ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る   作:竜羽

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前回書き貯めを作ると言ったのですが、なかなか進まず、しかもまた資格試験が近くなったので、忙しくなる前に投稿したいと思いました。

次話のプロットは出来ているので、久々の次回予告もあります。では、お楽しみください。


23話 最奥で待つモノ

「ジュレイモンかあ。面倒な相手だったね」

「……ん。大変だった」

「でも、ムンモンが進化したし、結果的によかったんじゃないかな?」

「……ん」

 

 香織の言葉に小さく頷くユエ。

 ジュレイモンIを倒したハジメ達の元に香織とネフェルティモンが合流。お互いの無事を喜び、何があったのかを話していた。

 ユエが幻覚によってハジメさえも信じられなくなったと聞き驚いた香織だったが、パートナーであるルナモンの進化と、愚直なハジメの言葉によってもう一度信じることができたことを聞き安心した。

 

 話をしているときのユエの表情が、ちょっと柔らかくなっているのが凄く気になったが。

 

「香織の方は大丈夫だったのか?」

 

 今度は逆にハジメが香織達の方のことを聞く。ハジメも香織達がクワガーモンIと戦っているのを見た。だが、樹海に落ちたユエ達の方が危険だと判断。香織達なら切り抜けると信じて、ユエ達を助けに行ったのだ。

 

「聞いて聞いて。結構大変だったんだよ」

「危ない橋を渡ったわ」

 

 香織とネフェルティモンから退化したテイルモンが、疲れたように話始めた。

 

 空中戦でクワガーモンIに苦戦していた香織達。何とか現状を打破できないかと思った香織は、ふと自分の持っている物に気が付いた。

 それはハジメが作ってくれた盾『アイギス』だ。

 香織はアイギスを取り出すと、魔力を流して展開した。

 クワガーモンIが奇襲を仕掛けてきたとき、なんと香織はアイギスをクワガーモンIに向けて投擲したのだ。

 

「いや、それどこのキャップだよ?」

「キャップは凄いよねえ。私じゃ当たらなかったよ。まあ、〝縛煌鎖〟を繋いでいたから、アイギスは落とさなかったよ」

「結果的に、そのおかげでクワガーモンに隙ができて、組み付くことができたんだけどね」

 

 ハジメは盾で戦う有名なヒーローみたいな香織の行動にツッコミを入れる。香織は「失敗失敗」と苦笑する。

 だがテイルモンの言うとおり、結果的にクワガーモンIに隙ができた。ネフェルティモンはクワガーモンIに組み付いたまま、地上に向かって落下した。そして、フロアの端に落ちた香織達は壁に激突した。

 

「ぶつかった壁の向こうに空洞があってね。クワガーモンも巻き込んでその中に入っちゃったの」

「何かの住処だったみたい。木の根っこが張り巡らされていたわ」

「結果的に助かったよ。クワガーモンを狭い所に押し込められたから、戦いやすくなったんだ」

「あとは香織が捕まえて私がとどめを刺した」

 

 香織達はクワガーモンI達の戦いの説明を終えた。偶然とはいえ、香織の機転が功を奏した結果だった。

 話を聞いてふと気になったハジメは香織に質問をする。

 

「空洞には何かいなかったのか?」

「いたと思うよ?クワガーモンが倒れていたところに、魔物の血の跡みたいなのがあったし。でもしばらく私たちが居ても何も出てこなかったよ。そんなことよりもユエ達が心配だったから急いで来たんだ」

「そうか……」

 

 ハジメはもしかしたらそこが、このフロアの重要な場所じゃないのかと思ったのだ。

 全員にその考えを伝えると、ひとまず香織が明けた空洞を目指すことにした。

 

 香織はテイルモンを再びネフェルティモンに進化させた。レキスモンは初めての進化だったのでルナモンに退化していた。今はムンモンの時のようにユエの腕の中だ。

 

「さあ、乗ってユエ」

 

 香織は探索を始めた時と同じく、ユエを乗せようと手を差し出す。だが、ユエは小さく首を横に振ると、

 

「……ハジメ、抱っこ」

「え?」

「へ?」

 

 ワーガルルモンに抱え上げてもらおうとしていたハジメに、両手を伸ばして言った。

 驚くハジメと素っ頓狂な声を出してしまった香織。

 

「……魔力を使って、疲れた。回復したいから、一緒に乗せて」

 

 つまりハジメの血を吸って、魔力を回復させたいということなのだ。移動するのならその間に済ませてしまいたいと。

 

「だ、だったら私の血を吸ってよ!ネフェルティモンならまだまだ座れるスペースあるんだし!」

「……今は、ハジメの血を吸いたい。我儘でごめんなさい。でも、ハジメを感じたい……」

「いきなりデレ過ぎじゃないかな!?かな!?」

 

 我儘を言い始めるユエ。香織は断固反対する。

 

「ユエ、悪いが今は香織とネフェルティモンの方に乗ってくれ。血は後で飲ませてやるから」

「……ふふっ。わかった。……代わりに、後で絶対に、ね?」

 

 ハジメがそう言うと、ユエはいたずらっぽく笑って引き下がった。ユエとルナモンもネフェルティモンに乗り、ハジメ達は移動した。

 結果として香織があけた穴の近くに別の穴があり、その先に下層への階段があった。ハジメ達は次の階層へと先を急いだ。

 

 移動中、さっきまで襲い掛かってきた魔物達は姿を見せなかった。

 実は魔物達は頭の花に寄生されており、花をばら撒いた魔物に操られていた。

 人間の女性と植物が融合したアルラウネのようなその魔物、エセアルラウネは魔物達を手足のように動かし、樹海の主であるジュレイモンIの元に迷宮の探索者を追い込む役割を持っていた。

 だが、偶然にも香織がぶつかった壁がエセアルラウネの住処になっていた。そのため、意図せず香織はクワガーモンIを使ってエセアルラウネを住処ごと潰してしまったのだった。

 本来ならかなり手古摺る魔物だったのだが、偶然のついでで倒されるという哀れな末路を辿ったのだった。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 樹海の階層からさらに先に進んだハジメ達。

 香織が持ってきてくれたノートパソコンの時計を確認してみれば、ハジメが落ちてから二か月くらい経っていた。

 ルナモンがレキスモンへ進化して戦力になったことで攻略のペースが上がった。

 ユエも伸び伸びと戦い、ハジメ達の大きな助けになった。

 

 そしてついに、次の階層でハジメが最初に流された階層から数えて100層目になるところまでやってきた。

 すでに次の階層への階段は見つけている。ハジメ達は階段の近くに拠点を作り、探索の準備に勤しんでいた。

 

「いよいよだな、ガブモン」

「ああ。100層目ってことは絶対何かある」

 

 ハジメとガブモンは特殊弾の補充をしながら、次の階層へと思いをはせる。

 片腕での作業にもすっかりと慣れ、ガブモンが運んできた鉱物を錬成して次々と弾薬を作っていく。

 

「ラスボスとかか?」

「定番と言えば定番だけどな。この迷宮、何故か地球のゲームみたいな作りをしているから、ラスボスがいる可能性が高い」

 

 ガブモンが予想を話すと、ハジメが肯定する。

 

「ラスボスかあ。……やっぱりデジモンのイミテーション?」

「かもな。完全体の上位体、もしかしたら究極体のイミテーションが出てくるかもな」

「ありえそう。ハジメ、出てきそうな究極体デジモンの連想ゲームしようぜ」

「いいぜ」

「じゃあ俺から。う~ん、ムゲンドラモン」

「うわ、ありえそう。じゃあ俺はグランディスクワガーモン」

「ボルトモン」

「メタルシードラモン」

「ピエモン」

「ピエモンはないだろう、ガブモン」

「あー、やっぱり?」

 

 ピエモンの予想はないだろうとガブモンに突っ込みを入れるハジメ。ピエモンは魔人型のデジモンで、強力だが謎の多いデジモンだ。ラスボスには相応しいが、迷宮というより物語のラスボスタイプだ。

 その後もハジメとガブモンは雑談をしながら準備を進めていった。

 

 一方、香織とテイルモン。

 

「シールド!ガード!!」

「はっ!ほっ!」

 

 テイルモンが壁や床を足場にぴょんぴょん跳ねて飛び掛かって来るのを、香織が手に持った武器で防ぐ。

 二人は習慣の戦闘訓練をしていた。

 今の香織のステータスはこのようになっている。

 

 

 

 ===============================

 白崎香織 17歳 女 レベル:75

 天職:治癒師

 筋力:980

 体力:1020

 耐性:1280

 敏捷:830

 魔力:50080

 魔耐:50080

 技能:回復魔法[+回復効果上昇][+回復速度上昇][+イメージ補強力上昇][+浸透看破][+範囲回復効果上昇][+遠隔回復効果上昇][+状態異常回復効果上昇][+消費魔力減少][+魔力効率上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動][+付加発動]・光属性適性[+発動速度上昇][+効果上昇][+持続時間上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動]・高速魔力回復[+瞑想]・魔力操作[+魔力放射] [+魔力干渉] [+魔力収束] [+身体強化]・天歩[+空力][+縮地] [+剛脚]・夜目・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・言語理解

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 相変わらずおかしい数値の魔力と魔耐。他のステータスも攻略を開始した時より大幅に上がっている。攻略中に危ない戦闘を何度も乗り越え、休息時でも訓練に励んでいた結果だった。

 そんな香織が今振り回しているのは王宮から配られたアーティファクトの杖ではなく、なんとハジメが作ってくれたシールドのアイギス。

 香織は、クワガーモンIにアイギスを投げてから盾を使っての戦いを試してみたところ、見事にはまったのだ。それから盾を使った戦いを練習している。参考イメージは米国のキャップに、盾の騎士の英霊の力を宿したマシュマロな後輩だ。

 さらに香織はハジメに頼み込んでアイギスに改良を加えてもらった。

 展開すると腕に装着できる取っ手を作ったり、取り回しがしやすい小さな盾を内側に着けてもらったりした。加えて、〝聖絶〟の魔法陣も刻まれており、盾を使って展開される結界は鉄壁の防御力だ。香織の防御とユエの殲滅魔法の組み合わせは凶悪だった。派生技能の[+身体強化]で盾を振り回すことで、近接戦でもかなり強くなった。成熟期のテイルモンの割と本気の動きにも対応できる。シールダー香織の誕生だ。

 

「気合入っているな、香織」

「うん!そろそろ迷宮も終わるかもしれないからね!」

 

 訓練の合間に二人が話すのもやっぱりこの話題だった。

 

「みんなで迷宮を出るために、頑張ろうね。テイルモン」

「ああ。ここまで来たんだ。最後まで力を振り絞ろう」

 

 気合を入れなおした二人は訓練を再開する。この奈落の地獄から脱出するために。

 

 そして最後の組みであり、ユエとルナモン。

 二人はハジメのノートパソコンを借りていた。

 

「ぐすっ。いいラストだった……」

「ん。感動した……」

 

 涙ぐむユエとルナモン。二人がノートパソコンで観ていたのはあるアニメ動画だった。

 それはハジメと香織、いやデジモンテイマーズ全員の永遠の最押しアニメ『デジモンアドベンチャー』だ。次点は『デジモンアドベンチャー02』。

 日本語をある程度習得したユエは日本のアニメも解るようになった。そこでデジモンの勉強も兼ねてハジメ達がダウンロードしていたアニメ動画を観させてもらった。

 その結果、見事に嵌った。

 トータスには絶対になかったストーリーに、デジモンとの交流が描かれていることに感情移入して夢中になった。

 ただしヴァンデモン。お前は許さない。吸血鬼の恥知らずめ。

 

『デジモンアドベンチャー』だけでなく、魔法が出てくるアニメもユエは見た。日本のアニメ作品には魔法の参考になるものが数多く、触発されたユエはオリジナル魔法の開発を始めた。

 魔法のレパートリーを圧倒的に増やしたユエは、封印される前よりも強くなったと実感している。

 

「……みんなお別れになって可哀そう」

「……ん」

 

 ルナモンが見ていたアニメの感想を言い、ユエが頷く。

 ユエ達が観ていたのはちょうど最終回で、主人公の選ばれし子供達が世界を救って元の世界に帰ったところだ。デジモン達と別れなければいけないのがとても可哀そうだった。何だかそれが自分とハジメ達のようで、少しこの迷宮探索が終わるのが怖くなった。だが、ユエはその不安を振り払い、ルナモンを抱え上げる。

 

「……アニメは、アニメ。私とルナモンはずっと一緒。ハジメ達ともずっと一緒」

 

 抱きしめながら言うユエの言葉に、ルナモンも小さく頷く。

 

「……『02』は、次の階層を攻略したら観よう」

「……ん」

 

 ユエとルナモンはアニメ鑑賞を終える。

 ちょうどその時、香織が全員に声をかける。

 

「ご飯できたよ~!みんな手を洗って集まって!」

 

 いつものように魔物肉を無毒化して食事を作っていた香織。ハジメ達は攻略の数少ないお楽しみの時間に、各々の作業を止めて集まって来る。

 本日の献立は、ハジメが作った圧力鍋で煮込んだ魔物肉のトロトロ煮だ。調味料が塩だけしかない中、血抜きと調理方法を工夫した香織の自信作だった。

 ハジメ達は喜んで食べて攻略への英気を養った。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 休息を終えたハジメ達は階下へと続く階段に向かった。

 その階層は今までの階層とは根本的に作りが異なっていた。

 無数の巨大な柱が等間隔に並んでおり、まるでどこかの神殿の様だった。ハジメと香織はパルテノン神殿を連想した。天井までは30メートル程はありそうで、床は平らで綺麗だ。

 

 ハジメ達がしばしその光景に見とれながら探索をしていると、全ての柱が輝き始めた。

 全員がハッと我を取り戻し警戒する中、特に何も起こらない。

 念のためにデジモン達を進化させて進む。ハジメはワーガルルモンまで進化させて、万全の態勢を整える。

 

 200メートルも進んだ頃、遂に柱以外の物を見つけた。

 それは巨大な扉だった。ユエが封印されていた部屋の扉よりも大きく、全長10メートルはありそうだ。美しい彫刻が彫られており、周囲を荘厳な雰囲気で満たしている。

 

「これはまたすごいな」

「もしかして、ここかな?」

「……ん。反逆者の住処?」

「つまりここがゴール?」

「だったら、門番がいるかもしれない」

「……警戒続行」

 

 ラスボスが出てきそうな雰囲気に全員が警戒する。

 覚悟を決めた表情で扉に近づくハジメ達。そして、扉に近づいたハジメ達の前に巨大な魔法陣が現れた。

 

 ハジメ達が戦闘態勢を取る中、魔法陣の中から出現したのは6つの頭を持つ、体長30メートルの巨大な蛇の化け物。例えるなら神話の怪物ヒュドラだった。

 

「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」

 

 不思議な音色の鳴き声を上げるヒュドラ。侵入者であるハジメ達へ怒りを抱いているのか、常人ならそれだけで心臓を止めてしまうかもしれない壮絶な殺気が叩きつけられた。

 

 それに対してハジメ達は一歩も引かずに立ち向かう。そして戦いが始まったのだが、決着はすぐに着いた。

 

「《カイザーネイル》!!」

「《ロゼッタストーン》!!」

「《ティアーアロー》!!」

「〝蒼天流星〟!!」

 

「「「「「「クキャァァアアン!!」」」」」」

 

 ワーガルルモンの爪で首が全て切り裂かれ、ネフェルティモンが召喚した巨石に押しつぶされ、レキスモンの氷の矢で撃たれて、ユエの〝蒼天〟を砲撃のようにしたオリジナル魔法で吹き飛ばされた。出てきたばかりなのに容赦ない攻撃に、悲鳴を上げるヒュドラ。

 6つの首が力を失い、残った胴体から七本目の銀色の首が生えてきて光線を吐いて反撃するが、

 

「〝縛煌鎖・天蓋〟!!」

「貫け、貫通爆裂弾(スピアエクスプロード)!!」

 

 香織が網のように広げた巨大な光の鎖に絡めとられる。閃光を吐こうとしていた銀色の首は押さえつけられ、そこにハジメが開発した弾丸が撃ち込まれる。貫通爆撃の名前の通り、弾丸はヒュドラの表皮を貫通し、体内で大爆発を起こした。銀色の首も吹き飛び、ヒュドラの体から力が抜けていった。

 

「……倒したのか?」

 

 全員が警戒を解かない中、ハジメが呟く。

 

「……動き出さないね」

「……ん」

 

 香織とユエも困惑しながら言う。鋭い感覚を持つデジモン達がヒュドラの死体を確認する。彼らの目から見てもヒュドラの体から生きている気配は感じられなかった。

 

「死んでいる」

「そうか」

 

 ワーガルルモンの言葉に、ハジメ達はようやく戦闘態勢を解いた。

 ハジメ達は顔を見合わせて、戦いの感想を言う。

 

「「「「「「弱すぎる」」」」」」

 

 正直、これまでの階層に出てきた完全体デジモンのイミテーションの方が手ごわかった。本当にこれがラスボスなのかと困惑する。

 

 ──パチパチ

 

 そこに突然、拍手の音が聞こえた。

 ハッとしたハジメ達は武器を構え、再び戦闘態勢を取る。

 

『お見事です。攻略者の皆様』

 

 どこからか、何者かの声が聞こえてきた。声音からして女性のようだ。

 

『こちらの不手際により難易度変更が遅れてしまい申し訳ありませんでした。なので、皆さんが本当にこの迷宮を攻略するのにふさわしいか確かめるために、標準仕様のガーディアンを相手にしていただきました』

 

 おそらくスピーカーのようなもので声を出しているのだろう。声だけで姿は全く見えない。ハジメ達は警戒しつつも声の言葉を考える。

 ガーディアンとはさっきのヒュドラの事なのだろう。やっぱりあいつがラスボスだったのだ。ただし、声の言葉が言うとおりなら本来のラスボスとのことだが。

 

『討伐まで3分37秒。流石はデジモンテイマーです』

「デジモンテイマーを知っている……。何者だ?」

「この世界の住人なのか怪しいね」

 

 ハジメと香織が疑問を口にする。謎の声はそれに答えることなく、話を続ける。

 

『只今より、真のガーディアンを出現させます。皆さんの奮闘をご期待します』

「いきなりだな」

「休憩する暇もないって……」

「……不親切」

 

 一歩的に告げてくる謎の声に、ハジメ達は口々に文句を言う。

 しかし、そんなことで謎の声は待ってくれない。

 ヒュドラの死体の下に再び魔法陣が展開される。またヒュドラの様な魔物が出てくるのかと、ハジメ達は身構える。だが、

 

「……おいおい……」

 

 ハジメが引き攣った笑みを浮かべる。魔法陣はさっきヒュドラを召喚した時よりも大きく、ハジメ達の足元を超えてフロア全体に広がっていく。遂に魔法陣は壁にも広がり、天井にまで展開していった。

 

 そして、魔法陣が完成。強烈な光を放った。

 

 ハジメ達の視界が真っ白に染まる。思わず目を閉じる。

 暫くすると光が収まり、目を開けた時、ハジメ達の前には信じられない光景が広がっていた。

 

「何だよ……これ……」

 

 呆然と呟くハジメ。香織達も言葉を失う。

 彼らの前に広がっているのは、どこまでも広がっている青空だった。しかも所々には浮遊島が浮かんでおり、ハジメ達はその浮遊島の一つに立っていた。浮遊島の大きさはバラバラで、ハジメ達が立っている島は特に大きい。直径約1キロで、土と岩が転がるだけの平らな島だ。

 地下の迷宮にいたはずなのに、真逆の世界に放り出されてしまった。

 

「転移か……?」

「幻覚とか?」

「……わからない。こんな魔法、見たことも、聞いたことない」

 

 未だ混乱から立ち直れないハジメ達だが、状況は待ってくれない。

 突然、ハジメ達の上を巨大な影がものすごい速さで横切った。ハジメ達が上を向いた瞬間、猛烈な風が吹き荒れる。

 

「うわっ!?」

「きゃっ!?」

「んんッ!?」

 

 ハジメ達が吹き飛ばされそうになるほどの風圧に、各々のパートナーデジモンが駆け寄り支える。

 必死で堪えるハジメ達に構うことなく、巨大な影はハジメ達の上を縦横無尽に飛び回る。ただ飛ぶだけで巻き起こる突風と衝撃波に、動くことができない。

 やがて、飛び回ることを止めた影はハジメ達の前に舞い降りる。

 

「なんだ、こいつは……?」

「デジモン、なの?」

「……竜」

 

 ユエが呟いた通り、それは巨大な竜だった。

 ただし、生物的な竜ではなく、機械的な、まるでロボットの様な竜だ。腕はなく巨大な翼を広げている。その翼には透明なプレートが重なってできており、光の粒子が漏れている。足の爪や体に生えている棘は水色に光っている。長い尻尾には巨大なレーザーガンが装備されている。

 相対することで感じる途轍もない威圧感に、香織とユエは動けなくなる。

 だがハジメとデジモン達は、何とか威圧感に耐える。

 デジモン達は生まれ持った闘争本能で。ハジメは過去に似た威圧感を持つ存在と相対した経験から。

 

「なあ、ワーガルルモン。こいつ、もしかしてなんだが……」

「……ハジメの考えている通りだ」

 

 ワーガルルモンは一度言葉を切り、香織とユエにも聞こえるように言う。

 

「こいつは正真正銘のデジモン。しかも究極体だ!!」

 

 ワーガルルモンの言葉を肯定するように、先ほどの謎の声が聞こえてくる。

 

『ご紹介します。このメタリックドラモンが皆さんの最後の相手です。ではご健闘を』

 

 一方的に話し終えて、謎の声は聞こえなくなった。

 ハジメはデジヴァイスで相手のデータを読み取る。

 

「……出た。メタリックドラモン。究極体。天竜型。必殺技は《レーザーカノン》と《レーザーサーベル》」

 

 ハジメも初めて見るデジモンだった。だが、並みの究極体ではない。感じられる威圧感はテイマーズの仲間たちが進化する究極体デジモン達にも匹敵するほどだ。

 

「キュオアアアアアアッッ!!!」

 

 メタリックドラモンが咆哮を上げて、大きく羽ばたく。巻き起こるのはさっきとは比べ物にならない突風、いや暴風だ。あまりの風圧に浮遊島自体が、地震が起きたかのように大きく揺れる。あまりの振動にハジメ達テイマーは立っていられなくなる。

 デジモン達がそれぞれのテイマーが飛ばされないように盾になる。

 

「起こす風だけでッ……!!?」

「これが、究極体ッ……!!?」

 

 香織とユエは初めて感じる究極体の力に戦慄する。だが、こんなものは序の口だった。

 メタリックドラモンはハジメ達に向かって尻尾のレーザーガンの砲門を向ける。そこには眩い光が集まっている。

 

「!?不味い!?ワーガルルモン!!!」

 

 ハジメは咄嗟にワーガルルモンに指示を出す。

 その意を酌んだワーガルルモンは背中のサジタリウスを展開。飛び上がると2連のレーザー砲を向ける。

 

「《レーザーカノン》!!」

「《アルナスショット》!!!」

 

 メタリックドラモンのレーザーガンから放たれた極大の光線と、ワーガルルモンのサジタリウスから放たれた二条の光線がぶつかる。

 しかし、ワーガルルモンの《アルナスショット》は、メタリックドラモンの《レーザーカノン》に一瞬でかき消される。あまりの光に、ハジメ達は眼を瞑る。

 そのままワーガルルモンは光線に飲み込まれた。

 

「避けろおおおおッッ!!!」

 

 ハジメの叫びに、ネフェルティモンとレキスモンはハジメ達を抱えて、その場を飛び退く。おかげでギリギリ躱すことができた。

《アルナスショット》を当てたことと、ワーガルルモンがぶつかったこと、そして何よりメタリックドラモンが様子見でエネルギーをほとんどチャージせずに発射したことで、射線が逸れていたことが幸いした。

 地面を転がったハジメ達が顔を上げると、攻撃の跡が目に入って来る。

 

「あ、ああ……」

「……島に、穴が」

 

 ユエが零した通り、《レーザーカノン》は直撃した浮遊島の大地に大きな穴をあけていた。

 ただの様子見の攻撃で、分厚い岩盤を貫く威力。あまりの破壊力に戦慄する香織とユエだが、ハジメは二人に構わず攻撃の跡地に向かって駆けだす。

 

「ワーガルルモン!!ワーガルルモン!!!」

 

 上空でメタリックドラモンが攻撃したことで生じた熱を放出している中、必死に攻撃を受けたワーガルルモンを探すハジメ。

 すると、島の端っこに動く影を見つけた。

 

「ワーガルルモン!!」

 

 ワーガルルモンだ。だが、その体はボロボロで立つこともできずに膝をついていた。背中のサジタリウスは壊れて飛べなくなっており、防具もほとんど罅割れて壊れている。身体も傷だらけで立ち上がれなさそうだ。

 遠目でワーガルルモンの様子を見ていた香織とユエは、これまでの戦いで無敵の強さを見せていたワーガルルモンが、一撃で戦闘不能になっていることに信じられない目をする。

 

「大丈夫か!?!?」

「声が大きい……大丈夫だよ。痛ッ」

 

 痛みに顔をしかめながらも、体を起こすワーガルルモン。しかし、その体は光に包まれて小さくなる。大きなダメージを受けたことで、成長期のガブモンに戻ってしまったのだ。

 痛々しいパートナーの姿に心を痛めながらも、ハジメはガブモンに声をかける。

 

「ガブモン、わかっていると思うが……」

「ああ。大丈夫だ。問題ない」

「……悪い」

「気にするな。あいつを倒せるのは、俺たちだけだ」

 

 傷ついた体に鞭を打ち、立ち上がるガブモン。ハジメはガブモンのテイマーとして、デジヴァイスを手に横に立つ。

 二人はこちらの様子を窺っているメタリックドラモンを睨みつける。

 

「ハジメ君!!」

「ハジメ!!」

 

 香織とユエがこちらに来ようとするが、ハジメは「来るな!!」と怒鳴って止める。

 足を止めた二人に、乱暴な言い方をしてごめんと思い、ハジメは二人に少し頭を下げる。これから起きる戦いに二人を巻き込むわけにはいかないのだ。

 

「行くぞ、ガブモン!!」

「ああ!!」

 

 二人の心が一つになり、デジヴァイスが光を放つ。ハジメはデジヴァイスを掲げる。

 

 ──MATRIX XEVOLUTION──

 

「マトリックスゼヴォリューション!!」

 

 デジヴァイスを胸に当てる。するとハジメの体はデジヴァイスの光に包まれて、データになっていく。

 データになったハジメはガブモンと一つになる。

 

「ガブモン!X進化!!」

 

 ハジメのデータと一つになったガブモンもデータが分解され、再構成される。

 成熟期のガルルモン、完全体のワーガルルモンを超え究極体へ。

 体は機械化され、蒼い装甲を身に纏う。

 右肩にビームランチャー、左肩にはミサイルポッドが装備され、さらに体の各所に重火器が装着されていく。

 左腕には超高速連射能力を持つガトリング砲『メタルストーム』が装備され、究極のマシーン型デジモンとして完成される。

 一体化したデータの中で、ハジメが相手を見据える。

 

「メタルガルルモンX!!」

 

 これこそガブモンの最終進化形態。全身を武装化することで圧倒的な火力を誇るメタルガルルモンだ!

 

「ハジメ君とガブモンが……」

「一つになった……」

「これが話に聞いたデジモンとテイマーの到達点」

「……凄い」

 

 ハジメとガブモンの融合進化を始めて見た香織達は驚愕する。ネフェルティモンだけは話だけは聞いていたようで、感動していた。

 メタルガルルモンは背中のウィングを展開して飛び上がると、メタリックドラモンに向かっていく。

 香織はデジヴァイスを取り出し、メタルガルルモンのデータを読み取る。

 

「メタルガルルモン。サイボーグ型。究極体。データ種。必殺技は《コキュートスブレス》と《メタルストーム》。究極体!これなら勝てるよ!」

「……ん!」

 

 香織は希望が見えたと喜ぶ。ユエも話に聞いていたガブモンの究極体に、希望に満ちた声を上げる。

 進化したメタルガルルモンをメタリックドラモンは戦うべき相手だと認識。メタルガルルモンと相対する。

 

「行くぞ!!」

 

 メタルガルルモンが武装を展開し、メタリックドラモンをロックオンする。

 メタリックドラモンもメタルガルルモンへ突撃しようと、全身に力を込める。

 二体の究極体が激しく激突する。──と思われたその時。

 

 

 

 ──バチッ

 

 

 

『え?』

「なに?」

 

 メタルガルルモンの体から紅黒い電流が放出された。最初は小さかったが、どんどん大きくなっていく。

 

 ──バチバチバチッバチチチチチチッッ!!!

 

「『ああ、アアアアアアアアッッ!!!!!????』」

 

 メタルガルルモンと、一体化しているハジメに途轍もない痛みが走る。体の中からバラバラに引き千切られるような感覚に二人は苦悶の声を上げる。

 やがて電流は電撃に、そして雷撃とも言えるほど大きく激しくなっていく。

 

「あ、あれは……あの時の……!!?」

 

 メタルガルルモンの様子に、香織の頭にある光景が過る。それは迷宮に突入した時に、暴走していたハジメと出会った時の光景だ。あの時もハジメはあの紅黒い雷撃を体から放っていた。暴走はワーガルルモンがハジメに宿っていたデジモンのデータをロードし、香織とホーリードラモンの力で癒すことで収まったはずだ。

 

(なのに、なんで?もうハジメ君が暴走する原因なんて…………ああっ!!)

 

 ふと気が付いた。ハジメを暴走させていたデジモンのデータは、ワーガルルモン、つまりガブモンがロード、吸収した。そのガブモンは今、ハジメと一体化してメタルガルルモンになっている。暴走していた時のデータがハジメの肉体に戻ったということだ。

 

「そんな。そんなことって!!?」

 

 またハジメが苦しんでしまう。全てを破壊する暴力の化身に!!

 黒い雷撃の中で、メタルガルルモンの鮮やかな蒼い身体が漆黒に染まっていく。金色の瞳は危険な紅い光を放ち始める。

 

「『ウオオオアアアアアアアアッッッッ!!!』」

 

 雷撃が収まると、身体から迸る黒い力に苦痛の声を上げながら、メタルガルルモンだったデジモンがいた。

 その姿はまるでハジメが暴走していた時に身に纏っていた時の鎧にそっくりだった。しかし、放っている威圧感は比較にならない。

 恐る恐る香織はさっきのように、漆黒のメタルガルルモンのデータを読み取る。

 

「……ブラックメタルガルルモン。究極体。ウイルス種……必殺技は、《漆黒のコキュートスブレス》。ウイルス種になっている……」

 

 力を無くしてへたり込む香織。ユエもさっきまでと違って恐ろしい雰囲気を放つメタルガルルモンに不安を隠せない。

 

「オオオオオオッッ!!!」

「キュオオオオッッ!!!」

 

 天空の世界に、二体の究極体の雄叫びが響き渡り、次の瞬間に激突した。

 

 

 




〇あとがき
〇デジモン紹介
メタリックドラモン
レベル:究極体
タイプ:天竜型
属性:データ
デジタルワールド最上空を光速で飛ぶデジモン、その姿は他の飛行デジモンでも捉えることは叶わない。
オルクス大迷宮の最深部からハジメ達が飛ばされた異空間に出現。ハジメ達の前に立ちはだかる。なぜこんなところにいるのか、一切は不明。本来ならばデジタルワールドの上空から調和を保つ粒子を広げている高位の存在である。
必殺技は、尻尾のレーザーガンに溜めた強力な光線で一直線上に殲滅する《レーザーカノン》。技発動の瞬間に放たれる光は10km離れた地からも見ることができ、近距離で直接目撃した者はそのあまりのまばゆさに目を潰される。
さらに尻尾のレーザーを剣に固定し、高速で突撃し斬りつける《レーザーサーベル》がある。


前回のその後と、ラスボス戦への準備。そして、ラスボス戦開始でした。
当初は原作のヒュドラを強化するつもりだったんですが、それじゃあハジメ達は究極体にならないよなあと思い、かなり後に出すつもりだったメタリックドラモンを登場させました。
活動報告でもお気に入りデジモンといったこのデジモンは、アニメにも未登場なので、うまく描けるか不安ですが、頑張ります。

そして、満を持して登場のブラックメタルガルルモンX抗体。公式ではいないんですが、ブラックウォーグレイモンX抗体がいるんだからとオリジナルで登場させました。果たしてその力は・・・。

次回もよろしくお願いします。

〇次回予告
ブラックメタルガルルモンに進化してしまったハジメとガブモン。暴走する力を必死に制御しながら、メタリックドラモンと壮絶な空中戦を繰り広げる。
これまでの戦いとはレベルが違いすぎる戦いに何もできない香織とユエ。それでも何かできることがあるはずだと奮い立つが、思わぬ存在が立ちはだかる。

次回24話「究極対決 メタリックドラモンVSブラックメタルガルルモン」

今、冒険が進化する。
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