ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る   作:竜羽

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前回の更新からさらに評価とお気に入りをいただきました。
新たに評価していただきました、

名無し提督様、見た目は子供、素顔は厨二様、317様、dmjga様、星雲 輪廻(元 名無 権兵衛)様、勝手な白熊様

誠にありがとうございます。
評価に相応しい作品を書けるか少し悩みますが、自分らしい小説を書いていきます。
今回で章タイトルを回収します。さらに大人気のキャラクターが登場します。お楽しみください。



04話 夢の道

 ハジメと香織が出会ってから数か月の月日が流れた。

 秋だった季節は冬になり、新年を迎えた。

 新学期が始まり、もうすぐ中学三年生になるハジメ達はこの時期になると受験が本格化してくる。

 もっともハジメに関しては生活にあまり変化は無かった。

 

「……改めて思うけどハジメの成績っていろいろおかしいよね」

「同感だぜ。本当は頭が二つあるんじゃないか?」

「ここまで凄いと悔しいっていう気持ちもわいてこないよ」

 

 中学校の放課後、公園の遊具の上に集まったタカト、ヒロカズ、ケンタが一枚の紙を見ながら言う。それに対し、ハジメは口元を引き攣らせながら三人が見ているものに目を落とす。

 それはハジメが受けた志望高校の入学模試の結果だった。

 ハジメが志望したのはハジメの家から近くにある進学高校の国際進学科だ。

 最近の多様化した社会へ通じる人材を育てるため元々あった普通科に加え新たに設けられた学科で、そこでは海外の有名大学へ進学できる人材を育成している。そのため普通科と比べて高い偏差値が必要になる。だが、その入学試験問題をハジメは、

 

「全科目の正答率90%以上って……」

「これで対策とか全然してないんだよなあ」

「同じ模試を受けた俺の結果で一番高いのが数学の60%だぜ。昔はあまり差はなかったのにな」

「……別に好きなことをしていたらいろいろ知識が必要になって、勉強していたらそれが通用しただけだよ」

「まあ、デジモンの論文って難しいことばっかりみたいだけどよ。それでなんで社会科まで点数取れるんだよ?」

 

 ヒロカズの疑問にハジメは答える。

 

「ワイルドバンチの人と話していたら日本の歴史の話になって、いろいろ調べていたらのめりこんでいたんだ。デジモンの中にもムシャモンみたいな侍とかモチーフにしたのがいるからそれで……」

「気になったことをトコトン調べるのは昔からのハジメのいいところだよね」

 

 小学生の頃からの親友であるタカトが苦笑いしながら言う。

 

「ま、何はともあれこれならハジメは合格間違いなしだろ?」

「いや、まだ面接があるし」

「そっか。何聞かれるんだっけ?」

「将来の夢とか、そんな感じだったはず。要するに入学したらどんなことを目標に進学するのかってことだね。……ハジメのことだからやっぱり?」

 

 ケンタが聞くとハジメは頷き、

 

「もちろんデジモンのことだよ。印象は悪くなるかもしれないけど、これは譲れない」

 

 きっぱりと宣言する。

 

「だよな」

「絶対面接官はいい顔しないぜ」

「でもそれでこそハジメだよ」

 

 タカト達はやれやれというという風にハジメを見るが、そこには変わらない仲間への信愛があった。

 三年前の事件でデジモンが大きな被害を出したせいで、彼らを危険視するのはタカト達テイマーズもわかる。その悲惨さは間近で戦っていた分、より理解している。

 でも、デジモンには人間みたいにいろんなデジモンがいる。デジモンだからと一括りにして危険視するのは間違っている。

 

「デジモンを危険視するのはみんながデジモンを知らないからだ。僕はそれを何とかしたい。いつかガブモンと再会した時、笑って暮らせるような世界を作りたいんだ」

「なんかハジメ少し変わったよね」

 

 さっきはハジメの変わらないところを言ったタカトが、今度はハジメの変わったところを言う。

 

「前はデジモンやデジタルワールドのことばかり喋っていたのに、最近はギルモン達が帰ってきた後のことを考えているよね?」

「そ、そうかな?」

「そうだぜ。なんだかいつか勝手にデジタルワールドに一人で行っちまうんじゃないかっていう雰囲気だったぜ」

「やっぱあれかな?香織さんや雫さんと付き合うようになったからか?」

 

 ケンタがニヤニヤしながら言うと、ハジメは顔を少し赤くして慌てる。

 

「ちょ、人聞きが悪いよ!まるで僕が二股しているみたいじゃないか!二人とはそんなんじゃないし、ルキやジュリさんみたいな友達だって!」

「そうかあ?俺的に雫さんはわからないけど、香織さんはかなりハジメに気があると思うぜ。よく会っているんだろ?」

「ただ一緒に勉強しているだけだよ!」

「でもその勉強の理由も、香織さんがハジメと同じ学校の同じ学科に行きたいからなんだろ?しかもその勉強にはたまに雫さんも来るらしいし」

「うっ、そ、それはそうだけど……」

「やっぱりじゃん」

「で、何かあったの?」

「まあ、あったといえばあったけどさあ……」

 

 そう言うとハジメは年が明ける前の香織との勉強会でのことを話し始めた。自分が今の進路を選んだ理由を。

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 12月の中頃。もうすぐ冬休みに入る頃の休日。ハジメは家を出て街を歩いていた。

 今日は香織と勉強会をする約束をしており、学習スペースが解放されている図書館に向かっている。

 なぜ家でやらないのかというと、たまには違う場所でやることで気分転換をしないかという香織からの提案だったからだ。

 そのため駅前で待ち合わせをして、二人は図書館に向かう予定だ。

 

 傍から見れば立派なデートなのだが、二人にその実感はない。

 

 しばらくして香織が現れた。のだが、

 

(あれ?なんだか香織さんちょっと疲れている?)

 

 少しぐったりした様子の香織にハジメは首をかしげる。

 

「香織さんおはよう。大丈夫?」

「あ、ハジメ君。おはよう。大丈夫って何が?」

「いや、なんだか疲れていたみたいだから。もしよかったら、図書館に行く前にこの間の喫茶店とかでも行く?」

「……うん、ちょっと行きたいかな」

 

 ハジメの提案に香織は頷き、二人は駅前の喫茶店に向かう。

 喫茶店に入った二人はパーテーションで区切られた机に座るとハジメはコーヒーを、香織はミルクティーを頼み、届いたものに口をつけて一息いれる。

 

「それで何があったの?」

「……」

 

 ハジメが話しかけるが香織は沈黙し続ける。それでもハジメはじっと待ち続けた。

 やがて言葉がまとまったのか、香織は口を開いた。

 

「ハジメ君は憶えている?三年前に私たちが初めて出会ったとき、石を投げた男の子」

「確か香織さんの幼馴染だっけ?」

「うん。天之河光輝君。家を出たところで偶然会ってね。それで少し言い合いになって……」

「言い合い?」

「デジモンのこと」

 

 そう言うと香織は何があったのか話始めた。

 

 

 

 香織が家を出て少し歩いたところで香織は天之河光輝と出会った。

 

「やあ、香織。奇遇だね」

「……天之河君。こんにちは」

 

 白い歯を見せてにこやかに話しかけてくる光輝に対し、香織は淡白に挨拶をする。

 

「だから昔みたいに光輝でいいって。何度も言っているだろう?恥ずかしがらなくてもいいから」

「はぁ。私も何度も言っていると思うんだけど、別に恥ずかしいとかそういうのじゃないよ。天之河君が雫ちゃんにあのことをちゃんと謝るまで名前で呼ばないし、名前で呼ばないでくれる」

 

 香織は極力光輝の方を見ずに言い放つ。

 

「あのことってなんだよ。俺は別に雫に何も悪いことはしていない」

「……それ本気で言っているのかな?」

 

 光輝の言い分に香織はキッと目を吊り上げて睨みつける。

 

「勝手に雫ちゃんのぬいぐるみを捨てようとして、何が『悪いことをしていない』なの!?」

「……もしかしてあれのことか?」

 

 少し考えた光輝は思い当たることがあったのか答える。

 

「あれは悪いことじゃないだろ?デジモンのぬいぐるみや人形なんて持っていちゃいけないんだ。雫には剣道だってあるんだから」

 

 天之河光輝は、雫の実家である道場に通っており、香織とは雫を通して知り合った幼馴染だった。

 優れた容姿と人並外れた才能を持ち、カリスマ性もある。まさに非の打ちどころのない少年なのだが、一つ欠点があった。

 それは自分の考えが常に正しいという思い込みが強いことだ。

 そして、彼は3年前にサラマンダモンと遭遇したこととデジモンが新宿を破壊した事件をテレビで見たことから『デジモンとは邪悪で危険な存在である』という考えを持っていた。

 それは香織と雫がハジメとガルルモンに助けられたことを話し、デ・リーパーとデジモンが戦っている映像を見ても、「気のせいだ」「暴れているだけだ」と断定し受け入れなかった。

 ついにはデジモンを知ろうとする香織と雫の行動にまで干渉するようになり、小学校を卒業するころには、香織は光輝とは縁を切ろうかと思うようになっていた。

 

 そして、遂に香織の我慢が限界にきた事件が起きた。

 

 ある日。香織が雫の家に訪れると口論する雫と光輝がいた。

 光輝と雫の手にはある一つのぬいぐるみが握られていた。二人は口論しながらそのぬいぐるみを引っ張り合っていた。

 近づいてみるとそのぬいぐるみの正体が分かった。

 それは香織がデジモンを知ろうと思ったとき、おもちゃ屋で偶然見つけて思わず買った「コロモン」というデジモンのぬいぐるみで、雫が香織の家に来た時、とても欲しそうに眺めていたから譲ったものだった。

 

 やがて口論はさらにヒートアップしていき、二人がさらに力を込めてぬいぐるみを引っ張り合った。

 香織がまずいと思ったときには遅かった。

 ビリリッという音共に、コロモンのぬいぐるみは周囲に綿をまき散らしながら真っ二つに裂けてしまった。

 

 その勢いに雫は尻もちをついてしまう。

 しばらく呆然としていたが、やがてコロモンのぬいぐるみが壊れてしまったことを理解すると目に涙を貯めていき、泣き出してしまった。

 

 香織が駆け寄り雫を抱きしめて慰めていると、騒ぎを聞きつけた八重樫家の人たちがやってきた。

 

 そして雫と光輝の双方から話を聞き、何があったのか分かった。

 

 雫がコロモンのぬいぐるみを少し汚してしまい、洗面所で洗おうと持ち出したところを光輝と目撃した。

 光輝が現実にはいない生き物の形をしたぬいぐるみのことを不思議に思い、スマホで調べてみるとコロモンというデジモンであることを知った。

 デジモンを危険視している光輝は、ぬいぐるみを洗い終わり部屋に戻るところだった雫に詰め寄り、ぬいぐるみを取り上げて捨てようとした。

 突然の光輝の行動に驚いた雫だったが、親友の香織から譲ってもらったぬいぐるみを取り戻そうと抵抗。その結果があの騒ぎだった。

 それ以来、香織は光輝に対して怒りを抱き、名前で呼ぶことを辞めたのだ。

 

「人の大事なものを問答無用で捨てようとして、しかもそれを壊したのに謝ろうとしない。どう考えても『悪いこと』でしょ!?」

「だがあれはデジモンだぞ!デジモンなんて人間に作られたのに逆らって、街を壊して迷惑をかけて、あまつさえ世界を滅亡させようとした危険な存在なんだ!そんなもののぬいぐるみなんて持っていちゃいけない!!」

「デジモンにだって暴れてばっかりのデジモンだけじゃない!人間と仲良くやっているデジモンだっているし、私と雫ちゃんはそんなデジモンに助けられたの!それに世界を滅亡させようとしたのはデ・リーパー!デジモンとは違う存在だってテレビで言っていたでしょ!」

「そんなの証拠がないだろう?香織もそんな思い込みはやめるんだ!」

 

 光輝のデジモンが危険だという言葉に、香織は強く反論する。

 三年前の事件から度々起こしてきた言い合いで、雫の事件の頃からはさらにヒートアップするようになった。

 

「思い込みなんかじゃない!私は実際にッ……」

 

 そこまで言い、香織はハッとする。

 今香織はハジメ達、デジモンテイマーズと出会ったことで教えてもらったことを言おうとしてしまった。

 もしも言ってしまったら思い込みの激しい光輝が、雫の時のようにハジメ達に手を出してしまうかもしれない。いやそれだけならいい。カリスマ性のある光輝が周りの人たちを扇動してハジメ達を攻め始めたら――!!

 

「実際に、どうしたんだ?」

「……なんでもない」

 

 急にクールダウンした香織に光輝は困惑する。それに構わず香織は顔を俯かせると、光輝を避けて歩き始める。

 

「ちょっ、香織!?」

 

 光輝が慌てて声をかけるが、香織の足は止まらない。

 あのまま光輝と話し続けたら何をしゃべってしまうかわからない。もしそれでハジメ達のことを話してしまったら、それは信頼してテイマーズであることを話してくれた彼らへの酷い裏切りだ。

 香織は一刻も早くその場を去りたくて、次第に駆け足になりそのまま駅まで向かい、電車に乗り、ハジメとの待ち合わせ場所にやってきたのだった。

 

 

 

「そっか……」

 

 話を聞いたハジメは椅子にもたれかかり、ゆっくりと息を吐き出す。

 なかなか重い話だった。

 

「ごめんなさい。私、危うく約束を破るところだった」

「……香織さんが悪くない、とは言えないかな。実際に危なかったみたいだし」

 

 ハジメは香織の言葉を否定することはしなかった。客観的に見ても、彼女が感情的になってテイマーズのことを口外しないという約束を破りそうになったのは事実だし、それを一番自覚しているのが香織自身なのだ。

 その場にいなかった自分が否定しても無意味だ。

 

「でも、香織さんがそうなるほどデジモンのことで怒ってくれたのは嬉しいよ。ありがとう」

「そんな。私はただハジメ君達のパートナーデジモンまで危険な存在って言われたのが嫌で……」

「うん。わかるよ。僕も結構そういうことは言われたし、見てきた」

 

 ハジメのその言葉に香織は彼の目を見る。そこにはデジモンへの批判的な意見への怒りはなかった。

――ただ、

 

「ネットとかだとさ、デジモンへの批判をするサイトとか掲示板が溢れていてさ。ネットサーフィンとかをしていると嫌でも目に入るんだ。中にはデジモンを開発していたワイルドバンチの人たちや、デジモンカードで遊んでいる子供たちまで批判する意見もあったりしてね。最初はそういうものの火消しをしていたんだけど、すぐに復活してキリがないんだ」

 

 香織に自分が経験したことを淡々と説明する。しかしその内容とは裏腹にハジメの心の中では激情がうごめき始める。

 ――ただ、ただ、それでも!

 

「だから僕は、僕たちはそういうのにあまり反応しないことにした。躍起になればさらに燃え上がって取り返しのつかない、それこそ僕たちのことがばれる危険もあるし、ああいうのは世間の反応がなければそこまで騒がない。だから香織さんもそんなに思いつめないで」

「でも、それでいいの?大好きなデジモンが批判されて、辛いだけだよ」

「天之河君の主張、というかデジモンへの批判だけど、僕は少し仕方ないと思っているんだ。僕たちのパートナーデジモンは積極的に人を傷つけたり、建物を壊したりすることはない。でもデジモンの中にはそういうことを楽しむやつもいるのは確かだし、実際にリアライズしたデジモンの中で暴れまわらなかったデジモンの方が少なかったんだ。

 そもそもデジモンには確かに人間みたいな知性がある。でも元々は戦闘種族で強い闘争本能がある。別のデジモンを倒し、そのデータを食らう(ロードする)ことで糧にし、進化する。それがデジモンの在り方なんだ。

そして、それは人間社会においては受け入れがたい在り方なんだ」

 

 もっともらしい理由を述べながら、自分がこの三年で悟った結論を告げた。

 

――でも、だとしても!!

 

 ふと、香織の顔を見た。そこには深い悲しみが浮かんでいた。

 だがそれはデジモンを受け入れない世界に悲しんでいるんじゃない。その事実を受け入れるしかないと告げているハジメのことを悲しんでいたのだ。

 それを見てしまってはダメだった。

 彼女にそんな顔をさせる自分はとても嫌だった。

 

「ああ、受け入れられない。でもでもでもでもッ」

 

 気が付けば、ハジメは顔を俯かせて心の底から自分の気持ちを絞り出していた。

 

「人とデジモンは一緒にいることができる。笑い合えるって、なんでわかってくれないんだよ」

 

 ちくしょう、と小さく呟くハジメ。

 

 怒りはない。ただそこには悔しさだけがあった。

 デジモンのいいところを知ってもらうために情報サイトを作った。――すぐに炎上した。

 

 中学校の同級生へデジモンの話題を振った。――出てこなくなって清々したと言われた。

 

 デジモンカードを買いに行った。――カード売り場から消えていた。

 

 世界にデジモンが受け入れられないことへの、そんな世界に対して何もできない自分の無力さがただただ悔しかった。

 

「世界を救うのにデジモン達の力は必要だったんだ。デジモン達は、ガブモン達は世界を救ったのに、なんでわかってくれないんだ!」

「私は、私はちゃんとわかっている。テイマーじゃないけど、デジモンが危ないだけの存在じゃないってことを。私たちと一緒に生きることができるって」

 

 ハジメの手にそっと香織の手が添えられる。

 ハッとして顔を上げると香織がハジメに向かって微笑んでいた。

 

「そうだよね。私よりもハジメ君達の方が悔しい思いをしているよね」

「香織さん……」

「ハジメ君より頭が良くない私じゃ、どうすればいいのかわからない。でもハジメ君と同じ気持ちを共有することはできる。だから」

 

 一緒に泣こう?

 

 それからしばらく二人は静かに泣いた。ままならない世界への悔しさを一緒に感じながら。

 

 やがて気持ちが落ち着いた二人は、残ったコーヒーとミルクティーを飲み喫茶店を後にした。

 それから無言で町中を歩く二人。だがそこにある雰囲気は息苦しいものではなく、お互いの気持ちを共有できた嬉しさだった。

 しばらくして目的地である図書館の傍にある公園にたどり着いた二人は、図書館の中に入る前に公園のベンチに腰を下ろした。

 勉強するにしても、もう少し話しておきたかったのだ。

 

「さっきはありがとうハジメ君。私の話を聞いてくれて」

「いいって、いいって。ああいう気持ちは吐き出さないと勉強に集中できないし」

「うん。そうだね」

 

 そうやって二人は幾分すっきりしたように言葉を交わした。

 ハジメはそろそろ勉強をしに行こうとベンチから立ち上がろうとすると、その前に香織が立ち上がってハジメの前に立った。

 

「ハジメ君。私歩きながら考えたんだ」

「うん?何を?」

「みんなに、世界にデジモンを認めさせる方法」

「やっぱりかあ」

「ハジメ君も?」

「まあね」

 

 同じことを考えていたことに二人はクスリと笑う。

 

「香織さんからどうぞ」

「お言葉に甘えまして。コホン」

 

 わざとらしい咳ばらいをして香織は自分の考えを披露する。

 

「やっぱりみんなニュースとかネットの情報を鵜呑みにしすぎていると思うんだよね。

私と雫ちゃんもデジモンの本当のことを知ったのはハジメ君達の話からだったし。

そういう話を小説とか漫画にしてみたらどうかな?」

「うーん、いい考えだと思う。それなら大人だけじゃなくて子供とかにも受け入れられそうだし」

「やった!」

「でも問題はあるね」

 

 ハジメは喜ぶ香織に申し訳ないと思いながらも問題点を言う。

 

「一つは掲載媒体。本や雑誌にするにも出版社とかに持ち込まないといけない。でも向こうも世間から白い目で見られているデジモンの本なんて出したいとは思わない」

「あう。確かに。流石漫画家の息子だね、ハジメ君」

「ネットでやろうにもさっき言った通り炎上確実だよ」

「いい考えだと思ったんだけどなぁ」

「そこでだ」

 

 落ち込む香織だったが立ち上がったその頭に手を置いて撫でる。

 

「香織さんの考えに僕の考えを重ねる」

「ハジメ君の考え?」

「そう」

 

 こくりと頷くとハジメは、ニッコリと笑い自分の考えを披露した。

 

「偉くなる」

「…………へ?」

 

 ハジメの言ったことが良くわからなかった香織が変な声を出してしまう。そんな香織にハジメは詳しく教える。

 

「偉くなる。意見や考えが良くも悪くも無視されたり、切り捨てられたりされない程偉くなるんだ。会社の社長か、著名な教授か、あるいは政治家か。そういう立場になれば世間の風潮にもある程度介入できるし、タカト達に他の支援だってできる。香織さんがさっき言ったデジモンのことを書いた小説とかも実費で出せるかもしれない」

 

 それは大きな夢だ。世界を自分の望むように変えるということ。

 

「さっき泣いてやっと気が付けた。僕の大切な人とデジモンが生きていける世界。それが僕の夢なんだって。そのために偉くなろうと思う。どうかな?香織さん」

「凄いと思うよ。うん、本当に凄い」

 

 香織はただそれしか言えなかった。やっぱりハジメは自分なんかよりずっと凄い。

 

(会う度に思うけど、ハジメ君ってどんどん遠くなっていくなあ)

「突然だけどさ。香織さんに会えてよかったよ」

「え?」

「多分香織さんに会えなかったら自分の夢もわからなかった。多分、さっさと海外の学校に留学してデジタルワールドの研究に没頭して、デジタルワールドに行けるようになったら自分とタカト達と一緒に行っていたと思う。それでずっと向こうにいて、たまに帰ってくるだけっていう生活をしていたと思うよ」

 

 それは確かにあり得た未来かもしれない。

それはそれで未知の世界を旅する楽しみはあるかもしれない。

 でも、香織と出会ったことでデジモンのことを認めてもらえた喜びを知ることができた。

 テイマーじゃなくてもデジモンを受け入れてもらえた。

 世界は変えることができるのだと思えた。

 

「だから、ありがとう。香織さん。僕と出会ってくれて」

 

 ハジメは心からの感謝を香織に告げた。

 

「ど、どういたしまして?」

「プッ、なんで疑問形なの?」

「あ、え、いや。ちょっと急に、お礼言われたから驚いちゃって」

 

 ワタワタとする香織を見て、勉強会をするにはもう少し落ち着いてからだなとハジメは思ったのだった。

 

 

 

■■■■■

 

 

 

「ってことで、僕も自分の夢を決めたんだ」

 

 少し長くなってしまったが、ハジメは自分が今の考えを持った理由を話し終える。

タカト達はハジメの話を聞いて思ったことをそれぞれ口にする。

 

「そんなことがあったんだね」

「ハジメと香織さんの気持ちわかるぜ。デジモンのこと何も知らないくせに勝手に言うやつとか見ると、俺すっげー悔しかった!」

「俺も。でも言い返したらみんなに迷惑がかかると思って飲み込んでいたなあ」

「でもそれで諦めてちゃいけないんだね」

 

 タカトは立ち上がると右手を握り締めて、決意を固める。

 

「僕も頑張る。僕だってギルモンと再会してまた一緒に暮らすのが夢だ。そのためならハジメになんでも協力するよ!」

「俺も俺も!俺とガードロモンの力、いつでも貸すぜ」

「俺だって、頭脳労働なら任せてくれよ」

 

 胸を張るケンタにヒロカズがからかいを入れる。

 

「ハジメに成績で負けているくせに何言ってんだよ」

「すぐに挽回して見せるさ!」

 

 そんな二人にタカトが苦笑いを浮かべていると、ふと思い出した。

 

「そういえばハジメって、クリスマスに雫さんにプレゼント交換以外にも何か渡していたけどもあれってもしかして……」

「香織さんの話に出てきたコロモンのぬいぐるみだけど」

「ハジメ。フラグ立ててない?」

 

 めったに見たことが無いタカトのジト目に、ハジメは目を逸らす。

 

「いや、だって雫さんコロモン好きみたいだし、話を聞いたら何とかしてあげたいと思って」

「ちなみにだけどそれって買ったやつ?」

「探したけど見つからなかったから自分で作ったやつだけど?素人の手作りで申し訳ないと思ったけど、喜んでもらえてよかったよ」

 

 さらりと答えたハジメにタカトは頭を抱える。まるでラブコメの主人公がフラグを立てたような行動だ。

 

(香織さんに出会ってからハジメがたらしになっているような気がする)

 

 果たしてハジメは将来どうなるのだろうか。

 

 夢への道を見つけたその先にある未来で、ガブモンに再会できるのか?

 

 そして時はさらに三年進む。

 

 ハジメと香織が高校二年生になった時、運命は再び動き出した。

 

 

 




これにてありふれの原作前のお話は終わりです。
うん。結構難作でした。
最初はハジメがデジモンのゲームを作ってデジモンの評判を何とかしようと決意する話だったのに、どんどん転がって世界の流れを変えれるほどの地位を得ることを決意することになりました。
しかも香織と心を通わせ、最後の方で雫にもフラグ立てちゃいました。

デジモンと出会ったことで運命が変わった南雲ハジメという少年と、白崎香織という少女。二人の本当の物語はこれからです。
そしてもう一人。デジモンと出会って変わった少年がいます。
みなさん大好きな勇者こと天之河光輝君です。
彼はハジメと正反対であることを意識しています。
ハジメはデジモンと出会ったことでタカトや香織達と絆を結びました。
逆に光輝はデジモンと出会ったことで香織と雫との絆に罅が入りました。
また大勢の意見を変える決意を固めたハジメに対し、大勢の意見に従い香織と雫を諫めようと光輝はします。
この二人の対比もこの作品の主題になるかもしれません。

前回やらなかったデジモン紹介です。

サラマンダモン
世代:アーマー体 タイプ:両生類型 属性:ウイルス
勇気のデジメンタルというアイテムで進化したデジモン。炎を纏ったサンショウウオのような姿で、普段はのんびりとしているが一度怒ると体の炎を燃え上がらせて襲い掛かってくる。
香織と雫が遭遇した個体は純粋なデジモンではなく、邪悪なデジモンが生み出した疑似デジモン。ただ暴れるだけのプログラムに従い行動する危険な存在であり、ハジメが助けに入らなければ二人の命はなかった。
得意技は口から灼熱の炎を吐き出す『ヒートブレス』。必殺技は空気中の酸素を集めて強烈な爆発を起こす『バックドラフト』。


次回は原作開始……にしたいんですが幕間として香織の日記とか設定の振り返りとかやるかもしれません。
でもようやく原作には入れるので更新速度を上げていきたいです。
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