ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る 作:竜羽
ギリギリ更新が間に合いました。
〇前回のあらすじ
湖畔の町、ウルで農地改革に勤しみながら、生徒の精神的なケアを行う愛子。生徒の中には雫の姿もあった。そこに突如、メフィスモンが襲来。パニックに陥るが、そこにブランという謎の少女と、天使型デジモンのエンジェモンとピッドモンが現れた。
雫達を守るために現れたエンジェモンとピッドモン。
彼らは背中の白い翼をはためかせ、空中に浮かぶメフィスモンに向かっていく。
「援護を頼む、ピッドモン」
「《ファイアフェザー》!!」
聖なる拳を構えて突貫するエンジェモン。ピッドモンはエンジェモンを援護するために、背中の羽根を燃え上がらせて放つ。
「ふん」
メフィスモンは日傘を開き、ピッドモンの技を防ぐ。その隙に接近したエンジェモンが拳を突き出す。
「《ヘブンズナックル》!!」
「ぬぅ」
メフィスモンの胴体にエンジェモンの必殺技が命中する。通常、成熟期デジモンの技は完全体デジモンには効果が薄い。だが例外もあり、エンジェモンの技は暗黒系デジモンであるメフィスモンに高い効果を発揮する。そのため、メフィスモンはダメージを受けてエンジェモンから距離を取る。
「イビルモン達よ!」
人々を襲っていたイビルモン達が、メフィスモンの号令に従い飛び立つ。
そのままエンジェモンとピッドモンに襲い掛かっていく。
「はあ! たあ!」
「ふっ! とぁ!」
二体は襲い掛かって来るイビルモン達をホーリーロッドで打ち払う。
数は多いが、もともとの強さではエンジェモンとピッドモンの方が上だ。加えて暗黒系に強い聖属性なので危なげなく戦う。相性の良い暗黒属性でもあるので、神殿騎士よりも圧倒的な戦いを繰り広げている。神話の天使と悪魔の戦いのような光景に、地上から見つめる人々の中には手を合わせて拝み始めている人もいた。
粗方イビルモン達を退けたエンジェモンとピッドモンだが、なぜかその間にメフィスモンは攻撃してこなかった。イビルモン達に相手をさせている間、ジッとエンジェモン達の戦いを観察していたのだ。
そして、イビルモン達が全滅し、メフィスモンに武器を向ける二体。
「フッ。《ヘルマニア》」
不敵に笑うと、先ほどから使っている暗黒呪文弾を放ってくる。
エンジェモンとピッドモンはお互いのホーリーロッドを交差させて受け止める。二体がかりで何とか攻撃を弾き飛ばす。
それを見届けたメフィスモンは魔法陣を展開し、何とその場から姿を消した。
転移して不意打ちをしてくる気なのかと、エンジェモンとピッドモン、地上の騎士達が警戒する。しかし、いつまでたってもメフィスモンが現れる気配はなく、配下のイビルモンも出てこない。
「終わったのか」
「そのようです。お疲れ様です。エンジェモン」
「君もよくやってくれた。とりあえず、降りてみよう。いい加減この世界のことが知りたい」
「はい」
愛子達の下に降りるエンジェモンとピッドモン。すると住民たちと神殿騎士達がやって来て、膝をついて頭を垂れた。
「我が危機に降臨していただき、ありがとうございます、天使様!」
「え? いや私達は」
「神々しい翼に、純白の衣! ああ、まさにエヒト様の使いのお姿」
「勇者様と女神様だけでなく、傍仕えの天使様まで降臨していただけるとは。これで王国は、人間族の未来は約束されました」
突然の言葉に困惑するエンジェモンとピッドモン。頭を下げているために二体の様子に気が付かない。
仕方なくエンジェモンは、自分達が天使ではなくデジモンであることを告げようとする。
「あああああの皆さん!!」
その前にブランが割り込んできた。
「天使様たちもお疲れですし、怪我人もいます! 周りも滅茶苦茶です! ゆっくり休んでもらって、お手当や片付けをするのが先ではないでしょうか!!」
突然現れたブランにエンジェモン達も騎士達も驚く。だが、神殿騎士隊長のデビットはブランの態度に怒気を放つ。教会ではシスターの地位はそこまで高くない。神殿騎士の自分達が天使様に頭を下げているのに、それに倣わないことに怒っているのだ。
「一介のシスターがごときが、天使様を前に頭を下げないとは何事か!!」
「ひうっ、ああの、でも」
「彼女の言うとおりですよ! 今は天使様に休んでもらって、怪我人の救助と後片付けをしましょう!!」
今度は愛子が割り込んできた。その後ろで雫と優花がエンジェモン達に小声で話しかける。
「デジモンって言うことは隠してください」
「今ここでデジモンとばれるのはまずいんです」
「お二人の言うとおりです。詳しい説明は後程、私の方からしますから。ここは話を合わせてください」
2人と一緒にブランもエンジェモン達に話しかける。とりあえずこの場は彼女達の言うことに従うことにした。
騎士達も愛子が説き伏せたことで、エンジェモン達は街の教会の礼拝堂で休むことになった。
教会の人間達はエンジェモン達の姿に驚愕し、すぐさま祈りを捧げた。その後、過度な持て成しをしようとしたが、ブランからアドバイスを受けていたエンジェモン達は辞退。その分を町の復興と負傷者の手当てに回すように言った。これにより、二体は礼拝堂内で体を休めることができた。
一方、二体と話をしようとしたブランだが、町の復興のために駆り出され抜け出せずにいた。先の戦闘で目立ってしまったことと、町の教会に所属していなっために、雑用係のような事を押し付けられてしまった。町中を駆け回って怪我人の運搬に、瓦礫の撤去に奔走した。
結局ブランが解放されたのは、日も落ちて夜になってからだった。
「お、お待たせしました。エンジェモン様。ピッドモン様」
「いや、気にしないでくれ」
「私達もゆっくり休めた」
夜の教会で窓から差し込む月明かりと蝋燭の火を頼りに会話をするブランとエンジェモン、そしてピッドモン。
これから各々の事情を話すのだ。
「改めて私の自己紹介から。シスタモンブランといいます。この世界には四聖獣の一体、チンロンモン様の命を受けて参りました」
「四聖獣の使いだったとは。私は天使型デジモンのエリアで守護隊長をしております、エンジェモン。先のデ・リーパーとの闘いでは未熟者ながら、戦列に加わっておりました」
「同じく、守護隊に所属しておりますピッドモン。エンジェモン様の副官を務めております」
ブラン──シスタモンブランが自身の素性を明かすと、エンジェモンとピッドモンもそれぞれ自己紹介する。
ブランの正体とは、デジモンでしかもシスタモンだったのだ。シスタモンは特殊なデジモンで、同じ名前でも個々の性質で三つのデジモンに分類される。トレイシーと行動を共にしていたシエルもその一つだ。面白いことに彼女達はそれぞれ姉妹の間柄を持ち、ブランはシエルの妹に当たる。そして、最後のもう1人もこの場にやって来ていた。
「遅れてごめーん! でもさあ、覗いていた奴らを捕まえてきたから許してぇ」
静かな礼拝堂に陽気な声が響いた。そこまで大きな声ではないので、寝静まった住民たちは起きてこないだろうが、不用心だ。
ブランは文句を言おうと入ってきた人物を見る。ブランと同じデザインだが、色は真逆の黒いシスター服を着た修道女だ。被っているベールは、黒猫を模している。彼女こそ、シスタモンの最後の一体、シスタモンノワールだ。ブランの姉で、シエルとは双子の間柄だ。
そんな彼女ともう1人、紺色の服の男が三人の女性を連れて礼拝堂の中に入ってきた。
「あなた達は」
「えーっと、その、立ち聞きしていてすみません」
女性の1人がブラン達に頭を下げる。それは愛子だった。彼女の後ろには雫と優花がばつが悪い顔を浮かべていた。
そして最後に紺色の服の男性へとエンジェモンとピッドモンは目を向ける。
見るからに怪しい風貌だ。長袖のコートで全身を覆い隠し、目深に被った帽子で顔が全く分からない。体格から男という事はわかるが、それだけだ。
「俺はそこの二人の協力者だ」
男はブランとノワールを指差して答えた後、教会の椅子にどっかりと座る。
「相変わらず不愛想ね~。まあ、怪しい見た目だけど敵じゃないわ。ねえ、ブラン」
「はい。ノワール姉さまの言うとおりです。彼は私達も助けられましたから。あ、名前はマミーさんというそうです」
ノワールとブランが取り成したことで、一先ずエンジェモン達は納得して男、マミーから目を放した。
「え? マミーってもしかして」
マミーの名前を聞いた雫が目を見開き、マミーを見る。だが、マミーは雫の視線を気にした風もなく、ブランとノワールに話しかける。
「こいつらはどうするんだ? デジモンとばれたならここにはいられないだろう。口を封じるのか?」
「そんなことしませんよ!」
淡々と物騒なことを口にするマミーに雫と優花が怯え、愛子が前に出て二人を庇う。
ブランが慌ててマミーの言葉を却下する。
「幸い、元々愛子さんには私達の方から接触しようと思っていました。だから問題ないです」
「私も、彼女達は私達を害するつもりはないと思う」
ブランだけでなくエンジェモンも愛子達を擁護する。
「話の端々からデジモン、もしくは人間以外の生き物はこの世界では忌み嫌われているのだろう。あの時、私達がデジモンだと明かしていれば、排斥されていたかもしれない。彼女はそれを庇って、黙っていてくれた。それだけで信じられる」
「私もエンジェモン様と同意見です」
ピッドモンも擁護に加わる。ノワールは元々ブランと同意見だったのか笑みを浮かべている。
マミーはそれを聞いて、「そうか」と呟き、口をつぐんだ。そこまで強く主張するつもりはないようだ。
「予定外の人も来ましたが、そろそろ話し合いを始めましょう。今、この世界だけでなく、デジタルワールドも巻き込んでいる、巨大な異変とその裏に潜む陰謀について」
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ウルの町で騒動が起きてからおよそ一週間経った頃。ウルの町へ続く街道を2台の魔導二輪が疾走していた。
運転しているのは当然、ハジメ達だ。
なぜ彼らがウルに向かっているのか。それは彼らがライセン大迷宮を攻略した後の話し合いまで遡る。
ブルックで集めた情報から、異世界から召喚された生徒達に危機が迫っていると判断したハジメは、全員の前で行動の方針について提案をしていた。
「提案がある。──大迷宮の攻略を一時中断しようと思う」
全員がハジメの言葉の意味を吟味する。
「それは同郷の者達を助けるためですか?」
「ああ。このままだと、あいつらは命を落とす。戦争、陰謀、暗殺。考えられる原因はいくらでも。その前に保護するべきだ」
トレイシーの質問に答えるハジメ。
「意外ですわね。あなた達は目立つことは避けると思っていました」
「はい。大迷宮攻略をスムーズに進めるための効果的な行動です」
トレイシーとシエルの考えは間違っていない。ステータスプレートを偽って変装したり、デジモン達をデジヴァイスに入れるようにしたり、これまでハジメ達は素性を隠して行動してきた。それは派手な動きをすることでトータスの神に目を付けられ、妨害されるのを防ぐためだ。
「そのつもりだったさ。フェアベルゲンに潜伏していた神の使徒と遭遇したとはいえ、完全にばれたわけじゃないからな。方針を変える理由にはならない。俺はもっと先の事を見据えて動きたいと思ったんだ」
「あ、もしかしてあの事か?」
ふとガブモンが何かに思い至ったのか声を上げる。
「あの事?」
「ああ。6年前のデ・リーパーとの闘いだ」
ガブモンの傍にいたテイルモンが聞くと、全員に話し始めた。
6年前のデ・リーパーとの闘いで、テイマーズは仲間の1人、加藤ジュリをデ・リーパーに攫われた。彼女そっくりに似せられた替え玉と入れ替わり、本物のジュリはデ・リーパーの中核、カーネルに囚われの身となっていた。そのため、テイマーズはジュリを助けるために奮戦した。
これと同じことが起きるのをハジメは危惧したのだ。特にハジメと香織には、雫という大切な存在が居る。もしも彼女が攫われて人質に取られれば、致命的な隙となってしまう。
「だったら絶対に助けなきゃ!」
香織が気炎を上げてハジメの提案に乗る。気持ちはわかるが、自分達の一存で行動の指針を決めるわけにはいかないと、ハジメは彼女を落ち着かせる。香織以外のメンバーにも意見を聞く。特にユエ達は見ず知らずの他人のために動くのだから、仲間とは言え筋は通さないといけない。
まずはハジメ達と同じく地球出身の浩介が手を上げる。
「俺はハジメの方針に賛成だ。クラスメイトだし、先生と八重樫さんは同じパーティー。ふっ。我が深淵の力を振るうのに十分な理由だ」
「サンキュー。浩介。……ただな、そこはかとなく深淵卿が出ていないか?」
「え? あっ」
ハジメに指摘されて頭を抱える浩介。闇のスピリットを使いこなしてきた彼だが、比例するように深淵卿も使いこなしている。それと同時に普段の言動も深淵卿風になって来てしまっている。
浩介の次にユエとシアが手を上げる。
「私も賛成。ハジメ達の大切な人なら、私も助けたい」
「ユエがいいなら私もいい」
「私の大切な家族や親友の為に動いてくれたハジメさん達の為に、今度は私もお助けするですぅ!」
「俺も賛成だ!」
彼女達も賛同する。パートナーデジモン達も同様だ。
「衝動的なのではなく、先々を考えての提案ならばわたくしも異論はありませんわ」
「右に同じく。構いませんわ」
最後にトレイシーとシエルも賛成した。
こうしてハジメの提案は全員の賛同を得たのだった。
それから彼らは話し合いを続け、翌朝から行動を開始した。
まずはブルックの冒険者ギルドで畑山愛子についての情報を集めた。彼女の評判はかなり有名で、ブルックにも届いていた。おかげで今はウルの町で農地改革をしていることが分かった。教会の評判を上げるためだろうが、重要人物の居場所を広げるのは悪手だとハジメは呆れた。
「思ったよりも状況は不味いかもな」
その後、冒険者ギルドを出るとき、浩介の事を気にかけていた受付のおばちゃんのキャサリンさんから、町やギルドでもめた時のためにと手紙をもらった。キャサリンさんの底知れなさを実感しながら、ブルックの町を後にしたハジメ達。
そこでハジメ達は二手に分かれることにした。
まずは愛子達の下に向かうハジメ、香織、ユエ、シア。愛子達を助けるためにウルに向かう。
その一方で、浩介、トレイシー、シエルはハイリヒ王国の王都に向かうことにした。
王城に引き籠っている神の使徒達を助ける準備と、神山の調査を行うためだ。
何せ、王都に隣接する聖教教会の本部である神山には大迷宮があるのだ。灯台下暗しというわけで、敵の中枢に解放者の大迷宮があるなんて誰も思わないだろう。もっともそんな場所にあるせいで、もしもハジメ達が教会に目を付けられれば、容易に近づくことが出来なくなる。その前に隠密行動が得意な浩介達が、神山の大迷宮を調べることになったのだ。
かなり困難な任務になるため、ハジメは浩介達に宝物庫を1つ渡した。移動用の魔導二輪1つに、ハジメ謹製のアーティファクトを大量に収納している。
危険な役割を引き受けてくれた浩介達への、最大限の支援だった。
そうして浩介達と別れたハジメ達はウルへと向かっていた。
移動には身軽さを優先して魔導二輪を使い、運転にはハジメと、意外にも運転の才能があったシアがしている。デジモン達はデジヴァイスの中だ。
「そう言えばウルって稲作が盛んなんだよね」
「稲作ですかぁ?」
運転の小休止をしていると、香織がブルックで聞いた話をふと思い出す。シアがウサミミを傾ける。
「おう。つまり米。俺達の故郷の主食を栽培しているんだ。こっちに来てから一度も食べていないからな。楽しみだ」
「うんうん。種類は同じかわからないけれど、久しぶりに食べてみたいよ」
「ん。私も食べたい」
「へぇ~。私も食べてみたいですぅ」
ハジメ達が米へと思いはせる。それはデジモン達も同様だ
「ハジメのお母さんの家で食べたおにぎり、美味しかったしな」
「どんな食べ物なんだ?」
「味は?」
「旨そうな見た目なのか?」
穏やかにウルへと向かうハジメ達。だが、彼らは知らない。ウルで何が待ち受けているのか。
〇デジモン紹介
ピッドモン
レベル:成熟期
タイプ:天使型
属性:ワクチン
2枚の羽を持ち、輝かしい白い衣を身にまとった“天使型デジモン”。エンジェモンと同じ完全なる善の存在だが、階級はエンジェモンの下に位置する。しかし、パワーはエンジェモンに負けず劣らずあり、ホーリーロッドを振るい悪を滅ぼす存在である。必殺技は、聖なる炎で燃え上がる羽を流星のように降らせる『ファイアフェザー』と、猛スピードで突撃し、ホーリーロッドで強烈な一撃を繰り出す『ピッドスピード』。
いろいろ省略したハジメ達。栄養ドリンクの人とかフューレンとかについては、あまり時間をかけていられないと思いオリジナル展開で行きます。うまく絡められたらいいんですが、無理やりになりそうなら路線変更していこうと思います。
今話も気になることがいっぱいあると思いますが、デジモンアドベンチャー02を知っている人なら何かピンと来た登場人物がいると思います。
作者は何気に彼の事がお気に入りです。
では次回もよろしくお願いします。