ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る 作:竜羽
1章最後のエピローグです。伏線一杯ですよ。楽しんでいただけると幸いです。
ハジメ達が魔法陣の光の中に消えるのを見届けたフリージア達。
3人はそれぞれ動き始める。
「さて、では私達も動きましょうか」
「私はハジメ君から頼まれたことを調べよう」
「頼まれたことですか?」
ワイズモンにフリージアが何のことだと尋ねる。
「オルクス大迷宮の攻略者データだよ」
「攻略者ですか? もしかして通常難易度の?」
「ああ。君達は通常難易度の攻略者が来ても目覚めないようになっていた。私もあの魔法陣と君達がいないとこの世界に意識を割かない」
「だから攻略の証の生成データのログ等から攻略者の情報を調べるというわけですか」
「あの~。なんでそんなことを調べるんですか?」
エガリが質問をする。
過去の攻略者の情報なんて自分たちにもハジメ達にも必要ないと思うのだが。
「関係はあるさ。何せ、この迷宮は300年前に一度、彼らに縁がある者によって攻略されている」
「ユエ様の叔父ですね」
「ああ!! そういえば」
フリージアの言葉でそういえばとエガリが思い出す。
ユエはもともと吸血鬼族の女王だったが、彼女の存在を疎ましく思った叔父にオルクス大迷宮の150階層に封印された。
大迷宮に手を加えることが出来たということは、その叔父は攻略することが出来たということだ。
つまり、オスカーのメッセージも受け取ったということだ。
神が地上を遊戯盤にしていることをユエの叔父は知っていた。
それに加えてユエのステータスプレートを作成した際に判明した、彼女の天職──〝神子〟のこと。
「〝神子〟とは神の子という文字通りの意味だけでなく、神に愛された聖人、巫女という意味もある。これが意味することとは何か、調べて欲しいと頼まれたのだ」
「なぜ今頃調べるのですか?」
「阿保ですね。そんなことユエ様のお気持ちをおもんばかったからに決まっているでしょう」
永劫の孤独から解放され、信頼できる仲間と出会い、未来を見据えることが出来るようになったばかりなのだ。昔のつらい記憶に向き合うにはまだ早いと思い、ハジメは密かにワイズモンに頼んだのだ。これはガブモンや香織達とも話し合って決めたことだ。ルナモンはユエのパートナーだし、生まれたばかりで人の感情とかちゃんと理解しているかわからないから外されたが。
「わかりました。では私は201階層に行ってきます」
「ああ。例の部屋か。そうだな、遂に彼らを目覚めさせるのだね」
「ええ。エヒトがこの世界に戻ってきているのは、ユエ様の件も含めて確実ですからね」
そう言ってフリージアはワイズモンとエガリと別れて館の奥に向かった。
「……私やることありません」
「畑の世話でいいのではないかね? キュウリが収穫時だったと思うが」
「そうですね!」
タタタッと畑に駆けていくエガリの足音を聞きつつ、フリージアは館に隠された隠し階段を開く。
そこをゆっくりと降りていく。
やがて辿り着いたのは重厚な金属の扉があった。傍にはコンソールがあり、まるで地球のSF映画に出てくる未来の建物の扉みたいだ。
コンソールにフリージアはパスワードを入力し、扉を開けた。
扉の中は暗闇に満たされていたが、うっすらと光る物体があった。
それは2つの黒い水晶と、1つの鋼色の卵が入ったケースだった。
水晶の方は3メートルほどの大きさだ。
「デジタマの再構築は完了しました。これより解凍シークエンスに移行します。解凍完了まで後……」
フリージアの無機質な声が暗い部屋に響いていった。
■■■■■
ハジメ達の出発と同時期にトータス中で様々なことが動き始めていた。
──人間族領土ライセン大渓谷付近の街道
荒野に通る一本道を歩く1人の少女と小さな生き物がいた。
「はぁぁ~。疲れましたぁ。もう3日もご飯食べていないですぅ」
「せめて森があれば食い物を探せるのに」
「コロナモンの出す火で料理できるのですが……。せめて街に入れれば」
「まさか魔物に間違えられて攻撃されそうになるなんて。俺だけじゃなくてシアも……」
「ええ。奴隷にしようとされるなんて。神も仏もないですぅ」
ふらふら歩きながら嘆く少女。すると生き物が言葉を話した。
小さな生き物、名前はコロナモン。
見た目は赤い小さなライオンの姿だ。尻尾と額には小さな炎があるが、元気が無いため弱弱しい。
名前と見た目、言葉を話したことからわかる通り、コロナモンはデジモンだ。
ユエの目の前にデジタマが現れたのと同じ頃、家で眠っていた少女の枕元に現れたデジタマから孵ったデジモンだった。
一方、コロナモンにシアと呼ばれた少女。白髪碧眼の整った容姿に豊満な体型が目を引くが、彼女には普通の人間にはない特徴があった。
彼女の頭とお知りには兎の耳と尻尾がついていた。
シアはトータスでは亜人族と呼ばれる種族で、その中でも気弱で憶病と言われる兎人族だ。ただでさえ魔法が使えない種族として見下されている亜人族なのに、その中でも下に見られ、奴隷として捕まることが多いのが兎人族だ。
ある事情で亜人族の国フェアベルゲンから出てきたシアとコロナモンは、人間族の街に入ろうとしたところ散々な目に逢った。
それでも生きるために2人は旅をしていたのだが、2人の元に不運がやってきた。
「おいおい! こんなところに兎人族がいるぞ」
「しかも白髪なんて珍しいぜ!!」
「見た目も極上だぜ。隊長に知らせようぜ」
なんと2人の前に現れたのは人間族の軍の部隊だった。しかもヘルシャー帝国の部隊だ。
ヘルシャー帝国は奴隷制度を容認しており、亜人族は奴隷として積極的に捕まえている。しかも奴隷を捕まえる専門の部隊まで存在しており、シア達を見つけたのもその部隊だった。
部隊に道を塞がれたシアとコロナモン。
「コロナモン。私のハウリア族にはこういう時に使うようにと伝わる、とっておきの奥義があるですぅ。それを使いますよ」
「わかった! その奥義っていうのは?」
「それはもちろん……」
シアはコロナモンを抱えると、体に残った活力を総動員して、
「──逃げるのですぅ!!!」
「だよなあっ!!」
全力で後ろに向かって駆けだした。
そんなシアを帝国兵達も追いかけていった。
──ハイリヒ王国ホルアド王家直営宿屋。
宿屋の中庭で聖剣を振るうのは勇者である光輝だ。
本日のオルクス大迷宮での訓練は終わっており、今は夕食までの自由時間だった。
その時間を使って光輝は自主訓練をしていた。
「くそくそっ! まだだ! まだ強くならないといけないのに!!」
光輝の頭にはヘルシャー帝国からの使者との会談の際の、シエルという女性との模擬戦があった。シエルの反則で光輝の勝利となったが、傍から見れば光輝はシエルに手も足も出なかった。しかも、髪形をトンスラにされたため、ヅラを被ることになってしまった。
大きな敗北感と屈辱感を植え付けられた。
それは模擬戦からしばらく経った今でも残っており、少しでも時間があれば訓練をしていた。
今ではレベルも上がりメルド団長を超え、剣技も食らいつけるほどになった。
しかし、それでも光輝の自信は戻らない。
光輝の焦りが素振りを激しくさせ、被っているヅラがずれる。夕日に頭皮が眩しく反射する。
と、そこに。
「失礼します。勇者殿!」
「っ、え?」
1人の男が現れた。男は聖教教会の神官服を着ていた。見た目通り、男は聖教教会の神官でホルアドの教会に努めている。
「訓練中に失礼します。勇者殿。イシュタル教皇より勇者殿への依頼がありして、お届けに参りました」
「イシュタルさんからの、依頼?」
「はっ」
神官の男は跪いて一通の手紙を差し出す。なお、顔を上げないのは光輝の頭を見ないためだ。だってずれているんだもの。
光輝は急ぎの事だと思い、その場で手紙を見る。
内容をじっくりと読んでいく光輝は、一瞬目を見開き、次の瞬間に憤怒に顔を染めた。
「なんだって!? 魔人族の魔物に襲われて村が全滅しただって!!?」
イシュタルの手紙の内容に怒りを抑えきれない光輝。そして、手紙の最後には光輝に村の跡地に居座る魔物を〝神威〟で吹き飛ばしてほしいとあった。
勇者として無辜の人間を殺した魔物を倒さなければと義憤に燃える光輝。
この後、夕食の席で光輝は勇者パーティーの皆にイシュタルからの依頼を果たすために、村に向かうと宣言。血気に逸る光輝をメルドは諫めようとしたが、聖教教会の神官も一緒におり、教会の威光を盾に押し通した。
依頼を果たすためには光輝がいればいいので、翌日には光輝は教会の神殿騎士の部隊と共にホルアドを出ていった。
一週間後、人間族と魔人族の領域の境界付近で、勇者の〝神威〟が1つの村を吹き飛ばした。
「くくくっ、くはーはっはっは!!! 相変わらず馬鹿だなあ天之河!!!」
──ハイリヒ王国王都付近の荒野
「ようやく。ようやく見つけた。やっぱり隠されていた」
荒野の一角で歓喜に震えているのは、勇者パーティーの1人、中村恵里だった。
顔を隠すようにフードを被った彼女は、光輝が教会の依頼でホルアドを離れたので王都に戻って来ていた。
突然彼女のデジヴァイスが反応を示し、反応源を探していた彼女は3日かけてそれをようやく見つけた。
恵里がデジヴァイスをかざし、一枚のカードを取り出す。
「カードスラッシュ! 《ダゴモン》」
スラッシュしたのは邪神型デジモン、ダゴモンのカード。すると恵里のデジヴァイスから闇のエネルギーが溢れ出す。
エネルギーは恵里の前の空間に流れていくと、何もなかった空間にモノリスの様な漆黒の塔が現れた。
「ダークタワー。本当にあるなんてね」
現れた漆黒の塔、ダークタワーを恵里が見つめていると、彼女の後ろに黒い影が現れた。
「まさか見つかるとはな」
「誰!?」
咄嗟に振り向いた恵里は、普段使っている杖を構える。
そこにいたのは檜山に力を与えた黒い影だった。
「参考までに聞こうか。なぜダークタワーの存在に気が付いた?」
「……」
影は恵里の警戒など意にもかけずに話しかけてきた。恵里はそれだけで影が自分なんて歯牙にかけていないことを察した。
「(これは下手に逆らえば一瞬でやられるね)僕のデジヴァイスが反応したからね。僕はいい子ちゃんな南雲や香織と違って悪い子だから、デジヴァイスもこういうのに反応してくれるのさ」
「それだけでダークタワーの隠蔽を剥がせる力のカードを選べないでしょう? それは何故ですか?」
「(口調が変わった? なんだこいつ)デジモンが現れた原因があると思ったからさ。その中で思いつくものは少なかったからね。だから試してみたらドンピシャだったわけだよ」
「そうか。お前たちはダークタワーを知っているのだな」
ダークタワー。それはアニメ「デジモンアドベンチャー02」に登場した建造物だ。
アニメでは暗黒の海という、先ほど恵里が使ったカードのダゴモンというデジモンが支配する海に立っていた。様々な使い道があるのだが、最大の効力は世界そのものに影響を与え、相違を狂わし、環境を変えてしまうことだ。ダークタワーを建てられた地点では時空が歪み、デジタルワールドへのゲートが開いてしまい、デジモンが現実世界に現れてしまった。
恵里はそのことを知っていたので、香織が出て行ってから、予想を立てて、密かに調べていたのだ。
「お前の知識と行動力、そして闇の力への理解は素晴らしい。もしよろしければ私達の仲間になりませんか?」
「仲間に……」
影の誘いに恵里は身構える。
「檜山みたいに、かい?」
「ふふふっ、素晴らしい察しの良さですね」
「あてずっぽうさ。……仲間にしようっていうのなら顔くらいは見せてくれないかな?」
「おっと。これは失礼」
影は姿を隠していたフードを取る。するとそこには青白い顔色の整った男性の顔があった。
「……ヴァンデモン」
「やはり私の事も知っていたか」
恵里が知っているデジモンのアニメで登場した闇のデジモン。主人公達に倒されても暗躍し、進化して立ちふさがってきた。
ダークタワーを使っていた黒幕もヴァンデモンだったので、もしかしたらと思っていたが。
(ん?)
その時、ヴァンデモンを観察していた恵里はヴァンデモンの顔にノイズが走ったのに気が付いた。しかもノイズが走った瞬間、別の顔が見えた気がした。
「姿をみせました。それで仲間になるかの返答は?」
「っ……そうだねぇ」
返事を促すヴァンデモンに気を取り直す恵里。どうするべきか考え始める恵里。
生殺与奪の権利を握っているのはヴァンデモンだ。もしも断れば、恵里は殺されてしまう可能性が高い。
だが、ヴァンデモンに付いていけば駒として利用されて捨てられる。アニメでも仲間は使い捨てにしていた。このヴァンデモンがアニメと同一個体なのかわからないが。
(どっちにしろ未来は暗いし、強いて言うなら猶予があるかどうか。なら──)
「……仲間に」
恵里が返事をしようとしたその時、
「面白い話をしているじゃないか。私も混ぜてくれよ」
恵里の後ろから声が聞こえた。
「え? この声」
「何より、そういう話はパートナーの私にもするべきだろう?」
聞き覚えのある声に、後ろを振り返る恵里。そこにいたのは、
「──イルちゃん」
以上で1章は終わりです。
最後の伏線張りで、2章ですぐにわかるものと、後々わかることを張りました。
オルクス大迷宮のフリージア達。
何故か一族から離れて旅をしているシア。
トンスラになった光輝。
そして、ダークタワーを見つけて黒幕と接触した恵里。
2章もかなり設定とかストーリーが変わります。原作を読んで作者が疑問に思っていたこととかを解決するために手を加えました。
章の予告はあんまり詳しくすると途中で書くのが大変になると思いますので、次回予告とは違う形にします。それでも感想欄がツッコミの嵐になるだろうなあって思いますが。
では、次章をお楽しみに。あとがきは2章のプロローグと同時に投稿しようと思います。
〇次章予告
02章 ライセン大渓谷編―Ancient Tamer―
──キーポイント:
ライセン大渓谷
シア・ハウリア
亜人族
ハウリア族
ハルツィナ樹海
フェアベルゲン
大樹
婚約破棄
ミレディ・ライセン
スピリットエヴォリューション