。

 少女はハジメを真っ直ぐと見つめている。金色の髪がキラキラと光っている。

 

(そういえば最初にこいつを見た時、夜に光る月みたいだったな。ルナ……は安直か。ムーンも違うな。……よし)

 

「〝ユエ〟なんてどうだ? 俺の故郷の言葉で月を意味する言葉なんだが」

「ユエ? ……ユエ……ユエ」

「その金髪が光る月みたいに見えたんだ。だからどうかなって」

 

 ハジメの言葉を聞いて、自分の新しい名前とその意味をハジメの名前同様に心に刻み込む。

 

「んっ。今日から私はユエ。ありがとう」

 

 その時、全く動かなかった少女、ユエの表情が、小さく笑みを浮かべた。その笑みに、ハジメは照れくさくなって目を逸らした。

 それを誤魔化すように、ハジメは自分が着ていた魔物の毛皮のコートを差し出す。

 

「とりあえずこれを着ろ。いつまでも素っ裸じゃあなぁ」

「……ハジメのエッチ」

 

 受け取ったコートで自分の体とデジタマを包むユエ。何を言っても墓穴を掘りそうなので無視する。

 

 するとコートの中から光が溢れてきた。

 

「なに?」

「これは」

 

 ユエは困惑しながら、光が出てくる大本──デジタマをコートの中から取り出す。

 ユエが驚愕していると、この現象に覚えがあるハジメがユエに助言をする。

 

「ユエ。デジタマを撫でるんだ」

「デジタマ? 撫でる?」

「撫でることで、この卵、デジタマは孵るんだ。俺もそうした」

「……ん。わかった。なでなで」

 

 ハジメの言葉に従ってユエが光っているデジタマを撫でる。すると、デジタマの光はより強くなる。

 そして、光が弾けデジタマが孵った。

 

「ミ~」

「わっ」

 

 デジタマから孵ったデジモンは、そのまま飛び跳ねるとユエの顔にべったりと張り付いた。

 ハジメはそのデジモンをじっくり観察する。

 全身を白くてフワフワした繊毛に覆われた、手足のないスライムのようなデジモン。

 

「ユキミボタモンか」

「んっ。ユキミ、ボタモン?」

「ミッミッ」

 

 顔からデジモン、ユキミボタモンを離したユエが首をかしげる。

 

「そいつの名前だよ。ユキミボタモン」

「ミ~~」

 

 ハジメが教えるとユキミボタモンもその言葉が正しいと鳴き声を上げる。

 

「ユキミボタモン……ユキミボタモン……」

「ミッ! ミッ!」

「ん。私は、ユエ」

「ミッ……ユエ!」

「喋った。かわいい」

「ユエ! ユエ!」

 

 嬉しそうに名前を呼ぶユキミボタモンを、愛おしく抱きしめるユエ。

 二人を見つめるハジメは、そろそろかなとみていると空中に光の玉が現れた。

 

「また、何?」

「掴んでみろよ。それがお前たちの絆の象徴だ」

 

 ハジメの言葉に従ってユエが光に手を伸ばすと、そこにデジヴァイスが現れた。

 白い色にアイスブルーの縁取りのデジヴァイスが、ユエの手に収まる。

 

(ガブモン達がやってきたから思っていたが、デジノームも来ているんだな)

 

 デジヴァイスが現れるのは、デジノームと呼ばれる存在の仕業だ。デジタルワールドに住むデジモン以外の生命体であり、人間やデジモンの心を感じ取って望みをかなえ、デジタルなデータをリアルな物質に変換する。それがデジノームのコミュニケーション方法なのだ。

 6年前にもデジノーム達はハジメ達にデジヴァイスを与えたり、タカトの落書きからギルモンを生み出したりした。

 デジタルワールドとリアルワールドを自由に行き来する力をもっており、デジモンがトータスに来たことと香織のデジヴァイスが現れたことから、ハジメはデジノームもトータスに来ていると思っていた。

 それがユエの元にデジヴァイスが現れたことで確信に変わった。

 

(本当に、何がどうなっているんだ?)

 

 ハジメが考え事をしていると、扉の向こうから爆発音がした。

 

「やべっ。忘れていた!!」

「騒がしい」

 

 ハジメが扉の外で戦っているガルルモン達のことを思い出し、慌てて立ち上がる。

 

「悪いユエ。外で仲間たちがッ!?」

 

 その時、とんでもない魔物の気配が部屋の中に現れたのを察知した。

 なぜ今まで気が付かなかったのかわからない程、突然現れた。場所はちょうど……真上! 

 

 ハジメがユエとユキミボタモンを抱えて飛びのく。次の瞬間、さっきまでいた場所にズドンッと地響きを立てながら魔物がその姿を現した。

 

 体長は5メートル程。ガルルモンより一回り大きい。

 ハジメが知る生き物の中で一番近いのはサソリだろう。しかし、鋏は4本、尻尾は2本もある。尻尾の先には針があり、おそらく毒を持っているだろう。

 

 直前まで気が付かなかったことから、ユエの封印を解いたことで出現した可能性がある。

 恐らく、万が一ユエの封印が解けた時の保険。彼女と彼女の封印を解いた者を亡き者にするために、門番のサイクロプスのように用意されていたのだろう。

 

 サソリの目はハジメの腕の中にいるユエに向けられている。

 ハジメはサソリの視線を遮り、ユエを守るように立ちはだかる。

 

「ユエ。これを飲め」

 

 懐から神水の入った容器を取り出すと、それをユエに投げ渡す。

 

「ハジメ?」

「活力と魔力が回復する。早くしろ」

 

 言い放ちながら、今度は腰に手を伸ばし、そこから武器を取り出す。

 

 それは黒い光沢を放つ全長約35センチの、6連の回転式弾倉を搭載した、大型リボルバー拳銃だった。

 ハイリヒ王国で、形だけは作れるようになり、迷宮で採取した希少な鉱石をふんだんに使って生み出した現代兵器の照準を、眼前の魔物に向けた。

 




〇デジモン紹介
ユキミボタモン
レベル:幼年期Ⅰ
タイプ:スライム型
属性:データ
全身を白い繊毛で覆われたベビーデジモン。アグモンに進化するボタモンの一種と言われており、白いことからユキミボタモンと名付けられた。詳細は不明である。
寒さに強く、暑さに弱い。そのため氷雪型デジモンに進化する可能性が高い。


ユエの登場と彼女のテイマー覚醒回でした。封印から解放されて、新しい名前を得たことで身も心も解放されたことでデジタマが孵り、デジヴァイスが現れました。
ユエが新しい名前を得たことは、過去から目を逸らす行いだという見方もありますが、この時のユエにとって心を未来に向ける重要な儀式だったと作者は考えています。
いくら過去から目を逸らすなと言われても、それは心に余裕があるからこそできることです。なので、彼女の心を癒すためにハジメは名前を付けました。
今後彼女がどういう成長をするのか、お楽しみに。

次回予告はしばらく控えます。いろいろあって話の内容が変わってしまうかもしれないので。やはりストックが溜まらないと次回予告はできないです。

PS
オルクスにデジモンが出ました。つまり上層でも出てくる可能性がある。
勇者たちの前にヌメモンを出したら、まずいかなあ。勇者はまだしも永山パーティーの女子たちにあれが投げつけられるのはなあ。
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