ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る 作:竜羽
感染してしまったせいで投稿が遅れました。
2章のあとがきと同時投稿です。
3章開始です。いろいろ動き出しますのでお楽しみに。
01話 湖畔の町に舞い降りたもの
ある日の夜。
ハイリヒ王国の北部にある湖畔の町ウル。
湖という豊富な水源のおかげで大陸最大の稲作地帯として発展した町で、王国の食料自給率を支えている重要な拠点だ。とはいえ、魔人族の領域からはもっとも遠い位置にあるため、穏やかな観光の町となっている。
そんな町の上空で、次元の歪みが生じた。それはやがてゲートとなり、中から2つの白い飛行物体が飛び出してきた。
闇夜にあって白く輝く2つの飛行物体はしばらくふらふらと飛んでいたが、しばらくすると町の郊外の森の中に舞い降りた。
夜も遅かったので、住人は誰一人としてそれに気が付かなかった。
■■■■■
数日後。
ウルの湖の傍の田畑では、地球から召喚された唯一の大人である畑山愛子が、自身の技能と魔法を駆使して農地改革を行っていた。
オルクス大迷宮での一連の事件から、戦闘を拒否して引きこもってしまった生徒達の保護を対価に、彼女が引き受けている仕事だ。
これには彼女以外にも神殿の騎士達と、引きこもっていた生徒の一部が付き添っている。
騎士達は護衛だが、生徒達は精神ケアが目的だった。
きっかけはもっとも大きな心の傷を負った雫と、付き添いの優花を農地改革に連れて行ったことだ。王国の民と一緒に畑仕事をする中で、徐々に彼女達に笑顔が戻っていった。
完全に立ち直ったわけではないが、効果があった。そんな彼女達の様子を見て、他の生徒も加わり、生徒達の心も癒えていった。
余談だが、神殿の騎士達は愛子を篭絡するために遣わされた、イケメン揃いの集団だった。しかし、愛子は彼らに靡くことなく、持ち前の一生懸命さと空振りから逆に彼らを魅了してしまい、気が付けば彼らを信者にしてしまっていた。
現に今も、生徒と一緒に作業している愛子の傍に、神殿騎士専属護衛隊隊長デビットがやってきて話しかけてくる。
「疲れていないか、アイコ? ああ、顔が土で汚れている。頑張る姿も君の魅力の一つだが、汚れは気にしないといけない。君は俺の眩い太陽なのだ」
なんとも気障なセリフを言いながら、愛子の顔に付いた土をぬぐおうとする。
そこにすかさず優花が割り込んできて、自分の手ぬぐいで代わりにぬぐってあげる。
「いきなり女性の顔に触るのは騎士としてどうなんですか!」
「おっと。そうだな。つい汚れているのが我慢できずに。申し訳ない、アイコ」
「いえいえ。気にしないでください。では、作業を再開しましょう」
「次は向こうだよ、愛ちゃん先生!」
「そ、園部さん。引っ張らなくても大丈夫です。それとせっかく〝先生〟と呼んでくれるようになったのに〝愛ちゃん〟は止めないんですね……普通に愛子先生で良くないですか?」
「ダメです。愛ちゃん先生は〝愛ちゃん〟なので、愛ちゃん先生でなければダメです。生徒の総意です」
「ど、どうしよう、意味がわからない。しかも生徒達の共通認識? これが、ゆとり世代の思考なの? 頑張れ私ぃ、威厳と頼りがいのある教師になるための試練よ! 何としても生徒達の考えを理解するのよ!」
優花とそんなやり取りをしながら離れていく姿を、優し気に見つめるデビット。他の騎士達も似たような感じで、篭絡するはずがすっかり愛子に魅了されていた。
そんな愛子だが、王城から付いてきた生徒達からはとても頼りにされていた。身近な大人という事もあるが、魔力が優れていたことを活かして土属性の魔法の練習も始めた。生徒達を守るために、自分も力を付けなくてはいけないと思ったのだ。農地改革の合間だったためあまり時間は無かったが、執念で学んだ結果、上級魔法までも習得してしまった。
一度、農地の近くにはぐれの魔物が出た時など、騎士達が剣を抜く前に魔法で倒してしまったほどだ。
これ以降、彼女の株は鰻登りとなった。
いつしか愛子の事を巷では〝豊穣の女神〟と呼ぶようになってしまい、彼女は困惑してしまった。
そんな全力全開な日々を送っている愛子だが、ふとした時に不安に襲われる事が二つある。
1つは地球への帰還方法。
もともと彼女はハジメ達と、それを探すためにパーティーを組んでいた。しかし、オルクス大迷宮での一件から着手することが出来ず、生徒達を家族の下へ送り届けるという最終目標が、まるで見えてこない。
2つめはPTSDを発症してしまった雫の事。
畑で鍬を振るっているときは笑顔を見せている彼女だが、夜は1人で眠ることが出来ず、愛子か優花達が付き添っている。それでも悪夢をよく見ているようで、苦しい寝顔を浮かべている。精神科医でもない愛子では、戦いから遠ざけることしかできず、癒すことが出来ない。それができる人物達の行方も依然として不明だ。
どちらも愛子がどれだけ頑張ってもどうしようもならないことで、嫌でも自身の無力さを痛感してしまう。
だが、生徒達にそんな様子を見せてはいけないと、愛子はさらに頑張るのだった。
一方の生徒達も各々で頑張っていた。特に愛子が気にしていた雫は。
しかも、騎士達が最近知らせてくれた王都でのメタルグレイモン襲撃事件が彼女に重くのしかかってきた。
「はぁ。まさかデジモンが神敵認定になるなんて」
「雫大丈夫?」
畑を耕す手を止めて溜息をつく雫に優花が話しかける。しゃべるようになってから気が付いたが、派手な見た目をしているが実は面倒見がいいのだ。
「うん。ちょっと朝の話が気になって。私が悩んでも何もできないんだけど」
「あー。確かに。仕方ないとはいえ、白崎さん達が戻ってきたときにめんどくさいことになるわね」
「香織はテイルモンと別れるつもりはないと思うし、ハジメは絶対あり得ないわ」
「……ねえ、やっぱり南雲も生きているのかな?」
ハジメの名前を出すと優花が不安げに聞いてくる。
雫はテイマーズと交流があったから、パートナーのガブモンの生きているという言葉を信じられたが、彼女はそうではなかった。あの何処までも落ちていくような奈落の闇の中に落ちたのだから、生きていると信じる方が不自然だ。雫もそれをわかっている。
「生きているよ。香織が絶対に連れて帰って来てくれる。私は信じているから」
「……強いよね。雫は」
「そんなことない。今でもいろんなことが不安でいっぱい。だから、ハジメに縋っているのよ」
地球に帰還できるのか。戦争に巻き込まれるのか。魔物が襲ってこないか。
そして、香織とハジメと再会できるのか。
沢山の不安に押し潰されそうになるのを、ハジメの生存を信じることで紛らわせている。
「でも……」
もしもハジメが生きていて、香織と一緒に戻ってきたら、私はどうすればいいのだろう。
口に出さなかったその疑問の答えを出す時が、刻一刻と迫っていた。
■■■■■
そんな愛子達を遠くから見つめる2つの人影があった。
「あれが豊穣の女神? 普通の人間じゃない」
「ですが、ノワール姉さま。農地を豊かにするあの力は噂通りです。それに教会の宣伝通りなら異世界人。もしかしたら力になってくれるかもしれません」
「そうかしらねえ~」
怪訝な様子の1人に対し、もう1人は愛子へと期待の籠った眼差しを向けている。
前者は黒いシスター服を着た長身の少女で、後者は真っ白なシスター服を着た小柄な少女だ。
「ではいってまいります。お姉さまはあの子を見ていてください」
「はいはい。ボロを出すんじゃないわよ。ブラン」
「はい。ノワール姉さま」
「あと緊張であがるんじゃないわよ。人見知りなんだから」
「が、頑張ります」
指摘されたことで不安になったブランと呼ばれた少女が、愛子達の下へ駆けだした。
しかし、ブランが愛子達の所に駆け寄る前に、異変は起こった。
農作業をしていた愛子達の頭上10メートルほどの空中に、空間の歪みが現れた。
バチバチという音が聞こえた愛子達が頭上を仰ぎ見ると、そこから異形の存在が現れた。
蝙蝠のような羽を広げた二足歩行の巨大な雌山羊の姿でありながら、片手には日傘を持ち、淑女たる装いをしている。
誰にも知られずトータスで暗躍する闇の堕天使型デジモン、メフィスモンだった。
「な、何? あれ……」
「ま、魔物だ!」
メフィスモンの姿を見た町民が叫んだ言葉に、愛子はハッとして雫を見る。
「あ、ああぁッ……」
案の定、彼女は震えながら立ち尽くしていた。瞳は不規則に揺れ、今にもへたり込みそうになっている。
「八重樫さん!」
「雫!」
愛子と優花が駆け寄る。魔物に対するトラウマからPTSDを発症している彼女を、一刻も早くこの場から遠ざけなければ。
しかし、あまりにも行動が遅かった。
メフィスモンが眼下の愛子達をじろりと見下ろす。少し何かを考えていたメフィスモンが、ニヤリと笑みを浮かべる。
片手に持った日傘を振るうと、闇色の大きな魔法陣が展開される。
「《ヘルマニア》」
そこから強力な暗黒呪文弾が雨のように周囲に放たれた。
「うわあああああ!!??」
「きゃあああああッ!?!」
「ひぃいいいいい!?!?」
着弾して起こる爆発に人々は悲鳴を上げて逃げ惑う。
騎士達が非難させようとする中、メフィスモンは再び日傘を振るい魔法陣を描く。
しかし、それは攻撃魔法ではなかった。
「暴れなさい。イビルモン」
「「「「「イーヒヒヒ!!」」」」」
魔法陣の中から無数の小悪魔型デジモンが召喚された。成熟期デジモンのイビルモンだ。
イビルモン達はメフィスモンに使役されており、命令通りに無茶苦茶に暴れ始める。
農地を荒らし、人々に襲い掛かるイビルモン達。
騎士達が剣を振るって倒そうとするが、イビルモンの口から放たれる超音波《ナイトメアショック》で反撃され、平衡感覚を狂わされて倒れてしまう。
イビルモン達は生徒達にも襲い掛かる。
「いやああっ!?」
「こっち来ないでぇ!?」
「やめなさい!! 〝岩弾〟!!」
「ギャ!?」
生徒達を守るために、魔法を放つ愛子。岩の弾丸がイビルモンの一体に命中して昏倒させることに成功する。
「早く逃げてください!」
「あ、愛ちゃん先生……」
「ありがとう……」
助けられた生徒、優花の友人の
もう一度魔法を使おうとするが、間に合わない。
(あ、ダメ)
「させません!!」
もう駄目だと思った愛子だったが、白い影が飛び込んできた。愛子達の所に向かっていたブランという少女だ。
彼女の手には不釣り合いな三又の槍〝クロスバービー〟が握られており、思いっきり振るう。
槍はイビルモンに命中し、大きく吹き飛ばす。
「大丈夫ですか?」
「は、はい。あなたは?」
「ブランといいます。初対面ですが、あなた達を守ります!」
「あ、ありがとうございます」
突然現れたブランに困惑する愛子だったが、自分や生徒、ウルの住民を守るためにイビルモンに立ち向かう姿にお礼を言う。
ブランはトータスで一般的なシスターと違い、まるで戦士のような身のこなしで次々とイビルモンを倒していく。騎士や住人達もブランには目を見開く。突然現れたというのもあるが、彼女はまるで兎人族のようなウサミミが付いたウィンプルを被っていた。亜人族を蔑んでいる聖教教会のシスターではありえない格好だ。緊急事態なので指摘する人はいないが、どうしても注目を集めていた。
大暴れするイビルモン達とそれに立ち向かう愛子達。それを横目に、メフィスモンはキョロキョロと何かを探している。
「もう少し騒がしくしてみるか」
日傘を振るい、再び暗黒呪文弾を放つ。今度は街の建物に命中し、跡形もなく破壊する。
それを見て恐怖にかられる人々。
「あ、ああ」
「雫! 早く、立って」
特に雫はPTSDのせいでトラウマがフラッシュバックし、へたり込んでしまった。優花が立たせようとするが、彼女も恐怖心から腰が引けてしまっている。
動けない2人がメフィスモンの目に入った。
「ふむ」
ニヤリとあくどい笑みを浮かべるメフィスモン。その目を見た2人は恐怖で体が硬直する。そこに、メフィスモンが暗黒呪文弾を撃ってきた。
((あ、死んだ))
目を閉じることも出来ず、迫りくる暗黒呪文弾に何もできない。
しかし、先ほどの愛子のように彼女達を守る者達が舞い降りた。
「《ヘブンズナックル》!!」
「《ピッドスピード》!!」
舞い散るのは白い羽。光り輝く翼を背負い、聖なる拳とロッドが暗黒呪文弾を打ち破った。
「天使?」
「……違う」
優花が自分達を守った存在を目にした印象を口にするが、雫は首を横に振る。
白い翼を持ち、聖なる衣を身に纏ったその姿は、誰もが優花のように天使を思い浮かべるだろう。
だが、彼らは天使ではない。デジタルワールドに危機が迫ると、神々の隊列に加わり、悪を倒す天使型デジモン。その名は──。
「エンジェモン!!」
「私の事を知っているのか」
雫の言葉を聞き、少しだけ振り向くエンジェモン。
「エンジェモン。今は相手に集中してください。話は後で」
「ああ。ピッドモン。君達は早く逃げて!!」
エンジェモンに注意をしてきたのは、エンジェモンに似ているが、翼の数が少ない天使型デジモン。名をピッドモン。エンジェモンと同じ天使型デジモンで、階級は彼より下だが、負けず劣らずの実力を持つ。
メフィスモンは現れたエンジェモンとピッドモンの姿に笑みを深めると、日傘を2体に向ける。2体もその手に持ったホーリーロッドを構えた。
湖畔の町に、天使と堕天使が舞い降りて戦いが始まった。
〇デジモン紹介
エンジェモン
レベル:成熟期
タイプ:天使型
属性:ワクチン
光り輝く6枚の翼と、神々しいまでの純白の衣を身に纏った天使デジモン。完全なる善の存在であり、幸福をもたらすデジモンと呼ばれているが、悪に対しては非常に冷徹で完全に相手が消滅するまで、攻撃を止めることはない。デジタルワールドが幾度となく危機に見舞われたとき、同種属のデジモンを率いて降臨したと伝えられており、ダークサイドに引き込まれたデビモンも、もともとは同種族であった。必殺技は黄金に輝く拳で相手を攻撃する『ヘブンズナックル』。
まずは愛子達の現状でした。原作と違いちょっと攻撃魔法も練習している愛子。聖と思いの彼女ならおかしくないかなと思いました。
そしてまさかのメフィスモンの登場。黒幕の1体です。
それに呼応するように登場したのは有名デジモンのエンジェモンと、そっくりさんのピッドモンです。しかもブラントノワールという謎の少女達もいて、どうなるのかお楽しみに。