ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る   作:竜羽

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いよいよ今作の四人目のヒロインの事情に踏み込みます。
ごちうさを見ながら書きました。内容には全く関係ないです。


03話 シア・ハウリアの事情

「おいひいれすっ! こんふぁおいふぃものふぁじめてれすぅ」

「んぐんぐんぐんぐ!!」

 

 両頬を大きく膨らませて、食べ物を貪り食うウサミミ少女──シア・ハウリアとコロナモン。その食料を出したのはもちろんハジメ達だ。フリージア達が当面の食料として用意してくれたものだが、ものすごい勢いで減っている。

 

 魔人族の男との闘いの後、助けと空腹を求めて倒れたシアとコロナモンをハジメ達は助けた。

 魔人族の男の亡骸を簡易だが弔った後、ガブモンがガルルモンに進化したことで空いたハジメのサイドカーに2人を放り込み、その場を後にした。

 ガルルモンが先行し、大迷宮を探すのは後回しにして、ライセン大渓谷を出た。入り口にはヘルシャー帝国の兵士団の死体の山があり、シア曰く最初に自分たちを追いかけまわしていた連中であり、ライセン大渓谷に入ったあたりであの魔人族に遭遇して殺されたようだ。戦いの最中にシア達は隙を見て逃げ出したという。

 彼らも野ざらしにしておくのは忍びなかったので、簡単にだが弔った。

 そこから少し離れた所でキャンプをすることにした。いい加減、空腹で本格的に動けなくなってしまったシアとコロナモンには、最初にフルーツを与えておいた。途中から、香織とテイルモンが作り始めた料理も食べ始めた。

 シアとコロナモンが食事を貪り食い、香織とテイルモンが食事を与える。その横でハジメ達はテントを設置しておく。

 

 そうしてキャンプの準備が出来たと同時にシア達も空腹が満たせたのかごろりと横になった。

 香織とテイルモンは2人が食べた量に乾いた笑みを浮かべながら、自分たちの食事を用意する。

 そしてハジメ達も食事をして人心地着いた頃に、ようやくシアとコロナモンから事情を聴けるようになった。

 

「えーっと改めて私は兎人族ハウリアの1人、シアと言います」

「俺はコロナモン。よろしくな!」

 

 ハジメ達も自分たちの名を名乗る。

 日はすっかり沈み、今は全員で焚火を囲んでゆっくりと落ち着いて話し始めた。

 

「で、なんでシアはこんなところにいたんだ? 亜人族ってハルツィナ樹海から出てこないんだろ?」

 

 王国の資料でもそう書かれており、樹海以外に亜人族は住処を持っておらず、樹海の外には奴隷となっている亜人族しかいない。

 しかし、シアには奴隷の証である首輪が無いので奴隷ではないし、本人も否定した。

 

「まあ、そうなんですが。実は……」

 

 シアが語った内容を要約するとこうだ。

 

 ハルツィナ樹海にて百人規模の集落を作りひっそりと暮らしていたハウリア族。

 そんなある日ハウリア族に異常な女の子が生まれた。兎人族は基本的に濃紺の髪をしているのだが、その子の髪は青みがかった白髪だったのだ。しかも、成長すると亜人族には無いはずの魔力まで有しており、直接魔力を操る術と、とある固有魔法まで使えたのだ。

 

 当然、一族は大いに困惑した。兎人族として、いや、亜人族として有り得ない子が生まれたのだ。魔物と同様の力を持っているなど、普通なら迫害の対象となるだろう。しかし、亜人族一家族の情が深い種族である兎人族のハウリア族は女の子を見捨てるという選択肢を持たなかった。

 

 しかし、樹海深部に存在する亜人族の国【フェアベルゲン】に女の子の存在がばれれば間違いなく処刑される。魔物とはそれだけ忌み嫌われており、種族関係なく不倶戴天の敵なのだ。国の規律にも魔物を見つけ次第、できる限り殲滅しなければならないと有った。また、被差別種族ということもあり、魔法を振りかざして自分達亜人族を迫害する人間族や魔人族に対してもいい感情など持っていない。樹海に侵入した魔力を持つ他種族は、総じて即殺が暗黙の了解となっているほどだ。

 

 故に、ハウリア族は女の子を隠し、十六年もの間ひっそりと育ててきた。だが、先日とうとう彼女の存在がばれてしまった。

 

「それでこれ以上家族に迷惑はかけられないと思い、私はコロナモンと一緒に樹海を抜け出したんです。北の山脈地帯ならひっそりと暮らせると思い目指していました。ですが途中で帝国兵に見つかり……」

「さらには魔人族に見つかった、と」

 

 こくりと頷くシア。なかなか波乱万丈な人生を歩んでいるなとハジメ達は思った。

 特にユエはどこか自分と似た境遇に共感を覚えていた。尤も、シアの場合は家族に恵まれていたという大きな違いがあるが。

 

「それで逃げながら助けてくれると〝視えた〟方を探していたら皆さんを見つけたんです! おかげで助かりました!」

「本当にありがとうな!!」

 

 お礼を言うシア達。その言葉に気になることがあったテイルモンが質問をする。

 

「〝視えた〟ってどういう意味だ?」

「え? あ、はい。〝未来視〟といいまして、仮定した未来が見えます。もしこれを選択したら、その先どうなるか? みたいな。あと、危険が迫っているときは勝手に見えたりします。まぁ、見えた未来が絶対というわけではないですけど。そのおかげで貴方が私達を助けてくれている姿が見えたんです! 実際、ちゃんと貴方に会えて助けられました!」

 

 嬉しそうに説明するシア。さらに詳しく聞くと、彼女の固有魔法〝未来視〟は、彼女の説明通り、任意で発動する場合は、仮定した選択の結果としての未来が見えるというものだ。これには一回で枯渇寸前になるほどの莫大な魔力を消費する。また、自動で発動する場合もあり、これは直接・間接を問わず、シアにとって危険と思える状況が急迫している場合に発動する。これも多大な魔力を消費するが、任意発動程ではなく三分の一程消費するらしい。

 

 魔人族に追いかけられながら、その魔法を使いハジメ達に助けられる未来がある方向へ逃げたのだ。

 

「そんな能力があるならフェアベルゲンの連中にも見つからないんじゃないのか?」

 

 ハジメがもっともなことを言うと、シアは少し考えながら、気まずそうに答える。

 

「じ、自分で使った場合はしばらく使えなくて……」

「バレた時、既に使った後だったと……何に使ったんだよ?」

「ちょ~とですね、友人の恋路が気になりまして……」

「ただの出歯亀!? 貴重な魔法をなんて使い方しているの……」

「……やっぱり残念?」

「うぅ~猛省しておりますぅ~」

 

 シアのまさかの理由に香織とユエが突っ込む。

 ハジメも少し呆れていたが、気を取り直して質問を再開する。

 

「コロナモンとはどこで出会ったんだ?」

「コロナモンとはある日私の部屋に転がっていた卵から生まれました」

 

 ある日の朝、シアが目を覚ますと枕元に不思議な模様の卵があったそうだ。

 シアを始めとしたハウリア族全員が見守る中、卵は孵り、煙の様なものを体に身に纏った見たこともない生き物が生まれた。

 最初は魔物かと思ったのだが、争いごとや殺生を嫌うハウリア族は生まれたばかりの生き物を殺そうとせず、見守ることになった。

 やがて生き物はシアに懐き、自らを「モクモン」と名乗った。

 言葉を話したこととシアに懐いたことからハウリア族全員でモクモンを受け入れ、シア同様ひっそりと育て始めた。

 そして次の日、モクモンは赤い太陽のような姿の「サンモン」になった。

 

「進化か。よく姿が変わっても受け入れたな」

「びっくりはしましたけれど、モクモンの時と同じいい子でしたから。私も父様もパル君もネアちゃんも、みんな受け入れました」

「樹海に引き籠っている亜人族だからなのかな?」

「……それはない。シアの一族が特殊なだけ。普通なら魔物として殺されている」

「ユエさんの言う通りですねえ。私のハウリア族は、憶病で温厚な兎人族の中でも一際そういう気質が強いのです。地面に生えている花や虫にも気を使うほどです。……正直ちょっとうざいなあって思っていました」

 

 進化してもサンモンを受け入れたシア達ハウリア族に驚くハジメ達。

 もっともシア自身は優しすぎる一族にちょっと呆れていたようだが。

 何はともあれ、ハウリア族に受け入れられたサンモンは元気に育ち、生まれてから一週間でまた別の姿、コロナモンになった。それと同時にシアの手にデジヴァイスが現れた。

 オレンジ色の縁取りのデジヴァイスをシアはハジメ達に見せる。

 

「デジヴァイスというのですか。きっと大事なものなのかと思い持っていました」

「正解だよ。デジヴァイスはデジモンと私達テイマーの絆の証だからね」

 

 香織のアドバイスに嬉しそうに微笑み、コロナモンを抱きしめるシア。

 テイマーとなった経緯はユエと似たようなものだった。

 もしかしたら他にも同じようなことが起こっているのかもしれないが、シア達ハウリア族のような人々でないと生まれたデジモンは魔物として殺される可能性が高い。

 シアとコロナモンは奇跡的にテイマー関係を結べたのだ。

 

「ふぁぁ……。ごめんなさいです。ご飯を頂いたら眠気が」

「俺もだ。もう、限界……」

 

 ハジメ達に助けられ、久しぶりの食事をしたことで疲労感が押し寄せてきたシアとコロナモン。

 ハジメ達はシア達を寝かせるためにテントに運び、毛布をかぶせて寝かせた。

 そして話し合いを再開する。

 

「迷宮を出てからまさかの展開ばかりだな。俺もう疲れたぜ」

「……魔人族。シアとコロナモン。どれも予想外」

「でもハジメ君ちょっと嬉しそうだね。やっぱりシアとコロナモンのこと?」

「どういうこと?」

 

 ユエが首をかしげる。ハジメは香織に見抜かれていたことに少し照れくさそうにする。

 

「俺の夢はデジモンと人間が一緒に暮らせる社会を作ることだ。事前知識も無しに、デジモンそのものを見て、パートナー関係を結ぶ姿は俺の理想そのものなんだ」

「……なるほど。じゃあ私とルナモンも嬉しかった?」

「もちろんだ。ユエとルナモンの絆は凄く良いと思うぞ」

 

 断言するハジメにユエは嬉しくなり、ルナモンを抱えて抱きしめる。好きな人に褒められるほどの絆を結べていることがとても誇らしい。

 ハジメの夢を叶える為に、地球への帰還の鍵となる大迷宮攻略への相談を始める。

 

「大迷宮の前にまずはシアの事だよね。北の山脈まで連れていくかどうか……」

「そのことなんだが……」

 

 ハジメは少し思案しながら、さっきから気にかかっていたことを口にする。

 

「シアの話だが、少し嘘があると思うぞ」

「えぇ!? 嘘ってなんだよハジメ?」

 

 ガブモンが驚きながら質問する。

 香織達もシアの話のどこに嘘があったのか気になる。

 

「引っかかったのはシアがフェアベルゲンに見つかったところだ。最初はシアが魔法を使ったところを見られたからなのかと思っていたが、シアの〝未来視〟の説明で違うってわかった」

「確かに。もう魔法を使っていたのなら見られたわけじゃないね」

「……それだけじゃない。仮に〝未来視〟を使っているところを見られても魔法が使えるって判らない」

 

 炎や雷を出すならともかく、〝未来視〟とは使っている本人にしかわからない。

 ならば、シアは見つかったとしても髪の色が違うだけの兎人族で、魔物と同じ力を持っているとわかるはずがない。

 過去に樹海に迷い込んだ人間族から魔法の知識を聞き出した可能性もあるが、一目見られただけでシアの特異体質がばれるというのも考えられない。

 シアも自分から魔法が使えると暴露するほど残念じゃないはずだ。

 

「シアが嘘をついた理由はいろいろ思いつく」

 

 ハジメは自分が想像したシアの本当の事情を述べる。

 

 1つ。フェアベルゲンはシアを追放などしておらず、何かの密命を与えて樹海の外に送り出した。シアの固有魔法は命の危機を回避するのに最適だ。

 しかし、この考えの通りだとするといささかシアの行動が行き当たりばったり過ぎるし、ハジメが気が付いたような粗のある説明もしないだろう。

 他にも実はただの家出をしてきただけとか、フェアベルゲンだけでなく一族からも追い出されたとか。

 まあ、本人が寝ているときに考えても仕方ない。

 

「シアの事はこれくらいでいいかな。次は明日からの行動だ」

「予定だと近くの街に行くはずだったけど、シアの事も放っておくのは気が進まないなあ。折角出会えたテイマー仲間なんだし」

「……先に樹海に行く? シアに案内してもらえれば、樹海の大迷宮が探せるかも」

「ああ。樹海には亜人族以外が迷わされる霧があるんだったな」

「じゃあシアの協力は必須じゃないか」

「……でも、追放されている」

 

 ハジメ達はあれこれと明日の行動を相談し続けた。

 やがて、明日の予定を決めたハジメ達は少し準備をした後、就寝した。

 

 




〇デジモン紹介
モクモン
レベル:幼年期Ⅰ
タイプ:スライム型
属性:データ
体中に煙のような気体を取り巻いているデジモンベビー。デジモンの体の中心にあるといわれている電脳核(デジコア)が剥き出し状態の特殊なデジモンで、そのデジコアをスモークで守っているらしい。モクモンはデジコアが剥き出し状態なので、燃焼したときのスモークが体を覆っている変わった生態系のデジモンである。体からでるスモークを辺り一帯に撒き散らし、その隙に逃げてしまう。


シアの事情は原作とほぼ同じでしたが、ハジメがおかしな点に気が付きました。
シアって見つかっただけで忌子ってばれたのに疑問に思いました。
これは私も原作を読み直して思いました。Web版しか読んでいないので書籍版では治っているのかもしれませんが。

次話はいよいよ樹海に入ります。果たして何が起きるのか……。
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