ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る   作:竜羽

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これにて二章は終了です。あとがきの後に、三章へと入ります。

・前回のあらすじ
ライセン大迷宮を攻略したハジメ達。肉体をコールドスリープさせ、遥かな時代を超えたミレディ・ライセンと邂逅を果たす。神代魔法を授けられた後、彼女と言葉を交わす。彼女から解放者達の真実の一端と、これからの覚悟を諭される。絆の再確認と思わぬ出会いがあったライセン大迷宮を後にしたハジメ達は、ハイリヒ王国の王都で起きた大事件を聞くのだった。



エピローグ

 ハジメ達がライセン大迷宮の攻略に挑んでいた頃。

 ハイリヒ王国の王都に危機が迫っていた。

 突然王都に繋がる街道に巨大な魔物が現れ、人や馬車を踏みつぶしながら驀進して来ていた。

 もしもハジメ達がその魔物を見れば、魔物ではなくデジモンであると気が付いただろう。

 青黒い体表だが、肉食恐竜のようなフォルムに、黒い縞模様、骸骨を被ったような角の生えた頭部は、デジモンの代名詞として知られるグレイモンだった。

 通常のグレイモンはオレンジ色だが、青黒いのはウィルス種だからだ。

 凶暴性が増しており、とても危険なデジモンになっている。もしも王都に入ってしまえば、甚大な被害が出てしまうだろう

 そこに──

 

「これ以上、先には進ませない!!!」

 

 聖鎧を身に纏い、聖剣を携えた勇者、天之河光輝が現れた。傍には親友の龍太郎を始めとした勇者パーティーの面々に、永山重吾がリーダーを務めるパーティー。メルド団長が率いる騎士団もいる。オルクス大迷宮での訓練の定時報告に王都に戻っていたのだ。

 

「あれは、グレイモン。魔物じゃなくてデジモンだよ。光輝君」

「何だって!? デジモン!?」

 

 恵里の言葉に顔を険しくする光輝。今の彼にとってデジモンは、魔物や魔人族以上に人間の敵になると思っている存在だ。

 だからより強く敵意を滾らせて、グレイモンに突貫する。

 それに他の面々も続く。

 

 戦いは勇者達の優勢で進んだ。いくらグレイモンが優れた戦闘力を持つとはいえ、成熟期デジモンだ。ステータスを鍛えた勇者に、神の使徒達。ハイリヒ王国の精鋭である騎士団もいるのだ。徐々に押され始めていく。

 

 その戦いを暗闇の中で見つめる黒いローブの少年がいた。

 

「クククッ、そうだそうだ。もっと追い詰めろ」

 

 姿をくらませていた檜山だ。その右腕には無数の赤目がぎょろぎょろと蠢いている。

 彼の右腕となっているアイズモンが、分身であるアイズモンスキャッタモードを通して、見た光景を檜山に伝えてくる。それはグレイモンと戦う勇者たちの様子だ。

 今回のグレイモンによる王都への襲撃は、檜山が仕掛けたことだった。行方をくらませて潜伏していた檜山は、王国と勇者である光輝への復讐を企て、実行に移したのだ。

 その証拠に、グレイモンの右腕には黒い螺旋状の装具がついていた。

 この装具の名前は『イービルスパイラル』。

 テイルモンが身に着けているホーリーリングを逆転させた、暗黒の装具『イービルリング』の効力を高めたものだ。これを着けられたデジモンは暗黒の力に支配され、意のままに操られてしまう。今のグレイモンは檜山の支配下になってしまったのだ。

 

 事態は彼の思惑通りに進んでいく。

 無数の傷を負い、血を流しているグレイモンが膝をつく。光輝達も多少の傷は負っているが、全員無事だ。

 グレイモンに止めを刺そうと、光輝は聖剣を振り上げて魔力を高める。そして、最強魔法を放つ。

 

「〝神威〟!!!」

 

 極太の光線が放たれ、グレイモンに直撃する。

 

「グガアアアアアアアアッッ!!??」

 

 グレイモンの断末魔が王都に響く。

 光輝も、パーティーメンバーも、騎士団も光輝の勝利で終わったと思った。

 勇者の雄姿を一目見ようと、王都の門に集まった住人が歓声を上げる。教会の司祭や神殿騎士が声高々に、勇者と神の使徒、そして彼らを遣わしたエヒト神を称える。

 光輝も笑みを浮かべていた。

 あのワーガルルモンとの闘いの敗北から、必死に自分を追い込んで鍛えた力が、同じデジモンを圧倒している。これならば、ワーガルルモンにも勝てると確信した。

 実際にはワーガルルモンは完全体なので、成熟期のグレイモンより圧倒的に強いのだが、光輝は知らない。

 だから楽観視し、決着は着いたと思ってしまった。

 

 パーティーから少し離れた所にいた中村恵里だけは、警戒を怠っていなかった。

 

「始まるね。暗黒の進化が」

 

 小さく呟かれた言葉と同時に、光の中から黒色の光が立ち上った。

 

 ──X EVOLUTION──

 

 〝神威〟の光を吹き飛ばし、グレイモンが進化を始める。

 生にしがみついたグレイモンの強烈な死への恐怖が、檜山がグレイモンに埋め込んでいたX抗体のプログラムを覚醒させ、暗黒のX進化(ゼヴォリューション)を引き起こしてしまった。

 

 黒い光の中からより強大な姿になったグレイモンが現れた。

 体の半分以上が機械化されてしまったサイボーグ型の最強デジモン。

 

 名前は──メタルグレイモン。

 

「な、なんなんだ? こいつは……」

 

 サイボーグなんて見たことのないメルド団長が、恐怖に声を震わせる。あまりにも強すぎる威圧感に、全員が気圧されて一歩下がる。

 

 しかもこのメタルグレイモンは、ハジメのワーガルルモンと同じくX抗体を持っている。その影響で各種の武装がアップデートされ、特に左腕のトライデントアームは『アルタラウス』という強化武装になっている。突撃武装形態のブリッツモードと砲撃武装形態のブラストモードに切り替えることが出来る。

 最大出力で音速を超えるエナジーブースターも装備しており、飛行能力も格段に上昇した、あらゆる状況で途轍もない戦闘能力を発揮できるようになってしまった。

 

 突然の事態に立ち尽くす光輝達を一瞥すると、メタルグレイモンはエナジーブースターを点火し、大空に舞い上がる。

 あまりに速い動きに、光輝達は何もできない。

 メタルグレイモンはアルタラウスをブリッツモードに変形させると、エナジーブースターの出力を上げて急降下してきた。

 

「伏せろぉ!!!」

 

 危険を感じたメルド団長の怒号に、咄嗟に光輝達は地面にうつ伏せになる。

 次の瞬間、最高速度にまで加速したメタルグレイモンが、光輝達の頭上を通り過ぎていった。あまりのスピードに衝撃波が生まれる。吹き飛ばされそうになるのを堪えていた光輝達が、顔を上げて振り返ると──凄惨な光景が広がっていた。

 

「な、何だよこれ……」

 

 いつも冷静に物事を見る永山重吾が、声を震わせる。

 王都の門が消滅し、そのまま地面が抉れて、王都を一本の道が貫いていた。まるで巨大な砲弾が通っていったようだ。恐ろしいことに王城までえぐり取られている。

 ブリッツモードにしたアルタラウスを構え、最高速度で突撃するメタルグレイモンの必殺技、《エネルギアブリッツ》だ。

 王都には敵からの侵攻を防ぐために、三重の障壁がアーティファクトで張られていた。それがいとも簡単に破られてしまった。

 

 当然、さっきまで光輝達の活躍を見に来ていた人々を始めとする、王都の住人達も巻き込まれた。所々には彼らの遺留物が散乱している。

 

 あまりの事態に恐怖し、戦慄する光輝達の目の前に、メタルグレイモンが舞い戻って来る。

 メタルグレイモンは光輝達に背を向けると、アルタラウスをブリッツモードからブラストモードに切り替える。そのまま王都に入っていった。

 メタルグレイモンが王都に入ったことで、一同の緊張が解ける。

 

「ま、待て!!!」

「ッ早まるなコウキ!!」

 

 真っ先に立ち上がった光輝がメタルグレイモンの後を追う。メルドが制止するが、止まらない。

 門があった場所を潜ると、王都は地獄絵図となっていた。

 メタルグレイモンがアルタラウスからエネルギー弾を放ちながら、王都を蹂躙していた。人も建物も一瞬で消し去られてしまう。

 その様子を見た光輝は、憤怒に駆られて聖剣を掲げながら、メタルグレイモンに突撃した。

 

「やめろおおおおお!!! 〝天翔閃〟!!!」

 

 聖剣から光の斬撃が放たれ、メタルグレイモンに直撃する。グレイモンだったらダメージを受けただろうが、サイボーグ化したメタルグレイモンは防御力も格段に上昇している。光輝の攻撃は傷1つ与えられない。

 

「だったら!! 〝限界突破〟!!!」

 

 勇者の奥の手である〝限界突破〟を使う。ステータスが三倍に上昇する。

 

「〝神威〟!!!」

 

 再び放たれる勇者必殺の魔法。極太の極光エネルギーが聖剣から発射され、メタルグレイモンに向かっていく。

 

 放たれた光の砲撃に対してメタルグレイモンは──何もしなかった。

 

 魔法が直撃し、光輝は勝利を確信したが、極光が収まった後には無傷のメタルグレイモンが佇んでいた。

 

「は……?」

 

 光輝の口から気の抜けた呟きが漏れる。

 自身の最強の一撃が、積み上げてきたものが、まるで無意味だったことに、頭の中が真っ白になる。

 

「あ、あああああああ!!!」

 

 認められない現実に、光輝は錯乱したような声を上げる。

 もうすぐ〝限界突破〟の制限時間も切れるというのに、魔力を高め続ける。

 こんなものは現実じゃない。

 勇者として選ばれた自分の力が、デジモンなんかに通じないなんてありえないという一心で、魔力を練り上げていく。

 〝限界突破〟も超えて力を高めたために、光輝は自分の中の更なる力に気が付いた。躊躇わずに発動させる。

 

「〝限界突破・覇潰〟!!!」

 

 関を切ったかの如く、光輝の身体から魔力が迸る。それはやがて光のエネルギーとなって光輝の姿を輝かせる。その姿に追いついた龍太郎やメルド団長達が目を見張る。

 〝限界突破〟の派生技能〝覇潰〟。通常の限界突破が3倍のステータスになるのに対して、5倍まで引き上げる。当然、使用後の代償も大きいが、光輝は構わずに力を振るう。

 

「神意よ! 全ての邪悪を滅ぼし光をもたらしたまえ! 神の息吹よ。全ての暗雲を吹き払い、 この世を聖浄で満たしたまえ! 神の慈悲よ! この一撃を以て全ての罪科を許したまえ!! ──〝神威〟──!!!!!」

 

 過去最高の砲撃に、龍太郎達だけでなく光輝本人さえ目を瞑ってしまう。

 

 そして、目を開けた時には、メタルグレイモンの姿は無かった。

 

 強敵を前に諦めずに立ち向かい、新たな力で勝利する。まるで物語の英雄のような事を自分がしたことに、光輝は歓喜した。

 聖剣を掲げ、勝利を宣言する。

 それをクラスメイトや騎士団、生き残った住人達が称え揚げた。

 

 戦いの後を見つめるメルド団長と、小さく笑う中村恵里以外は。

 

 これが王都に起きた未曽有の襲撃の顛末だった。

 

 犯人は魔人族とされたが、光輝が襲ってきたのはデジモンという地球でも危険視されている魔物のようなものと報告したことで、デジモンも人間族の神敵であるとされた。

 同時に光輝は、ハジメが地球でデジモンオタクであったことも報告した。流石に生きているとは判断されなかったが、南雲ハジメも神敵だと確定し、彼の手が入ったものはすべて処分された。

 ウォルペン工房にいた時に書き起こしていた、拳銃の設計図も取り上げられ、燃やされた。

 

 国と教会からの発表があった後、王都は急ピッチで復興が進められた。

 幸いなことに王都を守る結界は、発生させるアーティファクトは無事だったので、魔力を込めることで再展開することが出来た。

 街並みは滅茶苦茶になったが、勇者の強さに希望を見出した人々は明るく振舞っているのだった。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 王都の事件を冒険者ギルドで聞いたハジメ達は、アークデッセイ号に戻ると今後の方針を話し合った。ハジメやデジモンの事が悪しきものとして流布していることには、香織達が憤慨して王都にアークデッセイ号で突撃しようとまで言い始めたが、ハジメが何とか宥めた。

 

「で、これからどうするかだ」

「予定だったら火山の大迷宮だったっけ?」

 

 ガブモンの言葉に頷くハジメ。ブルックで準備を整えた後、商業都市フューレンを経由してグリューエン大砂漠に向かい、そこにあるグリューエン大火山にある大迷宮に挑むつもりだったのだ。

 しかし、王都が襲撃で半壊したことで懸念事項が出来た。

 

「ハイリヒ王国の安全性が崩れかけている。王城に残っている召喚された生徒達も安全じゃない」

 

 ハジメ達離脱組、勇者パーティー以外にも召喚された生徒はいる。殆どが戦う意思を無くし、王城で保護されていた。だが、今回の事件でハイリヒ王国は大きな打撃を受けた。

 勇者の存在で人々は活気を保っているが、物資も経済も大きな損失が出来てしまった。さらに加えて、魔物に王都への襲撃を許したことを帝国に指摘され、国家間のパワーバランスにも影響が出ている。

 

「この状況と勇者への期待を考えれば、戦争が起こるのは近い。そうなれば王城に保護されている生徒達も、無理やり戦場に送られる可能性がある」

「そうなれば、絶対に畑山先生は危険にさらされる」

 

 生徒達が戦場に出るのに断固反対の姿勢を崩さない畑山先生だ。そのために自身の作農師としての力を取引材料に、彼らを保護してもらっている。それも戦争が始まれば、王国と教会が強引な手段に出てくるだろう。

 

「浩介の話だと、先生は志願した生徒が護衛に付いているんだよな?」

「ああ。八重樫さんも一緒だ。王城だと天之河のやつがたまに来るからゆっくりできないからな」

 

 やれやれと肩をすくめる浩介。勇者には彼も辟易としているのだ。

 

「……でも、個々の事情や願いなんて国には関係ない」

「ですわね。帝国からの干渉を跳ねのけるために、無理やり神の使徒を勇者の騎士団にするくらいしそうですわ。ステータスだけ見れば、圧倒的ですもの」

「ん。それを止めようとする人も、魔法で洗脳すればいい。それが出来なくても、やり方はいくらでもある」

 

 国の運営にかかわっていたユエとトレイシーが、あり得そうな未来を口にする。

 そうなれば心に傷を負った生徒、特にPTSDを発症している雫は危険だ。碌に戦うことも出来ずに、命を落としてしまう。

 しばらく考えをまとめたハジメは、全員にそれを告げる。

 

「提案がある。──大迷宮の攻略を一時中断しようと思う」

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 急ピッチで復興が進むハイリヒ王国の王都。多くの人々が駆け回る中、勇者パーティーに所属している結界師の谷口鈴も同様にあっちこっちを走り回っていた。

 トータス人よりも優れたステータスを持ち、結界以外の魔法も使える彼女は、様々な場面で頼りにされ、今日も小さな体で復興作業を手伝っていた。それは他の勇者パーティーの面々も同様で、人々の支持を集めるためにも、積極的に動いている。

 

 そんな彼女はふと街中で見知った顔を見つけた。

 

「エリリンだ」

 

 彼女の親友、中村恵里だった。彼女も鈴と同じく復興の手伝いをしているはずだ。なのに、何故か路地裏への狭い道に入っていった。

 少し気になった鈴は彼女の後を追っていったのだが、路地裏で彼女が何やら黒い人影と話しているのを見て、咄嗟に身を隠した。そして、聞き耳を立ててみる。

 

「上手くやったよね。メタルグレイモンは死んでいないでしょ? 光輝君の攻撃に合わせて転送でもしたの?」

「そのようなところだ。勇者の攻撃はいい目くらましになったのでね」

 

 可笑しそうに言う恵里の言葉を肯定する影。それは恵里と邂逅したトータスで暗躍する謎のデジモン、ヴァンデモンだ。

 

「聞きたいんだけどさあ。光輝君の攻撃ってメタルグレイモンに当たったの?」

「いいや。当たる前に転送させた」

「うっわ。それってつまり」

 

 つまり、光輝の最後の極大光線はメタルグレイモンに当たることなく、突き進んでいった。

 王都を破壊しながら。そこにいた住人も巻き込んで。

 恵里も戦いの跡を見に行ったが、勇者の魔法の痕跡は、メタルグレイモンの攻撃と同じように街へと一直線に続いていた。犠牲者は数十人、下手をすれば百人以上はいるかもしれない。

 

「教会や国も気が付いているだろうけれど、私達、特に光輝君には伝えないだろうねえ。ククク」

「君も向こうの世界で似たようなことをしていたのだろう? 勇者にとって都合の悪いことは伝えず、自分の物差しで踊る彼を嘲笑う。人間らしい遊びだな」

「レベルが違うよ。僕なんかよりも規模も、後から受けるダメージも凄い。流石だね」

「称賛はありがたく受け取っておこう。他に何か聞きたいことはあるかね?」

「うーん。じゃあもう1つ。あのメタルグレイモンって不完全体だったよね? 本当なら王都は壊滅していた。違う?」

 

 恵里の言うとおり、メタルグレイモンは能力の全てを発揮できなかった。

 彼女の知識ではメタルグレイモンの攻撃力は核弾頭1発分のはずだ。そんな攻撃を放たれれば、今頃王都は人の住めない焦土と化している。

 実際、恵里の考えは当たっていた。あのメタルグレイモンのアルタラウスから放たれるエネルギー弾には、恐ろしい毒があるはずなのだ。デジモンであっても掠るだけでデジコアが腐り落ちてしまう、災害指定されるほどの感染力と毒性をまき散らす。通常のメタルグレイモンよりもえげつないものだ。しかし、急激な進化をした代償なのか、王都での戦いでは毒性が発現しなかった。もう少し進化した肉体に馴染めば発現し、このウィルス性のエネルギーを撃ち放つ技、《パンデミックデストロイヤー》を使えるようになるだろう。そうなれば、王都どころか国さえも容易く滅ぼせてしまう、恐ろしい存在となる。

 

「まさかこんなデメリットがあるとは思わなかった。彼もたいそう憤慨していたよ」

「まあ、でも? 君達の目的にはちょうど良かったんじゃないの? まだまだハイリヒ王国には、使い道があるんだし。檜山も最低限の目的が達成されたんだから、次に向けて準備を進めているんじゃない?」

「そうだ。必要なデータはあと2体。そのデータも近々メフィスモンが……おや?」

 

 ヴァンデモンの下に配下のコウモリが一匹やって来て、何かを報告してきた。

 

「逃げ出した? ……ふん。ネズミが潜り込んでいたか」

「よくわからないけれど、急いだほうがいいんじゃないの?」

「そうだ。では、失礼しよう。……ああ、そうだ」

 

 身を翻して、その場を去ろうとしたヴァンデモンが、最後に一言告げる。

 

そっちの(・・・・)ネズミは尾行された責任を取ってあなたが始末してくださいね」

「はいは~い」

 

 それを聞いた瞬間、鈴はその場を飛び出し、表通りに向かおうとした。

 だが、その行動は遅すぎた。

 背後から巨大な黒い左腕が伸びてきて、鈴の身体を掴み、動きを封じてしまった。口まで掴まれており、魔法の詠唱はおろか声も出せない。無理やり動こうとすると腕が動き、紅い鋭い爪が眼前に突き付けられる。目を貫かれる恐怖に、体が震える。

 

「見ちゃったんだねえ。す~ず~」

 

 鈴の目の前にやって来る恵里。その顔には親友のはずの鈴ですらも見たこともない、邪悪な笑みを浮かべていた。

 

「もうちょっと後の予定だったんだけど、見られちゃったのなら仕方ないかあ」

 

 ニヤニヤ笑いながら、恵里は鈴の頭に右手を乗せる。

 下からは異形の手。上からは変貌した親友の手。頭を二つの手に挟まれた鈴は、恐怖のあまり涙を流す。

 

「君には僕のお人形になってもらうよ。大丈夫。親友だから。安心して、僕に身を任せてね」

 

 後日、何事もなく二人一緒に行動する恵里と鈴の姿があった。

 以前よりも親密に、片時も離れないように……。

 




〇デジモン紹介
フレアモン
レベル:完全体
タイプ:獣人型
属性:ワクチン
威風堂々としたたてがみとその存在感により一見怖そうだが、仲間の為にはどんな困難にも立ち向かう心の強さを持った獣人型デジモン。必殺技は、拳に獅子の闘気と火炎を集中させて、獅子を象ったエネルギー波を放つ『紅蓮獣王波(ぐれんじゅうおうは)』と、炎をまとわせた拳と蹴りを、高速連続で敵に叩き込む格闘乱舞『紅・獅子之舞(くれない・ししのまい)』。また、全てを燃やす火炎によって浄化力を込めた衝撃波を、咆哮と共に口部から放ち、敵をデータ分解させる『清々之咆哮(せいせいのほうこう)』。



王都の異変はこんな感じでした。勇者君の大活躍でした。

まあ、当然裏はあるんですけれどね。
でもやっぱり他の方々の小説と違って、悪辣な策というのはうまく書けませんね。
3章ではそういうものをいっぱい書いていく予定なので、上達できればいいです。
例よって2章同様に、原作改変をしていきますのでお楽しみに。


〇次章予告
03章 ウル・神山編―Dark Leap Encounter―
――キーポイント:
 湖畔の町ウル
 中立商業都市フューレン
 八重樫雫
 畑山愛子
 園部優花
 清水幸利
 ダークタワー
 天使と悪魔
 ティオ・クラルス
 竜人族
 Legend-Arms





 コロモン





 究極合成魔獣





 光のスピリット
 黄獣偃月刀
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