ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る   作:竜羽

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フェアベルゲンに行きたかったんですがその手前までしか進めなかったです。

でもフェアベルゲンがびっくり箱になったのでお楽しみに。


04話 ハルツィナ樹海

「じゅ、樹海に行くのですかああああっ!!?」

 

 朝一番、朝ご飯を食べているときに告げられたハジメ達の要求にシアが驚愕する。

 シアが寝た後の話し合いで、ハジメ達はシアに次のような要求をすることにした。

 

 樹海にある大迷宮に心当たりのある場所を案内すること。

 見返りにハジメ達はシア達が北の山脈に行けるように、旅に必要なアーティファクトや道具、人間族の街のルールを提供する。

 道具に関してはすでにある程度渡しており、丈夫なバッグに姿を隠すローブ。さらに新品の服をシアは着ている。昨日まで着ていたハウリア族の伝統衣装という露出度の高い服はボロボロになったので、香織の動きやすい冒険者風の衣服の予備を先に与えたのだ。

 

「シアは樹海を追い出されたんだぞ!? なのに戻れなんて酷いぞ!!」

「落ち着けコロナモン。私達も強制はしない」

 

 憤るコロナモンをテイルモンが宥める。

 

「もちろん、シアが行き辛いというのはわかっている。だから案内しなくてもいいし、それでも道具は持って行ってもいい」

「え?」

「ただしその時はここでお別れだ。俺達にも旅の目的があるんだ」

 

 きっぱりと言い切るハジメ。これ以上譲歩するつもりはない。

 それでもシアはなんとしてもハジメ達に付いてきて欲しかった。

 樹海を出てからコロナモンとここまで旅をしてきたが、まだまだ北の山脈は遠い。コロナモンと〝未来視〟の魔法があるとはいえ、無事に辿り着ける確率が低いのはシアでもわかる。そんな中で出会えた強くて親切なハジメ達。しかも自分と同じようにコロナモンの様な生き物を連れている。何としても行動を共にしたかった。

 

「だ、だったら、連れて行っていただける代わりに私の身体を自由にしていただいてもいいですぅ!」

 

 だからそんな馬鹿なことを口にしてしまった。上目遣いで、手を組んで、胸の谷間を強調しながら、ものすごく媚を売る感じで。

 ハジメに話し合いを任せていた香織とユエが、ゆらりと立ち上がるが、ハジメを篭絡せんとするシアは気が付かない。

 デジモン達がそそくさと距離を取る。コロナモンもルナモンとテイルモンに手を引かれて離れた。

 

「一体何を言っているのかな? かな? この色ボケケダモノ痴女は」

「……残念発情駄ウサギ。貴様の血は何色だ」

 

 すっと背後に回った香織とユエがそれぞれシアの頭についているウサミミをむんずと掴む。

 

「はぎゃ!? な、何事ですぅ!? イタタタタッッ!!??」

「ハジメ君。私とユエはちょっとこの痴女とOHANASHIがあるから」

「……あっちに行っている。悪いけれど、片付けを始めていて」

「了解しました」

 

 そしてウサミミを掴んだまま、2人はシアをキャンプ地から少し離れた岩陰に引きずった。

 

 ────あっ!? 腕はそっちにまがらな!? 

 ────ハジメ君に色目を使った雌ウサギの末路は1つ

 ────……しっかり調教して教えてあげる

 ────痛いですぅ!? やめてぇ! やめてぇ! 

 ────ユエ。右足をもっと思いっきり極めて

 ────……委細承知。カオリに教えてもらった柔道の技を使う

 ────八重樫流のOHANASHI用の雑技の出番だね

 ────アアアアアアアアッッ!!?? 

 

「……雑技じゃなくて拷問技だよなあ」

 

 いそいそとデジモン達とキャンプの片付けをするハジメだった。

 しばらくして香織達が戻ってきた。香織とユエはすっきりした顔をしていたが、シアはガクガクと震えていた。

 コロナモンが駆け寄り、落ち着かせている間に香織とユエも片付けに加わり、シアが落ち着いた頃には出発の準備が整っていた。

 

「それで、どうするんだシア?」

「うう、どうしても樹海に行くのですかぁ?」

「ああ」

「……一体、ハジメさん達の目的って何なのですぅ?」

 

 そういえば昨日はシアの事情しか話していなかった。

 ハジメ達は旅の目的と境遇をシアに説明した。

 ハジメと香織が異世界人であることや、ユエが封印されていた300年前の吸血鬼族の王女であること、コロナモンがガブモン達と同じデジモンという異世界の生き物であることにとても驚いた。

 説明の過程でハジメ達がシアと同じく、魔力を直接操作する技能や固有魔法を使えることも教えると、さらに驚愕した。

 

「わ、私だけではなかったのですね……何だか嬉しいですぅ」

 

 思わず泣き始めるシア。

 魔物と同じ力を持つという事、この世界であまりに特異な体質である事から孤独を感じていたようだ。家族からの愛情でも埋められなかったその感情は、同じ体質を持つハジメ達と出会ったことで表に出てきてしまったようだ。

 しばらく泣き続けるシアをハジメ達は何も言わず見守った。

 特にユエはシアの言葉に思うことがあったのか、考え込むように押し黙っていた。共に魔物と同じ〝魔力操作〟技能に固有魔法を持ち、同じ同胞もおらず、故郷から迫害された。その果てに、ハジメ達とデジモンと出会った。

 似たような道程を歩みながら、導かれるように出会ったトータスの住人の二人。ユエはシアに手を差し伸べたくなってきた。それは彼女に芽生えたハジメ達以外への親切心だ。ただの困った人ならどうも思わなかっただろうが、ここまで境遇が似ているシアだからこそ、そう思ってしまったのだ。

 

 ユエがそう思っている間に、ハジメは説明を続けていく。異世界召喚から始まる経緯を語っていき、最後にハジメ達の旅の目的を話した。元の世界への帰還することであり、そのための手がかりが大迷宮にある。だから大迷宮がある樹海に行く必要があるのだと。

 

「うぇ、ぐすっ、ひどい、ひどすぎますぅ~。ハジメさんもユエさんもがわいぞうですぅ。カオリさん達の勇気がすごいですぅ~。ガブモン達もハジメさん達と支え合っていてすごいですぅ~」

 

 全てを聞いたシアはハジメ達の境遇にさらに涙を流した。涙をぬぐうと立ち上がり、

 

「わかりました!! 皆さんのために樹海を案内します! それだけでなく、皆さんの旅にこのシア・ハウリアも付いていきます! 遠慮なんて必要ありませんよ。私達はの仲間ですぅ。共に苦難を乗り越え、望みを果たしましょう!」

「シアが行くなら俺も行くぜ!」

 

 盛り上がるシアとコロナモンだがハジメ達は、

 

「悪いが樹海まででいい」

「大迷宮は本当に危険だからやめた方が良いぜ」

「正直、あの魔物に逃げ回っているようじゃ難しいかな」

「オルクス大迷宮の魔物は魔人族の連れていた魔物の比じゃない」

「……勝手に話をまとめて仲間になるな」

「……厚かましい」

 

 と切って捨てた。

 ハジメと香織は苦笑いだが、ユエはさっきまでの親切心が急速に消えていくのを自覚した。ルナモンの言うとおり、何て厚かましい残念ウサギだ。

 

「そ、そんなぁ~。仲間に入れてくださいよぉ~」

「北の山脈までの道とかも教えるし、地図だって書いてやる。なんなら俺たちの移動用アーティファクトを貸してやってもいい。だがガブモンが言ったように大迷宮は本物の地獄だろう。お前と成長期のコロナモンじゃ瞬殺される。俺達もお前達を守れるほど余裕はないんだ」

「うぅ、確かに私は弱いですけどぉ……」

 

 シアはハジメ達と別れることが怖いのだろう。コロナモンというパートナーがいたとはいえ、魔物と同じ特異体質を持つシアにとって初めて出会えた〝同胞〟なのだ。今後同じような存在と出会えるとは限らない。

 少し顔を俯かせるシアにハジメはばつが悪そうにするが、彼女を自分たちの危険な旅に連れて行かせるわけにはいかないと、意見を変えることはない。

 

「そろそろ出発しよう。樹海の案内、頼めるんだな?」

 

 小さくシアは頷いた。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

【ハルツィナ樹海】へと出発した一行。シアとコロナモンはハジメのサイドカーに、ガブモンは香織のサイドカーにテイルモンと共に乗っていくことになった。

 徒歩ではかなりの距離があるのだが、魔導二輪は数時間で樹海と平原の境界に辿り着いた。

 

「樹海まであっという間でしたぁ。ハジメさんのアーティファクト凄すぎですぅ」

「あんなに頑張って歩いたのになあ」

 

 鬱蒼とした樹海を前にして、唖然としているシアとコロナモン。

 その横でハジメ達は探索の準備をする。

 

「これを身に着けてくれ。亜人族にも見つからないはずだ」

 

 そう言ってハジメが全員に渡したのはローブの様な外套だ。

 

「なんですかコレ?」

「これを着て魔力を流すとしばらくの間〝気配遮断〟と〝光学迷彩〟の魔法が発動して目に見えなくなる。これで亜人族にも見つからないはずだ」

「なるほどぉ~」

「ん? でもそれなら俺達にも見えないんじゃないか?」

 

 感心するシアだが、コロナモンが問題点を指摘する。

 それに対してハジメはニヤリと笑い答える。

 

「それについて問題はない。対処法は考えてあるさ」

 

 それからすぐに準備を終えて樹海の中に入ったハジメ達。

 足を踏み入れるとすぐに霧が立ち込め始め、視界が真っ白になった。するとハジメ達の方向感覚がおかしくなり、現在地が判らなくなった。ハジメ達だけでなく、デジモン達までも判らなくなった。

 コロナモンから聞いていた通りだったので、ハジメ達は落ち着いてシアの道案内に従って進んでいく。

 亜人族に見つからないようにアーティファクトの外套を身に着けているため、目にも見えないし、気配もしない。そして、ハジメ達は外套以外にもお互いに見失わないようにもう一つのアーティファクトをつけている。

 ハジメは付けていた万能ゴーグルを使っており、ガブモンもお揃いのゴーグルをつけている。

 香織達もハジメのゴーグルの様な姿が見えない相手が見えるようになるアーティファクトをつけていた。

 

 まずは香織とテイルモン。

 縁なしの眼鏡で、女医さんが付けているもののようだ。もちろん、テイルモンもお揃いでクールで知的な彼女にも似合っている。

 

 ユエとルナモンも香織と同じ眼鏡タイプで、こちらは赤い縁取りの眼鏡だ。女教師が掛けていそうで、ちょっと妖しい魅力が漂っているぞ。

 

 そして、最後のシアとコロナモン。

 

 ハートの形のパリピサングラスを掛けたシアと星の形のパリピサングラスを掛けたコロナモン。

 2人だけハウスライブにでも来たかのようだった。パリピウサギとパリピデジモンだ。

 

「いやなんか違わないですかコレ!?」

「静かにしてよ。音まで消せないんだから、騒がしくしちゃだめだよ」

「……シア。めっ」

 

 騒ぐシアに香織とユエが注意する。

 

「いやだって、私達だけ皆さんのと違いすぎますよ!? 空気読んでいない人みたいです!!」

「あー、作ってあったのはそれだけなんだ。我慢してくれ」

 

 香織とユエの眼鏡はハジメのゴーグルの様な探知系のアーティファクトが欲しいという事になり作ったもので、ちょっとデザインに凝り過ぎて徹夜してしまった。できた後、素材が少し余っていたので、徹夜明けのテンションでついでに作ってみたものだ。ついでなので機能はあまりないが、今回の探索では問題ないほどの性能だ。

 

「ううぅ。納得できないですぅ」

「まあまあ。それよりも道はこっちでいいんだよね?」

 

 シアを慰めながら道を聞く香織。

 

「はい。【大樹ウーア・アルト】はこっちです。樹海の中なら亜人族、特に私達と人族は絶対に迷わないです。逸れないでくださいよ」

 

 樹海の奥を指さすシアに従い、樹海の奥へ歩みを進めるハジメ達。

 大迷宮を探すにあたり、シアにそれらしき場所はないかと聞いてみたところ、【大樹ウーア・アルト】が怪しいということになった。

 亜人族の国【フェアベルゲン】が建国された当初から存在しており、場所も樹海の中心部にあるという。

 如何にも何かありそうな場所なので、一先ずそこを目指すことにしたのだ。

 

 それから一時間後。

 

「なあ、シア」

「な、なんですかぁですぅ?」

 

 威圧感を出しながら低い声で話しかけてきたハジメに、シアが震えながら答える。

 

「俺達は大樹に向かっていたはずだよなぁ?」

「そ、そうですぅ」

「フェアベルゲンには近づかないって決めたよねぇ?」

 

 今度は香織だ。笑顔なのだが目が笑っていない。

 

「ははは、はいですぅ」

「案内していたのはシア。絶対に迷わないと言っていた」

 

 最後はユエだ。デフォルトのジト目がさらにジト目になって、シアを見つめている。

 それに耐えられなくなったシアはハジメ達の姿を見ない世に、パリピサングラスを押し上げる。尤も見えなくなっても、ハジメ達からの非難の眼差しは消えないが。

 なぜシアがハジメ達から責めるような目を向けられているのかというと。

 彼らの目の前に巨大な門────フェアベルゲンへの入り口の門があるからだ。

 

「どういうこと」

 

 ユエがシアにパリピサングラスを下ろさせ、再度パリピウサギにしてどういうことかと問いかけると、しどろもどろになりながらシアが説明する。

 

「そ、そういえば、大樹の周りの霧はとても濃くなる時があるそうで、亜人族でも迷ってしまうんでした。あはは」

「つまり、今は霧が濃くなる時期だから迷ってフェアベルゲンに来てしまったという事?」

「は、はいそうですぅ。────てへぺろ?」

 

 首をかしげて、ごめんねという意味を込めて頭をコツンと叩き、ぺろっと舌を出す。

 

「〝嵐て「待って待って待って落ち着いてユエ!!」」

 

 風属性の最上級魔法でシアにお仕置きをしようとするユエを必死で止める香織。

 一方、中の人と違うネタを使ったシアへの苛立ちを抑えながら、ハジメはこれからどうするか考える。

 樹海の中だからわからないがもうすぐ日が暮れる。野営するにもフェアベルゲンに近いと見つかる可能性がある。

 とりあえず、この場を離れようと思ったその時、

 

 ────ドオオオォォン

 

 門の中から突然何かが爆発する音が響いてきた。

 突然のことに何事かと思っていると、フェアベルゲンの門が吹き飛んだ。

 

「避けろ!」

「わきゃあああ!?」

 

 ハジメの声と同時にシアとコロナモン以外はすぐにその場を飛び退り、シアとコロナモンもユエが抱える。

 巨大なフェアベルゲンの門が吹き飛ぶという事態に、ハジメ達が警戒していると、門の中から巨大な手が出てきた。

 

 その手は太い骨の手だった。さらにぬっと巨大な身体が出てきた。

 ただし、その体も骨でできていた。

 見上げるほどの巨体に、生物としてはあり得ない骨だけできた身体。

 唯一背中には肉体を持った流線形の何かを背負っている。

 

「な、なんでこいつがいるんだ!?」

「あり得ないだろ」

 

 テイルモンとガブモンがフェアベルゲンの中から出てきた生物を見て戦慄する。

 ユエとルナモンも目を見開く。

 ハジメが険しい表情をしながら、デジヴァイスを取り出し、読み込んだデータを表示する。

 

「スカルグレイモン。完全体アンデッド型デジモン。必殺技は《グラウンド・ゼロ》と《オブリビオンバード》。本物のスカルグレイモンかよ」

 

 表示した内容を読み上げると、スカルグレイモンが樹海全体に響く咆哮を轟かせた。

 




〇デジモン紹介
サンモン
レベル:幼年期Ⅱ
タイプ:レッサー型
属性:ワクチン
体が太陽のような形になっていて、頭部が揺らめいている幼年期のレッサー型デジモン。基本的に陽気な性格で、フワフワと宙に浮いて過ごしている。
モクモンから進化した当初は、風に流されてどこかに行こうとするサンモンをシアは必死で連れ戻していた。


またありふれのキャラに新しい属性をつけてしまいました。
テイマーハジメ、シールダー香織、ガンナーユエ、トンスラ勇者に続く、パリピウサギです。
何故か唐突に浮かんだんですよねえ。一発ネタにするか再登場するかは今後の評判次第ですかね?

原作とは違う経緯でフェアベルゲンに着いてしまったハジメ達の前に現れたのはまさかのスカルグレイモン。アニメでは太一とアグモンにトラウマを植え付けた強敵相手にどうなるのかお楽しみに。


※もうすぐ投稿してから一年なので何か特別編を投稿しようかなと考えています。
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