ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る   作:竜羽

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フェアベルゲンを出たハジメ達の動向です。もう原作とは大きく違う面々ですのでどうなるかお楽しみに。


09話 表裏で動き始める者達

『〝疾影のラナインフェリナ〟!!』

『〝空烈のミナステリア〟!!』

『〝幻武のヤオゼリアス〟!!』

『〝這斬のヨルガンダル〟!!』

『〝霧雨のリキッドブレイク〟!!』

『〝必滅のパルトフェルド〟!!』

『〝外殺のネアシュタットルム〟!!』

 

 名乗りを上げながら、ビシッとポーズを取る美男美女に美男子美少女。

 上は青年から下は年端も行かない子供まで。彼ら全員の頭には愛らしいウサミミがある。

 そして最後に同じくウサミミのある強靭な肉体の男性が現れる。

 

『そしてもう一度名乗ろう。〝深淵蠢動の闇狩鬼、カームバンティス・エルファライト・ローデリア・ハウリア〟!! 家族を守る為、封じられし左腕の刃を開放せん!!!』

 

 左腕とか言いながら右腕も一緒に動かしながら、両手に持った鋭いナイフを構える男性。

 男性の名字からわかる通り、彼はシアの家族であるハウリア族だ。しかも族長でシアの実の父親である。ちなみに本名はカム・ハウリアで、他の面々も名前の最初の二文字が本名だ。なのに、今では頭に変な枕詞が付き、後ろはやたらと言いにくい名前が続いている。

 服装も何やら黒とかマフラーとか、今まで身に着けていなかったものを身に纏っている。

 ああ。本来の彼らはもっと大人しくて憶病で、うざいくらい優しさに溢れていたのに。

 それが今では、この有様だった。

 

『『『『『『『『首狩り戦隊ハウリアンジャー!!!』』』』』』』』

「一体、何が、有ったんですかぁ~~???」

 

 情報量がパンクしたシアの視界が暗転し──目を覚ました。

 

「はっ!? ゆ、夢ですか!?!?」

 

 飛び起きたシアは周囲をキョロキョロする。そこには当然、変わり果てた家族の姿は無く、寝る前と変わっていない。

 傍にはコロナモンが眠っており、安らかな寝息を立てている。

 シアは夢だったことに安堵の息を漏らし、コロナモンを起こさないように寝床を出た。

 

 余談だが、シアの固有魔法の〝未来視〟は本人が仮定した場合の未来が見える。もしも無意識にシアが家族と再会したらと仮定して、眠りながら魔法を使用していたとしたら? 果たして、シアが見た夢はただの夢だったのか、それとも魔法が見せた予知夢だったのか? 答えはシアが家族と再会した時にわかるだろう。

 

 

 

 シアが出ると外は朝霧に包まれた樹海が広がっていた。時間は朝の7時。ちょうどいい時間だ。

 ハジメ達はフェアベルゲンから離れた樹海の端にベースキャンプをしていた。

 フェアベルゲンの警備隊の巡回ルートからも外れており、樹海の端だから霧が薄く見晴らしもいい。

 シアはさっき自分が出てきた寝床を振り向き呟く。

 

「ハジメさん達には何度も驚かされます。異世界から来たっていうのにも納得です」

 

 さっきまでシアが寝ていたのは、トータスでは全く見られない建物だった。

 いや、建物というのはトータスで生まれたシアからはそう見えるからだ。

 黒いカラーリングをした装甲車のような見た目の大きな車両だった。

 

 大型探索用特殊車両『アークデッセイ号』。

 

 真っ黒な車体は、トータスでも最高硬度のアザンチウム鉱石でコーティングされている証だ。車輪は12輪も付いており、錬成による悪路の整備だけではいけない道でも進むことが出来る馬力を発揮する魔導エンジンを搭載している。密閉性も高く、車体が完全に水没しても問題なく走ることが出来、浮上して水上移動することまで出来る。

 車内には最低限の居住設備に加え、ハジメ達が装備の開発やメンテナンスを行える研究設備が整っている。

 実はこのアークデッセイ号。もともとはハジメがいつかデジタルワールドに行けるようになった時、探検する際に用いる船があれば便利だなと思い、テイマーズのみんなと意見を出し合って設計していた探索船だ。名前の由来はハジメ達をデジタルワールドから帰還させるために製作された箱舟の名前の『アーク』と、冒険という意味を持つ『オデッセイ』の組み合わせだ。

 本来なら空を飛べる飛空艇なのだが、流石にまだ飛行機能は付けることができなかった。だが、ゆくゆくは搭載し、空を飛べるようにしたいなとハジメは考えている。

 

 このアークデッセイ号の製作が最も時間をかけた。オスカー邸の設備とワイズモン達の協力がなければ、完成しなかっただろう。

 まさにハジメ達の努力の結晶。昨晩は安全のためにこの中で布団を敷いて眠った。アルテナとアルフレリックも最初は驚いたが、空調が効いた堅牢な車内で安心して眠りについている。寝る前に少し見せてもらった車内はシア達には理解できない、近未来的な内装になっていた。ア〇ンジャーズとかに出てきそうだった。

 

 久しぶりに心置きなく熟睡できたシアは、朝の爽やかな空気を感じながらリラックスしていた。

 無謀な修行の旅に出てしまった家族のことは心配だ。しかし、親友であるアルテナや尊敬する先生であるアルフレリックが付いてきてくれたこと。ハジメ達が自分達の為に隠していたアーティファクトをお披露目してくれたことで距離が縮まったと思ったこと。この2つがシアから、不安を取り除き、心をとても軽くしていた。

 

 その時、アークデッセイ号の入り口が開き、ハジメが降りてきた。

 

「あ、ハジメさん! おはようございます!」

「おう。おはようさん。シア」

「今起きたのですか?」

「まあな」

 

 ハジメはアークデッセイ号の自分の開発スペースで寝ていた。ツノモンも一緒で、今はまだコロナモンと同様に夢の中だ。

 

「そういえばユエさんとカオリさん達はどうしたのですか? ベッドにはもういなかったのですが」

「香織達は周りの確認をしている。昨日はすぐにキャンプをしたからな。何か痕跡が無いかって探している」

 

 痕跡というのはハウリア族の手掛かりだ。彼らの足跡とかキャンプした後があれば、足取りを追える。

 

「私の家族のためにすみませんです」

「気にするな。俺達が自分で決めたことだ」

 

 頭を下げるシアにハジメは軽い感じで何でもないように言う。

 やがて香織達も戻ってきて、アルテナ達も目を覚ましてきた。

 全員で朝ご飯の用意をして、朝食を始める。

 食後に一行は本日の予定を話し合う。すると、シアが真っ先に手を上げた。

 

「ハジメさん! 私に戦い方を教えていただけないでしょうか!!」

「どういうことだ?」

 

 突然の申し出にシアに理由を聞くハジメ。

 

「はい。やっぱり私はもっと強くなるべきだと思うんです。家族の皆が強くなろうとしているのなら、私も強くなるべきなんです!!」

 

 決意を漲らせて言い切るシアに、隣にいたコロナモンも続く。

 

「俺も同じ気持ちだ。俺がもっと強かったらシアを危ない目に遭わせずに済んだかもしれないんだ。もっと強くなりてぇ。シアの、大切なテイマーの為に!!」

「昨日寝る前に決めたんです。私達は一緒に強くなるんだって!」

「だから同じデジモンテイマーの私達に強くしてもらいたいんだね」

 

 シアとコロナモンの言葉を聞いて香織が納得する。

 戦闘訓練をするのなら、昔からシアを教えてきたアルフレリックが適任だ。しかし、今のシアはデジモンテイマーでもある。デジモンテイマーの戦い方はハジメ達しか知らない。

 

「そういう事ならいい。ただ、戦闘訓練っていうなら俺より……まだ香織とユエの方が適任だぞ」

「えっ? そうなんですか?」

 

 少し言い淀みながら話すハジメ。

 意外な言葉にシアがきょとんとする。

 ハジメは香織達の中で一番デジモンテイマーとしての経歴が長い。それに2人とデジモン達から大きな信頼を寄せられており、このパーティーの中心はハジメだ。だから、てっきりハジメが戦いを教えるのも上手いのかなと思っていた。

 

「単純なステータスや戦闘力なら俺が一番だ。だがそれはただの力やアーティファクトでのごり押し。技術とか駆け引きは2人の方が上手い」

「まあ、そうだね」

「ん」

 

 香織とユエが肯定した通り、ハジメは戦闘に関する才能が乏しい。仮にだがハジメと同じステータスで、戦闘を生業とする者と1対1で戦えば、ハジメは技術と駆け引きの差で敗北してしまうと思っている。そもそもの話、ハジメは戦闘者ではなく創る者、あるいは研究者なのだ。

 

「唯一教えられそうなのは、戦闘中のカードの使い方くらいだ」

「そもそもハジメ君はアルフレリックさんとやることがあるんじゃなかったっけ?」

「シアの訓練は私とカオリが交代でやる」

「コロナモンもテイルモンとルナモンがやるっていうのはどうかな? まずはデジモン同士。その後テイマーも一緒の訓練っていう感じで」

 

 ユエと香織の申し出に誰も反対意見はなかった。

 その後も話し合いは続き、本日の予定が決まった。

 

 まずシアとコロナモンは香織達とどんな訓練をするべきか話し合い、スケジュールを立てる。

 ハジメ、ツノモンはアルフレリック、アルテナと一緒に、この後合流してくる残りの森人族達の住居スペースの設営。それが終わればアルテナは森人族の手の空いている者と共にハウリア族の捜索に乗り出す。ハジメとアルフレリックはある作業を行い、それが終わればアルテナ達を手伝う。

 こうしてハジメ達は各々動き始めた。

 

「では、よろしくお願いします! カオリさん、ユエさん!!」

「頼むぜ!!」

「うん! まっかせて!」

「ん。まずは魔法の訓練からやる。簡単な理論をちょっとやるけれど大丈夫?」

「はいです!!」

「コロナモンはまずは私達が相手だ」

「あなたの力、見せてみて」

「おう!!」

 

 気合を入れるシアとコロナモン。そんな二人の様子を何とも言えない表情でハジメとガブモンは見ていた。

 コロナモンはともかく、魔法を教わるシアはなあ……。

 

(しばらくしたら実践訓練に切り替えさせるか)

 

 ハジメの懸念はすぐに的中し、ユエと香織の魔法の説明のせいで目がグルグルし始めたシアへ助け舟を出すことになった。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 ハジメ達が行動を起こしている頃。

 フェアベルゲンの近隣で、怪しく動く者がいた。

 黒いローブを身に纏い姿を隠しているので、背格好以外に、種族も性別も解らない。

 その謎の人物は手に何やらモバイル端末のような機械を持ちながら、ブツブツと呟いている。

 

「スカルグレイモン。そしてモノクロモンとクワガーモンか。偶然だが目的のデジモンのデータが手に入った。残るは……」

 

 ぶつぶつという声は少年のような若い男の声だった。

 ハルツィナ樹海に出現したデジモン達の名前を知っているという事はハジメ達の世界の人間、つまり召喚された者達の一員なのだろうか? 

 やがてローブの人物は樹海の中のある地点まで来ると足を止める。

 

「そこか」

 

 目的の場所に着いたのか、端末を操作し何かのコードを起動させる。

 すると端末から闇のエネルギーが放たれ、空中に飛んでいった。

 エネルギーは樹海の樹々の間のある一点に止まると、まるでガラスが割れるかのような音を響かせ、そこに隠されていたある建造物の姿を露わにした。

 

 つなぎ目のない黒一色のモノリスのような塔。ハイリヒ王国の王都付近で中村恵里が見つけたものと同じ、ダークタワーだった。

 

「ふふっ。本物のダークタワーか。すげえ闇のエネルギーだ」

 

 ローブの人物はダークタワーが発する闇のエネルギーに思わず笑みを浮かべる。

 その後ろに闇が噴き出すと、闇の中から何かが現れる。それに気が付いたローブの人物が振り向く。

 

「見つけたか」

「あんたか。ああ、ダークタワーだ。言われた通りの方法で見つけたしカモフラージュも壊せたぜ」

 

 現れたのは頭に巨大な角と、コウモリのような翼を生やした異形。貴婦人のような装いに日傘を手に持っている。

 もしもハジメとガブモンがここにいたら、かつてと姿が変わっているために戸惑ってしまうが、発している邪悪な気配から正体を看破するだろう。

 

 堕天使型デジモン、メフィスモン。

 

 かつて、別世界のデジタルワールドで全ての生命を滅亡せんとしたアポカリモンの残留思念データから産まれた闇の存在だ。

 6年前に人間社会を破滅させるためにVPラボという企業の社長に化けて暗躍していた。

 メフィスモンを追ってきたオメガモンの導きで、駆け付けたテイマーズと死闘を繰り広げ、何とか倒すことが出来た。

 しかし、メフィスモンは滅んでいなかった。

 新たな姿になって、異世界トータスでヴァンデモンと共に暗躍していたのだ。

 

 その名もメフィスモンX抗体。

 

 消滅しかけてデータの中からよみがえった際に、X抗体プログラムを生み出し、進化したのだ。当然、ハジメ達が戦った時よりも強くなっている。

 

「どうだい? ダークタワーを見た感想は?」

「少し感動しているぜ。それにこいつのおかげでほしかったデジモンのデータが手に入った」

「そのためにダークタワーを配置した。世界の境界を歪め、少しずつ少しずつ、向こうからデジモン達を呼び込むために」

「くくくっ。この世界の住人は大慌てだな。まあ、どうでもいいが。こいつを探すのに樹海を探索するのはいい訓練になったぜ」

 

 メフィスモン達がダークタワーを配置した理由は、環境を変化させ世界の境界を崩しやすくするためだ。その結果、ハルツィナ樹海の各所にゲートが開き、スカルグレイモン達が出現するようになってしまったのだ。

 それを聞き黒いローブの人物は、トータスで起こされる混乱を想像し、面白げに嘲笑う。自分にとってトータスのことなどどうでもいいのだ。そんなことよりもこのダークタワーを探すために樹海を探索したことで自身の能力が上がった方が重要なのだ。

 

「順調に力を使いこなせているようで何よりだ。力を与えただけはある」

「まあな。それでこのダークタワーをどうするんだ? アルケニモンがやっていたみたいに、ダークタワーデジモンに作り替えるのか?」

 

 アルケニモンとは、アニメ『デジモンアドベンチャー02』に登場した悪役デジモンであり、ダークタワーをデジモンそっくりな姿に作り替えて暴れさせていた。ローブの人物はそれを知っていたので、同じことをするのかと問いかける。

 

「いいや。それよりも面白いことをする」

 

 メフィスモンはその手に魔法陣を展開する。魔法陣が輝くと、そこから何かが召喚された。

 召喚されたのは、長い首とがっしりとした四肢を持ち、聖なる鎧を身に着けた聖獣型デジモンだった。魔術の鎖で拘束されており、身動きできないようだ。

 

「……バルキモン?」

「そうだ。先ほどで捕まえてきた。デジタルワールドから出てきたばかりだったので、ちょうど良かった」

 

 メフィスモンはバルキモンを持ったままダークタワーに近づく。

 そしてダークタワーにバルキモンを押し付けると、何かの魔術を発動させる。

 すると、バルキモンが苦悶の表情を浮かべ始めた。そして、メフィスモンの魔術がさらに進むと、バルキモンは目を見開き、声にならない悲鳴を上げ始める。

 

「うわお」

 

 その様子をローブの人物は興味深いと眺める。

 やがてバルキモンはダークタワーの中に徐々に取り込まれていき、そして完全にダークタワーの中に消えていった。

 

「まさか融合か?」

「実験段階だがね。ついでにいくつか魔術も加えておこう。10日もすれば結果がわかるさ。それまでのんびり待つとしよう」

 

 2人は足元に闇を広げ、その中に姿を消す。

 後にはバルキモンを取り込んだダークタワーが残された。

 ダークタワーは不気味な鼓動を刻み始めた。

 

 




〇デジモン紹介
バルキモン
レベル:成熟期
タイプ:聖獣型
属性:データ
フォルダ大陸の地下から出土した遺跡で、群れの存在が確認された聖獣型デジモン。遺跡はかつて天使系デジモンの要塞として活用されていた物だと判明し、バルキモンは群れで要塞を守護する存在だったのではないかと推測されている。穏やかで物静かな性格だが、敵に容赦なく攻撃する獰猛な一面もある。
知力が高く、侵入者の敵意を瞬時に見抜くと、念力の鎖「サイキックチェーン」で敵の肉体を締め上げ撃退する。何も知らずに遺跡に迷い込んだ者には、吐き出した雲「クラウドビジョン」で幻覚を見せ、夢見心地のまま遺跡の外へと連れ出すという。



今回はハジメ達の秘密兵器お披露目回でした。
アークデッセイ号の元ネタはデジモンテイマーズの箱舟アークと、ウルトラマンティガに登場するアートデッセイ号です。
今作のハジメは兵器より役立つ発明を多く作っており、アークデッセイ号はその代表例です。今後もハジメ達の移動する拠点になります。

後半はまさかの黒幕の1人を明かしました。
テイマーズの映画でも登場し、なかなかいい設定を持っていたメフィスモンです。しかもX抗体バージョンです。
尺の都合で映画ではほぼ瞬殺だったので、今作では活躍させたいです。
フェアベルゲンにスカルグレイモンやクワガーモン、モノクロモンが出現した理由も彼らの暗躍のせいです。しかもそこに更なるたくらみが進行しています。
早くライセン渓谷に行きたいですが、その前にいろいろやることがあるのでまだ時間がかかりそうです。次回もお楽しみに。
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