ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る   作:竜羽

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感想・評価・誤字脱字報告ありがとうございます。
誤字脱字は何とか無くそうと思うのですが難しいです。なので報告してくれる方には感謝と申し訳なさがない交ぜになります。

今話でこの小説の謎の一端が明かされますのでお楽しみください。


26話 世界の秘密 再結成デジモンテイマーズ!

 光で視界が真っ白になってもハジメ達は警戒を解かなかった。エンジェウーモンのおかげで怪我は治っているが、極限状態での戦闘で全員の気力と体力は尽きかけている。

 それでも生き残るために身構えていると、体がふわりと浮かび上がる感覚があった。この世界に来てだんだんお馴染みになってきた転移の感覚だ。

 そしてハジメ達は転移先に移動した。

 

「え?」

 

 光が収まって周囲を見渡したハジメ達。すると全員が目を丸くした。

 なぜならそこには柔らかな光が差し込む美しい庭園だったのだ。ハジメ達はその一角にある東屋の様な建物にいた。上を見れば岩の天井が見えたので、洞窟内なのは間違いないのだが、洞窟というイメージからかけ離れた場所だった。小川が近くにあるのかせせらぎが聞こえてくる。少し離れた所には大きな館が立っているのが見えた。さらにハジメ達を驚かせたのは天井付近に階層を照らす太陽の様な光球があったことだ。蛍光灯のような無機質な光ではなく、ちゃんと暖かく感じる。今までの階層では決して存在していなかったものだ。

 

 生きるか死ぬかの戦いをしていた迷宮とは正反対の光景にハジメ達が混乱していると、ドドドッという何かが走る音がした。

 全員がそちらを見ると砂煙を上げながら何かが近づいてきた。

 再び身構えていると、何が近づいてきたのかわかった。

 美しい銀髪を靡かせて美しいフォームで走る、遠目でもわかる絶世の美女。その姿は、

 

「あれって!?」

「神の使徒……!?」

 

 香織とユエが驚き戦う構えを取る。ハジメも身構える。女性はさっきまで戦っていた神の使徒とそっくりだったのだ。デジモン達も身構えるが、突然体が光に包まれる。

 

「あ!?」

「こんな時に」

「時間切れ」

 

 勇ましい完全体の姿からどんどん小さくなっていく。

 ワーガルルモンはツノモンに、エンジェウーモンはニャロモンに、クレシェモンはムンモンに。メタリックドラモンを倒すためにエネルギーを使いすぎて退化してしまったのだ。

 

「無理もない。俺たちで守るぞ」

「うん!」

「ん!」

 

 デジモン達を守るためにハジメ達は前に出てより警戒を強める。

 神の使徒が近づいてくるとその姿がよりはっきりと分かり、全員が首を傾げた。

 

「メイド服?」

 

 ハジメが怪訝そうな顔で呟く。そう、神の使徒らしき女性は戦乙女風の鎧ドレスではなく、フリルやリボンが付いたメイド服だったのだ。しかもロングスカートではなくミニスカートだ。地球の東京の電子機器の街にあるメイド喫茶にいるようなミニスカメイドさんの格好をしているのだ。

 さっきから呆然とするような光景の連続だ。

 そうこうしているうちに、遂にハジメ達の前に神の使徒(ミニスカメイド)やってきた。

 

「ぜぇ、ぜぇ、はぁ、はぁ……」

 

 凄く息切れをしている。さっきの戦いでの無表情で超然とした神の使徒達とは全然違うように見えた。

 

「はぁはぁ……げえほっげほっ。……ふうふう。落ち着いてきた……」

 

 ハジメ達が何とも言えない表情で見つめる中、息を整えると軽く服装の乱れを直す。

 そして、スカートの裾を摘まんで一礼をして自己紹介を始める。

 

「初めまして、皆様。そしてオルクス大迷宮の完全制覇おめでとうございます。私はこの最下層のオスカー・オルクス邸で侍従をしております、エガリ・エーアストと申します。以後、お見知りおきを」

 

 

 

 エガリ・エーアストと名乗ったメイドは警戒するハジメ達に、館の主が話をしたいと言っていると伝えた。

 

「そもそも皆さんは最終試練を突破されました。その時点で戦う必要はありません。信用できないのでしたらどうぞ攻撃していただいてかまいません」

 

 そう言うとエガリは両手を広げて目を閉じ、無抵抗であることを示した。

 そこまでされては攻撃することは躊躇われた。デジモン達は疲弊しているし、ハジメ達も限界だった。最低限の警戒はしつつも、エガリの案内を受けることにした。

 エガリの後ろをついて歩くハジメ達。向かう先は少し離れた所にある館だ。

 

 道すがら、ハジメ達はエガリにいろいろと質問をしてみた。まずは気になっていた天井付近にある太陽の様な光球について聞いてみた。

 

「オスカー・オルクス様が解放者の仲間たちと作成したアーティファクトです。外の時間と同期しており夜になれば月明かりになります」

「……そんなアーティファクト聞いたことない」

 

 エガリの説明を聞いたユエが驚く。ユエの時代でも考えられない程、高度な技術が使われているようだ。

 ハジメ達が歩く道の近くには小川と小さな湖、さらには菜園もあった。

 

「外から水を引いていますので、魔物ではない魚もいます。菜園では野菜も育てています」

「つまり魔物以外のご飯を食べられるってこと!?」

 

 今度は香織が喜びの声を上げる。ずっと不味い魔物の肉を食べてきたのだ。これで美味しい料理が作れると、母が料理研究家である香織の腕が鳴る。

 

「特に菜園には期待してください。私がこの数日手塩にかけて育てたので。ちょっと味見しましたがなかなかですよ?」

「数日?数日で野菜が育ったのか?」

「ええ。私の魔法を使ったのですよ」

 

 育つのに数か月かかるはずの野菜が数日で育ったと聞き驚くハジメに、エガリが自慢げに応える。一体どんな魔法なのかと疑問に思っているうちに館についた。

 近くに来てみると館は岩壁を直接削って作られたような作りだ。白亜の壁は人口太陽の光を反射してキラキラ輝いている。

 

「綺麗なお屋敷」

「そうでしょうとも。私が一生懸命お掃除したのですから!」

「そ、そうなんですか」

 

 思わず漏らした香織の言葉に、エガリが胸を張る。さっきまで殺し合いをしていた相手と同じ顔の相手が、掃除の自慢をしてくるのに複雑な気分になる。

 そしてエガリが館の中に一同を招き入れた。

 

「遅いですよ、雌人形」

「えふん」

 

 同時に浴びせられた罵声と共にエガリがビンタで張り倒された。

 エガリを張り倒したのはもう一人のメイドだった。

 エガリのような銀髪ではなく、純白の髪にユエの様な紅い瞳。エガリの様な作り物めいた美貌を持つメイドだ。しかもそのメイド服はロングスカートの余計な飾りがない実用性重視なもので、エガリと並ぶと正統派メイドという印象を受ける。エガリ?なんちゃってメイドだ。

 スカートの裾を摘まみ、ハジメ達に一礼しながら自己紹介をする。

 

「初めまして皆様。この館の全てを取り仕切っておりますメイド長を務めさせていただいております。フリージア・オルクスと申します。そこの雌人形の持ち主でもあります」

「その声。あのヒュドラを倒した時の声はお前か?」

 

 フリージアの声に聞き覚えのあったハジメが問いかける。ヒュドラを倒した直後、メタリックドラモンの居た世界に転移させられる前に聞こえてきた声だったのだ。

 フリージアはその問いに笑顔を浮かべて応える。

 

「その通りでございます。皆様、よくぞあの試練を突破されました。皆様こそ我が主、オスカー・オルクス様が求めていた攻略者です。全てをお話しします。お疲れかと思いますが、私の後をついてきていただけると幸いです」

 

 フリージアの言葉に顔を見合わせるハジメ達。少し悩んだが、全員が頷きフリージアの後をついていくことにした。

 

「あ、あの。私は……?」

「さっさと立ちなさい、雌人形。すぐにお客様の御持て成しの準備をしなさい。廃棄処分するわよ」

「は、はいぃぃ!!」

 

 慌てて立ち上がって館の奥に走っていくエガリ。ハジメ達はフリージアとエガリの関係が非常に気になった。

 

 

 

 フリージアの先導で館の3階にやってきたハジメ達。3階は最上階であり1部屋だけになっていた。中に入ると、部屋の中は巨大な書斎になっており全ての壁が本棚になっていた。しかも床の上には直径7、8メートルはあろうかという魔法陣が刻まれていた。今まで見てきたどの魔法陣よりも緻密で複雑な幾何学模様をしている。いっそ芸術作品と言っても過言ではない魔法陣だ。

 魔法陣の向こう側には豪奢なテーブルと椅子があり、テーブルには一冊の大きな本が置かれていた。

 無人の室内に、てっきり誰かいるのかと思っていたハジメ達が困惑していると、なんと机の上に置いてあった本がひとりでに浮き上がった。さらに本がパラパラと開くと、そこから光が溢れ、何かが出てきた。

 その姿にハジメとツノモンが驚愕する。

 

「まさかッ……」

「これってッ」

 

 現れたのは緋色のローブに白いフードを被った魔術師の様な格好をした人間だった。両手には水晶を浮かせている。

 香織とユエは人間が出てきたのかと思ったが、デジモン達は気が付いた。デジモンの気配がすることに。

 

「ワイズモン!?」

「なんでこんなところに!?」

 

 ハジメとツノモンがそのデジモン、ワイズモンの名前を言う。

 

 6年前、タカト達と共にデジタルワールドを旅したハジメとツノモン。タカト達は連れ去られた友達のクルモンを探すことが目的だったが、ハジメ達には別の目的があった。

 それはツノモンが持っていた謎の因子、X抗体について知るためだ。

 途中、デジタルワールドを旅していた秋山リョウからデジタルワールドの全てを知る賢者の噂を聞き、タカト達と別行動を取ることにした。2人は旅の果てに、賢者が住まうという森にたどり着き、森の守護者であるパイルドラモンの導きで賢者に出会い、X抗体のことを知った。

 その賢者こそが、ワイズモンだったのだ。

 香織がデジヴァイスで情報を読み取る。

 

「ワイズモン。完全体。必殺技は《エターナル・ダイアログ》」

「そう、私がワイズモン。知識の探究者だ。久しぶりだ、南雲ハジメとツノモン」

 

 ハジメとツノモンに挨拶をするワイズモン。

 

「さて、なぜ私がこんなところにいるのか疑問に思っているだろうから先に答えよう。無駄な問答は省くべきだからね」

 

 驚きから立ち直れないハジメ達を放っておいて、話を進めるワイズモン。彼の態度を見て、6年前にあった時と全然変わっていないとハジメ達は思った。せめて香織達に説明する時間は欲しい。

 

「私はこの本を通じてあらゆる時間と空間に出現することが出来る。デジタルワールドで君たちと出会った私も、今ここにいる私も本という媒介を通じて出現させている影に過ぎないのだよ」

 

 つまり、目の前のワイズモンは本体ではないということだ。いや、6年前にハジメが出会ったワイズモンも本体ではない。ワイズモンの本体は別次元に存在しているという。

 

「私の詳しい話は後でいいだろう。次はこれを見てもらおう。オスカーとの約束なのでね」

 

 ワイズモンは自分が持つ水晶の一つを掲げる。すると、水晶から光が溢れ何かが浮かび上がってきた。

 それは1人の黒衣の青年だった。顔には知性を感じさせる黒縁眼鏡をかけている。

 

『試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?』

 

 オスカー・オルクスと名乗った青年。彼こそがこの館の主であり、迷宮の創設者だという。

 

「かつて解放者オスカー・オルクスの元に私が世界の狭間に流した本がたどり着き、私と彼は出会った。オスカーは私の持つ知識に興味と感銘を受け、この世界の成り立ちや魔法の知識をもたらした。その縁からこの館でいずれ訪れる迷宮の攻略者、特にデジモンテイマーへとメッセージを伝える役目を請け負ったのだよ」

 

 ワイズモンの持つ水晶は時空石と言い、空間の記録と再生を行うことが出来る。その力を使い、ワイズモンはデジタルワールドのあらゆる事象や物象を時空に保存している。今回はオスカーの頼みを叶える為に力を使ったのだ。別時空に本体がいるワイズモンにとって、迷宮の最下層でメッセンジャーとして待つことなど、何の問題もなかったのだ。

 そして、迷宮が出来てから、初めてのデジモンテイマーの攻略者であるハジメ達が訪れたことで、役目が果たされる。

 

『万に1つ、億が1つの可能性にかけてワイズモンに託したこの記録を見ているということは、とても喜ばしい。まずは基本的なことを伝えよう。世界の真実を知る者として、我々が何のために戦ったのか……どうか聞いて欲しい。……我々は反逆者であって反逆者ではないということを』

 

 そうして始まったオスカーの話は、ハジメと香織が聖教教会で教わった歴史やユエに聞かされた反逆者の話とは大きく異なった驚愕すべきものだった。

 

 それは狂った神とその子孫達の戦いの物語。

 

 神代の少し後の時代、世界は争いで満たされていた。人間と魔人、様々な亜人達が絶えず戦争を続けていた。争う理由は様々だが、最も大きなものは〝神敵〟だからだった。当時は種族も国も細かく分かれていたため、それぞれの種族、国がそれぞれに神を祭っていた。その神からの神託で人々は争い続けていたのだ。

 

 だが、そんな何百年と続く争いに終止符を討たんとする者達が現れた。それが当時、〝解放者〟と呼ばれた集団である。

 

 彼らには共通する繋がりがあった。それは全員が神代から続く神々の直系の子孫であったということだ。そのためか解放者のリーダーは、ある時偶然にも神々の真意を知ってしまった。何と神々は、人々を駒に遊戯のつもりで戦争を促していたのだ。解放者のリーダーは神々が裏で人々を巧みに操り戦争へと駆り立てていることに耐えられなくなり、志を同じくする者たちを集めたのだ。

 

 彼等は、〝神域〟と呼ばれる神々がいると言われている場所を突き止めた。解放者のメンバーでも先祖返りと言われる強力な力を持った七人を中心に、彼等は神々に戦いを挑んだ。

 

『だが、戦いを続けていたある日、突然時空が歪み、そこからあれが現れた』

 

 オスカーの話を聞いていた香織は、もしかしたら教会にあったという壁画を思い出した。

 巨大な竜と狼が戦い、トータスが滅亡に瀕したという光景。オスカーが言っているあれとはもしかして、

 

『千年魔獣。ミレニアモン』

 

 オスカーが告げた名前に、ハジメと香織、そしてツノモンとニャロモンが驚く。

 

「ミレニアモンッ!?」

「本当に!?」

「あのミレニアモンが、この世界に現れたっていうのか?」

「ミレニアモン、実在していたの?」

 

 驚くハジメ達と違い、ミレニアモンを知らないユエとムンモンは首をかしげる。

 

「ミレニアモンって?」

「そっか。ユエは知らないよね。ミレニアモンっていうのはね、名前の通りデジモンなんだけど」

「倒すことができないと言われている最凶のデジモンだ。時空を操る力があるとも言われている」

「デジタルワールドでも、四聖獣に匹敵、もしくは超える力を持っていると伝わっているわ」

「噂だと別の世界でデジモンとテイマーに倒されたっていう話だけど、本当かどうかはわからない」

 

 ユエの疑問に、香織、ハジメ、ニャロモン、ツノモンが答える。

 なお、ツノモンの聞いた噂だが実はテイマーズの1人、秋山リョウが関わっている。それをワイズモン以外は知らない。ワイズモンもオスカーの話の腰を折らないために話さなかった。

 

 オスカーの話は続く。

 ミレニアモンの出現と共にトータスは断続的にだがデジタルワールドと繋がってしまい、デジモン達が現れるようになった。解放者も人々の混乱を収めるために奔走したのだが、神々の妨害も同時に受けてしまい壊滅の危機に陥った。

 

『その時、現れたのだ。後に8人目の解放者と呼ばれる新たな仲間。別世界から現れたデジモンテイマーが』

 

 ようやく繋がった。なぜオルクス大迷宮にデジモンに似た魔物が現れたのか。彼らの時代、デジモンはすでにこの世界に現れていたのだ。迷宮を作り上げたオスカーは彼らをモデルに、イミテーションの魔物を生み出したのだ。

 

『彼のおかげで我らはデジモンと分かり合うことが出来た。証拠はこれだ』

 

 右手を上げで、何かをみせるオスカー。それは銀色の縁取りをしたデジヴァイスだった。

 オスカーもデジモンテイマーだったのだ。

 

「反逆者がデジモンテイマー?まさか、あのメタリックドラモンは……!?」

 

 ハジメは直感的にわかった。オスカー・オルクスのパートナーデジモンとはあのメタリックドラモンだったのではないかと。もしもそうなら自分たちは……。

 そんなハジメの心情を余所に、オスカーは話を続ける。

 

『そうして新たな仲間を得た我々は、力をつけ、準備を整え、神々とミレニアモンとの闘いに臨んだ』

 

 戦いは熾烈を極めた。解放者にも多くの犠牲が出たが、8人目の解放者を中心にミレニアモンを追い詰めた。

 しかし、追い詰められたミレニアモンは真の姿を現した。

 それこそがあの壁画に描かれていた双頭の怪物。名前を──

 

『ズィードミレニアモン。終末の千年魔獣となったミレニアモンの力は全てを超えていた。我々だけでなく、ミレニアモンの力を利用しようとした神々でさえも逆に滅ぼされかけた』

 

 このままトータスは滅亡してしまうのかと誰もが諦めたが、8人目の解放者とパートナーデジモンだけは諦めなかった。そして、誰も見たことが無い進化を果たした彼らと、その姿に立ち上がった解放者達の総攻撃でズィードミレニアモンを倒すことができたのだ。

 

『あとはトータスを裏から操っていた神々を倒すだけだったんだけどね』

 

 しかし、その目論見は戦う前に破綻してしまう。何と、神は人々を巧みに操り、解放者達を世界に破滅をもたらそうとする神敵であると認識させて人々自身に相手をさせたのである。ミレニアモンも解放者達が呼び出した魔物であると、認識させて。

 その後も紆余曲折はあったのだが、結局、守るべき人々に力を振るう訳にもいかず、神の恩恵も忘れて世界を滅ぼさんと神に仇なした〝反逆者〟とされてしまった。

 

 しかし、解放者たちはそれでもあきらめなかった。

 ズィードミレニアモンという強大な闇を退けたことが、彼らに不退転の覚悟を決めさせた。ズィードミレニアモンとの闘いで大きな傷を負った8人目以外の7人と彼らのパートナーデジモンが中心となり、〝神域〟へと突入した。だが、彼らは予想していなかった事態に直面した。まさか、

 

『まさか神々が……引き篭もるとは思いもしなかった』

「は?」

「へ?」

「神が」

「引き」

「籠る」

「……なあにそれ?」

 

 オスカーの言葉に思わず声に出してしまうハジメ達。「神=引き篭もり」という等式がどうにも結びつかないのだ。

 映像の中のオスカーもやれやれと溜息をついている。

 

『神々が持つ力の全部を使って神域の奥の奥に、隠れて引き篭もったのだ。我々も探したのだが、遂には神域を切り離して逃げ出したのだ。追いかける手段もなく、仕方なくトータスに戻るしかなかった』

 

 トータスへ戻った彼等だったが〝反逆者〟とされたことはなくなっていなかった。世界を敵に回し、神々の居場所もわからなくなってしまっては、もはや自分達では神を討つことはできないと判断した。そして、バラバラに大陸の果てに迷宮を創り潜伏することにしたのだ。試練を用意し、それを突破した強者に自分達の力を譲り、いつの日か神の遊戯を終わらせる者が現れることを願って。

 さらにもしもデジモンテイマーが再びトータスに現れたら、迷宮の難易度を引き上げる仕掛けも用意した。それは神々を確実に討てるようにというのもあるが、ミレニアモンの様な神さえも超える脅威に立ち向かえる可能性を持つのはデジモンテイマーであり、この世界で生きていけるように強くなってほしいという思いからだったという。

 

 とても長い話が終わり、オスカーは穏やかに微笑む。

 

『君が何者で何の目的でここにたどり着いたのかはわからない。君に神殺しを強要するつもりもない。ただ、知っておいて欲しかった。我々が何のために立ち上がったのか。デジモンと心を通わせ、共に生きることができたのだと。……君に私の力を授ける。どのように使うも君の自由だ。だがどうか、悪しき心を満たすためには振るわないで欲しい。デジモンとの絆をどうか大切に。……話は以上だ。聞いてくれてありがとう。君達のこれからが自由な意志とパートナーとの絆の下にあらんことを』

 

 話を締めくくったオスカーはワイズモンの方を振り向く。

 

『ワイズモンも、約束を守ってくれてありがとう。これからも君は知識を求めるままに過ごしてくれ』

「もとよりそのつもりだよ」

 

 ワイズモンの言葉が終わるとともに、オスカーの記録映像は消えた。

 それと同時に床の魔法陣が光り輝き、ハジメ達を包み込む。思わず目をつむると、ハジメ、香織、ユエの脳裏に何かが侵入してきた。まるで頭の中を覗かれているような奇妙な感覚に襲われ、その後ズキズキと痛み始めた。それは何かが頭の中に刷り込まれていると理解できたので、大人しく耐えた。

 やがて痛みも光も収まったので、ハジメ達は何が起こったのか口に出す。

 

「生成魔法?……鉱物に、魔法を付与する魔法か」

「これってもしかして、神代魔法なの?」

「……信じられない。神代の魔法が、使えるようになったなんて」

 

 ハジメ達の脳裏に刻まれたのは、オスカー・オルクスが持っていたという神代魔法の一つ、〝生成魔法〟の魔法だった。

 混乱するテイマー達をパートナーデジモン達が心配そうに見つめる。

 

「皆様、一先ず一度お休みになりませんか?」

「それがいいだろう。頭脳を休めることは知識を得るうえで必要不可欠だ」

 

 フリージアとワイズモンの提案に、いろいろありすぎて疲労が限界だったハジメ達は頷くのだった。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

「浴場の用意ができました!どうぞ入ってください!!」

 

 部屋を出たハジメ達は、エガリのその言葉に即座に従った。特にハジメと香織にとっては数か月ぶり、ユエに至っては数百年ぶりのお風呂だったのだ。後から警戒するべきだったのに軽率だったと反省することになるが、風呂の魅惑には勝てなかった。

 

 そして今、ハジメ達は全員で湯船に浸かっていた。

 そう、全員で。

 デジモン達はそのまま湯船の上に浮いているが、ハジメ、香織、ユエは何も身に纏っていない。ハジメを中心に、右に香織、左にユエが座っている。

 最初はハジメが別々に入ろうとしたのだが、仲間だけで話すなら今しかないということで香織とユエが引っ張ってきたのだ。

 

「もう驚きの連続だよ。そもそもデジタルワールドって数千年も前からあったの?デジモンって数10年前に生まれたんだよね?時間がおかしくないかな?」

 

 香織がハジメに質問する。あの後冷静になって考えてみると、矛盾点があると気が付いた。

 それをこの中ではデジモンに最も詳しいハジメに聞いてみる。

 

「香織の言うとおり、デジモンが生まれたのは1980年代だ。でもな、それは俺たちの世界のデジモンなんだ」

「……どういうこと?」

 

 ハジメの言葉の意味が解らなかったユエが答える。

 

「そもそもデジタルワールドは1つじゃない。俺と香織の世界に隣り合っているデジタルワールド以外にもデジタルワールドはあって、デジモンがいる。証拠は、ツノモンだ」

 

 ハジメがツノモンへ目を向ける。

 

「ツノモンが持っているX抗体については前に話したな?」

「うん。Xプログラムっていうデジモンの病気への抗体って」

「そう。そのXプログラムはワイズモン曰く別のデジタルワールドで、その世界の管理者、つまり神が作ったプログラムなんだ。神が増えすぎたデジモンを選別するために生み出した殺戮プログラムらしい」

 

 あまりに酷い話に香織とユエは絶句する。

 

「だが、俺達の世界のデジタルワールドではそんなことは起きていない。そもそもデジタルワールドを守護する四聖獣はそんなことはしない。ならなんでツノモンにそのXプログラムへの抗体があるのか?それはツノモンも別のデジタルワールドで生まれた、Xプログラムに適応したデジモンだからだ」

 

 そのせいで6年前はいろいろ苦労したとハジメは笑う。ハジメにとってはツノモンが別の世界に生まれたということは、デジタルワールドの旅の果てに辿り着いた真実であり、乗り越えたことなのだ。

 

「ちょっと話がそれたが、数千年前に解放者達がデジモンと遭遇していたっていうのはおかしな話じゃない」

「そっか。でもなあ……」

「ああ。話を全部信じるのは危険だな」

 

 ワイズモンは知識を得ることに喜びを感じ、それゆえに嘘の知識やそれを広めることを良しとはしないデジモンだ。だからワイズモンの言葉は信じていいが、エガリやフリージアはまだ信じられない。神々が人々を操り扇動したと言っていたが、解放者達も同じことが出来ないとは言っていない。寝ている間にいつの間にか洗脳されて、解放者達の手伝いをさせられるということもあり得る。

 

 だから今この時、デジモン達が監視する気配を感じていない間に色々決めておくことにした。

 

 まずこまめに記録をつけておき、定期的にデジモン達を交えて互いに確認し合う。何か違和感のある記述があれば徹底的に確認し合い、真偽を確かめる。

 なるべくパートナーと一緒に行動する。

 全員が同時に眠るのではなく、常に一組起きている。もしも眠っている誰かが何かされそうになったら、全力で助ける。

 

「ようやく迷宮を攻略した。いや攻略したからこそ、俺たちは一丸となっていくべきだ」

「そうだね。今日の戦いで私、ニャロモンやハジメ君、ユエともっと分かり合えたと思う」

「……ん。これからももっと分かり合えて行ける」

 

 ハジメは二人の方を振り向く。

 

「結束を強めるためにチーム名をつけよう。というかもうあるんだけどな」

 

 少し笑みを浮かべながら、ハジメは宣言する。

 

「【デジモンテイマーズ】。ニャロモンにユエとムンモンを加えて、改めて結成だ。……タカト達の了解は帰ってからってことで」

 

 最後にそう付け加えて、【デジモンテイマーズ】の再結成の宣言は行われた。

 もちろん、異論は誰もなかった。

 




〇デジモン紹介
クレシェモン
レベル:完全体
タイプ:魔人型
属性:データ
体が柔軟で、しなやかな動きで敵を討つ魔人型デジモン。流麗な戦闘を得意とし、月の光を受けるとその力は倍増すると言われている。ユエが苦手な近接戦闘をサポートする心強いパートナーだ。必殺技は、舞うようなステップで敵を幻惑し、間合いを詰め、両手に持った武器『ノワ・ルーナ(羅:新月)』を使った斬撃『ルナティックダンス』。また、『ノワ・ルーナ』は1つに組み合わせることでボウガンのような形態に変化する。この状態から氷の矢を放つ『アイスアーチェリー』と、闇エネルギーの矢を放つ『ダークアーチェリー』の2つの技を繰り出すことができる。



今回は今作でのトータスでの解放者たちの戦いでした。もっともそれよりもまさかのエガリさんの登場にびっくりされたでしょうね。しかもそこはかとなくどこぞのドM竜姫様みたいな雰囲気。彼女もこれからの物語で活躍させていく予定ですのでお楽しみに。

もう一人のキーマンであるワイズモン。クロスウォーズやアドベンチャー:では重要な役割を担っていました。そして今作ではハジメにX抗体の真実を告げた賢者という設定です。この話は別投稿の0章で書きたいです。

次話はハジメ達の奈落生活……ではありません。皆様気になっている王国のクラスメイト達を書こうと思います。


〇次回予告
ハジメ達はオルクス大迷宮で大きな戦いを終えた。
一方、王国のクラスメイト達にも大きな転機が訪れていた。ヘルシャー帝国からの使者も交えて勇者達の活躍を称えるパーティーが開かれる中、遂に闇の住人による策略が動き始める。
暗黒の種が芽吹くとき、新たなる闇の王が生まれる。

次回27話「闇への誘い デジモンカイザー檜山」

今、冒険のゲートが開く。
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