ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る   作:竜羽

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今話はシアとハウリア族についてですが、なかなか重い内容になっておりますのでご注意を。


07話 悲しい決意

フェアベルゲン長老、アルフレリックの住まいでハジメ達への説明が行われている頃。

 

「人間がフェアベルゲンにいるだと!?」

「本当なのか!?」

「なんということだ!!」

 

 怒鳴り声をあげたのは頭に熊の耳を付けた屈強な肉体の大男だ。周囲には男と似た風貌の者達がいる。

 彼の名はジン。亜人族の種族の1つ、熊人族の長でありフェアベルゲンの長老の1人だ。

 亜人族は多種多様な姿を持つ種族が集まった人種であるため、彼らの指導者である長老が各種族から集まりフェアベルゲンの運営を行っている。中でも熊の特徴を持ち、屈強な戦士を多く抱える熊人族のジンは長老の中で強い発言権を持っている。

 そんな彼の元に、配下の者がある一報を持ってきた。

 なんとフェアベルゲンの長老でもあるアルフレリックが、人間を国内に入れたというのだ。しかも、

 

「あの忌み子まで連れ戻しただと!!!」

 

 先日、フェアベルゲンを追放された兎人族のシア・ハウリアまでも連れていたという。

 戦士を多く抱えるジン達熊人族はフェアベルゲンの為に最も戦ってきた種族だ。そのため、魔物や亜人族を奴隷にしようとする人間族・魔人族に対して深い憎しみを抱いている。

 シアの事が分かった際も、最も強固に処刑を主張した。

 結局、追放という事になったが、彼の溜飲は下がることはなく、追放を決めたアルフレリックへの不満を募らせていた。

そこに部下の1人から、アルフレリックが人間族と魔物に似た生き物、そしてシアをフェアベルゲンに連れ込んだという報告を受けたのだ。

最初は信じられなかったが、報告の信ぴょう性を信頼する副官が保障したため、真実であると断定された。

 

「アルフレリック……ッ。もう許さんぞ!!!」

 

 怒りも露わに、部下と共に飛び出していくジン。我慢の限界が来た彼は自分たちだけでなく、他の長老達にも話をしに向かう。

その後ろに付き従う副官の口元には、うっすらと笑みが浮かんでいた……。

 

 

 

 そんな彼らを物陰から1人の少女が見つめていた。

 

「あ、ああ。シア。無事でしたのね。……急いで知らせに行きませんと!」

 

彼女、アルフレリックの孫娘であるアルテナ・ハイピストは祖父の家に駆けだした。

 

 

 

■■■■■

 

 

 

一方、アルフレリックの住まいではアルフレリックの話が続いていた。

 

「シアが見つかってしまった経緯は個人的なことなので省かせていただく。だが、わかってほしい。決して彼女は魔法で間違ったことをしたわけではないのだ」

 

アルフレリックの言葉にハジメ達は頷く。

短い間だが、明るく快活なシアが自分の魔法で悪事を働いたとは全く思えない。

 

「見つかってしまったシアだが、私は何とか彼女の処罰を処刑ではなく追放でとどめた。かなりの不満が寄せられたがな」

 

シアが戦闘力の無い兎人族であったことと、荷物も持たせず着の身着のままで放り出すことで何とか不満を押しとどめたという。

 

「アルフレリック様は後で荷物を渡してくださり、北の山脈に行くようにと教えてくださいました」

「竜人族の里とは連絡を取ることはできていない。北の山脈へ行ったとしても、助かる保証はない。それでもその僅かな可能性に賭けるしかなかったのだ。長老などと言われていても、無力なものだ」

 

 自嘲するアルフレリック。

 竜人族の里とは密約を交わした500年前以来、関係を秘密にするために連絡を一切取っていない。アルフレリックも連絡する術を知らない。

 そのため、今まで彼が送り出してきた魔力持ちの亜人族達が、本当に竜人族の里に辿り着けたのか知る術はない。もしかしたら途中で人間族に掴まって奴隷になっているかもしれないし、魔物に襲われてしまったかもしれない。

 教え子を命の保証のない旅に送り出すことに、アルフレリックの心は疲れていた。

 本当にこのやり方が正しいのか、もっとこのフェアベルゲンを変える努力をするべきではないのか。

 彼の顔には深い苦悩の色が浮かんでいた。

 

「これが私の知る全てだ。……今度は私からハジメ殿達に質問をしてもいいだろうか?」

「なんですか?」

「君たちはシアをこの後どうするのだ?」

 

 アルフレリックの質問はシアの今後を憂いたことだった。

 ハジメ達から聞いたシアと出会った経緯を聞き、彼女はとても危険な目に遭ったと知った。今はハジメ達と一緒にいるから命の危険はないが、別れてしまえばまた危険な旅だ。

 アルフレリックが教えた身体強化魔法と、コロナモンがいることからある程度の自衛は出来るが、ハジメ達がいる方が安心できる。

 

「俺達は――」

 

 ハジメが口を開きかけたその時、ドアが荒々しく開かれた。

 

「シア!!」

「アルテナちゃん!?」

 

 入ってきたのは足元まである美しい金髪を波打たせる碧眼の美少女だった。耳がスッと尖っていることからアルフレリックと同じ森人族だろう。

 シアの言葉から彼女がアルフレリックの孫娘で、シアと同じく魔法を習っていたアルテナなのだろう。

 シアの姿を見つけた彼女は目に涙を浮かべると、シアに駆け寄り抱き着く。

 

「ああ!よかったですわ。無事でしたのね!!」

「ううっ、アルテナちゃんも怪我が治ってよかったですぅ!!」

 

 シアも涙を浮かべてアルテナの事を抱きしめる。

 しばし、再会できたことに泣いていた2人だが、アルテナがハッとする。

 

「そうですわ。早くここを離れてくださいませ!」

「ふぇ?」

 

 アルテナの言葉がわからなかったシアが困惑していると、玄関の方が騒がしくなった。

 アルテナが慌ててシアを掴んでアルフレリックの傍に駆け寄ると、玄関から大勢の足音が聞こえてきた。やがて、それは居間にたどり着き、荒々しくドアをけ破って中に入ってきた。

 

「アルフレリック!!!」

 

 居間に怒鳴り込んできたのは長老の1人、熊人族のジンだった。その後ろからは他の種族の長老達がどんどん入ってきた。

 アルフレリックはハジメ達と共に部屋の隅に移動し、入ってきた者達と相対する。

 

「貴様、どういうつもりだ。なぜ人間を招き入れた?そこの兎人族もだ。忌み子にこの地を踏ませるなど……返答によっては、長老会議にて貴様に処分を下すことになるぞ!!」

 

 必死に激情を抑えているのだろう。握りしめた拳をわなわなと震わせている。

 ジンだけでなく他の者達もシアとハジメ達を睨んでいる。

 彼らの前に立ち、ハジメ達を庇うアルフレリックは、溜息を吐きながら、心底疲れ切ったという表情をしている。

 

「なに、口伝に従ったまでだ。お前達も各種族の長老の座にあるのだ。事情は理解できるはずだが?」

「何が口伝だ!そんなもの眉唾物ではないか!フェアベルゲン建国以来一度も実行されたことなどないではないか!」

「だから、今回が最初になるのだろう。それだけのことだ。お前達も長老なら口伝には従え。それが掟だ。我ら長老の座にあるものが掟を軽視してどうする」

「なら、こんな人間族の小僧どもが資格者だとでも言うのか! 敵対してはならない強者だと!」

「そうだ」

 

 ハジメ達を連れてきたのは口伝に従ったからだ、と主張するアルフレリック。しかし、彼以外の者達は口伝を軽視しているらしく、納得していない。

 加えて、シアへの敵意が警備隊長のギル達以上に強い。

 森人族は過去に竜人族の里とも交渉を行っていたことと長命である事から、柔軟な価値観を持ち、口伝も大事にしている。しかし、他の種族は寿命も人間族並みであり、魔力持ちも少なかったことから、500年前に起きたことを知らない者たちが長老になっていった。

 今では魔力持ちの子供達を保護しているのはアルフレリックだけになっている。

 

「ふざけるな!我らの同胞が人間族にどんな目に遭わされてきたと思っている!!魔法の的にされ、甚振られて、樹海の傍に打ち捨てられた亡骸が転がるのをどれだけ眺めてきた!!」

 

 ジンが話しているのは主に帝国の奴隷捕獲部隊に立ち向かった戦士達のことだ。

 同胞を奴隷狩りから守る為に立ち向かったが、魔法の攻撃に手も足も出ず、瀕死にされてしまった。そのままでは死ぬだけであり、奴隷としての価値もなくなった彼らを、帝国の人間達はよく暇つぶしにと魔法の的にするのだ。そして死んだ彼らを樹海の脇に捨てていったのを、ジンは仲間達と歯を食いしばりながら何度も見送った。だから彼らは他種族、特に魔法を使う者達への憎悪は大きい。

 

「しかも亜人族でありながら魔物と同じ力を持つ忌み子まで庇うなど、明確な裏切りではないか!!」

「情けをかけて追放で済ませたというのに、フェアベルゲンに入れるなど明確な決定違反だ!!」

 

 ジンの後ろから、虎の亜人が現れて追随する。彼は虎人族の長老で名前はゼルという。熊人族と同じく、戦闘能力の高い亜人族であり、ジンとも仲がいい。そのため同じ価値観を持っている。

 

「それは帝国の者や奴隷商だ。彼らではない。それにシア・ハウリアは確かに追放されたが、口伝の資格者の一員だ。それがどんなものであろうと招き入れるというのが、口伝なのだ」

「屁理屈を言うな!!」

 

 口論を繰り広げるアルフレリックとジンの後ろで、ハジメは考え込んでいた。

 

(これが普通の亜人族。ここまでの敵意を持つとは。……だが、長老という種族のトップに立つ奴にしては短慮が過ぎないか?アルフレリックさんは長老の中でも最年長だし、長い間フェアベルゲンを治めてきた実績がある。なのに、無理やり家に乗り込んでくるなんて失礼すぎる)

 

 少しジン達の様子に違和感を持ったハジメ。

 考え込みながら、アルフレリックとジン達の口論の行方を見守ることにする。

 それからも口論は平行線をたどった。

 ハジメ達とシアを認めないジン達は彼らの処刑を求め、アルフレリックは口伝を盾に手を出さないように庇う。

 だが、ジン達があることを口に出したことでシアは衝撃を受けた。

 

「ええい!!もうハウリア族もいないのだぞ!!その忌み子が生きていたところで帰る場所などどこにもないのだ!!!」

「ジン、お前!!」

 

 アルフレリックが鋭い声を出して、ジンの言い様を咎める。しかし、それを聞いていたシアが、ふらふらと前に出る。

 

「ど、どういう、ことですか?とう、様たちが……いない?」

「ふん。あいつらはこのフェアベルゲンにいない!少しその愚かな所業の罪深さを教えたらすぐに出ていったわ!!忌み子を匿っていた愚かさに気が付き、罪滅ぼしの為に死にに行ったのだろう。その殊勝な態度だけは誉めてやろう」

「そ、そんな……」

「シア!しっかりしろ!」

 

 力なくへたり込むシアにコロナモンが駆け寄る。

 彼女の目には生来の爛漫さが無くなり、虚ろになっていく。

 彼女の様子に、遂に我慢の限界が来た者がいた。

 

「いい加減にしてくださいまし!!!」

 

 シアの隣にいたアルテナだった。シンと場が静まった中、彼女はアルフレリックの前に出るとキッとジン達を睨みつけた。

 

「何が罪深さを教えたですか!!あなた達がカムさん達を疎んで嫌がらせをしただけじゃないですか!!そもそもシアがあなた達に何かしましたか!?むしろシアはわたくしや子供達を助けてくれましたわ!!」

「助けた?」

 

 アルテナの言葉にユエが疑問を浮かべる。

 アルテナがジン達に不満をぶつけながら話し始めた内容から、ハジメ達はシアがフェアベルゲンの住人にばれてしまった経緯を知った。

 

 ある日、アルテナが他の種族の子供達と遊んでいたところ、偶然にも魔物が迷い込んできた。フェアベルゲンの周囲に配置されている魔物よけの効果があるフェアドレン水晶は、絶対ではない。たまに魔物が入り込んでしまうことがあり、そういった場合は警備隊が対処することになっている。しかし、その時入り込んだ魔物は地中を潜るタイプで警備隊の発見が遅れてしまった。

 その魔物にいち早く気が付いたのは、固有魔法〝未来視〟を持つシアだった。

 アルテナ達に魔物が迫っていることに気が付いたシアは、いち早く駆け付けてアルテナと子供達に危機を伝えようとした。しかし、時すでに遅く、何とか子供達は逃がせたものの、アルテナとシア、そしてシアの後をついてきたコロナモンが魔物と戦うことになった。

 何とか魔物は倒せたのだが、戦いでアルテナは負傷し、シアは身体強化魔法で戦っているところを警備隊に見られてしまった。

 兎人族ではありえない戦闘能力から魔力を持つ忌み子であることがばれてしまった。

 加えて、魔物のように見えるコロナモンと協力して戦っていたことも、敵意を持たれる原因になってしまった。

 

「どこに責められる原因があるんですの!?わたくしと子供達を守る為に戦ったシアに感謝こそあれ、憎しみなんてあるはずがありませんわ!!」

 

 涙を浮かべて怒りをぶつけながら訴えるアルテナ。

 流石にアルテナには強気に出られないのか、ジン達は気圧される。

 なんとも言えない空気になったため、アルフレリックはアルテナの横に並ぶ。

 

「今この場で言い争っても結論は出ないだろう。今から緊急の長老会議を行い、彼らの処遇を決めたい」

 

 一度仕切り直しを行うことを提案するアルフレリック。ジン達もこの提案には従う。

 ハジメ達とアルテナとこのままここに残ることになった。

 近くにいては冷静に判断できないだろうという建前だが、ジンの言葉に傷ついたシアをハジメ達に何とかしてもらうためだろう。

 

 アルフレリックが出て行ってしばらくした後、アルテナがお茶を淹れなおし、自己紹介もした後、今度は彼女に話を聞くことになった。

 シアは俯いたままだが、話を聞くために椅子に座り込む。

 

「シアの家族がいなくなったのは本当なんですか?」

「……ええ。本当ですわ」

 

 香織の問いかけに、躊躇いながらもアルテナは答える。

 シアの追放から数日、ジンが言っていたようにハウリア族はフェアベルゲンの住人から白い目を向けられ、嫌がらせをされるようになった。彼らのことを心配したアルテナが、人目を忍んでハウリア族の集落に向かったところ、そこには誰もいなくなっていた。

 ジンが言っていたことは真実だったのだ。

 シアが懺悔するようにポツリと呟く。

 

「……私のせいです。私があんなことを言ったからッ」

「シア……」

 

 堪えきれず泣き始めるシアを、コロナモンが寄り添って慰めようとする。

 泣いているシアの代わりに、コロナモンが一体何があったのか説明した。

 

 追放が決まった時、最後にシアとコロナモンは家族に会いに行った。

 するとみんなが家族を見捨てるわけにはいかないと、シア達と一緒にフェアベルゲンを出ていくと言ったのだ。

 それを聞いたシアは嬉しかったが、同時に魔物の恐ろしさを知っていたため、一族の皆が大きな危険にさらされることを理解した。

 何とか思いとどまってもらおうとしたのだが、彼らは付いてくると言って聞かなかった。

 自分のために危険な逃避行を大事な一族にさせるわけにいかなくなったシアは覚悟を決めた。

 一族の皆を、拒絶し、突き放す覚悟を。

 

「正直、何を言ったのか、覚えていません。ただ、皆の顔がどんどん悲しくなっていくのと、泣き始める人もいましたから、私は相当ひどいことを言ったのでしょうね。あはは……」

 

 泣きながら、その時のことを力なく言うシア。明るい彼女には似合わない、力のない笑みを浮かべている。

 そして、ハウリア族の皆が静かになったところで、正気になったシアはコロナモンと集落を飛び出してアルフレリックの元に戻ったという。

 

「私がいるから、こんなことに。……私があんなことを言わなければ、いいえ、生まれてこなければ、見つかる前に死んでいれば……ッ」

 

 顔を覆って嘆き悲しむシア。静まり返った居間の中で誰もがシアにかける言葉が見つからなかった。

 結局、その日はアルフレリックが戻ってくることもなく、ハジメ達はアルフレリックの家で過ごすことになった。

 

 

 

 翌朝、朝霧に包まれたフェアベルゲンの中をシアが一人、誰にも見つからないようにひっそりと進んでいた。

 彼女は出ていくつもりだった。

 フェアベルゲンではない。ハジメ達の元から出ていくつもりだった。

 

「私がいたら、皆を不幸にするんです。コロナモンも、デジモンの仲間ができたんです。きっとハジメさん達が守ってくれます」

 

 昨日、ジン達から聞かされた一族に降りかかった不幸は、笑って取り繕っていた心が限界を迎えた。

 泣き続けて涙が枯れた後、シアはみんなから離れることにした。

 危険からみんなを遠ざけるために決めた、悲壮な決意だった。

 

「死んじゃえば、皆に会えますかね?もしも会えたら、精一杯謝るんです」

 

 ぶつぶつと呟きながら、門に向かって歩みを進めるシア。

 だが、朝霧の中から1人の人物が現れて、彼女の前に立ちふさがった。

 

「……ハジメ、さん?」

「おう」

 

 腕を組んだハジメだった。

 

 




今回はアルテナ登場回とシアの事情でした。
今作ではアルテナはシアと健全な親友という設定です。なので原作みたいな変態にはならないと思います。きっと、めいびー。
もしもパートナーデジモンが出来たら、パルモンやララモンみたいな植物系でしょうね。
アルテナは戦っているところを見られていなかったのでばれていません。しかし、その分シアにしわ寄せがいった感じになって、親友の彼女はとてもつらかったでしょうね。
シアについても、ハウリア族の皆がいなかったのはこういう事情でした。本作ではアルフレリックの教育で旅の危険を理解していたシアが着いてこないように拒絶した結果でした。
果たして彼らはどうなったのか。
次話はハジメによるシアの励ましという名のフラグ建築にする予定です。お楽しみに。


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