ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る   作:竜羽

53 / 107
感想・評価・お気に入り登録ありがとうございます。
シアとコロナモンの強化回です。長くなってきたので前編として投稿します。


11話 思いを1つに 炎獅子ファイラモン(前編)

 朝食の後、ハジメ達はすぐに行動を始めた。

 ハジメとアルフレリックは、アークデッセイ号の中でフェアドレン水晶の効果を持ったアーティファクトを作成する作業に取り掛かる。

 アルテナは合流する森人族達の為の仮住まいを用意する。手が空いているガブモンも手伝いをする。後に合流した森人族の人々の手も借りて作業を進めた。

 そして、シアも香織達と戦闘訓練に励んでいた。

 

 樹海と外の境界にある荒野。いくら暴れても問題ない場所を探したところ、香織達が見つけた場所だ。少しキャンプ地からは遠いが、皆の邪魔にならない。

 

「シアの魔法適性だけど、身体強化魔法しかないんだよね?」

「はいです。アルフレリック先生に魔法を教えてもらっていた時にいろんな魔法を試してみたんですが、〝未来視〟以外は身体強化だけでした」

 

 少し苦笑いしながらシアは香織の質問に答える。

 〝錬成〟の魔法適性しかなかったハジメと似たようなものだった。

 アルフレリックからは主に〝身体強化〟を使った回避術を学んでいたらしい。第1に逃走手段を鍛えたのは妥当だろう。

 

「ですが、私の母さまは戦う手段も鍛えろと、度々アルフレリック先生と言い合っていました」

 

 シアの母親はずいぶん前に病で亡くなったという。優しくて聡明な女性だったが、憶病なハウリア族でありながら家族を守れる英雄に憧れていたという。子供の頃、自分が化け物ではないかと悩んでいたシアに「人とは違う事が出来て羨ましい」と言って励ました。

 

「パワフルで優しいお母さんだね」

「ん。いいお母さん」

「えへへ。ありがとうですぅ」

 

 香織とユエに母親のことを褒められて破顔するシア。

 

「今思えば母さまのいう事ももっともでした。戦う術も持たないと大切な人達を守れないんです。だから、特訓をよろしくお願いします!!」

 

 力強く気合を入れるシアに香織とユエも頷く。

 それから、シアは香織とユエと特訓を始めた。

 初日は今までシアが鍛えてきた身体強化魔法を駆使して、2人からの攻撃を回避し続けた。

 香織とは近接戦闘を行い、ユエからは遠距離攻撃への対処を学んだ。

 

「ひぃ!? か、掠りましたですぅ!!」

「流石の回避だねシア。私にもいい訓練になるよ。もっとギア上げていこう!」

「さ、さらに鋭く、ぐふぅ!?」

「あ。大丈夫シア? すぐに治すから訓練再開だよ」

「も、もう気絶させて」

 

 もっとも香織との訓練では、香織の方が身体強化魔法の練度と精度が高かったため、ほとんど一方的に殴られていたが。その度に香織の回復魔法で回復してもらい、すぐに特訓を再開できたのは、果たしてシアにとって良かったことなのか。

 

「〝火球十式〟」

「わっ! ひっ! ふぇ!?」

「よく避ける。追加いく。〝火球二十式〟」

「ば、倍になりましたですぅ!? わわわっ!?!?」

「〝三十式〟」

「うええええ!?」

 

 ユエが展開した大量の〝火球〟を必死の形相で避けるシア。

 オルクス大迷宮での戦いで、魔法をマニュアル制御で操ることを覚えたユエは、下級魔法の〝火球〟を手足のように操る。避けたとしてもすぐに戻ってきてまた向かってくる火の玉。それがどんどん増えていく。ハジメの並列思考にも匹敵する魔法の制御技術は流石と言えた。

 やがて避け切れなくなったシアは魔法の直撃を受けて吹き飛ばされる。下級魔法だったことに加え、殺傷力を極限まで減らしていたので大きな怪我はなかったが、シアはボロボロになった。

 しかし、ここには治癒魔法に馬鹿げた魔力の香織がいる。すぐに治されたシアは、魔法の弾幕から逃げる鬼ごっこを再開した。

 

 そうして最初は回避してばかりだったシアだったが、途中からやけくそになったのか、香織の動きを盗んで殴りかかってきた。

 もちろん香織とユエにとっては拙い攻撃だったが、シアの身体強化魔法の強化率が思ったよりも高く、2人を驚かせた。

 

 

 

 一方、コロナモンもテイルモンとルナモンを相手に特訓をしていた。

 

「《ティアーシュート》!」

「《コロナフレイム》!」

 

 ルナモンの水球とコロナモンの火炎弾がぶつかり合い、水蒸気と砂埃が立ち込める。

 コロナモンもその中に入ってしまい、視界が塞がる。

 

「《ルナクロー》!」

「なっ!?」

 

 だが、視界が効かないことなんて関係ないとばかりに、ルナモンがコロナモンの目の前に現れ、闇の力が込められた爪を振り下ろしてきた。

 耳がいいルナモンにとって、視界が塞がっていても敵の位置がわからなくなることはない。

 驚きながらもコロナモンはルナモンの爪を躱す。

 だが、ルナモンはコロナモンを逃がさない。爪を振るいながらコロナモンを攻め立てる。

 

「ふっふっふっ」

「わっ! うぉ!? わわっ!?!?」

 

 大人しいルナモンに似合わない苛烈な攻めに、なかなかコロナモンは体勢を立て直せない。

 やがて、コロナモンは地面に転がっていた石に足を取られてしまう。

 その隙を見逃さず、ルナモンの爪がコロナモンの目の前に突き付けられる。

 どう見てもルナモンの勝ちだった。

 

「私の勝ち」

「くっそ~」

 

 勝ち誇るルナモンと悔しがるコロナモン。

 ほとんど同じ時期に生まれた2体だが、ルナモンの方が経験の差で戦い方が上手かった。

 

「お疲れ。少し休んだら次は私とだ。コロナモン」

「おう! よろしく頼むぜ!」

 

 2人の特訓を見守っていたテイルモンが声をかける。

 コロナモンに必要なのはとにかく経験だ。だからひたすら模擬戦を繰り返していた。

 香織達が用意してくれた水を飲んで休憩しながらも、コロナモンの燃え滾るやる気は衰えない。

 

「もっと強くなるんだ。そんで進化してやるぜ」

「コロナモンは進化したいのか?」

 

 コロナモンの言葉を聞いたテイルモンが質問する。ルナモンも気になるのか耳を傾ける。

 

「ああ! 強くなって進化すればハジメ達みたいにシアを守れるからな! 今まで俺のことを守ってくれた。今度は俺の番さ!!」

「なるほど」

 

 テイマーを思う心は十分。後は何かきっかけがあれば進化できるだろう。

 その後もコロナモンはテイルモンとも模擬戦を行い、経験を積んでいった。

 

 そうしてシアとコロナモンの特訓は日が落ちるまで続き、この日の特訓の最後にはテイマーとデジモンが組になった模擬戦を行った。

 シアとコロナモンの相手となったのはユエとルナモン。

 

 だが、そこで問題は起きた。

 

「《コロナックル》、うえ!?」

「うわきゃ!?」

 

 コロナモンが攻撃しようとしたところに、ユエに殴りかかろうとしたシアが飛び込んできてしまった。幸い、シアにコロナモンの攻撃が当たることはなかったが、シアとコロナモンの呼吸があっていないことが判明した。

 

「まずはテイマーとしての戦いの戦い方を身に着けるのが課題だな」

「シアが動けるから前に出ちゃうんだよね。このあたりの立ち回りを教えないと」

 

 テイルモンのボヤキを聞きながら、香織が理由を推測する。

 香織とユエは戦いでは後衛のポジションなので、テイマーとしてのポジションにすぐに対応できた。だが、シアは戦った経験が少ない上に、身体強化魔法しか使えないので前衛の戦い方しかできない。もっと経験を積まないといけないだろう。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 ベースキャンプに戻った香織達は驚いた。

 朝はアークデッセイ号しかなかったのだが、周囲を囲む頑丈な防壁が出来ていた。しかもフェアベルゲンにも負けず劣らずの門までついている。門の上には見張りなのか、2人の森人族がいた。

 

「あ! カオリさんとユエさん、それにシアちゃんですね。今門を開けます」

「あ、はいです」

 

 香織達に気が付いた森人族が中に向かって何やら指示を出すと、門がゆっくりと開いていった。

 中に入った香織達は驚いた。

 アークデッセイ号があるのは変わらないが、その周りに10軒ほどの小屋が出来ていたのだ。小屋には森人族達が出入りしており、これが彼らの仮設住宅のようだ。

 もはやベースキャンプというより、小さな集落である。

 

「あ、シアに皆さん! お疲れ様です」

「あ、アルテナちゃん。うん。お疲れ様ですぅ」

「お疲れさま」

「お疲れ」

 

 駆け寄ってきたアルテナにシア達は返事を孵す。そして、ベースキャンプが様変わりしている理由を聞いてみる。

 

「ハジメさんのおかげですわ。お爺様と霧と魔物よけのアーティファクトを作ったあと、合流した森人族の皆と話し合って範囲を決めると、魔法でパパっと防壁と小屋を作ったんです。しかも住むための小屋まで。急ごしらえなので少々不格好ですが、頑丈ですわ」

 

 よく見れば小屋は全て石でできている。〝錬成〟の魔法で樹海の土から頑丈な建築素材を生み出し、小屋の形に成形したのだ。

 

「そうなんですね。やっぱりハジメさん凄いですぅ」

「うーん、やっぱりハジメ君の能力はこういう方面だと便利だよねえ」

「これから帰るたびにどんどんベースキャンプが発展していったりしてな」

 

 テイルモンが冗談めかして言った言葉だが、後に事実となる。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 次の日。シアとコロナモンは昨日と同じように最初は個人での特訓に励んだ。

 個別の特訓はいいのだが、テイマーとしての戦い方になると2人の呼吸はかみ合わない。

 お互いに前衛で殴りこむタイプなので、後方からデジモンをカードで支援するテイマーの戦い方に慣れないのだ。

 朝にハジメから受け取ったデジモンカードを使ってみるのだが、よく効果を理解していないシアはうまくカードを選びが出来なかった。

 結局シアとコロナモンの息は合わず、この日から訓練の内容にカードの効果を覚えることも加わった。

 

 拠点に戻ると、ベースキャンプに井戸と水路が出来ていた。

 アークデッセイ号の探索機能でベースキャンプの地下に水源を見つけたハジメが、〝錬成〟で掘り進め生活用水用の井戸を作ったという。これで水の心配はなくなった。

 

 次の日は丸1日を使ってテイマーの戦い方をシアとコロナモンに叩き込んだ。しかし、やっぱり息は合わず、終始苦戦することになった。

 コロナモンの希望から進化のカードを使ってはみるものの、なぜか進化も出来なかった。

 

「多分だけどデジモンとテイマーの関係が問題なんじゃないかな?」

「私とコロナモンの関係ですか?」

「私達も経験したんだけれどね、デジモンとテイマーの思いが重なって強くなったときに進化は起こるんだよ」

「ん。成長期はデジモンの思いだけでも進化できる。でも成熟期からはテイマーの思いも必要。私がそうだった」

 

 ユエの言葉にルナモンが頷く。彼女達もお互いに心を通わせて、信じる心で進化を果たした。

 

「そんなことないですぅ! コロナモンとは生まれてからずっと一緒だったんですよ!!」

「そうだぜ! シアの事は信頼しているし、ずっと思っている!!」

 

 反論するシアとコロナモンだが、香織とユエ、さらにテイルモンとルナモンも意見を変えない。

 

「だったら一度、2人で話し合ってみたらどうだ? 案外、得られるものがあるかもしれないぞ」

 

 テイルモンがそう言うが、2人は納得できなかった。

 結局この日の特訓はこれで終了した。

 

 ベースキャンプに戻ると今度は畑とため池ができていた。水源からの水の勢いが思ったよりも強かったため、農業ができるスペースを設けたのだ。

 森人族の中から農業の知識があるものが豆などを植えていた。ハジメは水源から水を引く用水路とため池、害獣対策のネットと悪天候時に作物を守る開閉式の屋根を用意していた。

 また、ハウリア族の捜索も開始しており、アルテナが10人の森人族がベースキャンプ付近を捜索に出ていた。残念ながら何も発見できなかったが、シアとコロナモンは深く感謝した。

 

 

 

 次の日からもシアとコロナモンのテイマー訓練は続いたのだが、結局うまくいくことはなかった。どうしてもシアが前に出てしまい、カードを使うタイミングが噛み合わない。コロナモンもシアを守ろうと前のめりになってしまう。

 このままでは訓練にならないので、香織とユエは最初のような個別の訓練に戻すことにした。

 2人は一緒の訓練の時に上手くいかなかったことを発散するかのように取り組んだ。

 コロナモンの特訓にはガブモンも参加し、コロナモンに火の出し方を指導した。

 

 この日もベースキャンプに戻ると、防壁に対魔物用の巨大な弩砲──通称、バリスタが設置されていた。これで防衛機能もさらに上がった。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 シアとコロナモンが再び個別の特訓をすることになった夜。シアとコロナモンは寝付けずにベースキャンプの中を散歩していた。

 

「はぁ~。何でうまくいかないんでしょう」

「……シアが前に出すぎなんだよ。戦いは俺に任せてくれよ」

「うぅ。でもでもコロナモン一人だと、ユエさんとカオリさん達の攻撃をさばけませんよ」

 

 シアの言う通り、最初は戦闘をコロナモンに任せていたのだが、経験の差から香織達の攻撃が当たりそうになり、そのたびにシアが割り込んでしまうのだ。そんなことの繰り返しで、香織達に負けてしまうのだ。

 そのことはコロナモンも分かっているので口を噤む。

 シアも自分がコロナモンの力を引き出せていないことは分かっているので、何も言わない。

 何となく気まずくなった2人が歩いていると、シアのウサミミが何かを感じた。

 

「んん?」

 

 音、ではない。地面が振動しているのを鋭敏な聴覚をもつシアが感知したのだ。

 気になったシアは振動を感知した方へ足を向ける。コロナモンもそれに続く。

 2人が向かった先はベースキャンプの隅のスペースで、アークデッセイ号や森人族の仮住まいから少し離れている。

 そこで、シアとコロナモンは驚くべきものを見た。

 

「────ッ!!」

「ッ!! ッツ!!!」

 

 薄い膜の中で狼を模した形状の黒い鎧を展開して戦うハジメだった。しかもその相手は、シアも見たことがあるガブモンが進化したワーガルルモンだ。

 ハジメが鬼気迫る表情でワーガルルモンに殴りかかり、ワーガルルモンは冷静に、最低限の動きで躱し、反撃を加える。

 傍から見れば互角の戦いだが、表情を見ればハジメの方が追い詰められている。

 そして、2人の拳がぶつかり合い、ハジメが吹き飛ばされた。

 

「は、ハジメさん!?」

「あ、待てよシア!」

 

 シアは思わずハジメの元に駆け寄る。コロナモンも彼女の後を追う。だが、

 

「ヘブッ!?」

「ブヘッ!?」

 

 薄い膜にぶつかり、張り付いてしまう。

 

「え? シア」

「何しているんだ?」

 

 2人に気が付いたハジメとワーガルルモンがそちらを見ると、膜に張り付いた2人が変な顔をしながら、変な体勢で止まっている姿があった。

 少し笑ってしまった。

 

 それからハジメ達は戦いを止めて、近くに置いていた十字架のスイッチを切る。すると薄い膜──〝聖絶〟結界(香織監修)が解除される。

 十字架の名前は『クロスシールド』。ハジメが作ったアーティファクトで、一定の範囲に強固な結界を展開する。

 この結界には防音機能も付与されており、ハジメとワーガルルモンが戦っても、その音が結界外に漏れることは無かったのだ。シアほどの感知能力が無ければ、気が付けなかった。

 

「どうしたんだこんな夜中に」

「さ、散歩していたら、揺れを感じまして」

 

 鼻を抑えながら答えるシア。

 ハジメは武装を宝物庫にしまい、普段着に戻っている。

 ワーガルルモンもガブモンに戻っており、同じように鼻を打ったコロナモンを診ている。

 

「あの、ハジメさん達こそ何を?」

「訓練だ。いざという時に、力を制御するためのだ」

 

 ハジメはオルクス大迷宮で大きな力を得た。しかし、その力をかなり持て余している。

 オスカー邸での一か月の準備期間でも、アーティファクトの作成を優先していた為、あまり訓練ができず、時間を見つけてはこうして訓練をしているのだ。

 

「俺は一度力を扱いきれずに暴れたことがある。その時はガブモンと香織達が止めてくれたけれど、いつまた同じことが起きるかわからない。だから力を制御する訓練が必要だ」

「だから、ガブモンと訓練をしていたのですか?」

「ああ。力が強すぎてワーガルルモンじゃないと受け止めきれないんだ」

「……そんな危ない力でパートナーを攻撃して平気なんですか?」

 

 コロナモンを見ながらシアは質問する。訓練とはいえ、暴走しかねない危険な力で、自分のパートナーデジモンに攻撃するハジメが、少しシアには信じられなかった。

 そんなシアに対して、ハジメは何でもないように答える。

 

「信じているからな」

「え?」

「ガブモンなら、俺が攻撃しても受け止めてくれる。仮に俺が暴走しても止めてくれるってな」

 

 ハジメはガブモンの頭に手を置くと優しく撫でる。

 

「ああ。約束した通り、ハジメが暴走しても俺が絶対止めてやるさ」

「頼りにしているぜ。……信じているからこうして訓練の相手を頼めるんだ」

「俺もハジメを信じているから、訓練の相手を引き受けられるんだ」

「サンキュ、ガブモン。こんなわけで、俺達は互いに信じているから、危険な力の訓練をできるってことだ」

 

 気負わずに言い合う2人には、間違って怪我をさせてしまうことに対する恐れなんて感じられなかった。

 ハジメの言葉を聞いて考え込むシアの次に、今度はコロナモンがガブモンに質問をする。

 

「でもさ、デジモンはテイマーを守る為にいるんだろ? だったらテイマーに危険なことをさせずに俺達が守れればいいんじゃないか?」

「確かにそれがいいかもしれない。実際、昔はそんな感じで戦っていた。でも、それだけじゃダメなんだ」

 

 ガブモンは思い出す。6年前の戦いの終盤、デジモンとテイマー達が1つになって進化したことを。あの時、初めてテイマーに背中を向けるのではなく、隣に立って一緒に戦った。

 そしてわかったんだ。デジモンテイマーは守られるだけの存在じゃない。自分達と一緒に戦う存在なんだって。

 

「コロナモンももっとシアの力を信じて見ろよ。シアは守られるだけのテイマーじゃない。勇気を持った強いテイマーだって」

「シアの力を」

 

 ハジメとガブモンの見立てでは、シアとコロナモンの間には確かな絆がある。

 しかし、2人はお互いを守る存在とみなしすぎている。シアは自分で孵して育てたコロナモンへの思いからか、コロナモンが傷つかないように飛び出してしまう。コロナモンはシアを守ることに意地になりすぎてしまう。

 結果として、2人の息が合わなくなっていたのだ。

 

「シア、コロナモン。俺達はもう寝るよ。2人もあまり夜更かしするなよ」

「おやすみ~」

 

 ハジメとガブモンはクロスシールドを片付けるとアークデッセイ号に戻っていった。

 

 残されたシアとコロナモンはしばし無言だったが、静かに話し始めた。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 翌日からシアとコロナモンの訓練は一味変わり始めた。

 予定通り、一緒の訓練はせず個別で訓練をしているのだが、より激しい訓練をするようになった。

 シアはハジメに頼んで武器を作ってもらった。

 使うことが出来る身体強化魔法を最大限に活かすための武器を彼女は求めた。それに応えてハジメは頑丈な大槌とガントレットを用意した。それらを使いこなしながら、シアは強くなっていった。

 コロナモンも訓練の相手に成熟期のテイルモンと、さらにルナモンにはレキスモンに進化してもらった。格上のデジモン達と激しい戦いを繰り広げながら、着実に力を身に着けていった。

 

 シア達の訓練が順調な一方で、ハウリア族の捜索は難航していた。

 拠点の整備が一段落したハジメがガルルモンに乗りながら捜索したのだが、全く痕跡が見つからなかった。

 それどころか、樹海の霧がどんどん深くなってきており、探索どころではなかったのだ。

 本来ならば霧が薄くなるはずなのに、おかしいとアルフレリック達も首をかしげていた。

 

 そして、ベースキャンプを始めてから10日目。

 

 シアとコロナモンは再びテイマーの訓練に臨んだ。

 

 ズガンッ! ドギャッ! バキッバキッバキッ! ドグシャッ! 

 

 荒野に響く凄まじい破壊音。岩は砕かれ、地面にはクレーターがいくつも出来ている。

 他にも地面の一部はドロドロに溶けていたり、凍り付いていたりしている。

 これらの破壊後を付けたのは2人の少女と2体のデジモンだ。

 

「でぇやぁああ!!」

「〝緋槍〟!!」

 

 ハジメに作ってもらった大槌を振り上げて殴りかってきるシアに対し、ユエは最上級魔法で迎え撃つ。今のシアは〝火球〟程度はものともしない。

 その証拠に、全てを燃やし尽くすはずの炎の槍を、シアは大槌を振るうことでかき消してしまう。ハジメが用意した大槌は頑丈さを追求した特別性だ。特別な効果こそないがとにかく頑丈で、ユエの最上級魔法でさえも簡単に壊すことはできない。

 それでも少し損傷してしまっており、大槌の端が欠けていた。

 だが、シアは動揺することなくユエに接近する。

 そして接近したところでシアの背中に張り付いていたコロナモンが飛び出す。

 

「《コロナックル》!!」

 

 さっきの炎の御返しだとばかりに、火炎弾を放つコロナモン。

 

「〝風壁〟!」

 

 ユエが風の壁でコロナモンの攻撃を防ぎつつ、小さな体を吹き飛ばす。

 吹き飛ばされたコロナモンを、ユエの傍にいたレキスモンが追撃する。シアは少しそちらに目を向けるが、コロナモンが大丈夫だという風に頷くのを見て、再びユエに向かっていく。

 

「《ムーンナイトキック》!!」

「《コロナックル》!!」

 

 レキスモンの蹴りとコロナモンの拳がぶつかり合う。

 世代差からコロナモンは力負けしてしまうが、勢いを幾らか減らしてダメージを最小限にする。

 そして着地すると、レキスモンに臆することなく戦いを挑む。

 シアもユエへと攻撃を加えていき、ユエも愛銃ロートを抜き、本気で戦い始める。

 

「本当に見違えたね」

「ええ」

 

 戦いを見守っていた香織とテイルモンがシア達の戦い方に感心する。

 この10日間でシアとコロナモンは見違えるほど強くなった。

 シアの魔法を活かすために無理にカードを使うのではなく、共に前に出て戦うという、デジモンテイマーのセオリーを無視した戦い方をしているが、互いの強さを信じることでゆるぎない強さを発揮している。さらに本当に危なくなったときは、発動する〝未来視〟で緊急回避し、カードスラッシュする隙を作っていく。

 これがシアとコロナモンが見つけた、2人のデジモンテイマーとしての戦い方だった。

 

 訓練にも熱が入っていき、いよいよ盛り上がってきたその時──!! 

 

「避けてください!!!」

「〝嵐帝〟!!!」

「《スマイリーボム》!!」

「《ビッグスマイリーボマー》!!」

「《エネルギーボム》!!」

 

 突然飛んできた何かが爆発した。咄嗟に〝未来視〟で自分たちの死が視えたシアの警告にユエが風の最上級魔法で自分達自身を吹き飛ばし、その場を離脱する。

 コロナモンもレキスモンが抱え、自慢の跳躍力で爆発を躱す。

 

「一体何が?」

「警戒して!!」

 

 混乱するシアの前にアイギスを構えた香織が出る。

 ユエとレキスモンも近づき、警戒を強める。

 そして香織達の前に、攻撃者達が姿を現す。

 

「ヨケタヨケタ」

「ツギハアテルアテル」

「ゴサシュウセイ。エネルギーサイジュウデン」

 

 鋼色の丸い身体に、赤いグローブを付けた可愛らしい姿をした3体のデジモン達。大きさや手足の形は異なっているが、3体とも似ている。シアとコロナモン以外の面々は見たことがあるデジモンだが、一応デジヴァイスでデータを確認する。

 

「マメモン。完全体。突然変異型。必殺技は《スマイリーボム》。やっぱりマメモンだ」

「ん。あっちもビッグマメモン。完全体。突然変異型。必殺技は《ビッグスマイリーボマー》」

「メタルマメモン。完全体。サイボーグ型デジモン。必殺技は《エネルギーボム》ですぅ」

 

 3人がデジヴァイスでスキャンしたデータを読み上げる。やはりマメモンとその関連種だった。

 

「マメモン3兄弟。温厚で優しい性格のデジモンのはずだけれど」

「あれ、正気を失っている?」

「か、完全体ってワーガルルモンとかと同じなんですか? 可愛らしいんですが」

 

 3人がお互いの所感を口に出す。

 一方、デジモン達はマメモン達への警戒を強める。

 

「コウゲキコウゲキ」

「バクゲキバクゲキ」

「エネルギージュウテンカンリョウ。ハッシャ」

 

 正気とは思えない様子のマメモン3兄弟が襲い掛かってきた。

 




〇デジモン紹介
マメモン
世代:完全体
タイプ:突然変異型
属性:データ
過酷な環境の元で進化した突然変異型デジモン。見た目の可愛さとは裏腹に恐るべき破壊力を秘めている。小さな体についている巨大な手は、それ自体が強力な爆弾になっていて取り外しが可能。愛称は“スマイリーボマー”。必殺技は敵に向かって飛んで行き、当たった瞬間に大爆発する巨大な手『スマイリーボム』。


ビッグマメモン
世代:完全体
タイプ:突然変異型
属性:データ
「スマイリーボマー」の愛称を持つマメモンの親玉的存在の変異型デジモン。実はマメモンの集合体ではないかとも言われている。通常のマメモンは幼年期デジモンと同等のサイズで、見た目の姿からは想像もできないほどのパワーを持っているが、ビッグマメモンはその名の通り、マメモンの何十倍、何百倍ものサイズである。しかし、このサイズでなぜ“マメモン”なのかは未だに不明である。性格はいたって温厚であり、争いや戦いは好まない。いつも子分のマメモン達と戯れている。必殺技は子分のマメモンそのものを武器にする『ビッグスマイリーボマー』。この技を使った後はサイズが小さくなるという噂だ。



今話はシアとコロナモンが強くなる決意について。原作ではハジメへの恋心でしたが、今作では家族に恥じないためにという感じなので、少し手古摺ってもらいました。そんなシア達に偶然ですが道を示して見せたハジメ。このままじっくりいつの間にか落ちて欲しいなあって思います。
そして最後に出てきたのはデジモンアドベンチャー02でベルサイユ宮殿で宴会をしていたマメモン3兄弟です。しかも何やら正気を失っている。果たしてどうなるのか、次話をお楽しみに。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。