ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る   作:竜羽

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今回はかなりの説明回です。

オリジナル要素のオンパレードなので注意してください。


30話 大迷宮へ・・・旅立ちの日

「もぎゅとして。こねこねして……しゅるんで。そおい!!」

「もぎゅ! こねこね。しゅるんで! そおい!!」

 

 よくわからない掛け声とともに広がるのは光の膜。光属性の最上級防御魔法〝聖絶〟だ。

 術者はもちろん香織だが、最初の掛け声は彼女ではない。

 チート魔法使いのユエだ。今は紅いフレームの伊達眼鏡をかけている。まるで女教師のようだ。

 2人が何をしているのかというと、魔法の練習だ。教師はユエで香織が生徒として教わっている。

 香織の手にはいつも使っていた杖ではなく、小型のリボルバー拳銃があった。銃の名前はリヒト。ハジメに頼んで香織が作ってもらった新しい武器だ。

 生成魔法で以前使っていた杖よりも高性能な魔法効果が付与されており、しかも実弾だけでなく魔法を弾丸にして放つこともできる。

 今はリヒトを使った魔法の訓練をユエと一緒に行っていた。

 

 

 オルクス大迷宮の最下層にある解放者オスカーの拠点にしばらくとどまることにしたハジメ達は、「地球への帰還」を第一とする方針で全員の意思を統一した。

 未だ見当もつかない帰還方法だが、手掛かりがフリージアによってもたらされた。

 

『大迷宮は解放者の中心であった7人全員が建造しました。攻略しますとそれぞれの解放者が持っていた神代魔法を授かることが出来ます』

 

 つまり、ハジメ達をこの世界に召喚したエヒトが使う魔法と同じものが手に入るというのだ。そうすれば帰還の方法もわかるかもしれない。

 

 残る6つの大迷宮の攻略がハジメ達の目標となった。

 

 だが、残りの大迷宮もオルクス大迷宮と同様に一筋縄ではいかないだろう。しかも、オルクス大迷宮と同じくデジモンテイマーが攻略に訪れると、難易度が上昇する仕掛けになっているらしい。

 だとすると十分に準備をする必要がある。

 幸いにも生活するには十分すぎる環境が整っているし、フリージアとエガリも協力してくれた。

 

 そうしてハジメ達は準備と訓練に励み、大きく成長した。

 

 まず香織とユエは殆どの日々を訓練に明け暮れた。

 香織は持て余し気味だった馬鹿げた量の魔力を十全に扱えるように、魔法のスペシャリストであるユエの指導を受けた。迷宮の攻略中も行っていたのだが、訓練以外にやることがあったので、長時間の訓練はできなかった。しかし、ここでは訓練に全力をかけられるので二人は魔法の基礎から思う存分訓練に励んだ。

 もっとも、ユエの指導があまりに独特であり、傍から見れば何をやっているのかわからない光景が広がっていたが。

 初めて見たフリージアとエガリは唖然としていた。攻略中に見ていたハジメは二人の気持ちがよく分かった。ユエの言い回しも謎だし、それを理解できる香織の感性も謎だ。種族どころか生まれた世界も違う二人なのに。

 何はともあれ、修練の結果は確実に実を結び、ステータスプレートにしっかりと現れていた。

 

 

 

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白崎香織 17歳 女 レベル:89

天職:治癒師

筋力:1800

体力:2200

耐性:5080

敏捷:1500

魔力:50080

魔耐:50080

技能:回復魔法[+回復効果上昇][+回復速度上昇][+イメージ補強力上昇][+浸透看破][+範囲回復効果上昇][+遠隔回復効果上昇][+状態異常回復効果上昇][+消費魔力減少][+魔力効率上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動][+付加発動]・光属性適性[+発動速度上昇][+効果上昇][+持続時間上昇][+連続発動][+複数同時発動][+遅延発動]・魔力変換[+体力][+治癒力] [+精神力] [+筋力]・高速魔力回復[+瞑想]・魔力操作[+魔力放射] [+魔力干渉]・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・夜目・念話・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・生成魔法・言語理解

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 もともと持っていた技能には多数の派生技能が生まれ、ステータスも大幅に上昇。レベルも桁違いに上がった。

 さらに魔力を体力や筋力へ変換できる技能〝魔力変換〟を習得した。

 本来なら技能は増えることはないと王国で習ったのだが、オスカーの魔法陣で生成魔法を覚えたことから、これは間違いだと判明した。

 そこでハジメがフリージアとワイズモンの手を借りながら〝魔力変換〟の魔法を解析し、香織に教えることで〝魔力変換〟の魔法を覚え、さらには技能として習得した。

 

 ちなみに〝魔力変換〟だが、もともとはオルクス大迷宮に出現する魔物の固有魔法だった。固有魔法は魔物の魔石に宿っており、解析するにはそれが必要だった。わざわざ取りに行く必要があったのだが、その手間は裏技で解決した。

 オスカーのメッセージを見た後、フリージアから攻略の証としてアーティファクトの指輪を貰った。攻略者の証という以外にいくつかの魔法が付与されていた。その一つにオルクス大迷宮の中限定だが転移できる機能があった。この機能を使えば自由に行きたいフロアにいけるのだ。おかげで各フロアの魔物の素材や採掘できる鉱石を採取し放題だった。迷宮には自動修復機能があるので、暴走したハジメが氷漬けにしたフロアも元通りになっており、そこで採掘できる鉱石を取りに行けた。

 

 こうして新たな技能を習得する術を見つけたハジメ達は使えそうな魔法を濃密な訓練で習得していった。

 もちろんユエも技能を身に着けており、このようになった。

 

 

 

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ユエ 323歳 女 レベル:75

天職:神子

筋力:120

体力:300

耐性:60

敏捷:120

魔力:6980

魔耐:7120

技能:自動再生[+痛覚操作]・全属性適性・複合魔法・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+効率上昇][+魔素吸収]・想像構成[+イメージ補強力上昇][+複数同時構成][+遅延発動]・血力変換[+身体強化][+魔力変換][+体力変換][+魔力強化][+血盟契約]・纏雷[+雷耐性][+出力増大]・天歩[+空力]・風爪[+三爪][+飛爪]・水砲[+氷砲]・炎鎧[+炎爪] [+炎牙]・念話・高速魔力回復・生成魔法

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 ・水砲[+氷砲]

 水の砲撃を放つ。派生技能[+氷砲]は鋭い氷が混ざった砲撃を放つ。

 

 ・炎鎧[+炎爪] [+炎牙]

 炎の鎧を生み出す。派生技能[+炎爪] [+炎牙]は炎の剣と槍を生み出し、ぶつけることが出来る。

 

 

 

 攻撃魔法関連の技能に加え、〝念話〟も覚えた。香織も覚えたこの技能は文字通り念じるだけで会話ができる技能だ。もちろんハジメも覚えている。

 

 さてここで気になるのはなぜユエのステータスがわかっているのかだ。

 ステータスはステータスプレートが無ければわからず、一度登録すれば別の人物が上書きすることはできない。だから香織の持っていたステータスプレートを使うことはできない。

 つまり、ユエのステータスを調べるには新しいステータスプレートが必要なのだ。

 

 だから、作った。ハジメとフリージアが。

 

 フリージアが解析したステータスプレートの魔法を、ハジメが生成魔法で付与してステータスプレートを作ったのだ。しかも本来のステータスプレートにはない機能を盛り込んだ特別仕様だ。この機能は後々明かされるだろう。

 

 テイマー達が特訓に明け暮れている頃、パートナーデジモン達も戦闘技術を磨いていた。

 

「……ぎゅるんとして……バン」

「ほっ。まだ狙いが甘いぞ、ルナモン」

「むぅ。バンバンバン」

「攻撃に夢中になりすぎだ! 俺の事も忘れるなよ!」

「わっ!?」

 

 ルナモンが撃った《ティアーシュート》を軽やかに避け続けるテイルモン。さらにその後ろからガブモンが飛び掛かり、慌てて避ける。

 テイルモンとガブモンはまだまだ戦闘経験が少ないルナモンを鍛えていた。

 これからの旅では必ず進化できる状況で戦闘になるとは限らない。進化できなくても戦えるように備えていたのだ。

 もっともユエの謎の掛け声を言っているため、遊んでいるようにしか見えないが。

 

 そして最後の1人、ハジメが何をしているのか。

 

 

「よっし。これで完成だ」

「うむ。会心の出来だな」

 

 一仕事を終え、座っている椅子の背もたれにもたれかかるハジメを、傍らに浮いている本から姿を出していたワイズモンが労う。

 2人はかつてオスカーが錬成の作業を行っていた錬成部屋の作業台に座っている。ここには錬成師が作業をするには最適な環境が整っており、オスカーの資料も残されていた。ハジメは殆どの時間をここで過ごし、オスカーの技術を学んでいた。

 時折、ワイズモンにも教えを乞うており、ワイズモンの知識からこの世界の魔法も研究していた。香織達への技能の付与もこの研究の成果だった。

 

 さて、そんなハジメがさっきまでこの部屋で作業していたということは、錬成師として何かを作っていたということだ。

 

 作業台の上には黒光りする金属の左腕があった。

 

 これは左腕を無くしたハジメが使う義手だ。もちろんアーティファクトであり、素材にはトータスで最も硬いと言われるアザンチウム鉱石を使い、魔法付与やギミックもふんだんに盛り込まれている。疑似的な神経機構が備わっており、義手なのに触った感触が脳に伝わるようにできている。

 ハジメは出来上がった義手を右手で持ち上げて出来を確認する。

 

「我ながらよく出来たと思う。これなら〝魔力干渉〟でいちいち動かす必要が無いし、魔力が霧散する場所でも動く。俺の魔力でも壊れることが無い」

「確かに。今の君の身体ではオスカーが作ったその義手は動かなかったからね」

 

 オルクス大迷宮にとどまると決めた際、まずハジメが取り掛かったのは自分の体の事だった。左腕が無いことはもちろんだが、いろいろ解らないことが多いのでしっかり調べることにした。

 幸いここには神代の解析魔法を使えるように作られたフリージアと賢者ワイズモン、オスカーが残した大量のアーティファクトがあった。それらを組み合わせてハジメの肉体を科学的に、そして魔法的に解析を行った。

 その結果、驚くべきことが分かった。

 

 ハジメの肉体は人とデジモンと魔物の要素を併せ持った全く未知の構造になっていたのだ。

 

 見た目と基本的な構造は人間のものだ。内臓や筋肉の付き方もほとんど人と同じだったが、心臓の隣、胸の中央に謎の器官が生まれていた。

 そこには超高濃度のエネルギーが宿っており、血管を伝ってエネルギーが全身に流れていた。エネルギーを解析したところ魔力に近い性質を宿しており、魔物が持つ魔石に似ていた。

 だが魔石とは決定的に違う点があった。魔物の魔石には魔物が使う固有魔法の情報が宿っているのだが、ハジメの身体に生まれた器官には魔物の魔石とは桁違いの情報量があったのだ。ワイズモンがアーティファクトで解析したところ、完全体デジモンが持っているデータの情報量に匹敵するという。このことからこの器官はデジコア、デジモンのもっとも根幹を構成するコアプログラムと同じものではないかと推測された。

 

 この器官の存在と、ハジメが召喚されてから今までの経緯から一つの推論が立てられた。

 

 そもそもの原因はかつてハジメが現実世界でガブモンと融合し、究極体のメタルガルルモンに進化していたことだ。

 全てがデータになるデジタルワールドではなく、現実世界で融合進化することは通常は不可能だ。しかし、デ・リーパーに立ち向かうために現実世界で進化する必要があったハジメ達は、四聖獣の力によるデジタル・グライドで肉体を仮想的にデータ化させて融合させた。この時、パートナーデジモン達と深く融合したことで肉体にデジモンの要素を宿してしまったのだ。しかも融合状態だった姿、究極体のデータを。

 

 だが、それだけなら何も問題はなかった。次に問題になったのはエヒトによる異世界召喚だ。

 召喚された際、エヒトはハジメ達にこの世界の言語を理解できるように〝言語理解〟の技能と戦う力である魔力を与えた。この時、ハジメ以外の生徒はただ力を宿すだけだったが、ハジメには究極体メタルガルルモンのデータが宿っていた。そのせいでエヒトが与えた力とメタルガルルモンのデータが混ざり合い、活性化してしまったのだ。これが召喚後にハジメが気を失ってしまった原因であり、その後のステータスプレートの表記がおかしくなっていた理由だ。

 活性化した力は何とかハジメの肉体に収まり、徐々にハジメに馴染んでいった。膨大な魔力も究極体の力に引っ張られた結果だった。技能として発現した〝並列思考〟や精密機器もなしに精密な部品を錬成出来たのも力が馴染んだ結果だった。

 極めつけは宿っていたメタルガルルモンのデータから情報を抽出し、武装を錬成する〝電子錬成〟だ。大幅にスペックダウンするがデジモンの力を再現する力は破格の物と言える。もしもあのまま何事もなければ、召喚者の中で最強になっていただろう。

 

 しかし、最後の問題が発生した。

 

 奈落に落下し、左腕を失いながら飢えに苦しんだハジメは魔物の肉を口にした。

 その時、魔物が持つ血肉と魔力を取り込んでしまった。

 力が馴染みつつあったところに、劇薬のような力を取り込んでしまったことで力が暴走。デジモンのデータに刻まれていた戦闘本能に、魔物の凶暴性が合わさり暴れ回ってしまったのだ。しかも、デジモンの自己進化の本能まで加わり、道中の魔物を捕食。肉だけでなく力の根源である魔石までも取り込んでしまった。

 取り込んでいった力が蓄積し、その結果ハジメの肉体は変質してしまった。

 

 そのままでは暴走し続けて完全な化け物になっていただろうが、ワーガルルモンがデジモンのデータをロードしたことで闘争本能が抑えられ、香織とホーリードラモンの治療と聖なる力で力が安定した。

 

 これがハジメの肉体を検査して、立てた推論だった。

 生まれた器官については、魔電核──エネルギーコアと名前を付けた。

 検査の過程でハジメのステータスを測ることのできるステータスプレートを開発することにも成功した。

 

 

 

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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:NULL

天職:錬成師・ハイブリット体

筋力:12150 [+ハイブリット化状態30890]

体力:17800[+ハイブリット化状態54600]

耐性:15600[+ハイブリット化状態30500]

敏捷:18950[+ハイブリット化状態55000]

魔力:100100

魔耐:113000

技能:錬成[+精密錬成][+圧縮錬成][+高速錬成][+消費魔力減少][+鉱物系鑑定][+鉱物融合][+鉱物系探査][+鉱物分離] [+複製錬成] [+自動錬成][+イメージ補強力上昇] [+鉱物分解]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+魔力干渉]・並列思考[+高速思考][+並列演算][+高速演算]・ハイブリット化[+メタルガルルモン] ・胃酸強化・纏雷[+雷耐性][+出力増大][+電圧操作][+電流操作] [+電磁力操作]・天歩[+空力][+縮地][+豪脚][+瞬光]・風爪[+三爪][+飛爪] [+空気操作] ・夜目・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・恐慌耐性・全属性耐性・胃酸強化・威圧・追跡・念話・高速魔力回復・言語理解[+電子言語理解]

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 ハジメのステータスがわかったことで、香織の出所不明な技能もハジメが魔物の肉と魔石を食べたことで得た固有魔法だとわかった。つまり香織はハジメの力の一部を取り込んだということだ。

 これを知った香織は顔を赤くして身悶えていた。

 

 結果として凄まじいステータスを得たハジメだが少し問題が発生した。失った左腕の代わりに義手を作ろうとしたのだが、オスカーの義手ではハジメの魔力に耐えられなかったのだ。しかもハジメの魔力は通常の魔力とは変質しており、内包するエネルギー量が桁違いになっていた。

 そのためハジメの魔力に耐えられる義手を作る必要があり、さっきまでハジメ達はその製作に追われていたのだ。何せオスカーの義手が使えないとなると、〝魔力干渉〟の技能で腕のように動かすしかできないのだから。なのでハジメはオスカーの義手を解析し、自分専用に一から作成したのだった。

 

 全てのステータスがこの世界の常識からかけ離れているが、さらに異なる部分があった。〝ハイブリット化〟だ。

 

 

 

 ・ハイブリット化

 電魔核からメタルガルルモンのデジコアの情報を引き出し、デジモンの力を行使する状態になる。

 技能使用時はメタルガルルモンの武装と能力を使用可能になる。しかし使用時間があり、およそ三分。

 

 

 

 技能の名前についてはワイズモンが名付けた。

 

「メタルガルルモンの力を引き出した状態は人間とデジモン、魔物の要素を併せ持った状態だ。ならばハイブリットといえるだろう。属性も特に定まっていないようだ。デジモン風に言うならば……ハイブリット体ヴァリュアブル種が適当だな」

「ハイブリット体ヴァリュアブル種か。聞いたことないな」

「れっきとしたデジモンのステータスだよ。いずれ君も出会うさ」

 

 意味深なことを言うワイズモン。ハジメは深く聞くことではないと思った。

 

 以上がハジメの肉体に起きたことだった。この一か月間、冒険のための装備を整えるのと並行して、肉体のスペックと技能を習熟するのに苦心した。圧倒的なステータスを持っていても使いこなせなければ見掛け倒しだ。

 ついでにその訓練に時間を割いてしまい、香織とユエのように〝念話〟以外の新しい技能を覚えることはできなかったが。

 

 訓練にはメタリックドラモンと戦った空間を使った。これも神代魔法を組み合わせて生み出した空間で、ハジメだけでなく香織とユエ、デジモン達も常用した。エガリが操る神の使徒の人形とも戦えるので、実践訓練にもってこいだった。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 ハジメの義手が完成した日の夜。香織が使っている部屋にユエがやってきた。テイルモンとルナモンはもう眠っている。

 

「どうしたの? 明日も早いんだから早く寝たほうがいいよ」

「そんなに時間はかからない。……ハジメのことで、話がある」

 

 真剣な顔のユエに何となく話の内容に察しがついた香織は、姿勢を正してしっかりと聞く。

 

「カオリ……私、ハジメのことが好き。私もハジメの恋人になるのを認めて欲しい」

 

 予想通りの言葉に香織はしばし考える。

 ユエとの出会いから霧の樹海での戦い、そして最終決戦で彼女がハジメへの恋心を持っていることはわかっていた。だからいつかこういう話をされるだろうと思っていたし、ユエは吸血鬼族の王族だったから一緒に恋人になるという提案をしてくるだろう。

 そこまで予想出来ていたので香織はいくつか質問をすることにした。

 

「ユエもってことは、ユエは私も一緒にハジメ君の恋人でもいいの?」

「別に私はそういうの気にしない。それに多分、私とカオリのどちらかを選ぼうとすると、すごく悩んで苦しんじゃうと思う。……それにもしも私を選んでくれても、カオリが悲しむ。私は、ハジメと同じくらい、カオリも好き。初めてできた、友達だから」

「ユエ……」

 

 ハジメの恋人になりたいが、それで香織が悲しむのは耐えられない。だから一緒に恋人になりたいというのがユエの考えだった。

 

「でもね、ユエの考えは私達の故郷ではほとんど受け入れられていないの。昔はそういう時代もあったんだけれど、今はそういう時代じゃない」

 

 ユエの提案はハジメのハーレムを作るということ。しかし、今の地球の日本ではゲームや小説ではよく見かけるが、現実でやれば後ろ指を指されることになるし、法律上では不倫や浮気と言われても仕方のない関係だ。

 

「だから帰った後、たくさんの辛い思いや色々な問題にぶつかると思う。それでも良いの?」

「……良い。ハジメやカオリが少しでも辛い思いをしないように、私も頑張る。だから……」

 

 ユエは香織に頭を下げてお願いする。

 ユエは自分の考えを受け入れたことでハジメと香織の不利益も、一緒に背負い込むと言う。その覚悟に香織はしばし考えた後、大きく息を吐いた。

 

「はあぁ……。ユエの覚悟はわかったよ」

「じゃあ」

「うん。でもちょっと、今度は私の話を聞いてくれないかな?」

「?」

 

 香織はユエに今まで話していなかったハジメと自分の本当の関係を話した。

 かつて香織がハジメに告白した際、親友である雫も告白したこと。

 そのことでハジメが返事に窮し、春休みの間中旅に出たこと。

 ハジメを追いかけた香織と雫が旅先でじっくりと話し合って返事を保留し、ハジメが夢を叶えた時に改めて答えを出すことになったことを。

 

「さっきも言った通り私達の国だと一対一で結婚することになっているの。だから返事を保留しているんだ。だから私はハジメ君の恋人じゃないの」

「……でも、きっとハジメはカオリを一番特別に思っている」

「今はね。でも人の心っていうのは、何が切っ掛けで変わるかわからないからね。だから私はハジメ君を好きでい続けるためにハジメ君から目を放さないし、ハジメ君に好きになってもらうために努力し続けるし、言い続けるよ」

「そういうところが、カオリの凄いところ」

 

 人の気持ちは移ろいやすい。現に香織と雫は幼馴染の光輝に対して、ハジメとデジモンをめぐるやり取りで意見が対立し、昔ほど親しく思えない。だから時折ハジメへの愛もいつまでも変わることなく持っていられるか不安になるから、彼女は叫び続けるのだ。「ハジメ君が大好きだ」と。

 それはハジメも同じで、未だ答えは出せないでいたが、二人の好意を裏切らないように心がけ、努力し続けている。

 

「ユエの提案は私達の関係に大きな変化を与えると思う。だからこの話は雫ちゃんも交えてしたいんだ。いいかな?」

「ん。わかった」

「一応、ハジメ君に話だけはしておこうか」

「ん!」

 

 ユエは香織の答えに頷いた。

 

 ハジメをめぐる恋模様には、ユエが加わり、さらに複雑になり始めた。

 翌日、朝起きてきたハジメにユエは、

 

「ハジメ、大好き! カオリと同じくらい、ううん、それ以上に愛している!!」

「ちょ!? それは聞き捨てならないよ!!」

 

 と告白した。ハジメの思考はまたまたフリーズし、愛の大きさを引き合いに出された香織がユエに突っかかった。

 

「ひゅーひゅー。まるでラノベの主人公じゃないかハジメ! 雫も含めて三人、まだまだ増えるんじゃないのか?」

 

 一方、ガブモンはハジメを囃し立てた。

 その後、再起動したハジメはガブモンに殴りかかるのだった。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 そして、さらに日数が経過し、迷宮を攻略してから1か月後経った。

 ついにハジメ達は地上へ出る。

 まだまだ滞在してもいいのだが、予定していた訓練は終わっているし、何より王国にいる雫達の元には早めに戻った方が良いと話し合って出発することになった。

 

 オスカーの屋敷の3階にある帰還用の転移魔法陣を起動させながら、ハジメは全員を見渡す。

 

 今のハジメの服装は動きやすいシャツに黒いジャケット、黒いカーゴパンツを履いている。腰にはケースに入ったデジヴァイスが落とさないように付けられており、脇には愛用のリボルバー式レールガン、ドンナーが収められたホルスターがある。

 さらに頭には黒い縁取りのゴーグルをつけていた。これはハジメが開発したアーティファクトでメタルガルルモンの能力であるセンサーで感知した情報を視覚化することが出来る。マッピング機能やマーキングの追跡機能などもついており、子供化した高校生探偵の眼鏡の様な機能が盛りだくさんになっている。

 

 香織とユエも装いを新たにしている。

 香織は今まで同様に動きやすい服装だが、丈夫な服になっており、ハジメとのペアルックを意識した黒を基調とした装いだ。腰にはホルスターに入ったリヒトとデジヴァイスのケースがある。

 

 ユエもフリルの付いたドレススカートに、白いコートを着て頭にはリボンを付けている。魔法陣も詠唱もなしに最上級魔法を使えるユエには武器はいらないのだが、ハジメと香織とおそろいになりたくてユエも銃を作ってもらった。

 リボルバー式魔導拳銃ロート。

 香織のリヒトと同じく魔法の弾丸を撃つこともでき、さらに魔法の威力向上や弾道補正を行うアーティファクトだ。魔法チートのユエが使えば鬼に金棒だ。

 香織と同じく腰には銃のホルスターとデジヴァイスのケースがあった。

 

 魔法陣の外にはハジメ達を見送るフリージアとエガリ、ワイズモンがいる。

 

「2人には世話になった。ありがとう」

「本当にありがとうございました。2人のおかげで快適な生活を送れました」

「ん。訓練に、神代の魔法の知識も。凄くためになった」

「おいしいごはんありがとう!」

「ありがとう」

「感謝、します」

 

 お礼を言うハジメ達にフリージア達も笑顔を浮かべる。

 

「いえいえ。我ら解放者の試練を乗り越えたのですから、ちゃんと対応せねばオスカー様に怒られてしまいます」

「久しぶりのおしゃべりは楽しかったです。恋バナとか少女時代を思い出しちゃいました」

「君に少女時代などないだろう」

 

 変わらない彼らのやり取りに、ハジメは香織達に静かな声で告げる。

 

「みんな……俺達の武器や力は、地上では異端だ。聖教教会や各国が黙っているということはないだろう。兵器類やアーティファクトを要求されたり、戦争参加を強制されたりする可能性も極めて高い」

「特に私は指名手配とかされちゃっているかも」

「ん……」

 

 香織とユエが首を縦に振る。

 

「教会や国だけならまだしも、バックの神を自称する狂人共も敵対するかもしれん」

「俺達も攻撃されるかもな」

「魔物といっしょくたにされると思うぞ」

「可能性、高い」

 

 ガブモン、テイルモン、ルナモンが言い合う。魔物を忌み嫌うこの世界ではデジモン達も同一視されるだろう。

 

「世界を敵にまわすかもしれないヤバイ旅だ。命がいくつあっても足りないぐらいにな」

「今更だよ、ハジメ君」

「今更……」

「どんな困難でも乗り越えようぜ」

「香織のパートナーになった時に覚悟は決めているさ」

「負けない」

 

 全員の答えにハジメは少し目を瞑ると、一呼吸置き、覚悟を決める。

 必ず、この掛け替えのない仲間たちと望みを果たすと魂に刻み込む。

 

「仲間がいればどんな困難でも乗り越えられる。世界だって超えられる。全部乗り越えて、一緒に帰るぞ!!」

「行こう、ハジメ君!」

「んっ!」

「おう!」

「ああ!」

「ん!」

 

 魔法陣が起動し、ハジメ達の姿が光の中に消えた。

 




ようやく書ききりました。

原作では2か月滞在したハジメ達ですが、今作ではサポートをしてくれるフリージア達がいたことで訓練と装備開発に専念できたこと、王国に残してきた雫達に速く生存を知らせるということで、1か月で出発しました。
まあ、攻略に原作よりも時間をかけているのでほぼ同じ時間ですが。

オルクス大迷宮というありふれ二次小説の山を越えました。あとはエピローグとあとがきを投稿して2章に入る予定です。
この二つはそれほど時間がかからないと思うので、早めに投稿できるようにします。
あと2章からは1話の文字数を少なくしてテンポよく進めたいです。感想という燃料を貰えれば仕事が辛くても書けると思いますので。

〇次回予告
ハジメ達がオルクス大迷宮を出発したころ。トータスの各所でも様々な運命が動き始めていた。
新天地を求めてさまよう者。
困難に苦悩する者。
大切な存在を探し求める者。
そして、ハジメ達が旅立ったオルクス大迷宮でも・・・。

次回「エピローグ」

冒険は新たな世界へ!

※香織とユエが技能を覚えた経緯を変更。魔法陣ではなく練習して覚えた。
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