ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る   作:竜羽

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コラボ2話です。約1名の心が死んでしまいそうです。


コラボ02話 世界最強を超える者と世界逆行者の邂逅

〇【深淵を垣間見た未だ深淵に目覚めぬ卿】

 

『ジュリエットよ。ロミオの為に我と死闘を繰り広げるその覚悟実に見事(ふっ+サングラスクイッからのターン)。さあ、次はお前だロミオよ! ジュリエットへの真実の愛を確かめるために我、いや、光闇之限界突破(ライトアンドダークネスハイパードライブ)を発動した吾輩に挑んでくるがよい!! (再びのサングラスクイッからのターン)』

 

「な、なんだこの、浩介は、ぐふっ」

「よ、よせよ信治。浩介がかわいそ、ぐはっ」

 

 笑いをこらえすぎて蹲る中野信治と斎藤良樹。

 画面からは事前に録音されていた深淵卿の説明がカットインで入って来る。

 

『説明しよう。光闇之限界突破(ライトアンドダークネスハイパードライブ)とは、光と闇が入り混じる深淵の中からあえてその二つを取り出しぶつけることで、更なる深淵の力を生み出し続ける状態である。この時、深淵卿の力は更なる深度へと深まっていくのだ。もはやこの吾輩は止められぬ。真実の愛以外は!!』

 

「ぶふっ。な、何回深淵って言えば気が済むんだよ。しかも設定がいちいち痛々しすぎるぜ」

「お、押さえろ礼一。こ、浩介が一番、辛いんだ」

 

 近藤礼一と檜山大介も必死で笑いを抑える。

 四人以外の皆も同じような感じだ。しかもご丁寧に映像には〝言語理解〟の機能があるのかトータス人であるメルドとユエことアレーティアにも意味が解っている。もっとも、2人はあまりに未知との遭遇過ぎて思考がフリーズしているが。

 

 そして。もっとも衝撃を受けているこの世界の遠藤浩介はというと……。

 

「し、しし、深淵……? な、なんでスッと言葉が入って来るんだ? まさか、俺の中にもあれが?」

 

 目がグルグル、体をユラユラさせながらブツブツ呟いていた。まるで映像の中から漏れ出した何かが乗り移ろうとしているようだ。

 

 こうして並行世界からの衝撃映像は、この世界に大きな爪痕を残した。

 

 後日、この世界の遠藤浩介が嫉妬のストレスから深淵卿を発現させたことと、この出来事は関係ない……とは言えないだろう。

 幸いにも光闇之限界突破(ライトアンドダークネスハイパードライブ)は発現しなかった。

 

 

 

〇【まずは自己紹介】

 

 

 

 どうにか軽食を食べて回復したハジメ達は、改めて並行世界の自分たちと話をしようとした。のだが……。

 

「えーっと、どうした?」

 

 困惑するハジメ。何せ、画面の向こう側では南雲達が全力で向こうの浩介を慰めていたのだ。

 

『ど、どうしたもこうしたも、無いですよ! あ、ぐふっ、あんなものをみせたら、浩介が傷つく、でしょう!?』

 

 笑いをこらえながら向こうの天之河光輝が言う。

 

「あんなもの? フリージア、俺達が回復するまで何をみせていたんだ? 確か暇つぶしのものをみせるって」

「これです」

 

 そう言ってフリージアは、ハジメのパソコンにある映像を流す。

 

『フハハハハハ!!! 我こそが深淵卿! コウスケ・E・アビスゲートだあああ!!!』

 

 クルックイッターンをする深淵卿だった。何度見ても香ばしいポーズを取っている。

 

「オーケー。把握。……フリージア、それはないだろ」

「そうですか? 爆笑でしたよ」

 

 確かに爆笑だっただろう。しかし、1人の心が死んでしまう。

 

「あー……えーっと……とりあえずすまん」

 

 それからハジメは向こうの浩介に頭を下げて回復を待った。

 やがて浩介も復活し、こっちの香織とユエもハジメの傍に座り、改めてお互いに自己紹介を始めた。デジモン達はまだ待機だ。

 

「俺の名前は南雲ハジメ。高校二年生だ。ある日、勇者召喚に巻き込まれて異世界トータスに召喚された。紆余曲折あってオルクス大迷宮の最深部まで探索してオスカー・オルクスの隠れ家にたどり着いた。そこで見つけたアーティファクトを調べていたら偶然にもそちらの世界に繋がった。ここ数日の調査でもう一度つなげることが出来たから通信をしている」

「私は白崎香織。ハジメ君のクラスメイトで一緒にトータスに召喚されちゃいました。ハジメ君達と協力してオルクス大迷宮を攻略、今は一緒に旅に出る準備をしています。将来の夢は……女医かな?」

「私はユエ。オルクス大迷宮に封印されていたのをハジメに助けられた。一緒にハジメ達の世界に行くために、修行している」

 

 大雑把にこれまでの経緯を伝えながら自己紹介をするハジメ達。それに対して向こうの南雲が進みでる。

 

『えっと、僕の名前は南雲ハジメ。僕達もそっちと同じくトータスに召喚されました。オルクス大迷宮を攻略中にトラブルがあって、何とか最深部まで来ました』

「流れはこっちと変わらないんだな」

「でもそっちは随分と人数が多いよね」

『あーそれはちょっと……』

『十中八九、そっちとはオルクス大迷宮を攻略する経緯が違うからだろうね』

 

 少し言い淀む向こうの南雲を押しのけて前に出たのは、向こうの中村恵里だった。

 

『あー、コホン。多分知っていると思うけど、僕の名前は中村恵里。こっちじゃハジメ君の恋人させてもらっているよ。もちろん、一番のね。特別なね!』

「えっ」

 

 途端、こっちの香織が軽く面食らってしまう。まさかあちらの世界では自分でなく、ちょっと面識がある程度の恵里が向こうの南雲の恋人とは思わなかったのだ。世界が違えばこうなるんだ、と思っているといきなり向こうの谷口鈴が軽くキレ出した。

 

『ちょっと恵里。いつ恵里が一番なんて決まったの? 私だってハジメ君に愛されているけど? ハジメ君の特別な人だけど?』

『そりゃあ真っ先にハジメ君に唾つけたのが僕だからねぇ〜。小学生の頃からずーっと大切な、そう! た・い・せ・つ・な! 人として想ってくれたからねぇ!!』

『うーっ……でも中学に行くちょっと前に鈴だってハジメ君に告白されたもん! それに恵里も言ったよね! 一緒にハジメ君を愛そうって!! それを忘れたとは言わせないからね!!』

『それは覚えているよ。でもね、一番を譲ってあげた記憶なんてないからね。一番は僕だから! これまでも! こ・れ・か・ら・も・ね!!』

『二人とも! ここでケンカしないでってば!! ……あぁもうごめんなさい。ウチっていつもこんなもんなので』

「お、おぅ。そうか……」

 

 向こうの谷口鈴がハジメ達に軽く注意をした途端、痴話喧嘩に発展していき、向こうの南雲が注意するも全然止まる気配がない。その様子にハジメは、ふと香織と雫が喧嘩した時の様子を思い出して少し懐かしんだ。しばらくすると、慌てて向こうの南雲が謝罪してきた。どうやらあちらもあちらで女性関係は面倒らしい。

 

『ハジメ、とりあえず恵里と鈴をなんとかしといてくれ……えーっと、コホン。もしかすると面識があるかもしれないけど自己紹介をさせてほしい。俺は天之河光輝。ここにいるハジメ達と幼馴染の人間だ。よろしくお願いするよ、ハジ……っとと、申し訳ない。南雲君、白崎さん』

「えっ」

「……えっ?」

 

 痴話喧嘩を南雲に丸投げすると、今度は向こうの天之河光輝が自己紹介をする。途端、ハジメは軽くショックを受け、香織は宇宙の真理を目にした猫のようになってしまう。

 

「え、えっとその……そっちの天之河君は私とハジメ君を見て何か思うところはないの?」

『思うところって言われても……ごめんなさい。ノーコメントでいいですか?』

「嘘っ!? 天之河君なのに屁理屈つけて私とハジメ君は恋人でも何でもない赤の他人だって言ったり、今すぐ別れろって命令したりしないなんて!?」

『なんか俺随分な扱いじゃないか!?』

 

 自分の知っている光輝と全然違う振る舞いをする目の前の人物を見て、香織は気が動転してしまう。

 

『ちょ、ちょっと白崎さん! いきなり光輝に失礼なことを言わないでちょうだい!! 光輝が傷つくでしょう!!』

『ホントな! そっちの事情はわからないし、心当たりはなくもねぇし正直想像したくねーけど俺達の光輝はそんな事言わねぇ!! 当人同士で決めた事ならなんだかんだ祝福してくれるような奴だ!!』

「し、雫ちゃんも!? 嘘っ!? ホントに天之河君がそんなこと言う訳……あの、えっと、どちら様ですか?」

『あ? ……そっか。そっちの白崎とは面識ねぇのか。俺は清水幸利。ここにいる皆、特に光輝と雫、浩介には特別厄介になった奴だ』

 

 すると向こうの八重樫雫と清水幸利が口を挟み、向こうの天之河光輝を庇ってきたため余計にパニックになりかける。が、香織は向こうの清水を知らなかったため、そこで一旦冷静になって尋ねれば丁寧に返してくれた。

 

「えっと、特別厄介って……まさか天之河君に振り回されたとか?」

『んなワケあるか。アイツはな、俺をイジメから助けてくれて、引きこもっていた俺を救い上げてくれたんだよ。何度も足繁く三人で家に来てくれて、寄せ書き寄越してくれてさ』

「……お説教じゃなくて? 善意の押し付けとかじゃなくて?」

『……今思えばそうだったかもな。その、幸利……』

『いやお前のお節介が無かったら俺の人生もっと澱んでいる。だから感謝しかねぇよ……ハァ、そう言う事か。理解したくねぇけど理解したわ。マジかよ……』

『嘘……嘘よっ! だって光輝はそんなことしないわ! だって光輝は、私をイジメから助けてくれて……ずっと好きでいてくれたもの!!』

 

 そうして何度かやり取りをすると、向こうの天之河は自分のやった事を後悔し始め、それを向こうの清水が慰めると同時に何か気付きたくないモノに気付いてしまったらしく、本気で凹んでしまう。するとショックを受けた向こうの雫が信じられない事を口走り、そのせいでハジメも香織も呆然としてしまう。

 

「……えっ?」

「…………えっ? 何? 今雫ちゃんなんて言ったの?」

『だから、私を救ってくれたの! 小学生の頃からずっと私のことを気にかけてくれて、ずっとずっと好きで、ずっとずっと愛してくれたのよ!!』

 

 思いがけない向こうの雫の言葉にこちらのハジメと香織は目が点となってしまう。だって想像出来ないのだ。自分達の知っている、思い込みと正義感が強過ぎる天之河光輝と、雫がこんな仲睦まじいなんて意外過ぎた。最初に穏やかな物腰で接してきた事も踏まえて、世界が違えばここまで変わるのかと、二人は何度目になるかわからない衝撃を受けた。

 

『そうだよ!! そっちのハジメ君も私もすっごい失礼だよ!! 小二の時に雫ちゃんは光輝君にキスしてもらっているんだから!! ちゃんと唇重ねてね!! それからずーっと相思相愛なんだからね!!』

 

 そして向こうの白崎の爆弾発言で、こちらの香織は意識がぶっ飛びそうになった。小二と言えば、こちらの雫が天之河光輝のせいでいじめを受けていた時期だ。その時に雫は光輝への好意を無くしたと言っていた。なのに彼らは全く逆の関係になっているとは。何かもう色々とこっちと事情が違いすぎて脳が理解を拒み出してきた。

 

『やっぱよ、世界越えたところで珍獣は珍獣だな』

『『『わかる』』』

 

 さらにこっちの香織を見た向こうの檜山達がそんな事を言い出した。どう考えても学園のマドンナに対するものではなく、本当に珍しい動きをする生き物相手へのリアクションである。

 

『珍獣じゃないもん!! 檜山君も近藤君も中野君も斎藤君もひどいよ!』

「ち、珍獣って……えーっと、その、そっちはお前達のところの白崎を見て何にも思わないのか?」

『無ぇな。俺の射程圏外だし俺にはコイツがいるし』

『無いわ。あの珍獣だぞ? 会って数日の頃ならともかく、白崎の普段の行動見ていたら……なぁ?』

『それな。てかもしかしてそっちの先生、もしかして俺らと認識ねぇの?』

『おい待て信治。多分光輝とかロリ介を見ていた感じだと多分仲いいとかそういうのじゃねーぞ……で、どうなん?』

「いや、まぁ……そうだな」

 

 涙目になってぷんすか怒り出した向こうの香織を見て、思わずこちらのハジメは向こうの白崎のフォローをしようとしたものの、返ってくる反応は割とドライなものばかりであった。というか向こうの檜山大介が、ユエの肩に手を置いて親密な様子を見せたことにも衝撃が大きく、中野信治と斎藤良樹からの質問に歯切れ悪く返すのがせいぜいであった。

 なにせ、ハジメはこっちの彼らにリンチを受けているのだから。

 

『うわマジかよへこむわ……』

『うぅ……龍太郎く〜ん。うぇぇ〜ん……』

『ほらこっち来い香織』

 

 そうして向こうの檜山らが気落ちする中、鼻をぐすぐす言わせながら向こうの白崎は坂上龍太郎に抱きつく。だがその様子がどう見ても親密な恋人とのそれにしか見えないのである。またしても並行世界の不思議を目にした。

 

『……っと、そういえばそっちのハ、いや南雲は俺とは認識あるのか?』

「あ、あぁ。地球にいた頃は漫画をよく貸したりしていたが……」

『そいつは良かった……なぁ、そっちの香織は大丈夫か? なんかもう放心しちまっているぞ』

「……無理言わないでくれ。俺だって正直困惑しかないんだ」

 

 キャパオーバーを起こしてフリーズしている香織を抱き寄せながら、ハジメはなんとかそう答える。まさか自分と幾らか親しい友人が、違う世界では自分の思い人とそういった関係になっているとは思わなかった。さっきから複雑過ぎて、なんと言えばいいのかわからない。香織に至っては「そっか。向こうの私、あっちの龍太郎君とそういう仲なんだ……」と色々とボロボロになっている。もうどうすればいいのかわからなかった。

 

「……そっちの私はいつまで隠れているの?」

『ひぅ!? ……ご、ごめんなさい。ごめんなさい……』

 

 ハジメたちがいろいろ限界を迎えていると、ユエが向こうのユエに声をかけた。ずっとオドオドしながら、向こうの檜山の後ろから顔を出してこちらを伺っていることが気になったのだ。だが向こうのユエは謝るばかりで、全然前に出ようとはしない。むしろ逆に縮こまって檜山の後ろに隠れてしまった。

 

『あー、その……悪い。アレ……っとと、コイツはちょっとワケありでな。ちょいトラウマ持っているっていうかなんていうか……』

「……ん。わかった。これ以上は何も言わない」

 

 何やらまずい事情があるとすぐに察したユエは、それ以上は言及しないことにした。その後、向こうの南雲が中村恵里と谷口鈴の機嫌をとり、向こうの雫を向こうの天之河がなだめすかした辺りで改めて自己紹介に移る。

 

 向こうの天之河らが南雲と幼馴染になった経緯を聞いたり、向こうの雫と浩介が忍者になっていたり、向こうの檜山らとはエロ同人やエロ絵を通じて仲良くなっていたりと、世界が違えばここまで変わるものかとお互い痛感しながらも、今度こそ自己紹介はつつがなく終わるのであった。

 

『……なぁそっちの南雲。向こうの俺って一体……』

「……いい友人だよ。少なくともそれだけは言える」

『……そうか』

 

 なお浩介へのダメージは少し軽減された、かもしれない。

 

 

 

〇【辿った道筋。召喚前まで編】

 

 

 自己紹介を終えたハジメ達だが、あまりにお互いが辿った道筋が違いすぎたためそれらを説明することになった。

 やはり順番的にこちらからのほうがいいだろうと、ハジメ達から話すことになった。

 そうなると、どうしても紹介しなければならない奴らがいる。というわけで、

 

「俺はガブモン! ハジメのパートナーデジモンだ。よろしくな」

「私はテイルモン。香織のパートナーデジモンをしている。同じくよろしく頼む」

「ルナモン。ユエのパートナーデジモン。よろしく」

 

 ハジメ達のパートナーデジモンの自己紹介だ。

 案の定、向こうの面々は驚いている。

 

『え? え? デ、デジモン?』

『ほ、本物? 本物なのか!?』

『マジでか。マジでいるのかよ』

 

 特に驚いているのは南雲、幸利、浩介だった。どうやら向こうの彼らも二次元について詳しいようで、デジモンの事を知っているようだ。

 

「そうだ。俺達のいた地球にはデジモンがいる。そっちは違うみたいだけどな」

『う、うん。僕達の世界にデジモンはいない』

「おそらく、そこから違っているな。だったら召喚前の俺達の事から話す」

 

 それからハジメは自身の幼少期からのことを話し始めた。

 小学5年生の時に偶然からデジタマを拾い、そこから孵ったガブモンをパートナーにしてテイマーになったこと。

 そこから親友である松田タカト達テイマーズと共に、リアルワールドとデジタルワールドに迫る危機に立ち向かい、世界を救ったこと。

 数年後、香織と雫に出会い、パートナーとの再会と抱いた夢の為に勉学に励んだ日々の事。

 その途中で、いきなり異世界トータスへと召喚されてしまったこと。

 

 ここまではかなり長いことなので概要だけだったが、南雲達は自分たちの世界と全く異なる歩みに、溜息を吐く。これは自分達と違いすぎると。

 

「とりあえずトータスに召喚されるまではこんな感じだが、そっちはどうなんだ?」

『えーっとこっちも長くなるかなあ……』

『ふぅ。ハジメ君。まずは僕から話すよ。多分、僕たちの世界について話すべきことは僕の事だからね』

 

 今度は南雲達がトータスに召喚されるまでの出来事を説明しようとするのだが、まず彼らの中から恵里が前に出る。

 そして、彼女の口から彼らの世界の説明が始まった。

 

『じゃあまず間違いなく違う点を挙げさせてもらおっか。二人とも、『逆行者』って単語に覚えはある?』

「小説ではよく見かけるな。過去の自分に戻るっていう話だろ?」

 

 そういう知識が豊富なハジメが答える。悲惨な人生を送っていた主人公が、過去をやり直すなどという内容が多い。

 

『うん、そっか。それなら話は早いね──僕は未来から来たんだ。僕が負けた未来からね』

 

 まさかの小説のような話にハジメ達は大なり小なり驚愕を露わにする。

 事実は小説よりも奇なりとはよく言ったものである。もっとも異世界に召喚されて、並行世界の自分達と話しているこの状況の事を考えると、逆行者くらいいてもいいのではないかと思える。

 

 一方、そのことを苦々し気に語る恵里に対し、南雲と鈴は彼女の手を握り、支えようとする。光輝達も心配そうに彼女を見つめる。そんな彼らの気遣いに大げさだなぁと内心苦笑しながらも恵里は話を続ける。

 

『とりあえず僕は前世って呼んでいるけど、その前世では僕はハジメ……いや南雲と敵対していた。天之河君を手に入れるためにね』

 

 恵里はぽつりぽつりと語っていく。自身は前世でどんな生き様を送ったかを。その妄執の果てにどうなってしまったのかを。南雲と鈴の握る手がだんだん強くなっていることに、気付かぬフリをしながら恵里は語り終える。

 

 ハジメ達は何とも濃い内容に言葉を失う。不運に見舞われ、愛を求めて狂った少女の狂気と末路は、画面越しに聞いていても心を抉ってきた。しばし、双方の間で沈黙が続いた。

 しばらくして恵里が顔を上げる。そこには、自分の境遇を悲観する色はない。今を生きる目をしていた。

 

『まぁ別に僕はそこまで気に病んでないよ。だってやり直せたからね。お父さん死んでないし、好きな人が出来たから』

 

 スッキリした顔で述べると、今度は今の人生のことについて語り始めた。前世では死なせてしまった父を助けることが出来たことと、自分の駒として取り込むべく南雲と接触したこと。

 

『正直、あの頃に戻れるならやり直したいね。ハジメ君にちゃんとさ、好きだから付き合ってくださいって言いたいよ。道具として利用するために言うんじゃなくてさ』

『じゃあ、後でやり直す? 僕だって、その……ちゃんと返事をしたいと思っていたし』

 

 過去を振り返って苦々しく思っていると、横にいた南雲が少し恥ずかし気にそんなことを漏らした。すると恵里は頬を染めて南雲の方を見つめ、南雲も恵里を愛おし気に見つめてとてつもなく甘ったるい雰囲気を醸し出す。白崎が後ろで龍太郎と腕を組んでキャーキャー言う中、鈴が咳払いをした。

 ちなみに香織は口の端を引き攣らせている。並行世界といえども、ハジメが自分以外の女の子といい雰囲気になっているのを見るのはムカムカする。香織の虫の居所が悪くなりつつあるのをハジメも察しており、鈴の挙動には感謝の念を送る。

 

『コホン。はい、恵里。続き続き……だったら鈴が先に告白するから。絶対恵里に一番は渡してあげない』

『チッ……鈴、聞こえているからね? じゃあ、続きを話すよ』

 

 早く話を進めろと急かすついでに聞き捨てならないことを言った鈴に思いっきり舌打ちしつつも恵里は話を再開した。

 南雲と出会う前はかつての記憶と寸分変わらぬ光輝に追い掛け回され、その際龍太郎に助けられたこと。その後鈴と再会を果たしたものの、前世の彼女と様子が全く違うことにショックを受けて呆然自失となった。

 

『もしかするとあの時からかもね。僕がハジメ君に惹かれていったのは。鈴ともう一度友達になるために色々やってくれたからさ』

 

 過去を懐かしみながらも恵里はその後の話を続けていく。鈴と友達になったことで谷口、南雲家とも家族ぐるみの付き合いが始まった。南雲が一足先に厨二病にかかった──なお南雲は無事発狂し、大介らはゲラゲラ笑って光輝らに叱られた──こと。小一のクリスマスで一緒に手を繋いで寝てしまったことやバレンタインのこと。そしてホワイトデーのあの日が訪れた。

 

『決定的なのはあの日お返しをもらった時だね。ハジメ君が僕のことを大切な存在だって想ってクッキーを作ってくれた。その時からもう夢中だったよ。道具扱いしていた心がずっと悲鳴を上げていた。今ならそう断言できる。ずっと、ずっと好きになっていたんだ』

 

 熱っぽい視線を南雲に一度送って咳払いをすると、また話を始めていく。二年になったら今度は龍太郎が雫のことで頼みをしに来て、前世と全然様子の違う光輝と雫に心底驚きつつも友達になった。なんか浩介もその辺りで友達になった。

 三年になると白崎や優花達とも友達になった。

 

『小六の時にやっと素直になって、それで幸利君とも友達になって……あの日が起きた』

 

 小六の時の告白、中学での幸利との出会い──そしてトータスに来ることを見越して兵器類に関する本を読み漁っていたのが家族にバレてしまい大喧嘩になった。

 

『ずっと守りたかったものを自分のせいで壊しちゃって……あの時ハジメ君がいてくれなかったらと思うとゾッとするよ。ぜんぶ、ぜんぶハジメ君のおかげだね』

『……恵里』

 

 恵里は南雲とお互い愛おし気にしばし見つめ合った後、自身が逆行者であることを南雲に話した。そして今度はトータスに行く前に南雲と鈴と一緒に色々と話し合い、鈴をたぶらかしたことも話し、そこで光輝達も巻き込もうと一緒の学校を目指そうと唆したことも言った。

 

『後は……檜山君達だね。まぁ馬鹿だったよ。ハジメ君人質にしようとして返り討ちに遭っていたし』

『うぉぃ! 間違ってねぇけど! ねぇけどよ!!』

『中村さん……』

『なぁ中村、俺らの扱い雑過ぎねぇ? 俺らもお前に感謝してんだけど!?』

『もうちょい言い方ってもんがあるだろ!? こう、オブラートに包むとかぼかすとか!』

『事実なのは事実だけど辛辣すぎるわ!! 反省したから!! 俺らちゃんと反省しているってば!!』

 

 聞くに堪えない四馬鹿の叫びと、ショボくれた様子の向こうのユエの言葉には一切耳を貸さず、さらっと大介らと友達になった経緯も説明していく。南雲がエロ絵を描いていたことに心底キレ、エロい自撮りを送ろうとして止められたことも話したところで恵里は一息着いた。

 

『大体こんな感じかな……じゃあ、今度はそっちがトータスに来てからどうなったかについて教えてくんない?』

 

 今まで語った過去を懐かしみつつも、それは今やるべきことじゃないと切り上げた恵里はハジメらにそう問いかけた。

 

 




コラボ2話でした。思ったよりも長くなりそうです。

田吾作Bが現れた様の作品「あまりありふれていない役者で世界逆行」は今話で説明したような流れですが、実際に読んでみるともっと見どころがありますので、このお話で興味を持った方はぜひ読んでみてください。

あと数話ほどコラボは続きます。不定期ですがお楽しみに。
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