ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る 作:竜羽
ようやく樹海を出発できました。
これからライセン大渓谷の大迷宮の攻略を目指していきます。
大樹に赴いたその日の夜。ベースキャンプに戻ったハジメ達は、これからどうするのか話し合いをした。
その結果、ハジメ達はライセン大渓谷の大迷宮を攻略することにした。
樹海の大迷宮を攻略するためにも、他の大迷宮を攻略することが必要だという事が分かった。ならば、それに向けて行動するだけである。
ただ、ここまで手を貸していたアルフレリック達の事もある。最低限、彼らの居住地を充実させる必要があった。
それは浩介達の方も同様だった。
彼らはハジメ達と同じようにハウリア族を鍛えながら面倒を見ていた。それを投げ出していくわけにはいかない。
森人族とハウリア族の代表であるアルフレリックとカムを交えて、相談は夜遅くまで続いた。
結果、このベースキャンプを拡張し、ハウリア族も一緒に住むことになった。
それが終わればハジメ達は大迷宮を巡る旅に出る。
現時点でも最低限の生活環境も整っている為、もう少し整備すればさらに住みやすくなるだろう。
フェアベルゲンと違って樹海の外側にある為、その分防衛機構を整備する必要があるが、チート錬成師のハジメの手にかかれば問題ない。防壁はすぐに強化され、さらに井戸に繋がっている水源から水を流し込み、堀まで作った。それだけでなく地下に貯蔵庫兼避難空間も作り、万が一のことがあっても逃げることが出来るようにした。
ハウリア族達へは武器の修理と支給を行った。
森人族は魔法が使えるが人数が少ないので、彼らが戦闘の主力になる。今までは浩介がこっそりと近くの町で買ってきたナイフや短剣を使っていたが、ハジメがそれらを作り直して一級品の武器にした。さらにクロスボウやスリングショットなどの遠距離武器も作り出し、手入れの仕方や直し方をまとめたマニュアルも渡した。これで戦い方のバリエーションも広がるだろう。
余談だが、浩介のサングラスがハジメのお手製だと知られてしまい、ハジメは全員に同じものを作ってくれと押しかけられた。あまりの勢いに押し負けたハジメは、サングラスVerアビスゲートを量産して渡してしまった。次に樹海に来た時、大量の深淵兎が出迎えることだろう。
ハジメ以外の面々も積極的に活動した。
今はハジメの〝錬成〟で作り出した石の小屋に住んでいるが、亜人族達は木でできた家に住むことを好むので、それらの建築の手伝いを行った。
デジモン達と協力して樹海の樹を伐採、運搬して建築材料を確保する。手が空いたら、周辺の探索を行った。
香織達がマメモン3兄弟と遭遇したことを踏まえて、スカルバルキモンを呼び寄せたダークタワーがある可能性が示唆されたからだ。スカルバルキモンが進んできた痕跡を目印に捜索を行ったが、ダークタワーは見つからなかった。代わりにとても強い呪いのエネルギーが残留する場所があり、香織とエンジェウーモンが念入りに浄化をした。
そして、数日で予定していた作業が終わった。
ベースキャンプ内にはまだ建築中の住宅が多いが、それは森人族とハウリア族が建てる。ハジメ達に頼りっきりではいけないという事で、彼ら自身の力で作るのだ。
「本当に世話になった。あのままでは亜人族は神の使徒の操り人形だった」
「いえ。神の使徒の暗躍にも屈せずに、抗ってきたアルフレリックさん達、森人族の頑張りがあってこそです」
頭を下げるアルフレリックに、ハジメは彼らの密かな抵抗があったからこそ亜人族が自ら衰退するのを防げたと告げる。フェアベルゲンとの関係が今後どうなっていくのかわからないが、森人族とハウリア族は魔力のあるなしで差別せず、この樹海で亜人族として生きていくだろう。
一方、ハウリア族達も彼らの見送りに来ていた。但し、その中にはシアとコロナモンの姿はなく、彼女達はハジメ達と共にいた。
「ねえ、シア。本当に私達と一緒に行くの?」
「家族が見つかったのなら一緒にいる方がいいんじゃないのか?」
香織とテイルモンが二人に確認を取る。
「いいんです。まだどうすればいいのか心の整理がつきませんし。それにもっと皆さんと一緒にいたいんですぅ。まだまだ未熟なデジモンテイマーな私ですが、皆さんについていけばいつかコロナモンに相応しいテイマーになれますです! ご迷惑をかけないように頑張ります!」
「俺ももっともっと進化できるようになって強くなってやる。シアと一緒にな!」
気合を入れるシアに今度はユエとルナモンが話しかけてくる。
「危険な旅。シアには生きにくい場所にも行くし、街や国、神とも戦うことになる」
「怖いデジモンにも襲われる」
「国に追われたこともありますし、何度も襲われました。今更ですし、覚悟は出来ています」
「どんなことがあってもシアがいれば大丈夫だ!」
彼女達の忠告にも笑顔で答えるシアとコロナモン。
特訓を乗り越え、香織達と強敵を倒したことで、大きな自信を身に付けた。今の彼女はパートナーのコロナモンのように、明るい太陽のように燃えている。
実際、彼女達の実力はかなりのものだ。
ファイラモンに進化できるようになったコロナモンはもちろん、シアも身体強化魔法に磨きをかけ、ステータスに換算すると、身体能力の数値が全て7000にまで上昇する。勇者すら圧倒する数値だ。
大迷宮でも十分通用するだろう。
「シア」
「アルテナちゃん」
最後に声をかけてきたのはアルテナだった。
「せっかく会えたのにまた離れることになってごめんなさいです。でも、強くなってまた会いに戻ってきます」
「ええ。信じていますわ。私ももっと強くなります。また危機が訪れても、私達の国を護れるように」
「はいです! アルテナちゃんなら絶対に、強くなります!!」
「シアのお墨付きなら、安心ですね」
〝未来視〟の魔法があるからじゃない。シアの言葉は、暗い道を照らす温かい光みたいだからだ。
別れを惜しみつつも、未来を切り開くためにシアは旅に出る決意をしたのだ。
まあ、もっとも……。
「皇女殿下!! 元帥!! 師範!! 短い間でしたが、ありがとうございました!! 我らハウリアは未来永劫、御三方に忠誠と献身を捧げてまいります!!」
「よろしいですわ。ならば命令を下します。傾聴なさい!」
「「「「「「「「「「はっ!!!!」」」」」」」」」」
「わたくし達はいつの日か、再び大樹を訪れます。それまで大樹を護り抜きなさい」
「しかし、貴様らが死ぬのは許さん。なぜならば、死ねばトレイシー殿下の命を果たせん。我が深淵のしもべであることを自称するのならば、必ず生き抜き、使命を果たせ!!」
「死ねばシアさんとの約束も守れませんからね」
「「「「「「「「「「Yes sir!!!!」」」」」」」」」」
あのテンションに混ざりにくいから、というのが本音かもしれないが。
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アルフレリック達に見送られて、ハジメ達は樹海を出てアークデッセイ号を進める。街道を走らせてしまえば大きな跡が出来てしまうので、平原の中を迷彩機能で進んでいる。
ハジメ達の同行者は一気に倍以上に増えた。
シアとコロナモンに加え、再会した浩介とトレイシー、シスタモンシエルだ。
「うおおお!! すげえなハジメ!! これマジでお前が作ったのかよ!?」
「マジだぜ。最高速度は90km/hだ。悪路は錬成魔法で整地しながら進むから問題ないし、装甲は異世界の金属を惜しみなくつぎ込んだ特別性。加えて生成魔法で香織の結界魔法を付与しているからユエの最上級魔法でも傷1つつかない」
「武装は何かあるのか!?」
「耐久性と居住性に力を入れたからなあ。目くらましや威嚇用の閃光手榴弾とか音響爆弾が主だ。あ、そのボタンは今調整中の新兵器だ」
「どんな兵器なんだ?」
「〝纏雷〟っていう魔法を参考にな……」
運転席と助手席ではハジメと浩介が盛り上がっている。
他のメンバーは後部座席に座り、窓から見える周囲の景色を見ている。
ここはアークデッセイ号の前方にある運転席で、運転席にはハジメが座り、助手席の浩介がテンションを上げている。助手席にも周囲の様子を確認するレーダーや緊急ブレーキなどがあるのだが、下手に触らないように注意している。
「なるほど。単純な効果を持つアーティファクトを大量に組み合わせているのですね。アーティファクトをただの部品にするとは、何と大胆な発想ですか」
「アーティファクトが貴重になった、今のトータスでは考えられないですね」
トレイシーとシエルもアークデッセイ号には驚きを隠せず、キョロキョロと中を見渡している。特にトレイシーの天職は〝魔道具師〟なので、巨大なアーティファクトであるアークデッセイ号には興味津々だ。
一方、香織達はさっき後にした樹海のことについて話をしていた。
「それにしてもまさかマメモン3兄弟が残ってくれるなんて」
「彼らもこの世界ではいくところがないんだ。いつか私達が戻ってくる場所にいれば、いつかデジタルワールドに帰れると思ったんだろう」
忘れていたかもしれないが、香織達を襲ったマメモン3兄弟はアルフレリック達の元に残ることにした。ハジメ達としても扱いに困っていたので助かった。戦闘力も完全体なので、滅多なことが無ければ、護り抜いてくれるだろう。
「デジタマも預かってもらってよかった」
ユエが安心したように言う。
スカルバルキモンが倒されたことで残ったデジタマもアルフレリック達の所に残してきた。今はハウリア族、特にラナが管理している。
危険が多い旅をしているハジメ達が連れているよりもいいという判断だ。デジモンへの偏見もないし、同じデジモンであるマメモン3兄弟もいる。
なぜスカルバルキモンがデジタマになったのかは、レーベモンの力はスカルバルキモンを倒したのではなく、異常をきたしたデータを浄化したからかもしれない。だが、浄化した箇所があまりに多く、デジタマに戻らないと存在を維持できないとデジタマが判断して、デジタマに退化したのではないか、ということだ。
もしかしたら、次に樹海に行ったら誰かがテイマーになっているかもしれない。
やがて、アークデッセイ号に備え付けられた広範囲レーダーが前方に町があることを知らせてきた。
このままアークデッセイ号で門の前まで来てしまえば新種の魔物に間違えられるし、迷彩機能を付けたままでは虚空から人が現れたように見えてしまう。
町から見えないギリギリの距離でアークデッセイ号を停車させ、外に出る。
「これから街に行くが、取り決めの通り手分けしよう。樹海で手に入れた魔物の素材を冒険者ギルドで売る組と食料を買う組、衣服を買う組だ」
「素材を売るのは俺が行こう。何度かやっている」
浩介が挙手をする。実際、彼は資金調達のために冒険者登録して、目立つトレイシーとシエルの代わりに魔物の素材を売りさばいていた。
「食糧は私とテイルモン、シアとコロナモンで行くよ。料理は私達がメインだしね」
「はいですぅ! 皆さんに美味しいごはんを作れるように頑張ります!」
香織達は市場に行く。資金は浩介達が持っていたお金だ。新しく素材を売却してくるので、全財産を受け取る。
「衣類はわたくしとユエさん、シエルで行きましょう。衣類は女性の必須アイテムですから」
「ん。わかった」
「かしこまりました」
あとはハジメだが、彼は浩介と一緒に冒険者ギルドに行くことにした。浩介が一人で持ち込むより、パーティーで樹海の魔物を狩ったという事にした方が自然だろう。
「よし。全員、昨日渡したアーティファクトで変装していくぞ」
ハジメの言葉に全員がブローチや腕輪を起動させる。
すると、全員の髪の色や瞳の色が変わり顔の造形も少し変わった。
目も見張る美少女だったのだが、どこにでもいる少し見た目がいい美少女レベルになる。特にシアは特徴であるウサミミが見えなくなり、人間の耳ができる。
ハジメも白髪赤目はそのままだが、平凡な少年になる。
これは皇帝ガハルドが使っていた姿を変えるアーティファクトの話を聞いたハジメが作成したアーティファクトだ。持ち主の姿を変える機能は同じで、さらに声まで変えることが出来る。しかも、同じアーティファクトを使っている仲間からは元の姿のまま見えるので、混乱することが無い。
これで指名手配されている可能性がある香織とトレイシーはもちろん、亜人族であるシアも奴隷の首輪を付けなくても堂々と町中を歩ける。
ちなみに、浩介は使っていない。
なぜなら、深淵卿だからだ。
説明終了。
そして、最後にハジメ達はパートナーデジモンにデジヴァイスを翳す。
「町を出るまではデジヴァイスの中に隠れていてくれ」
「わかっている。でも何かあれば出してくれよな」
デジヴァイスのあるボタンを押すと画面から光が放たれる。するとガブモン達が光の中に消えていった。
これはオルクス大迷宮のオスカー邸で、ワイズモンに協力してもらって作ったデジヴァイスの新機能だ。パートナーデジモンをデジヴァイスの中にある仮想デジタル空間に収納できる。魔物への忌避感が強いトータスの町中でデジモンを連れ歩けば騒ぎになってしまうので、その対策を考えた際にワイズモンから提案された機能だ。
シエルは誰かのパートナーデジモンではないが、見た目は人間なので姿を変えるアーティファクトを使っている。
準備ができた一同は歩いて街に向かう。
町の門にたどり着くと、門の傍に立っている小屋から武装した男が出てきた。川の鎧を付けているので、兵士というより冒険者に見える。冒険者風の男がハジメ達を呼び止める。
「止まってくれ。ステータスプレートを。あと、町に来た目的は?」
「食料の補給がメインだ。旅の途中でな」
門番の質問に答えながら、ステータスプレートを手渡すハジメ。
内容を一瞥した男は他の面々にもステータスプレートの提出を求める。
香織達も素直に渡していく。何とデジモンであるシエルまでステータスプレートを渡した。やがて全てのプレートに目を通した男は、ハジメ達に返す。
「問題なし。通っていいぞ」
門を通る許可を出した。
ハジメ達が渡したステータスプレートは、実はトータスで流通している物ではない。
オスカー邸で製作したハジメ御手製のもので、修練で身に着けた技能も表示される正真正銘のステータスプレートだ。しかも、ステータスの偽装機能まで付いており、名前や天職まで変えることが出来る。
門番に渡したプレートには、実際のステータスとは全く異なる内容が表示されており、ステータスプレートは偽造できないという先入観から、門番は怪しむことなくハジメ達を通したのだった。
「それにしても男1人に女5人とは羨ましいな」
「…………もう1人いるぞ。男」
「えっ?」
男がハジメの指さす先を見ると、そこには乾いた笑みを浮かべる浩介がいた。
ステータスプレートを差し出していたのに無視されてしまい、どうしたものかとプレートをプラプラさせている。
「いや、別にいいんだ。毎回、初めて見たみたいな対応されているし、たまに確認もされずに街には入れたしさ。うん。いいんだよ別に。気にしてないし? うん」
「す、すまん!」
慌てる男に、浩介はプレートを手渡す。
こうしてハジメ達は街──ブルックに入った。
〇アーティファクト紹介
・真ステータスプレート
トータスで流通しているステータスプレートをハジメがフリージア達の協力の元再現・改良した。
実はトータスで流通しているステータスプレートは派生技能以外では新しく習得した技能は表示されない。登録した時に表示された技能のみが主な技能として表示される。
これは神の使徒による細工。技能を増やすには派生技能しかないと思いこませるため。
※ハジメと香織のステータスプレートはホーリードラモンの力で正常化していた。
ハジメが作成したステータスプレートは修練で覚えた魔法や技術を新たな技能として表示できる。
また全ての表示内容を偽装することも出来、全く別人のステータスを表示させることも出来る。指名手配されている香織が見つからないようにするための仕様。