ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る   作:竜羽

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今回は遅れました。しかも内容もかなり賛否両論になるんじゃないかなって思う内容です。でも、作者はハジメ君にはこうしてほしいと思ったのでこの方向でいきます。

・前回のあらすじ
ハジメ達が戦う一方、デジモン達も戦いを繰り広げていた。立ちふさがる巨大ミレディ・ゴーレムと用意されたフィールドに手も足も出ないデジモン達。デジモンの力に圧倒される人間達と、人間の悪辣な策略に嵌められるデジモン達。果たして突破口は見つかるのか……。





23話 甘い覚悟

 ラヴォガリータモンとミレディは、途轍もない強敵だった。

 完全体デジモンであるラヴォガリータモンはもちろんだが、共に戦うミレディも的確なサポートでハジメ達を苦しめてくる。

 唯一ラヴォガリータモンに対抗できるレーベモンをハジメ達が援護しようとすると、ミレディが最上級魔法で妨害、攻撃してくる。

 本来ならばライセン大迷宮の特性で魔法は無効化されるはずなのだが、ミレディは普通に最上級魔法をユエのように連発してくる。

 ならば先にミレディを倒そうと、ユエが愛銃を使って空中に浮遊しているミレディを狙撃しようとする。

 

「……ん!」

「おっと♪」

 

 放たれた銃弾はミレディがかざした小さな手の前で制止する。次の瞬間には銃弾に込められていた火魔法が炸裂する。だが、爆炎はミレディの前でバリアのようなものに遮られてしまう。その不可視の障壁は何らかの魔法のようだが、魔法のスペシャリストであるユエにも、さっぱりわからなかった。

 さらにミレディはくるりと手を回すと、ユエの全身を猛烈な悪寒が駆け巡った。反射的にその場を離れた次の瞬間、さっきまでいた場所が円状に陥没した。もしも離れなかったらユエの身体も潰されていたかもしれない。〝自動再生〟の技能があるとはいえ、魔力が霧散する環境下で、潰れた身体が再生するのかわからない。なによりそんな大きな隙を晒せば、より大きな攻撃を受けるだろう。

 ユエを攻撃していたミレディに今度はハジメのミサイルが放たれる。やはり掲げた手の前で静止するミサイルだが、ミサイルは六発も放っていた。しかも上下左右前後とミレディに逃げ場はない。

 

「甘いよ♪」

 

 しかし、ミサイルの前の空間が突如爆発。ミサイルも誘爆してしまう。

 ラヴォガリータモンが遠隔爆破でミレディを護ったのだ。ミレディが傷つかない絶妙な威力で、ミサイルの誘爆の爆風も相殺している。

 ラヴォガリータモンのミレディへの気遣いが伺えた。

 ミレディ達のコンビネーションに、ハジメ達はどんどん追い詰められていく。

 

「撃て! ラヴォガリータモン!!」

「《メルトダウナー》!!」

 

 ミレディの指示に従いラヴォガリータモンが大きく口を開け、そこからレーザー状の熱線が放たれた。狙いはレーベモンだ。

 

「ぬううっ」

 

 贖罪の盾を構えて受け止めるレーベモンだが、あまりの威力と熱量に堪えきれずに吹き飛ばされる。

 それだけでなく、ラヴォガリータモンは口を動かし、熱線で薙ぎ払いを行う。

 

「まずい!」

 

 熱線が向かう先には、トレイシーと香織、そして治療中のシア。ラヴォガリータモンの熱線の威力は彼女達に耐えられるものではない。避けようにも治療中のシアをすぐに動かすことはできない。絶体絶命の危機にハジメは奥の手を切る。

 

「〝ハイブリッド化〟!!」

 

 ハジメの身体から魔力が迸る。大迷宮の特性で空気中に霧散していくが、それ以上の勢いで魔力が溢れ、次第に形を作っていく。

 狼を模した漆黒の外装が、ハジメの全身を覆っていく。かつてオルクス大迷宮での地獄の苦しみから生まれ、パートナーと大切な少女を傷つけてしまった力を、再び身に纏う。

 

『モード・ブラックメタルガルルモン!!』

 

 漆黒の機械狼を模した鎧を生み出したハジメは、香織達の前に飛び出し、両手を前に突き出して、熱線を受け止める。

 

「ハジメ君!?」

「これが話に聞いたナグモハジメの力……」

 

 技能〝ハイブリッド化〟により、魂に混ざっていたブラックメタルガルルモンのデータを再現された鎧は、ワーガルルモンと殴り合いが出来るほどの強度を持っている。ラヴォガリータモンの《メルトダウナー》を受け止めることもできた。それでも完全に受け止めきれず、ジリジリと押されていく。

 

『ぐっ、《コキュートスブレス》!!』

 

 鎧の頭部の口が開き、そこから猛烈な冷凍を吐き出す。熱線とぶつかり、その威力を減衰させながらも、ハジメは香織達を守るために受け止め続ける。

 もちろん〝ハイブリッド化〟を使っているとはいえ、レーベモンのようにデジモンになったわけではない。さらに魔力が霧散してしまうのでこのままでは競り負けてしまう。

 だが、今この場には頼もしい仲間がいる。助け合うことが出来るのは、ミレディ達だけではないのだ。

 

「我を忘れてもらっては困る!! 《エーヴィッヒ・シュラーフ》!!」

 

 先ほど熱線で吹き飛ばされたレーベモンが、「断罪の槍」を突き出しながらラヴォガリータモンの胴体に突撃する。

 

「忘れていないよ」

 

 ミレディが両手を掲げて、先ほどの障壁を展開する。だが、レーベモンの攻撃力には耐えきれずに、すぐに破れてしまう。止められたのは一瞬だけ。しかし、それだけあればラヴォガリータモンは行動を起こせた。

 すぐに吐き出していた熱線を止めると、体を捻ってレーベモンの攻撃を躱す。

 

「ぬう」

「お返しだよん♪ 〝黒渦〟」

 

 再びミレディが両手をかざす。するとレーベモンが何かに弾かれたように真上に吹き飛んだ。

 

「ぬお!?」

「《ワイルドブラスト》!!」

 

 同時にラヴォガリータモンが大きく羽ばたき、粉塵をレーベモンに向かって大量に散布する。そして大爆発が起き、レーベモンが飲み込まれた。

 

「うおおおおおッ!!!」

 

 レーベモンへ攻撃した隙をついて、背中にビーム状のウイングを展開したハジメがラヴォガリータモンに突撃する。

 

「何度やっても同じだよ。学習しないの? あ、お馬鹿さんだからかあ♪」

「同じかどうか、確かめてみろ!!」

 

 ハジメは拳を突き出し、ミレディに殴りかかる。当然、さっきのように不可視の障壁に阻まれる。それに構わず、ハジメはハイブリッド化したことであふれ出た魔力を使ってブラックメタルガルルモンの武装を〝電子錬成〟で生み出す。左腕に6門の砲身が1つになった凶悪なフォルムのガトリングレールガン《ブラックストーム》が現れ、すかさず引き金を引く。紫電を迸らせながら、雷速の弾丸を吐き出される。

 

「ぐぐぐ……や、やるね。でもミレディさんにはラヴォガリータモンが」

「まだだ!!」

 

 さらに武装を錬成するハジメ。ミサイルポッドが両肩と両脚に装着され、右腕にはビームライフルを展開する。

 ブラックストームはミレディに向けたまま、ビームライフルとミサイルポッドの照準を、後ろから迫って来ていたラヴォガリータモンに向ける。ミレディを助けるためにハジメに噛みつこうと大きく口を開けているそこに間髪入れずに発射されたビームとミサイルは、真っ直ぐラヴォガリータモンに向かっていき、命中する。だが、ラヴォガリータモンを抑え込むほどではない。ハジメの攻撃などものともせずに突き進もうとするが、それでど少し速度が落ちた。

 おかげでラヴォガリータモンの牙が届く前にミレディの障壁が限界に達し消失する。同時にブラックストームも弾切れになる。このチャンスを逃さないと、ハジメはブラックストームを捨てて、ミレディを左手で斬り裂こうとする。

 ラヴォガリータモンよりも、僅かにハジメの攻撃が届くのが早い。

 

「あ、やば」

 

 ミレディも間に合わないと察するが何もできない。見ていた香織達もこれで決着がつくと思った。

 

 だがその時、ミレディも香織達も予想外のことが起きた。

 

 ピタリ、とハジメの手がミレディの顔の手前で静止したのだ。

 ミレディやラヴォガリータモンが何かしたわけではない。ハジメが自分の手を止めたのだ。そのことにハジメ自身が信じられずに目を見開いた。

 

「は……がっ!?」

 

 その隙にラヴォガリータモンがハジメに噛みつき、ミレディから引き離した。熱線を受け止めた鎧だが、ミレディを傷つけようとした怒りに燃えるラヴォガリータモンの力により破壊されてしまう。鋭い牙がハジメの肉体に食い込む。さらにラヴォガリータモンが放つ高温に内側から燃やされる。

 

「が、あああああああああああああ!?!?」

 

 シアと同じ、それ以上の苦しみに悲鳴を上げるハジメ。ラヴォガリータモンは首を振るい、ハジメを放り投げた。

 

「ハジメ!!」

 

 レーベモンが飛び出し受け止め、急いで香織の元に連れていく。

 幸いミレディ達も体勢を立て直すために後退しているので、すぐに辿り着けた。

 

「ハ、ハジメ君!!!」

 

 シアの隣にハジメを下ろす。同時に鎧が霧散し、ハジメの肉体が顕わになる。

 幸いにもハイブリッド化している最中は、肉体の強度と治癒力も上がる。おかげで深い傷にはなっていないが、魔力を大量に消費しすぎた。香織は残った傷を治しながら、魔力も分け与えようとする。

 しかし、ハジメに触れて魔法を使おうとした香織の身体に痛みが走る。

 

「あ、あぐ!?」

 

 足と背中に何か硬いものが当たったかのような感覚がして、その箇所が腫れ上がる。

 

「エ、エンジェウーモン? 一体、何が」

 

 それがエンジェウーモンのダメージが反映されたのだとわかった香織は、エンジェウーモンとのシンクロに集中する。迷宮攻略中、ずっと2つのグループのやり取りを担っていた彼女達は、集中すればお互いの記憶をある程度共有することが出来るようになった。それを使い、香織はデジモン達の状況も把握する。

 彼らも巨大ミレディ・ゴーレムとの闘いで、手も足も出ず、最強戦力のエンジェウーモンも傷を負ってしまっていたのだ。

 

「それでも……!!」

 

 反映されたダメージに顔を歪めながらも、ハジメの治療を行う香織。

 オルクス大迷宮でハジメから流れ込んできた魔力に傷つきながらも、治癒をつづけたのだ。今更この程度の痛みで治療の手を鈍らせることはない。ハジメの傷口に手を置き、シアと同時進行で治癒を行う。

 その間にレーベモン、ユエ、トレイシーが三人を守るために武器を構える。

 一方のミレディ達も、体勢を立て直してレーベモン達を見据える。

 互いに様子見に入ったことで生まれた膠着状態。

 唐突にラヴォガリータモンの背中に降り立ったミレディが話しかけてきた。

 

「さっきのはどういうつもりなんだい? 攻撃を止めるなんてさ」

 

 冷たさを感じさせる声のミレディ。ハジメが攻撃を止めたおかげで助かったのだが、手を抜かれたようで彼女はプライドを傷つけられたと思ったのだ。

 その問いにレーベモンたちは答えられない。手を止めてしまった張本人のハジメも、香織の治癒魔法を受けながら、理由が分からず困惑を隠せていない。

 

 だから、その答えを予測できる彼女が答えた。

 

「多分だけど、ハジメ君は──ミレディさんが好きなんだよ」

 

 みんなに守られながら治癒魔法をかけていた香織が、何やらとんでもないことを言い放った。

 

「「「はぁ!?」」」

 

 レーベモンとトレイシー、そしてミレディが驚愕の声を上げる。言われたハジメも香織の言葉が衝撃過ぎて固まっているだけだが、残るユエは香織の言葉に「ああ。確かに」という納得顔をしていた。

 レーベモンがミレディ達への警戒を解かずに、どういうことなのか問いかける。

 

「どういう事なんだそれは?」

「だってミレディさんとラヴォガリータモン、本当に信頼し合っているテイマーとパートナーデジモンだった」

「……ハジメの夢は人間とデジモンが一緒に生きていける世界。だから、強い絆で結ばれたテイマーとデジモンが大好き」

「しかも地球じゃないトータスで、それだけの絆を結んでいるからね。私もデジモンが大好きだから、その気持ちわかるんだ。まるで」

 

 香織とユエはハジメの横に目を向ける。

 

「「シアみたいだから」」

 

 2人の言うとおり、ミレディの在り方はどこかシアとコロナモンに似ていた。彼女達と出会った時、ハジメは彼女達に1人旅でも苦労しないように、食事と便利な野営道具を与えようとした。これはかなり破格なことだった。何せ生成魔法を習得したことで、アーティファクトを生み出せるようになったハジメが作った野営道具だ。つまりそれはアーティファクトを、国の宝物庫に保管されているような国宝級の道具を、無償で与えるという事なのだ。理由なしに行うには、大盤振る舞い過ぎた。つまり、ハジメはシアにそれほどの好意を抱いていたという事なのだ。そのおかしさに香織とユエは後から気が付いたが、理由もなんとなく察していたので黙っていた。言えばシアが、ハジメに惚れられたと勘違いすると思ったからだ。

 

もっとも、実は少し意識を取り戻していたシアに聞かれているのだが。

 

 2人の説明にハジメは納得した。確かに自分はミレディに好意を抱いていた。デジモンの存在を受け入れ、信頼し、共に在り続ける人間。ハジメはそんな人間を見ると、無条件で嬉しくなるのだ。

 それは抱いた夢の原点。ただデジモンと共に生きていきたいという、純粋な思いを共有できるからだ。

 デジタルワールドとの次元の壁が厚くなったことで、新たなデジモンテイマーが生まれなかったから、その思いも小さくなっていた。しかし、元々好意を持っていた香織がデジモンテイマーになったことと、ユエとシアという異世界人でありながら、デジモンテイマーになった少女達と出会ったことで、その思いが大きくなっていたのだ。

 だから、ミレディへの攻撃の手を止めてしまったのだ。

 彼女を倒してしまうことが自分の思い、ひいては夢を傷つけることになると無意識で思ってしまったから。

 

「なんですかそれは。そんな甘いことで大迷宮を突破できると思っているんですの?」

「トレイシーさん」

「わたくしたちが迷宮を攻略するには、ミレディ・ライセンを倒すしかないのですわ。なのに、その千載一遇の好機を、そんな理由で逃すなんて。アビスゲート卿の友というからには、立派な覚悟を持っていると思っていたのですが、見込み違いでしたの?」

 

 香織の話を聞いていたトレイシーが苦言を呈する。

 彼女の言葉も最もだ。この大迷宮を突破するためには、ミレディ達を倒すしかない。いくら好意を抱いたからと言って、攻撃の手を緩めるのは甘いとしか言いようがない。

 そんなことでは迷宮を突破して神代魔法を得ることも、狂った神からの妨害を跳ねのけることも、元の世界に戻って夢を叶えることも出来ない。

 

「……ぐッ」

 

 トレイシーの言葉に自分の覚悟の甘さを痛感し歯を食いしばるハジメ。そんなハジメを香織は優しく撫でた。その心地良さに彼女を見るハジメ。

 

「確かに甘いのかもしれない。でもそんなハジメ君だからこそ、優しい夢を真剣に追いかけられるんだと思います。夢を追いかけるその姿に、私は惹かれました。そして、デジモンと一緒に生きたいと、デジモンテイマーになりたいと思いました」

 

 真摯に紡がれる香織の、愛に生きる少女の思いの歴史。それがあるからこそ、香織はハジメがあの時攻撃を止めてよかったと思った。

 

「もしもあそこでハジメ君がミレディさんを倒していたら、いつか夢を叶えた未来でハジメ君は後悔していたかもしれません。ミレディさんみたいな人こそ、ハジメ君の夢見る未来にいて欲しいから。私はハジメ君が自分で夢を汚さなかったことが、嬉しいです」

「……それは結構です。ですがそんな甘い、手を汚さない考えでは、この先どころか今この場も乗り越えられませんわ」

「その通りですし、その時が来たら一緒に手を汚して支えます。きっと他の場所で戦っているパートナー、エンジェウーモンも同じ覚悟です。繋がっているからわかります」

 

(香織さん……)

 

 ハジメは香織が自分以上に、自分の夢の事を考えていてくれたことに嬉しさを覚えた。

 だからこそ頭をフル回転させて、技能の〝並列思考〟も総動員して現状を打破する方法を考える。ハイブリッド化による速攻攻撃は、ミレディも警戒するだろうからもう使えない。何とか他の手段をと考えるが、パートナーがいない現状では取れる手段が少ない。

 

(ガブモンが来てくれたら何とかなるけれど、香織さんの言葉通りならあっちも戦っている。早く何とかしないと、あっちも手遅れになる。エンジェウーモンと繋がっている香織がダメージを受けたってことは、それほどの強敵がいるってことだ。……ん? 繋がっている? 香織さんとエンジェウーモンの繋がりは消えていない。繋がっているという事は、繋げることも出来るんじゃないか?)

 

 そこまで考えたハジメはあることに気が付いた。よくよく考えれば、こんな簡単なことになんで気が付かなかったのか。かつて自分がやったことを、何でやろうとしなかったのか。

 

「香織さん。もういいよ」

「ハジメ君」

 

 香織の手をどけてハジメは起き上がる。

 

「トレイシーさん。確かに僕の覚悟は甘いのかもしれない。しかもその甘さに気が付かなかった愚か者だ。でも……」

 

 彼本来の丁寧で穏やかな口調でトレイシーへ語り掛けながら、ハジメは彼女とレーベモンの前に出る。そして、ミレディとラヴォガリータモンを見上げながら言葉を続ける。

 

「馬鹿馬鹿しい、荒唐無稽な夢を叶えようとしているんだ。愚かじゃなきゃ何だって言うんだ。僕はデジモンが好きだ。デジモンテイマーが好きだ。だから、ミレディさんみたいな人にこそ生きていてほしい。殺したくなんてない。その思いを捨てたくない」

 

 香織の言葉をなぞり肯定するハジメ。他者ではなく本人から言われたことは紛れもない事実だ。だが、そのハジメの堂々たる様子に、甘いと一笑に付すことを躊躇われた。

 代わりにミレディが口を開く。

 

「……おいおい。ミレディちゃんはゴーレムなんだぜ。本人じゃないかもしれない。このラヴォガリータモンだってミレディ・ライセンのパートナーデジモンなんかじゃないかもしれない。なのに迷宮を突破するために必要な私達を倒さないっていうのかい? 甘いを通り越して、支離滅裂だと思うよ?」

「じゃあそれを確かめるために、あんたを動けないようにぶちのめして本当のことを調べる」

 

 さっきまで丁寧の口調から暴力的な口調になるハジメ。全身から紫電が迸り両手両足に胸に鎧が再構成される。全身鎧にならないのは、まだダメージが残っているからだ。

 

「ははは。過激だね。でもそんな悠長なことしていていいのかな? 教えてあげるけれどね、君達のデジモンも戦っているんだよ。しかも成長期や成熟期じゃ絶対に勝てない相手とね。完全体の子が一人いるみたいだけれど、その子も勝てないさ」

「それはどうかな?」

 

 得意げなミレディにハジメは不敵に笑うと、懐から一枚のカードとデジヴァイスを取り出した。

 

「……それでどうするんだい?」

「パートナーを、ガブモンを進化させる」

 

 ミレディの問いかけに、ハジメは何でもない風に答える。

 

「攻略の検証では、それは出来なかったのでは?」

 

 疑問の声を上げたのは後ろにいたトレイシーだ。ハジメの言ったことは迷宮の攻略開始時に試していた。だが結果は失敗だった。

 

「そう思っていた。いや、思わされていたのかもしれない」

「どういうことです?」

「デジモンの進化はカードを使えばいいっていうわけじゃない。人とデジモンの思いが大きなファクターを占めている。そのことを何で忘れていたんだろうか」

 

 そもそも究極体への進化はカードを必要とせず、テイマーとパートナーデジモンの心を1つにシンクロさせることで、肉体を1つに融合させている。その前段階の進化でも、カードを使わなくても進化出来ることがある。だからカードは切っ掛けであり、大切なのはパートナーデジモンへの思いだとハジメは考えていたはずだ。なのに一度の検証で失敗したからと、できないと思っていたなんて。少し大迷宮の隠された罠を疑いながら、ハジメはガブモンへの思いを強くする。

 

「たとえどんな壁があろうと、例え世界が違っていても、俺とガブモンの心と絆は繋がっている。思いは──届く!!」

 

 ハジメが断言した瞬間、手に持っていたカードが青く光り輝き、ブルーカードに変わった。

 全員が驚く中、香織とユエが笑みを浮かべる。

 カードが変わったことを見届けたハジメは、いつものようにデジヴァイスにカードを通す。

 

「カードスラッシュ!! マトリックスゼヴォリューション!!!」

 

 デジヴァイスから眩い光が放たれる。それをハジメが高く掲げると、光は迷宮の壁を、隔たりを超えて飛んで行った。

 その先には傷だらけになりながらも、諦めず立ち上がり続けるガブモンがいた。

 ガブモンは飛んできた光を見て、「待っていた」と言わんばかりに笑みを浮かべて、受け入れた。

 

「ガブモンX進化!! ワーガルルモン!!!」

 




〇デジモン紹介
ラヴォガリータモン
世代:完全体
タイプ:岩竜型
重たい身体も軽々と飛ばせる大きな翼に、鍛えられた脚力で仁王立ちもできる竜型デジモン。デジタルワールド内にある活火山のマグマ層に潜んでいるとされ、一説ではヴォルクドラモンの近くに生息しているのではといわれている。戦闘スタイルは粉塵を散らして敵を覆い、発火ポイントを自在に操って爆破する。敵も動けば発火に繋がるため粉塵に覆われたら最後、敵はいつ粉塵が爆破するかの恐怖に陥る。
必殺技は、口からレーザー状の熱線を放つ『メルダイナー』と、粉塵を羽ばたかせ拡散して大爆発させる『ワイルドブラスト』。


原作の魔王様よりも、おそらく他のありふれ二次創作よりも甘いハジメ君。でもそれを諦めたら、抱いた夢を叶えた時に後悔すると思いますので、ミレディを問答無用で破壊することを止めました。そしてそのことを理解していた香織とユエという理解者の存在で、この戦いではそれを貫くことにしました。
ハジメ達はこの攻略で改めてこの世界で生きていく覚悟を決める予定ですので、この賞の終わりまで見守っていてください。
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