ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る 作:竜羽
・前回のあらすじ
無数に出現するゴーレム達を切り抜けたハジメ達だったが、最初の部屋に戻されてしまった。デジモン達も同じように戻されてしまい、最初の攻略は失敗に終わった。
果たして、ライセン大迷宮を攻略することはできるのか……。
紆余曲折はあったが合流したハジメ達。悪辣な仕掛けと文章で怒りが爆発しそうになったが、浩介のあんまりな境遇に気勢を削がれた。
そのまま一度大迷宮を出て、休息をとることにした。
アークデッセイ号の中で食卓を囲みながら、風呂やシャワーで汚れを落とすと、肉体的にも精神的にも疲れ切っていたので、あっという間に眠りについた。
翌朝、装備を整えたハジメ達は再攻略に乗り出した。
「フッ。遂に古の守護者の迷宮へと赴くのだな。我が深淵とどちらが深いものか、見物だ」
サングラスをクイッと押し上げながら、笑みを漏らすのは浩介だ。
ハジメ達は昨日の攻略を踏まえて、ライセン大迷宮を攻略するための準備をいくつか整えてきた。
まずは昨日、あまりの影の薄さから取り残されてしまった浩介だ。
彼が転移に取り残されないようにするためには、存在感を上げる必要がある。存在感を上げる方法は1つ。深淵卿の力を開放することだ。
なので今回は初手から深淵卿モードだ。
しかも浩介が掛けているサングラスは、ただのサングラスではない。ハジメのゴーグル並みに機能を盛り込んだ、アーティファクトのサングラスだ。
探索と解析が主なハジメのゴーグルと違って、戦闘を補助する機能が多めに搭載されている。
この考えは的中した。
昨日の転送された通路の奥まで辿り着き、同じように転送されたハジメ達の元には、深淵卿がいたのだ。
デジモン達も別の迷宮に飛ばされ、傍にはいない。
だが、いなくなったわけではない。
「よし。行こう」
「承知した。斥候は任せたまえ」
昨日、取り残されたせいで力になれなかった深淵卿が、前に出る。迷宮内は薄暗いはずのに、サングラスがキラリと光ったように見えた。
そして数時間後。ハジメ達は再びシェイクされた部屋によってスタートの部屋に戻された。
■■■■■
ハジメ達がライセン大迷宮の攻略に挑み始めてから一週間ほど経過した。
アークデッセイ号でハジメ達は机を囲みながら、全員突っ伏していた。
この一週間、ライセン大迷宮に挑み続けたハジメ達は、迷宮に仕掛けられた多種多様のトラップやウザイ文章に翻弄され、ゴリゴリと精神力が削られた。特にひどいのが浩介だ。彼の特性である影の薄さゆえに、迷宮の中に入るために〝深淵卿〟を常に発動させている。そのせいで口調や態度が厨二全開になってしまい、精神をゴリゴリと削られた。今も彼だけは部屋の隅で三角座りをしている。
デジモン達も連戦に次ぐ連戦で疲弊しており、今は屋上の露天風呂でリフレッシュしている。
「あー。もうどうすればいいんですかぁ。全然先に進めないですぅ」
心底うんざりしたという声を出すシア。何故か彼女は罠に引っかかることが多い。落とし穴に落ちたり、粘々の粘液を浴びせられたりと散々な目に遭っている。その分、ミレディへの殺意を募らせているのも彼女で、今は落ち着いているが、たまにミレディへの殺意の衝動に目覚めてバーサクウサギになってしまう。
「大体の部屋は把握。組み変わるパターンもわかった。その結果……ゴールがないってことがわかった」
ハジメがノートパソコンを開き、この一週間で判明したことを告げる。
ライセン大迷宮の迷路は、あの文章の通り、確かに組み変わっていた。それでも何度も突入し、部屋の仕掛けや特徴を目印に道順を記録していったところ、規則性を発見。データの蓄積と解析が得意なハジメの手によって、だいぶ迷宮の仕組みがわかってきた。しかし、その結果判明したのは、どのような道順で迷宮を進んでも、必ず最初の部屋に戻されるという事だった。
ならばと、デジモン達の迷宮についても解析を行った。索敵能力の高いルナモンに、ハジメのスマホを持たせて部屋の様子を撮影してもらった。そうしてデータを集めて同じように解析したのだが、結果は同じ。彼らの飛ばされる迷宮もどの道順を通っても、最初の部屋に戻されてしまうのだった。
「もうどうなっているんですかこの大迷宮!! 攻略させる気が無いですよ!!」
「落ち着いてシア。バーサクウサギになりかけているよ」
「シア。これ飲んで。ニンジンジュース」
荒ぶるウサギになりかけていたシアを、香織とユエが落ち着かせる。
だが、シアの気持ちもわかる。あれだけ苦労して、凶悪な罠とウザイ文章に耐えて迷宮に挑んだのに、すべてが無駄だったのだから。
「シア・ハウリアのいう事も一理ありますわ。本当にこの迷宮は攻略させる気がありますの?」
「あるはずだ。じゃなきゃオルクス大迷宮だって攻略不可能のはずだ。……最後に究極体と戦わせるとかいう、おかしな難易度だったが」
シアよりはましだが、苛立ちを隠せないトレイシーに、ハジメが答える。
その手は休まずノートパソコンをいじっており、ライセン大迷宮のデータを解析し続けていた。
何かを見落としているはずだ。罠や組み変わる順路、デジモン達との分断という目立った仕掛けに隠された、重要な要素が。
「ふぃ~。風呂あがったよ」
「いい湯だった」
その時、屋上からガブモンとテイルモンが降りてきた。リラックスできたのだろう、その表情は穏やかだ。
「おう。出たか」
「シエル達ももう降りてくるから、次はハジメ達が入っていいよ」
「ああ。香織、ユエ。シアを連れて行ってくれ。風呂に入ればバーサクウサギから、湯煎ウサギになるはずだ」
「りょーかい。さあ、行こうかシア。温かいお風呂で湯煎されようね~」
「きっとふにゃふにゃの軟体ウサギになれる」
「なんですか湯煎ウサギとか軟体ウサギって!?」
シアの両腕を掴み、お風呂に引っ張っていく香織とユエ。トレイシーもその後ろについていく。ちょうどシエル達も出てきたので、入れ違いになって風呂に入っていった。彼女達が出てきたら、最後にハジメと浩介の男子組が入って今日は就寝だ。
だからその前に、何とか攻略の鍵を見つけられないかと、ハジメは解析を進める。
しかし、見つからない。
悩むハジメの横に、ガブモンがやって来る。
「どう? 何かわかった?」
「全然だ。何か隠された法則があるのか、条件が足らないのか……」
「うーん、ハジメでもわからないのか」
ハジメの言葉にガブモンも弱ったなと思いながら、解析するハジメの傍に寄り添う。
画面にはハジメ達が攻略している迷宮と、デジモン達が攻略している迷宮の映像が同時に流れている。
ハジメ達が罠を躱し、テイルモンがゴリモンのイミテーションを殴り飛ばすシーンが流れている。どちらも特には変わったところは……。
「うん? なあハジメ」
「どうしたガブモン?」
「ここ、少し戻してくれ。……なんか扉が開いている」
ガブモンが、ハジメ達が攻略している映像の一部を指さす。そこは迷宮の隅で、人一人がようやく通れるような穴が、音もなく開いていた。
この現象にハジメは見覚えがあった。
最初の攻略で、突然目の前に扉が開いたことがあった。あの時は怪しすぎて、罠だと思っていたから入らなかった。その後も似たようなことは起こらなかったので、すっかり忘れていた。
改めてこの扉が開いた瞬間を見ていたハジメは、横のデジモン達の映像にも目を向けて、ふと閃くものがあった。
「もしかして……」
猛烈な勢いでキーボードに指を走らせる。女性陣が風呂を出てからもハジメは手を休めることなく、動かし続けた。
翌日、ハジメ達は再び迷宮の攻略に臨んでいた。
その前にハジメは、昨日の夜に気が付いたことを全員に話し、その検証をすることになった。
そして、迷宮に突入した。
数時間後、攻略は失敗に終わりハジメ達は最初の部屋に戻された。
しかし、彼らの顔は晴れやかだった。
■■■■■
それから何度か攻略に挑み、十分な確証を得たハジメ達は、アークデッセイ号で作戦会議を開いていた。
「この迷宮は、2つの迷宮で連動していたんだ」
最初にハジメが断言しながら、全員に見えるように2つの画像をパソコンの画面に映して、説明を始める。
1つはハジメ達が攻略している画像。もう1つはデジモン達が攻略している画像だ。
「俺達は見えている迷宮しか攻略してこなかった。でもそれだけじゃダメだった」
映像ではテイルモンがイミテーションのゴリモンを倒した瞬間、ハジメ達の迷宮に小さな入り口が現れた。罠かと思っていたが、これこそが隠された通路だったのだ。
現に今日の攻略でハジメ達は、新たに開いた扉に飛び込んでみたところ、新しい部屋へと繋がっていたのだ。
「今日分かったことと、これまでわかったことを上げてみる」
1.人とデジモンは入った瞬間に別々の迷宮に分断される。念話やデジヴァイスでそれぞれの迷宮から通信を行うことは不可能。
2.迷宮の通路は一定時間経つと自動で組み変わる。
3.人が入った方の迷宮は通路には多くの罠がある。
4.デジモン達の迷宮にはイミテーションのデジモンが現れる。
5.デジモンを倒すと人の迷宮のどこかの通路への道が開かれる。ただし開く通路は倒されたデジモンによって異なる。
「攻略の仕方はわかったし、集める情報が何かはわかった。だが、問題はまだある」
「ん。お互いの迷宮の様子がわからないこと」
この迷宮を攻略するには正しい通路を通るために必要なデジモンを、通路が組み変わる前に倒していく必要がある。
しかしユエの言うとおり、人とデジモンは分断されており、意志疎通が出来ないのでタイミングを合わせることが困難なのだ。
なんともいやらしい仕様の迷宮だ。
「何とか連絡を取る手段はないのですか?」
「既存の手段では無理だ。多分、あの2つの迷宮は神代魔法で分断されている」
「オルクス大迷宮も、一度下の階層に降りたら戻れなかったしね」
オルクス大迷宮の攻略者2人が断言する。解放者達が作り上げた大迷宮なのだ、簡単にはいかないという事だ。
攻略するには何か普通じゃない手段が必要なのだ。
「迷宮の壁を超える通信手段……」
他の面々も頭を悩ませる。そんな中で、香織だけは何かに引っかかっていた。
オルクス大迷宮の話をしていたから、彼女はその時のことを思い出していた。
あの時、オルクス大迷宮にいたハジメが生きていることを、どうやって知ったんだっけ。
(あの時、天之河君達に囲まれて、ガブモンが斬られそうになって……)
「あっ!?」
「どうした?香織」
突然声を上げた香織にテイルモンが声をかける。
「もしかしたら何とかなるかもしれない!」
香織はみんなに前に出ると自分の考えを話す。
「オルクス大迷宮の中にいるハジメ君が、生きていることを知ることが出来たのは、ガブモンがワーガルルモンに進化したからだった。一度入ると脱出不可能な大迷宮だけど、それを超えて進化の力は届いた。だからもしかしたらこの迷宮でも進化の力や、それに関連した力なら繋がるかもしれない」
「デジモンの進化。パートナーとの絆か!」
香織の言葉にハジメも思い当たるものがあった。例えデジヴァイスの映像が届かなくても、パートナーとの契約が切れたわけじゃない。映像じゃなくても繋がっているものがある。
ハジメ達はライセン大迷宮の攻略に大きく前進した。
今回は今作オリジナルの攻略のギミックについてでした。原作通りでは解析能力に優れたハジメ君にちゃっちゃと解析されますからね。
さて、次回は一気にボス部屋まで行こうと思います。お楽しみに。
PS
シアのあだ名のバーサクウサギはあれですよ、SAOのバーサクヒーラーです(笑)