ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る   作:竜羽

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遅れて申し訳ありません。ちょっと仕事の疲れで先週は休んでいました。
サクサク進めないと2章も1年かかっちゃいそうで不安です。

・あらすじ
ライセン大渓谷を探索するハジメ達は、遂に大迷宮の入り口を見つけた。その奥には何が待ち構えているのか・・・。



18話 ライセン大迷宮攻略(前編)

 シアとコロナモンが姿を消した回転扉を慎重に通ったハジメ達。

 するとヒュンヒュンと中から何かが飛んできた。咄嗟にハジメが左腕の義手で弾く。

 しばらくして何も起きなくなったので、飛んできたものを見て見ると金属でできた矢だった。

 

「典型的な侵入者対策の罠だな」

「暗いね。ライトライト」

 

 香織が腕時計の懐中電灯をつけると、中を照らし出す。

 十メートル四方の部屋で、奥の方へと真っ直ぐに整備された通路が伸びていた。古代遺跡の迷路の入り口といった雰囲気だ。

 部屋の中央には一枚の石板があり、看板と同じ丸っこい女の子文字でメッセージが彫られていた。

 

 〝ビビった? ねぇ、ビビっちゃった? チビってたりして、ニヤニヤ〟

 〝それとも怪我した? もしかして誰か死んじゃった? ……ぶふっ〟

 

 全員の内心は一致していた。「うぜぇ~」と。

 わざわざ〝ニヤニヤ〟と〝ぶふっ〟の部分だけ強調されているのが、殊更腹立たしい。もしもさっきの罠で誰か死んだら、間違いなく生き残りは怒髪天を衝くだろう。

 

「シアとコロナモンは?」

 

 ふと気が付いたガブモンが辺りを見渡すが、シアとコロナモンの姿がない。

 

「もしかして……」

 

 ユエが背後を振り返り、入ってきた回転扉に向かう。ゆっくりと扉を押すと半回転し、ひっくり返る。果たしてそこにシアとコロナモンはいた。回転扉に縫い付けられた姿で。

 

「ハジメざん、ユエざん、皆ざん、助けてくださいぃ~」

「し、死ぬかと思った。お、下ろしてくれぇ~」

 

 飛んできた矢の風切り音に気が付いたシアとコロナモンは、特訓で鍛えた回避能力で躱した。しかしギリギリで躱したことで服のあちこちに当たり、扉に縫い付けられてしまったのだろう。コロナモンは幸いにも身体に当たらなかったが、躱すためにジャンプしたところシアと同様に壁に縫い付けられた。ある意味、パートナーらしいと言える。

 

「迂闊に入るからだぞ」

「はいぃ。面目ないですぅ~」

 

 ハジメの注意に落ち込みながら、ユエ達の手で解放される。

 そして、シアとコロナモンが中央の石板に気が付いた。

 顔を俯かせ垂れ下がった髪が表情を隠す。しばらく無言だった2人は、おもむろにドリュッケンを取り出し、拳に炎を灯すと渾身の一撃を石板に叩き込んだ。ゴギャ! ボオンッ! という破壊音と爆発音を響かせて粉砕される石板。

 どうやらあの文章がよほど腹に据えかねたようだ。何度も槌と拳が振り下ろされ、石板が跡形もなくなる。

 が、石板の下の地面には何やら文字が彫って在り、攻撃を終えて一息ついた2人の目に入ってきた。

 

 〝ざんね~ん♪ この石板は一定時間経つと自動修復するよぉ~プークスクス!! 〟

 

「ムキィ──!!」

「ウガァ──!!」

 

 マジ切れした2人がさらに攻撃し始める。コロナモンなんて怒りのエネルギーで今にも進化しそうな炎を放出している。

 

「ミレディ・ライセンは反逆者も解放者も関係なく、人類の敵みたいだな」

 

 ハジメの言葉に香織達も頷いた。

 

 しばらくして2人を落ち着けたハジメ達は、用心しながら通路の先へ進んだ。

 やがて、新たな部屋に入ると──光に包まれて転移した。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 気が付いたとき、ハジメ達はすぐに自分達の無事を確認した。見たところさっきと同じような部屋にいる。但し通路は後ろではなく前に延びており、向こうには更に部屋があった。だが、それよりももっと大きな異変が起きていた。

 

「ガブモン!? どこに行ったんだガブモン!!」

「テイルモン!? テイルモーン!!」

「ルナモン! ルナモン!」

「どこですかコロナモン!!」

「シエル!! ……いませんわ」

 

 デジモン達がいなくなっていたのだ。

 さっきまで一緒にいたのに、影も形もない。パートナーがいなくなったハジメ達は必死に名前を呼ぶが、返って来る声はない。

 ならばとデジヴァイスを取り出して呼びかけてみるが、ザーザーという砂嵐の音声が返って来るだけだ。ジャミングされていた。当然、パートナーが見ている光景も映らない。

 さらに事態は悪化する。まず気が付いたのはトレイシーとハジメだった。

 

「まずいですわ。デジモン達だけでなくコウスケもいません」

「ああ。一体どこに行ったんだ」

「……あ。そういえば、遠藤君もいない」

「……確かに。いない」

「コロナモン達のことに気を取られていたですぅ」

 

 消えていたのはデジモンだけではない。浩介の姿もなかった。一瞬、いつもみたいに影が薄くなったのではないかと思ったが、本当にいない。

 いくら待ってもデジモン達と浩介の姿を見つけられなかった。仕方なくハジメ達は通路を進むことにした。

 

「これは……。オルクス大迷宮よりも迷宮らしい」

 

 進んだ先を見たハジメは思わず声に出す。何せ、通路が縦横無尽に通路や階段が入り乱れているのだ。先への入り口も無数にあり、捻じれた階段が複雑に繋がっている。

 まさに大迷宮の名前に違わない場所だった。

 しかも、ライセン大渓谷の魔法を分解する効果が強くなっており、魔法を得意とするユエと香織が魔法を使おうとするが、すぐに魔力が霧散してしまう。

 

「やっぱり魔法はうまく使えない」

「ユエも? 私もだよ。回復魔法は触れていれば使えるけれど、〝聖絶〟は発動も出来ない。外よりも分解作用が強いよ」

「わたくしもですわ。エグゼスもここでは丈夫な鎌でしかない。つまり戦闘に使える魔法は身体強化魔法ということですわね」

 

 トレイシーの言葉に全員がシアと香織の方を向く。一行の中で最も身体強化魔法を使いこなす香織と彼女の教えを受けたシアこそ、この環境下でのメインアタッカーだ。

 他のメンバーはアーティファクトでの援護が主になるだろう。

 

「進もう。まずはガブモン達と合流するんだ」

 

 ハジメの言葉に全員が頷き、慎重に迷宮の奥に歩みを進めた。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 一方その頃。ガブモン達はハジメ達とは違う部屋にいた。部屋の様子はハジメ達が飛ばされた部屋と同じで、先にも続いている。

 飛ばされたのはガブモン、テイルモン、ルナモン、コロナモン、シエルのデジモン達だけだった。

 最初は混乱していたが、何とか落ち着いたガブモン達は、ハジメ達と同じように自分達の状況を把握する。

 

「やっぱりハジメ達は近くにはいない」

「さっきの光。オルクス大迷宮での転移魔法陣のものと似ていた。きっと香織達は別の場所に飛ばされたんだ」

 

 テイルモンの推測にガブモン達は納得する。

 

「テイマー、いえ正確にはデジモンだけが分断されたとみるべきですね。パートナーデジモンではない私もいるのですから」

「それがこの大迷宮の仕組み?」

 

 シエルとルナモンも自分達に起きたことを考える。

 しばらく考えながら様子を見ていたガブモン達だったが、何も起こらないので先に進むことにした。

 進んだ先はやっぱりめちゃくちゃに通路が入り乱れた迷宮だった。

 どこに行けばいいのか、皆目見当がつかないが、ハジメ達と合流するために通路の1つへ向かうガブモン達。

 その先には──。

 

「ゴオォオオオオ!!!!!」

 

 巨大な岩の巨人の集団が待ち構えていた。

 両腕を振り上げながら、ガブモン達に襲い掛かって来る。

 その姿はガブモン達が知るあるデジモンにそっくりだった。

 

「ゴーレモンだ!?」

「デジモンの気配が無い。イミテーションか!」

 

 ゴーレモン。9割が岩石のデータでできた身体を持つ成熟期デジモンだ。

 それが10体。デジモンの気配が無いことから、オルクス大迷宮でも現れたデジモンの姿をした魔物、イミテーションデジモンだ。

 

「《ネコパンチ》!」

「《白詰一文字切(しろづめいちもんじぎ)り》」

 

 同じ成熟期のテイルモンとシエルは一体ずつ確実に倒していく。

 

「《ロップイヤーリップル》!」

「《プチファイアーフック》!」

「《コロナックル》!」

 

 成長期のガブモン達は連携で戦う。ルナモンが耳から発生させたシャボン玉の渦でゴーレモンたちの動きを止め、ガブモンとコロナモンが炎の拳で打ち倒す。

 しかし、世代差による力不足とゴーレモンの頑丈さのせいで一発では倒せない。

 

「シア! 援護を、あ」

「ハジメ達はいない。俺達の力で倒すしかない」

「お、おう。そうだったな」

 

 思わずシアに声をかけたコロナモンだが、テイマー達がここにいないことをガブモンに指摘されてしまう。

 しばらくしてゴーレモンたちを全て倒したガブモン達。改めて部屋を見渡すと壁に文字が書かれていた。

 

 〝いきなりの戦闘でビビった? ねえねえビビった? 〟

 〝ちゃんと後片付けをした方が良いよぉ? 〟

 〝ドッカンまであと5秒だ♪ 〟

 

 文字を見たガブモン達が、倒したゴーレモンの死体を見ると真っ赤に発光し始めていた。

 

「逃げろおおっ!!!」

 

 ガブモンが叫びまでもなく全員が部屋の外に続く通路に飛び込む。床に伏せて爆発に備える。

 

 しかし、何も起こらない。

 全員がいぶかしんでいると目の前の床が光り、文字が現れた。

 

 〝うっそ~~~。焦ってやんの。プークスクス〟

 

 冷静なテイルモンやシエルも含めて、全員が顔を俯かせると床の周りを取り囲み、

 

「《プチファイアーフック》!!!」

「《ネコパンチ》!!!」

「《ルナクロー》!!!」

「《コロナックル》!!!」

「《白詰一文字切(しろづめいちもんじぎ)り》」

 

 必殺技で粉々に粉砕した。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 デジモン達が迷宮でゴーレモンの集団と、メッセージに翻弄されている頃。

 ハジメ達も迷宮の厄介さに辟易としていた。

 魔法が使えないのに加え、大量の物理トラップが仕掛けられていたからだ。

 ハジメはゴーグルで罠を判別してみようとしたのだが、罠には魔法が使われておらず、物理的な仕掛けだった。赤外線センサーで探ってみるのだが、壁や床の材質が特殊なのか見えなかった。

 仕掛けられている罠も即死級の物ばかりで、全く油断できない。

 しかもその罠の傍にはデジモン達の所にもあった、こちらを嘲笑うようなうざいメッセージが書かれた壁や床があり、特にシアはその文面に毎回反応していた。

 魔法も使えず、デジモン達もいない迷宮を進むハジメ達。

 

 ガコン! 

 

 すると何かが動いたような音がした。迷宮を進む中で、罠が起動したときに聞いた音だった。警戒するハジメ達の目の前の壁が突然動き出し、新たな通路が現れた。

 

「……罠?」

「……罠、だよね?」

「今までの傾向から考えるとそうですわね」

「もう騙されないですぅ!!」

 

 女性陣が罠だと警戒を強める。ハジメも同意見だった。

 

「危ない橋を渡るわけにはいかない。警戒しながら離れるぞ」

 

 ハジメ達に知るすべはなかったが、この通路が現れたのはデジモン達がゴーレモンを倒したのと同じタイミングだった。

 これは全くの偶然だったのか……。

 

 それからもハジメ達は迷宮を進む。進んできた通路はハジメがマッピングをしている。

 様々な罠やうざいメッセージに翻弄されながらも、一行はある部屋に辿り着いた。

 長方形の奥行きがある大きな部屋だった。天井は見上げるほど高い。両サイドの壁には剣と楯を装備した無数の騎士の像と、巨大な翼をもった手のないドラゴン、所謂ワイバーンの像が並んでいた。騎士の像は2メートル、ワイバーンの像に至っては5メートルもの大きさだ。

 部屋の一番奥には大きな階段があり、その先には祭壇のような場所と奥の壁に荘厳な扉があった。祭壇の上には菱形の黄色い水晶のようなものが設置されている。

 

 ハジメは周囲を見渡しながら微妙に顔をしかめた。

 

「いかにもな扉だな。ミレディの住処に到着か? それなら万々歳なんだが……この周りの騎士甲冑に嫌な予感がするのは俺だけか?」

「……大丈夫、お約束は守られる」

「だよね。私この後の展開が読めたよ」

「それって襲われるってことですよね? 全然大丈夫じゃないですよ?」

「戦闘態勢は維持ですわね。まいりましょう」

 

 トレイシーの言葉に頷き、部屋の中を進む。そして、ユエの言った通り、お約束は守られた。

 

 ガコン! 

 

 部屋に響いた音に足を止めて背中合わせになって警戒する。

 ただそこに置いてあっただけの騎士達の兜の隙間から、目に当たる部分にギンッと赤い光が灯る。さらにワイバーン達の目にも同様の光が灯り、翼を大きく広げる。

 

「「「──!!」」」

「「「キュオオオオ」」」

 

 騎士達は無言で剣を構え、ワイバーン達は金属音のような咆哮を上げる。

 どう見ても戦闘態勢だった。

 動き出した騎士とワイバーン達はハジメ達を取り囲み始める。

 

「ミレディ・ライセンはお約束をわかっているな」

「地球からやってきたっていう8人目の解放者の入れ知恵じゃないかな?」

「多分」

 

 オルクス大迷宮を攻略した3人は余裕がありそうなやり取りを交わす。

 

「か、数が多くないですか?」

 

 シアは少々腰が引けている。騎士だけで50体。ワイバーンは10体もいる。

 メンバーの中では一番戦闘経験が少なく、こんなに多くの相手と戦ったことが無いのだ。不安に駆られるのも仕方ない。しかも相手は生物ではない。所謂ゴーレムのような相手と戦ったことはない。

 

「臆したのならば逃げ回りなさい。シア・ハウリア」

 

 そんなシアに厳しい声をかけたのはトレイシーだった。エグゼスを構える彼女の顔には、笑みが浮かんでいた。魔法が使えず、エグゼスの機能も封じられているとはいえ、戦闘狂(バトルジャンキー)の彼女にとっては戦えない程ではない。

 

「ですが、あなたはそれでいいのですか? デジモンと離れた途端臆病風に吹かれるなど、あなたの覚悟はその程度ですか?」

「んなっ!? な、なんですって!?」

 

 煽るようなトレイシーの言葉に眉を吊り上げるシア。

 特に亜人族を奴隷にしてきた帝国の皇女であるトレイシーに言われたことが、さらに彼女の怒りに火をつける。

 

「バカにしないでください!! 誰が逃げるもんですか!!」

 

 怒りの炎を闘志にくべて、ドリュッケンを構えるシア。さっきまでのへっぴり腰は無くなり、迫りくる敵を見据える。

 

「かかってこいやぁ!! ですぅ!!」

「……単純」

「し、ユエ。聞こえる」

 

 50体のゴーレム騎士と10体のゴーレムワイバーンとの闘いが始まった。

 




〇デジモン紹介
ゴーレモン
レベル:成熟期
タイプ:鉱物型
属性:ウイルス
超古代の呪いをデジタル解析している時に、発見された岩石・鉱物型デジモン。背中には“疫” “呪” “凶”と古代の禁断の呪文が彫られており、自ら出すガスから守るためのものらしい。体の約9割が岩石のデータでできており、手足を繋ぎ止めて生きている。命令されないと動かない感情の無いデジモン。
ガブモン達の前に現れたのは解放者達が生み出した偽物のゴーレモン。とはいえオルクス大迷宮のイミテーション達と同じく、成熟期デジモンレベルの強さを持っている。

まえがきにデジモンアドベンチャー風のあらすじを付けてみました。好評なら続けていきたいです。

まずは前半戦。原作と違い転移魔法で飛ばされたハジメ達はデジモン達と分断されてしまいました。果たして一体どうなるのかお楽しみに。

PS
全く関係のない話ですが、最近デジモンアドベンチャーを見直ししていて思ったことがあります。51話「闇の道化師ピエモン」のタイトルバックのピエモンはなんでウルトラマンのポーズをしているのでしょうか・・・。謎です。流石ピエモン。
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