ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る 作:竜羽
今回はデジモン要素0です。ありふれについての独自解釈が大量です。
シア達が戦闘訓練に励み、アルテナと森人族達が拠点の仮設営を進めている中、アークデッセイのハジメの研究室ではハジメとアルフレリックが作業に没頭していた。
ハジメはノートパソコンに似た形のアーティファクトを使い、アルフレリックがフェアベルゲンから持ち出してきたフェアドレン水晶を解析していた。
水晶に付与されている〝樹海の霧避け〟と〝魔物避け〟の魔法を解析し、同じ効果を持つアーティファクトを製作することがハジメ達の作業内容だ。成功すればハウリア族を探すのに大きな助けになる。
「フェアドレン水晶はオスカーの屋敷にもありませんでした。助かります」
「なに。お前さん達には助けられてばかりだ。これくらいの協力は惜しまない」
ハジメはアルフレリックと会話しながらも解析の手を止めない。
今ハジメが使っているアーティファクトはオスカー邸にあった設計図を元に、ノートパソコンを改造して作ったアーティファクトだ。
魔法解析付与アーティファクト『DMアナライザー』。カメラやセンサーで魔法をスキャンし、魔法の仕組みを解析したり、魔法効果を構成しハジメの生成魔法で付与したりできる。しかも元々のノートパソコンの機能はそのまま、むしろ向上させており、今のハジメが使えば「鬼に金棒」、いや「泉光子郎にノートパソコン」だ。
ノートパソコンは学校の備品だがこの際しかたない。帰ったら弁償しようと思いつつも、キーボードを操作する手をハジメは止めない。
ハジメの様子を見ていたアルフレリックが感心したように言う。
「それにしても大したものだ。私には全く理解できないが、これほどのものを作り上げるとは」
「俺達だけの力じゃないですよ。解放者が残してくれたものが無ければここまでの設備は出来なかったです」
ハジメの言うとおり、アークデッセイ号を始めとした常識外れのアーティファクトを用意できたのは、オスカー邸に残されていた解放者の技術があってこそだった。
「解放者か。口伝でしか知らないが、フェアドレン水晶を残し、フェアベルゲンの礎を築いてくださったリューティリス・ハルツィナ様を始めとした方々。もしも神が逃げ出さなかったら彼らの技術がトータスをより豊かにしていたのだろうか」
「どうでしょうね。オスカー達は第2のエヒトになるつもりはなかったようですし」
フリージアが教えてくれたことだが、解放者達は神エヒトを討伐した後、自分達の技術を広めず、ほとんどを廃棄する予定だったという。神による支配から脱した人類が今度は解放者に縋り、自らで歩むことを止めることを危惧したという。
その考えは別世界から現れた8人目から、人類が自らの技術で進歩出来たことを聞き、さらに強くなったという。
人は神がいなくても、高みに到達することが出来るなら、解放者が神のような尊台になってはいけないと。
「それに下手に技術を上げてしまえば、潜伏しているエヒトの神の使徒の残党や戻ってきたエヒトによる被害が大きくなります。もしも地球にエヒトがやってきて暗躍し始めたらと考えると、ゾッとしますよ」
「一発で大地を焦土とかす兵器、核だったか。確かに神なら国の代表を洗脳してその兵器を躊躇いもなく使わせるだろうな」
「下手に技術を進めれば核以上の兵器が生まれる可能性がありました。だから戻ってきたエヒト対策のための大迷宮以外は、人々の自らの進歩に任せたらしいです」
「その結果が、今の世界か」
呟きながらアルフレリックは手に持った端末を眺める。そこにはハジメ達の世界、地球の風景の写真が表示されていた。
トータスとは比べ物にならない技術で作られた都市に、便利な道具で暮らす人々。
彼らの技術と比べるとトータスの技術の進歩のなんと遅いことか。
「地球とトータスだと環境とかの違いがありますからね。魔物という驚異に、大きすぎる人種の特徴。特に魔法と神代に残されたアーティファクトもありますからね。技術を進歩させなくても何とかなる力があるなら、そりゃあ発展しませんよ」
「だとしても、ここまで遅いのは異常だと思うが」
「おそらくですが、ここにも神の使徒の暗躍があったと思います」
ハジメはオスカー邸でもフリージア達と話し合った推論をアルフレリックにも言う。
「エヒトが逃げて、解放者達も生きていられないくらい時間が経った後、神の使徒達は残った力で、エヒトが操りやすい世界を維持するために動いた。それが解放者達のような者達を2度と生み出さないために、魔法の技術を後退させることだと思われます」
「魔法の技術の後退?」
「決定的な証拠は〝魔力操作〟技能の徹底的な排除です」
〝魔力操作〟は魔力を直接操作するための技能で、魔法を使う際に詠唱と魔法陣が必要ではなくなる。これがあるのとないので、魔法使いの強さは大きく違ってくる。
なのに、トータスの常識では魔力の直接操作は魔物にしかできないと言われ、ユエやシアのように、生まれながらに〝魔力操作〟の技能を持つ者は最終的に迫害されてきた。
これこそが神の使徒の暗躍があったからだと、ハジメは言う。
「少し話は変わりますが、そもそも魔法の原理っていうのはどういうものだと思います?」
ハジメの問いかけにアルフレリックは、何をいまさら訊いてくるのだろうと思いながらも、答える。
「詠唱と魔法陣、術者の魔力で発動するのが基本だ。まれに魔力操作持ちはそれらを使わずとも使える」
アルフレリックの答えにハジメは首を横に振る。
「それは魔法の使い方です。どういう過程を経て魔法が、いきなり炎や水を出したり、身体能力が強化されたりするのかっていうのが俺の質問です」
そう言われてもいまいちピンとこない。なので、ハジメはわかりやすい例を出してみる。
「例えば火を起こす〝火種〟の魔法。魔法を使わずに火を起こすとき、火が燃えるのは火種に着火してものを燃やすからです。着火するには火打石とかを打ち付けて発火温度まで熱して火花を生み出す必要がある。しかし、魔法陣、詠唱、魔力のどこに熱する要素があるのですか?」
「む?……それは、魔力……ではなく魔法陣か?」
「正解です。魔法陣には流し込まれた魔力を変換する
王宮では魔法について詠唱と魔法陣、それらの使い方だけを教えられた。描かれた魔法陣のどこが何を現しているのか、詳しい仕組みは誰も知らなかった。王宮の図書館の書物も同様で、魔法陣の詳しい意味などどこにも載っていなかった。
だがハジメはオスカー邸に残されていた書物の中から、魔法について詳しく記された書物を見つけた。それは魔法に使われる詠唱や魔法陣、それらの意味について解放者達が研究して判明したことを記した物だった。
「魔法陣の始まりは、誰かの固有魔法でした。その魔法を誰かが使いたいと思い、仕組みを調べて生み出したのが魔法陣です」
初級魔法の〝火球〟も〝風弾〟も、最初は誰かの固有魔法だったらしい。もちろん固有魔法そのものではなく、魔法の一部を抜き出して使いやすくしたのだ。それが魔法陣だという。
「全ての魔法陣には共通している過程があります。まずは陣に流れ込んだ魔力は〝魔素〟と呼ばれる粒子に分解・生成される。その後、魔素はそれぞれの魔法を構成する要素に組み替えられる。この工程によって魔法の種類や威力が決まります」
〝火球〟の魔法ならば高温の熱に、〝風球〟の魔法ならば空気に、といった具合に魔素が変換される。
「最後に組み替えられた要素を、核を中心に一纏めにする。あとは術者が放てば魔法は完成します」
魔力から〝魔素〟を生み出し、魔法の材料に変換。最後に核へと統合させ、魔法が完成する。それが魔法陣の役割であり、魔法が生まれる過程なのだ。魔法の射程もこの核を生み出す過程で決まっており、核と術者の結びつきが保たれている間は魔法が維持される。
ハジメはさらに説明を加えていく。今度は詠唱についてだ。
「詠唱は魔法陣に魔力を込める
「それでは適性持ちが詠唱を短くできるのはなぜだ?その説明だと詠唱は決まっているだろう?」
ハジメの説明にアルフレリックが疑問を入れる。
「実は魔法が構成される際に使われる魔素なのですが、術者によって性質が異なります。これが魔法適性です。あれは術者が生まれつき持っている魔素、ひいては魔力の性質なのです」
例えば火属性の魔法適性を持っている場合。その人の魔力は魔法陣にそのまま流せばスムーズに魔素から火の材料に変換されていく。
だが、その魔力を今度は水魔法の魔法陣に流すとどうだろう。変換効率はガクッと下がり、変換が不十分になってしまう。
「だから適性の無い魔法を使おうとすると魔法陣が大きくなる。それでも足らない場合、必要になる
「なんと!?」
驚愕するアルフレリック。魔力の直接操作は基本的に魔物か自分たちのような先祖返りにしかできないと考えていたのに、実はそれをみんなが詠唱で行っていたと聞いて驚かないはずがない。
「魔力の直接操作能力。魔力を扱うならこの能力は持っていて当然です。何せ、魔法陣に
「!!?」
その言葉の衝撃はいかほどか。目を見開くアルフレリック。
魔力を流し、魔法陣を起動させること。確かに魔力を操作していると言われればその通りだ。なぜ気が付かなかったのか。
「もともと詠唱は魔力の直接操作が拙い人間が補助をする際に使っていたんです。詠唱による魔力の操作で魔法陣が起動できるように魔力を操作し、構成する。同時に魔力操作の技術も鍛えられ、どんどん詠唱も魔法陣も必要なくなっていく」
優れた魔法使いが魔法陣も詠唱も短くなり、より複雑な上級魔法を使えるようになる理由がこれだった。
ハジメの説明にアルフレリックは納得する。今まで何気なく使ってきた魔法だが、とても興味深くなってくる。
「ちなみにですが、身体強化系の魔法は魔力から変換した魔素を自分の肉体に取り込みエネルギーとして纏っているんですよ。自分の肉体を媒介にしているから、攻撃魔法よりも使いやすいです」
「ふむ。魔法の仕組みはわかった。だが、〝魔力操作〟を忘れさせることになんの関係があるのだ?」
話を最初の疑問に戻すアルフレリック。
「魔法の発展には、今説明した魔法の仕組みを理解することが必須です。これを理解していないと、魔法陣を改造しオリジナルの魔法を生み出すことも、魔法の法則性を調べることも出来ない。解放者達はこれらを理解していました。だから大迷宮や神代魔法を付与する魔法陣を作り出せたんです」
「なるほど。……わかったぞ。神の使徒は魔法の仕組みを理解させないために〝魔力操作〟の技能を忘れさせたのか。魔力が操作できるとわかれば、新たな魔法を開発し始める。そうなれば魔法は発展していく。それを神の使徒は邪魔をしたのか」
ハジメの話を聞き、神の使徒達の目論見を察するアルフレリック。
「もう1つ、神の使徒の暗躍があったと思われる事があります」
ハジメは説明している間も叩いていたキーボードを大きく弾く。するとDMアナライザーの画面に『解析完了』という文字が浮かび上がった。
フェアドレン水晶に付与されていた魔法の解析が終わったという事だ。
ハジメはそのままフェアドレン水晶の魔法をもつアーティファクトを作り始める。効果をそのまま付与するのではなく、多少のアレンジも加えていく。
説明をしながらも、作業の手は止まらない。技能〝並列思考〟をフル活用している。
「ステータスプレートで表示される技能が、増えないと言われていることです。でも俺達はオルクス大迷宮で魔物の固有魔法を取り込んで増やしましたし、オスカーの魔法陣で生成魔法を技能として覚えました。だから技能は増えないというのは嘘なんです」
「その通りだな。先の魔法の説明も踏まえれば、鍛錬を積んだ魔法使いは〝魔力操作〟の技能を習得できる。それも技能を増やす方法だ」
ハジメの説明にアルフレリックも同意する。
オルクス大迷宮の底に落ちてから、この世界での常識が嘘だらけだとわかった。
よくよく考えればそうだ。地球での技能というものは、成長して学習し、反復することで覚えていく場合が大半だった。なまじっか、ステータスプレートによって目に見える形で表示されていたので、ほとんどの人が気づいていなかった。
「もしも技能が増えることが分かれば、解放者のような突出したイレギュラーが現れるかもしれない。俺みたいなですね」
技能が増えれば戦いの幅も増える。何より、相性の良い技能を組み合わせれば、強大な力を発揮できる。神の使徒達はそれを恐れた。
〝魔力操作〟技能と技能への認識。残された神の使徒達は、長い年月をかけて、人々の常識を裏で少しずつ改変し、トータス人の地力を下げてきたのだ。
解放者達が危惧した技術の発展による、取り返しのつかない未曽有事態を引き起こすのとは逆の方法で、トータス人から力を奪っていたのだ。
「はぁ。つくづく我らは神のせいで振り回されてきたのだな。自由な未来を信じて戦ったという解放者達に申し訳ない」
「解放者達が警戒したのとは逆方向の手段を取られたのだから、仕方ないと思いますけれどね」
話し込んでいる間に、目的のフェアドレン水晶の効果を付与したアーティファクトが完成した。
先端が光るポールのようなアーティファクトだった。使い方はフェアドレン水晶と同じで魔力を込めることで、樹海の霧と魔物を寄せ付けない効果を発揮する。それに加え、もしもポールに魔物が近づけば、警告音が鳴るようになっている。
完成したアーティファクトを手に持ち、効果をテストするために外に出た。
テストの結果は大成功。魔物の接近は流石に危ないので試せなかったが、霧はちゃんとポールの周囲を避けた。
「フェアドレン水晶を複製するとは、この目で見ても信じられないな。流石は解放者の大迷宮の攻略者ということか」
「ありがとうございます」
アルフレリックの称賛を素直に受け取るハジメ。少し得意げな顔をするのは、年相応の少年のようだ。
(末恐ろしいな。聞けば魔物の固有魔法もアーティファクトにしているという。彼にかかれば強力無比なアーティファクトが量産されていく。どんな魔法でも解析し、誰でも使える強力なアーティファクトにしてしまう。単純な力よりもよっぽど強力だ)
ハジメの才能に内心で戦慄するアルフレリック。
ハジメの手にかかればどんな魔法も解析され、改良・強化されてアーティファクトに落とし込められる。100年に1人の魔法の天才が操る魔法も、誰でも使えるアーティファクトにされ、ありふれた道具へとなってしまう。
ゆくゆくは神の操る魔法さえも、便利な道具にされるだろう。
さながら、かつての地球で神の猛威とされた雷が、科学によって電気であると解明され、文明の動力源としてありふれてしまったように。
まさにハジメの持っている力は、神の権威を貶める力と言える。
(もしや、神は人間がこの力を手に入れるのを恐れて、魔法技術の発達を使徒に阻ませたのか?神だけの特別が、ありふれた道具に成り下がるのを防ぐために)
ただの想像だったが、アルフレリックはそれが正しい気がした。
この後、ハジメはアーティファクトを量産し、ベースキャンプの周りに配置。安全性を高めた。それだけでなく合流した森人族と共にベースキャンプの居住性を高めるために、様々なアーティファクトを駆使して作業に没頭していった。
作者によるありふれ世界の魔法の独自解釈です。原作ではあまり掘り下げられませんでしたが、こういう成り立ちだったんじゃないかなという想像です。
もしも穴があれば感想やメッセージで教えていただけると嬉しいです。修正します。
それに加え、今作では解放者達は負けたわけではないのに、トータスの文明レベルが原作同様だったことへの説明も行いました。
・解放者は急激な技術レベルの発達の危険性を恐れ、自らの技術を安易に広めませんでした。
・神の使徒の残党は神の力の優位性を守る為に、魔力操作や技能の誤った認識を広め、技術を停滞させました。
この2つがかみ合い、トータスの文明レベルはエヒトによる破壊が無くても上がりませんでした。