ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る   作:竜羽

48 / 107
感想・評価・お気に入り登録ありがとうございます。

今話はかなりの独自設定があります。


06話 隠された歴史

「私の名はアルフレリック・ハイピスト。フェアベルゲンの長老の座を一つ預からせてもらっている。まずは武器と魔物を下がらせてもらえないだろうか。ギルもシア・ハウリアを解放せよ」

「は? し、しかし!?」

 

 突然現れたフェアベルゲンの長老、アルフレリックの言葉に警備隊長の虎の亜人族、ギルが戸惑った声を出す。

 

「見た所、彼らはシア・ハウリアの同行者なのだろう。そして途轍もない強者だ。争う愚を犯すわけにはいかない」

 

 ハジメ達と傍らにいるデジモン達へ目を向けながら、落ち着いて言い聞かせるアルフレリック。その姿には亜人族という1種族をまとめ上げる長老の1人としての風格があった。

 ギルや部下の亜人族達は言い返そうとするが、アルフレリックの言葉とハジメ達、正確には先ほど戦っていたデジモン達との力量差を思い出し、渋々とシアとコロナモンを開放する。

 ハジメ達はすぐにシアを傍に寄せると、アルフレリックと相対する。

 シア達を開放してくれたので武器は下げるがデジモン達は完全体のままだ。完全に警戒を解くわけにはいかない。

 

「我々は名乗った。今度はそちらの名前を教えてもらえないだろうか? 見た所、奴隷商というわけでもないだろう?」

「……ハジメです。こっちはパートナーのワーガルルモン」

「香織です。パートナーのエンジェウーモン」

「ユエ。パートナーはクレシェモン」

 

 ハジメ達は自身の名とパートナーを紹介する。

 争いを収めて交渉する態度を見せてくれたアルフレリックに、警戒しながらも丁寧な態度をとることにした。

 

「シア・ハウリアと行動しているのは、彼女に道案内をさせるためかの? 目的は一体何かね?」

「この樹海にある大樹の元へ行くためです。彼女達にはその道案内を頼みました」

「……なぜ大樹の元へ?」

 

 ハジメの答えに少し目を細めながらアルフレリックはハジメ達の真意を探ろうとする。

 

「そこが大迷宮の入り口の可能性があるからです」

「それは……」

「何を言っている? 大迷宮の入り口? 大迷宮とはこの樹海そのものだ。一度踏み入れば亜人以外は出られないこの樹海こそが天然の大迷宮だ!」

 

 アルフレリックが細めていた目をわずかに見開き何かを言う前に、警備隊長のギルが前に出て訝しそうに口をはさむ。

 確かにギルの言うとおり、王宮の書物にもハルツィナ樹海の事をオルクス大迷宮と並ぶ大迷宮だと書かれていた。

 しかし、本当の大迷宮を知るハジメ達からすればこの樹海は大迷宮ではない。

 移動中に魔物とも遭遇したが、この樹海の魔物はオルクス大迷宮の奈落の魔物どころかライセン大渓谷に住む魔物にも劣る。ハジメ達からすれば雑魚もいいところだ。

 そもそも樹海の中で亜人族が国を作って暮らせている時点で大迷宮ではない。

 

「ギル。少し下がっておれ」

 

 話の腰を折ってきたギルを下がらせるアルフレリック。納得はいかなそうだが、アルフレリックには逆らえないので言われた通りギルは下がる。

 

「お前さん達、〝解放者〟という言葉を知っておるのか?」

「!? なぜ、その言葉を」

 

 アルフレリックの言葉に今度はハジメ達が驚く。

 

「そういう事か……。すまないが何か解放者にまつわる品はあるかな?」

「……オルクス大迷宮の攻略の証ならあります」

 

 指にはめているオルクス大迷宮の攻略の証の指輪をみせるハジメ。

 指輪に刻まれた紋章を見てアルフレリックは目を見開いた。そして、気持ちを落ち着かせるようにゆっくりと息を吐く。

 

「確かにお前さん達は解放者の大迷宮の攻略者のようだ。詳しく話したいこともあるので、できればフェアベルゲンに来てもらえないだろうか? 私の名で滞在を許そう。もちろん、シア・ハウリアも一緒にな」

「長老様……」

「な、何を言っておられるのです!!」

 

 アルフレリックの言葉にシアが目を見開き、周囲の亜人族達が驚愕の表情を浮かべた。

 ギルを筆頭に猛烈な抗議の声が上がる。なにせフェアベルゲンに人間族が招かれたことなどなかったのだから。

 

「彼等は、客人として扱わねばならん。その資格を持っているのでな。それが、長老の座に就いた者にのみ伝えられる掟の一つなのだ」

 

 アルフレリックが厳しい表情で周囲の亜人達を宥める。

 一方ハジメ達はアルフレリックの提案に乗るか小声で相談する。

 

「どうする? 私達がフェアベルゲンに行ったら厄介なことになりそうだけど」

「でも、解放者のことを知っていた。大迷宮の情報があるかも」

 

 香織は自分たちがフェアベルゲンに行けばいらぬ騒ぎを起こすのではないかと危惧し、ユエは大樹以外の手掛かりがあるかもしれないと言う。

 2人の意見も加味しながらハジメは自分の考えをまとめて伝える。

 

「話を聞くだけっていうのはどうだ? なるべく早く出れば騒ぎにはならない。行くときもローブで姿を隠せばいいと思うんだが」

 

 騒ぎを起こしたくないが、情報も欲しい。2つの要望を加味した答えがハジメの意見だった。

 デジモン達にも相談し、アルフレリックが亜人族達を宥め終わったと同時に、ハジメ達はアルフレリックに付いていくことにした。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 壊れたフェアベルゲンの門を、アルフレリック先導で通っていく。後ろには亜人族の部隊がハジメ達を見張るように続く。

 ハジメ達は着ていたローブのフードを被り、顔がわからないように隠している。デジモン達も成長期(ガブモンだけは幼年期のツノモン)に戻り、目立たないようにハジメ達のバッグの中に隠れている。

 なお、シアは念には念を入れてパリピサングラスも着けている。……別の意味で目立ってしまったので、ちょっとハジメ達は後悔した。

 

 門を超えて進んでいくとさらにもう1つ門があり、フェアベルゲンを何重にも守っていた。スカルグレイモンに破壊された門はもっとも外側の門だったようだ。門までの道の所々には光る鉱石が霧の中で配置されていた。その鉱石の周囲には何故か霧が寄り付かず、一本の道が出来ている。

 

「あれは、フェアドレン水晶というものだ。あれの周囲には、何故か霧や魔物が寄り付かない。フェアベルゲンも近辺の集落も、この水晶で囲んでいる。まぁ、魔物の方は比較的(・・・)という程度だがね」

「……なるほど」

 

 アルフレリックの説明を受けながら、ゴーグルを下ろし周囲を観測するハジメ。

 もたらされる情報に、ゴーグルの中で目を細める。

 そうこうしているうちに、最後の門が現れた。

 太い樹と樹が絡み合ってアーチを作っており、其処に木製の十メートルはある両開きの扉が鎮座していた。天然の樹で作られた防壁は高さが最低でも三十メートルはありそうだ。

 門番もおり、厳重な警備がされている。

 ギルが門番へ合図を送ると、ゴゴゴと重そうな音を立てて門が僅かに開いた。

 

「まさに別世界だな」

「うん。これこそファンタジー、だね」

「私も初めて見た」

 

 門の中を見たハジメ達が感嘆の声を上げる。リュックの中のデジモン達も声を潜めながら、目の前の光景に見惚れる。

 そこは別世界だった。直径数十メートル級の巨大な樹が乱立しており、その樹の中に住居があるようで、ランプの明かりが樹の幹に空いた窓と思しき場所から溢れている。人が優に数十人規模で渡れるほどの極太の樹の枝が絡み合い空中回廊を形成している。樹の蔓と重なり、滑車を利用したエレベーターのような物や樹と樹の間を縫う様に設置された木製の巨大な空中水路まであるようだ。樹の高さはどれも二十階くらいありそうである。

 

「ふふ、どうやら我らの故郷、フェアベルゲンを気に入ってくれたようだな」

「ああ。こんな綺麗な街を見たのは始めてだ。空気も美味い。自然と調和した見事な街だ」

「うん。どんな街よりも綺麗だと思うよ」

「ん……綺麗」

 

 飾らない称賛に、そこまで褒められるとは思っていなかったアルフレリックを始めとした亜人族達は驚く。しかし、その顔には隠し切れない歓喜が浮かび、尻尾や耳がピコピコと動いていた。

 

 ローブで姿を隠していたおかげで、ハジメ達が人間族であるとばれることもなく、アルフレリックが居を構える住居に招かれた。亜人族の部隊はアルフレリックに言われて解散した。不服そうだったが、アルフレリックに押し切られた。

 居間に通されたハジメ達はローブを脱ぎ、アルフレリックが用意したテーブルに向き合っていた。デジモン達もリュックから出てそれぞれのテイマーの傍にいる。

 

 出されたお茶を飲みつつ、ハジメ達はアルフレリックにこれまでの経緯とオルクス大迷宮で知ったこの世界の真実、そしてハジメ達が目指す目的を話した。目的を達成するために、樹海にもあるとされる大迷宮に向かう必要があり、その手掛かりが大樹であると。

 

 全てを聞いたアルフレリックは動揺することもなく、ハジメ達の話を信じた。

 

「……なるほど。試練に神代魔法、それに神の遊戯の盤上か……」

「あまり驚いていませんね」

「今のこの世界は我ら亜人族に優しくない。神が狂っていようが関係ない」

 

 香織の疑問にアルフレリックはどうでもよさげに答える。

 確かに亜人族は魔力を持たないために、人間族と魔人族の双方から見下されている。ヘルシャー帝国など、奴隷として酷使することを国自体が認めているほどだ。

 そんな立場では神が世界を遊戯盤にして遊んでいようが、狂っていようが関係ないだろう。そもそも神への信仰を広める聖教教会の権威もないこの場所では信仰心もない。

 

「ではこちらも話そう」

 

 アルフレリックはアルフレリックの長老に伝わる口伝を伝えた。

 それは、この樹海の地に七大迷宮を示す紋章を持つ者が現れたらそれがどのような者であれ敵対しないこと。そして、その者を気に入ったのなら望む場所に連れて行くことという何とも抽象的な口伝だった。

 ハルツィナ樹海の大迷宮の創始者リューティリス・ハルツィナが、自分が解放者という存在である事(解放者が何者かは伝えなかった)と、仲間の名前と共に伝えたものなのだという。フェアベルゲンという国ができる前からこの地に住んでいた一族が延々と伝えてきたのだとか。最初の「敵対せず」というのは、大迷宮の試練を越えた者の実力が途轍もないことを知っているからこその忠告だ。

 そして、オルクスの指輪の紋章にアルフレリックが反応したのは、大樹の根元に七つの紋章が刻まれた石碑があり、その内の一つと同じだったからだそうだ。

 

「その口伝のおかげで俺達が大迷宮の攻略者だとわかったのですね」

「ええ。私としてはハジメ殿たちが大樹に向かうのは構いません。今では大樹のことをただの象徴としてしか見ていない者たちばかりです。管理する者も、見張りもいません」

「そういう事なら、行かせてもらいます」

 

 これにてハジメ達が大樹へ向かう話はついた。

 話がひと段落付いたところで、ずっと黙っていたシアがおずおずと手を上げた。

 

「あ、あのアルフレリック様。お聞きしたいことがあります」

 

 元気爛漫という第一印象だったシアが、真逆の態度でいることにハジメ達が心配そうな目を向ける。

 そしてそれは、アルフレリックも同じだった。

 

「遠慮することはないのだ、シアよ。私は君の師匠なのだから、いつものように先生と呼んで構わない」

 

 アルフレリックのまさかの言葉に、ハジメ達は驚愕する。

 

「せ、先生!? どど、どういうこと!?」

 

 香織がシアに詰め寄る。詰め寄られたシアは、あー、うーと言いにくそうに目を逸らす。

 

「そういうことか。魔法が使えない亜人族の国で、シアが魔法の使い方や魔力操作、そしてさっき見せた身体強化魔法をどうやって覚えたのか気になっていたが、あなたが教えたんですね」

 

 合点がいったという顔をするハジメ。先ほどゴーグルでアルフレリックが魔力を持っていることはわかっていたので、彼ならばシアに魔法の手ほどきをしたことに納得できた。

 一方、話を聞いていたデジモン達の中で、おかしなことに気が付いたテイルモンが疑問を投げかける。

 

「ならなぜシアを追放なんてしたんだ? そもそも亜人族の国の長老が魔法を使えるなら、魔力を持つシアを追放なんてするはずないだろう?」

 

 テイルモンの疑問はもっともだ。

 加えて言うならば、亜人族が見下されている原因の1つにして最大の理由は魔法が使えないからだ。ならば、魔法が使えるシアは彼らの立場を大きく変える重要な存在だ。

 大事に保護して崇めるならばまだしも、忌み子として迫害し追放するなど論外のはずだ。

 それを指摘されたアルフレリックは、しばし目を瞑ると決意のこもった表情を見せる。

 

「そうだな。この世界とは異なる世界からやってきて、シアに力を貸しているのならば話してもいいだろう。だがその前に、シアの質問から答えていいだろうか?」

 

 アルフレリックの言葉にハジメ達は頷く。シアはハジメ達にお礼を言うと、改めてアルフレリックに質問をする。

 

「あ、あの、アルテナちゃんは無事ですか? 怪我も治っていますか?」

「もちろんだ。もう起き上がっている。今は子供達と果樹園の手伝いをしている」

「よ、よかったです」

 

 ホッと息を吐くシア。

 知らない名前にハジメ達が首をかしげる。

 

「アルテナ?」

「私の孫娘だ。シアと共に魔法を教えていた」

「つまりシアとあなた同様に亜人族であるのに魔法が使えるのですか」

「ええ。……では、次にハジメ殿たちの質問に答えよう」

 

 アルフレリックは一口お茶を飲むと、口を開いた。

 

「解放者の一人、リューティリス・ハルツィナ様がいた時代。その頃は亜人族であっても魔力と固有魔法を持っている者がいたそうです」

「それはオルクス大迷宮に残されていた資料にもありました。解放者の仲間には亜人族の部隊もあり、魔法を使う者たちがいたと」

「ええ。実際、私の祖父がフェアベルゲンの長老だった500年前まではまだ忌み子の風習はなかったのです」

 

 500年前という言葉にハジメ達は驚く。なんでもアルフレリックの年齢は200歳に迫るという。

 しかし、300年前の吸血鬼族の女王だったユエの存在と、森人族がエルフの様な見た目からハジメ達はすぐに納得した。

 

「しかし、あの時からフェアベルゲン内がおかしくなり始めました」

「あの時?」

 

 香織が聞き返す。

 

「500年前、当時のフェアベルゲンが国交を持っていたある国が滅亡したのだ。その影響がフェアベルゲンにも及んだのだ」

「その国ってもしかして……」

 

 アルフレリックの言葉に、ユエは心当たりがあった。

 ハジメ達がユエを助け出した際に教えてもらった吸血鬼族が滅んでから経過した300年。そして、当時の女王教育で学んだ世界の歴史から、今から500年前に起こった大きな事件を察した。

 

「──竜人族の国の滅亡だ」

 

 痛ましいという表情をするアルフレリック。

 竜人族とは吸血鬼族と同じく、かつてトータスに存在した種族の1つ。〝竜化〟と呼ばれる肉体を竜へと変化させる能力を持っていた。高潔で清廉な一族であると言われており、ユエも憧れを持っていた。

 しかし、今から500年前に竜人族は魔物であるという噂が全ての種族に広まってしまった。

 人型から竜へと変身する能力など、竜人族以外に持っている種族は居ない。ならば、人間ではなく、災害である魔物であるということだ。

 馬鹿馬鹿しい理由だが、その噂は収まることを知らず、やがて噂に触発された人々により竜人族の国は攻め滅ぼされた。

 

 その影響は当時交流を持っていた亜人族の国にまで及んだ。

 竜人族の国が滅亡した後、一度持ってしまった疑念が膨らみ、亜人族の間でも噂が蔓延し始めた。

 

「──魔法が使える亜人族は魔物であると」

 

 それこそが、魔法が使える亜人族が忌み子として同族から迫害されるようになった原因だという。

 その噂は長老たちがいくら否定しても消えることはなく、同族たちへの仲間意識が強いはずの亜人族にとっては不可解すぎる事態だった。

 そして遂に、決定的なことが起きた。

 魔法が使える亜人族の戦士が、噂による恐怖にかられた民間人数十人に暴行を受けて、再起不能にされてしまったのだ。

 これにより亜人族内部で、魔法が使える者と使えない者による内乱が勃発しそうになった。

 

「魔法が使える者の方が有利だが、数は使えない者の方が多い。それに戦う時になって同族を傷つければ、動揺してやり返される可能性がある。加えて、噂を聞き付けた多種族まで魔物と疑わしい者を討伐するという名目で攻め込もうとしていた。──地獄絵図だったらしい」

 

 聞いただけだが、想像するだけで恐ろしいと言うアルフレリック。

 しばししんみりとした空気が流れる。

 ふと気が付いたユエがポツリと零す。

 

「似ている。解放者が反逆者とされた経緯と」

「ああ。私もそう思ったところです。ハジメ殿達の話も加味すると、あれも神の暗躍だったのかもしれん」

「引きこもり(神)が戻ってきたのが500年前ということか」

「ハジメ、何かが逆じゃないか?」

 

 ツノモンが静かにツッコミを入れる。

 

「話を戻そう。その後、当時の長老たちはある対策を取ることにした。魔力を持つ亜人族達をフェアベルゲンの外、北の山脈地帯の先にある孤島へ避難させることにしたのだ。そこには竜人族の生き残りが住んでいたのだ」

 

 国は滅亡したとはいえ、竜人族という種族は生き残っていた。

 亜人族は樹海に引き籠っていたこともあり、竜人族の迫害にあまり手を貸していなかったので、繋がりを保っていたという。

 当時の長老と竜人族の長との間で魔力を持った亜人族の大半が、竜人族が隠れ住んだ北の孤島に移り住んだという。表向きは処刑したという体で。

 これにて噂による内乱の危機は過ぎた。だが、その結果として亜人族達は苦境に立たされることになる。

 

「亜人族とは弱い種族だ。もともと魔法が使える者は少なく、その者たちを追放してしまった。後に残った戦士たちの身体能力は高いが、人間族や魔人族の魔法には手も足も出ない。加えて、噂の影響で新しく生まれた魔法が使える子供も、忌み子として処刑しなければいけなくなってしまった。このままでは樹海の亜人族は滅んでしまう」

 

 住民が同族を迫害したとはいえ、ずっと続いていた国が亡ぶのは防ぎたいと思い、当時の長老達は一計を案じた。

 魔力を持つ者の中で、亜人族でありながら魔法の素養が高かった森人族が、魔法を使えることを隠して長老として残ることになったのだ。国を守る最後の戦力という事もあるが、もう一つ役目があった。

 

「例え魔法が使える者達がいなくなっても、時たま魔法が使える子供が生まれてくる。その子供達を見つけて密かに育てる。時を見て処刑したように見せかけて、北の山脈地帯に送ることにしたのだ。そこまでいけば、生き残っているはずの竜人族に保護してもらう手筈になっているのだ」

「つまり、今の北の向こうには竜人族と魔力を使える亜人族達の集落があるという事ですか」

「そのはずだ。流石に種族内で処理された子供までは救えなかったが、私が把握している子供達は北の山脈へ送り出すことが出来た。無事に辿り着いていればいいが……」

「なるほどね。これで樹海に引き籠っていたシアが北の山脈の事を知っていた理由がわかったよ」

「魔法の事にも詳しかったのが、変だと思った」

「い、いえ。私は竜人族の事とか昔の事とか知りませんでした。ただ、アルフレリック様の事を秘密にすることと北に行けば助かるという事しか知りませんでした」

 

 ハジメ達にアルフレリックのことを隠していたことがばれて、ばつが悪そうにするシア。

 シアについては、たまたまハウリア族の集落の近くにいたアルフレリックが彼女を見つけ、密かに訓練を施すことになった。

 シアの体質を知っても迫害しなかったハウリア族に、アルフレリックも好感を持ち、密かな交流もあったという。

 

「だが、数か月前にある事件が起きてシアの存在がフェアベルゲン中に知らされたのだ」

 

 話はシアが追放された経緯に移った。

 

 




今回は今作におけるフェアベルゲンの独自設定です。
よくシアを追放したことを指摘された長老たちが後悔したりしますが、流石に気が付いている人もいるんじゃないかと思い、今回の設定が浮かびました。
次話はシアに何があったのかです。ちょろっと出てきたアルテナちゃんも絡んできます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。