ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る   作:竜羽

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プロットを組みなおしていたら遅れました。

・前回のあらすじ
ハイリヒ王国随一の穀倉地帯にあるウルの町を突如襲ったメフィスモン。窮地に陥る雫たちを救ったのはエンジェモンとピッドモン、そしてシスタモン ブランだった。
デジモンであることを誤魔化し、彼らから事情を聴く雫達。
一方、ハジメ達は浩介達と一時別れ、召喚された者達、特に雫を救うためにウルに向かっていた。



03話 涙の再会

 ウルの町へ向けて魔導二輪を走らせるハジメ達。だが、徐々に町が近づくにつれて、ハジメと香織は愛子達、特に雫に何て言って会えばいいのか頭を悩ませ始めた。香織はシアの後ろに乗っているからいいが、ハジメは運転が散漫になってしまい、ユエが運転を交代した。

 ユエとシアの後ろで悩む二人だが、ほどなくしてウルの町が視えてきた。ブルックの時と同じように魔導二輪から降り、変装して町の中に入る。

 ここまでくればなるようになれという心境になり、ハジメ達は愛子達の居場所を探るために、お馴染みの冒険者ギルドに向かった。

 

 ハジメ達が冒険者ギルドに入ろうとすると、ドアが開き一組の冒険者パーティーが出てきた。

 

「よろしくお願いします。ゲイルさん。皆さん」

「あんまり気張るなよ、ウィル。簡単な調査なんだから、危険も少ないはずだ」

「そうそう。俺達が付いているんだから気楽に行こうぜ」

 

 武器と防具を装備した、いかにも冒険者というパーティーの中で、1人だけ小奇麗な装備の青年がいた。話し方も仕草も冒険者には見えない。ハジメは奇妙なパーティーだなと少し思ったが、そのまますれ違ってギルドの中に入っていった。

 ギルドは賑わっており、活気に満ちていた。

 ウルが観光町であることに加え、〝豊穣の女神〟と称えられる愛子の噂を聞きつけて人が集まっているようだ。

 その証拠に受付で愛子のことを話せば、受付嬢にまたかというような顔をされた。そして次のように注意を受けた。

 

「神殿騎士が護衛をしていますので、無闇に近づかないでくださいね。冒険者ギルドは責任を負いませんので」

 

 さもありなん。もっともハジメ達はもっと大それたことを考えていたりするが。

 教えられた場所、ウルの農地に向かうハジメ達。

 そこには住人に交じって畑や田んぼで農業をする愛子と生徒達の姿があった。その中にポニーテールの少女の姿を見つけた。

 

「あれが、シズク」

「お二人の大切な方ですか。綺麗な人ですぅ」

 

 初めて雫を見たユエとシアが興味深そうに見る。

 農作業をしているので多少泥は付いているが、トータスにはいない和風美人な雫の美貌は損なわれていない。むしろ健康的な雰囲気の美少女だ。

 一方のハジメと香織は、農具を持って働いている姿に深く安堵した。

 

「雫ちゃん。よかった。起き上がれるようになったんだ」

「ああ」

 

 王宮での酷く弱っていた姿を見ていた香織は、ずっと心の中で気にかかっていた。ハジメを助けるために飛び出したことは後悔していない。それでも傷ついた親友を置いてきたことは、後ろ暗い思いとして気にかかっていた。

 

『でもやっぱり、元気はないみたいね』

「……うん」

 

 頭の中にテイルモンの声が響いた。これではデジヴァイスに追加した新機能で、デジヴァイスの中にいるデジモンの声が、テイマーの脳内に届くというものだ。突然デジヴァイスからデジモン達の声が聞こえたら周りが驚くので、〝念話〟の魔法を参考にハジメがプログラムを作った。それを全員のデジヴァイスにインストールしたのだ。

 香織のデジヴァイスから聞こえてきたテイルモンの言葉に、香織が顔を曇らせる。よく見ていればふとした時に雫は溜息を吐いて、憂鬱な表情を浮かべている。長い付き合いの彼女には、彼女の心の傷が未だ癒えていないのが、何となくわかった。それは雫から思慕の念を向けられているハジメも同じだった。

 

「俺のせい、だな」

『それは違うだろ』

「うん。ハジメ君は何も悪くないよ」

 

 ハジメの零した言葉に、ガブモンと香織が反論する。確かに雫のトラウマ、PTSDの原因は6年前のハジメとサラマンダモンの戦いだ。その後の再発もベヒモスとの闘いで、トドメはハジメが目の前で奈落に落ちたことだ。ほとんどの原因にハジメが関係している。

 だがそれはハジメが悪いわけじゃない。悪い巡り合わせや悪意が降りかかってしまった結果だ。だが、ハジメとしてはそう思えない。

 

「もっと俺が強ければ雫に心配させることもなかった。そんな意味のない後悔をしているんだ。まあ、そうなったらユエとシアには会えなかったし、色々知らずにいたから、結果オーライといえるかもしれない。でもな、やっぱりどうしても俺が傷つけたって思っちまうんだ。それは香織もだろ?」

 

 香織と同じようにハジメも胸の内に抱えていた後悔を発露する。

 もしも橋が崩壊する際、ハジメも一緒に助かっていれば雫のケアをできたかもしれない。香織から自分が落ちた後の状況を聞いてから、心の奥底で思い続けていたのだ。

 それを聞いてユエとシアは難しい顔をする。確かにハジメが奈落に落ちなければ、そのまま帰還して雫の心をケアすることが出来た。その後、一緒に愛子の農地改革の手伝いをしていたかもしれない。

 だが、それでは封印されていたユエは解放されず、ルナモンも途方に暮れていただろう。シアとコロナモンも、ライセン大渓谷を彷徨い続けていたかもしれない。何より神エヒトの正体を知ることも出来ず、解放者達の情報と神代魔法を得られなかった。そうなれば故郷への帰還の手掛かりは掴めなかった。

 結果的なメリットとデメリットを比べると、今の状況の方が良いように思えるが、雫という大切な人の心が傷ついたことを、損得勘定に掛けることなんてハジメにはできなかった。

 

 とはいえ、こうして後悔に苛まれていても何にもならない。ここに来た目的を果たさなければ。

 今この場で彼女達の下に駆け寄って、正体を明かすのは論外だ。住人や、何より神殿騎士の目がある。光輝の言葉のせいでハジメは神敵認定されているのだ。慎重に動かざるを得ない。

 やはり一旦離れて、神殿騎士達が離れる夜を待った方が良い。

 名残惜しいがその場を後にし、夜まで潜伏することにするハジメ達だったが、今度はハジメのデジヴァイスからガブモンの声が聞こえてきた。

 

『ハジメ。デジモンの気配がする』

「何?」

『方角は町の外れ。あの建物だ』

『私も感じた。間違いない』

『ん。数は3つ』

『成熟期レベルか?』

 

 ルナモンとコロナモンも、ガブモンが感じたデジモンの気配に付いて教えてくれる。

 ガブモン達が教えてくれた方向へ目を向ける。そこにあった建物は、デジモンがいるのはあり得ない場所だった。

 

「教会だと?」

「何で教会からデジモンの気配が?」

 

 ハジメと香織が首を傾げる。教会はハジメと同じように、デジモンも神敵と認定しているはずだ。なのに、なぜ教会からデジモンの気配がするのか? 

 

「考えていても仕方ない」

「気になるなら行くしかないですよ」

 

 ユエ達の言葉にハジメは頷く。雫達の様子は確認できた。だが、教会のデジモンの気配を放っておけば、後々彼女達に危険が及ぶかもしれない。

 ハジメ達は教会に向かっていった。

 

「……え?」

 

 その後姿を、偶然振り向いた雫が目を見開いて見つめていた。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 ガブモン達が感じた気配のある教会に近づく。人の気配は無い。

 警戒しながら扉を開けて中に入る。

 入ってすぐに礼拝堂となっており、窓にはステンドグラスがはめられており、差し込んだ光が教会に相応しい厳かな雰囲気を漂わせている。

 その中に、1人の少女がいた。

 

「女の子?」

「……いや」

『デジモンだ』

 

 香織の言葉をハジメとデジヴァイスの中のテイルモンが否定する。

 

「何か御用ですか?」

 

 ハジメ達が入ってきたのに気が付いた少女が振り返った。その顔を見て驚いた。

 何せハジメ達が知っている顔にそっくりだったのだから。

 

「シエルに似ている?」

「確か妹がいるって言っていませんでした?」

「あ。本当だ。シスタモン ブラン。成長期だって」

 

 少女を見たユエ達がシエルに似ていることに驚く。香織が取り出したデジヴァイスに少女──ブランのデータが表示され、デジモンだと判明する。

 

「デジヴァイス。それにシエルって。まさかあなた達は!?」

 

 香織が取り出したデジヴァイスと、シエルの名前にブランは目を見開く。

 暫くまじまじとハジメ達、特にデジヴァイスを持つ香織を見つめると、ブランは近づいてきて頭を下げる。

 

「四聖獣チンロンモン様より伺っております。デジモンと共に戦うテイマー達。もしも出会えれば、全力を持って協力するように、仰せつかっております」

「シスタモン ブラン。まさか、君は」

 

 ハジメ達はシエルから聞いていたことを思い出す。

 シエルの姉妹も、彼女とは別に四聖獣の命を受けて行動していると。

 まさかこんなところで出会えるとは思えなかった。早速、お互いの情報を共有しようと、ハジメが口を開いた。

 

 ──バンッ!!! 

 

 が、その前に教会のドアが開け放たれた。

 振り向くと教会のドアが開け放たれており、そこには1人の少女がいた。

 

「はぁはぁ……」

 

 激しく息切れするその少女は、さっき様子を見てきた八重樫雫だった。

 まさかの人物の登場に固まるハジメ達の前に、雫はツカツカと近寄って来る。

 そして、まじまじとハジメと香織の顔を眺める。

 今のハジメ達はアーティファクトで変装している。目も髪も色が違うし、顔立ちだって異なっている。だから、アーティファクトを解除しない限りは、気が付かれるはずがない。

 なのに、なぜだろうか。

 雫は目元を潤ませると、そっと香織とハジメの首に腕を回し、静かに泣き始めた。

 

 

 

「ッ……よがっだ……無事で、ほんどうに、生きでいて……よかったよぉ……香織、ハジメェ」

 

 

 

 礼拝堂に少女のすすり泣く声が響く。

 なぜ彼女がハジメ達の正体を言い当てたのかわからない。だが、予定にないタイミングで正体がばれたのは問題だ。大きな騒ぎになりかねない。ここは誤魔化して、この場から去るのが正解だ。

 でも、2人にはそれが出来なかった。

 傷つけてしまったと後悔していた雫の涙に、2人は雫を抱きしめ返す。

 

「ごめんね。ごめんね雫ちゃん。一人にして」

「傷つけて、ごめん。僕は、ちゃんと生きているから」

「うん。うん!」

 

 こうして三人は再会を果たした。

 雫を追いかけてきた愛子と優花が教会に入って来て目にしたのは、泣きじゃくる三人と彼女らを見守るユエとシア、ブランだった。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

「南雲君に白崎さん! 無事で本当に良かったです!!」

 

 ハジメと香織を見ながら、先ほどの雫のように愛子が涙声で言う。

 あの後、ハジメ達はとりあえず人目に付かないように教会の奥の広間に移動した。

 お互いの状況と情報をすり合わせるために。

 ハジメ達は変装のアーティファクトを外し、改めて愛子達に無事だった報告をした。再び泣き出す愛子。そして、優花も同じように泣きながら、ハジメの無事を喜んだ。

 

「南雲おかげで助かったの。本当にありがとう!」

 

 頭を下げてハジメにお礼を言う優花。トラウムソルジャーから助けられたことのお礼をようやく言えて、胸のつっかえが取れたような晴れ晴れとした顔をした。

 

 ちなみに、なぜ雫が変装したハジメ達に気が付いたのかというと、後ろ姿と雰囲気で何となくとのことだった。ハジメと香織に対してだけだろうが、アーティファクトの変装を見破る雫に、ユエ達は驚きを隠せなかった。

 

 一通り再会を喜び終わったところで、ハジメ達は自分達の身に何があったのか説明をすることになった。

 それならば、ハジメは他の生徒達も交えて説明することを提案。愛子達は農作業の途中で抜けてきたので、今日の作業が終わってから改めて説明をすることになった。

 ただし、ようやく再会できた雫だけは、ハジメ達と一緒にいることになった。愛子達が退室しても、雫はハジメと香織の間に座っている。

 

 愛子達の農作業が終わるまで、ハジメ達は教会で先にブランと話し合いを行う。

 そこでブランが教会の奥から姉のノワールと協力者のマミー、そしてエンジェモンとピッドモンを連れてきて、ハジメ達はまたまた驚いた。

 

「なんでエンジェモンにピッドモンがいるんだ?」

「ええ……」

「エンジェモン。成熟期。天使型。必殺技は《ヘブンズナックル》」

「ピッドモンもエンジェモンと同じ天使型ですぅ。確か天使型デジモンって珍しいんですよね?」

「ああ。俺もデジタルワールドでは出会えなかった」

 

 シアの質問にハジメが答える。隠しているが、ハジメはエンジェモンというデジモン界のビッグネームに出会えて、内心感動していた。

 

 エンジェモン達と自己紹介した後、彼らがこの世界に来た経緯を聞く。

 

「私達がこの世界に来たのは事故のようなものだった」

 

 エンジェモンとピッドモンが語った経緯は次のようなものだった。

 いつものようにデジタルワールドの天界エリアの警備をしていた2体。だが、突如攻撃を受けた。そのまま攻撃を仕掛けてきた相手と交戦していたところ、デジタルゲートが開き、その中に落とされてしまった。彼らはそのままゲートを通って、この世界に辿り着いてしまった。

 その後は森の中でダメージを回復させ、ウルが襲われているのを察知して、愛子達の前に現れたのだ。

 これらの原因である、攻撃してきた相手というのが、

 

「メフィスモンだと!?」

「ああ。そう名乗っていた」

 

 かつて倒した最悪の敵の名前に驚きを隠せないハジメ。

 

「だから、あいつがこの街を襲っているのを見た時、危険だと思って飛び出した」

「君はメフィスモンを知っているのか?」

 

 ピッドモンの問いにハジメはメフィスモンについて、とても言いにくそうに説明する。

 メフィスモンはある世界であらゆる命を憎み、死んでいったアポカリモンのデータの欠片から誕生した。その出自から、アポカリモンの恨みを引き継ぎ、人間もデジモンも含めたあらゆる生命の殲滅を目的としている。

 暗黒系の魔術を得意とし、残虐極まりない性格をしている。知能も高く、策士家だ。

 その証拠に6年前は人間に化けてVPラボという会社の社長になりすまし、ウィルスプログラムを仕込んだ電子ペット『Vペット』を流行させた。そして、そのウィルスを一斉に起動させ、Vペットをデジモンにして現実世界を破滅させようとした。

 奇しくも、香織と雫がサラマンダモンに襲われたのもメフィスモンの企てだったのだ。

 

 ハジメと自分達の邂逅の裏で起きていた事件の真相を、香織と雫は初めて知った。

 世界を破滅させようとする危険なデジモンがいたことを、2人に知ってほしくなかったから。

 だが、メフィスモンが生きているなら、話すしかない。それほどに危険なデジモンなのだ。

 

 遂にトータスで暗躍する黒幕の正体を知ったハジメ達。

 次に説明をするのはブランとノワール、そしてマミーだ。

 ブランが前に出て自分達が何をしてきたのか話始める。

 

「チンロンモン様の命で、この世界で暗躍している黒幕を探っていました。私とノワール姉様は、偶然にも敵の拠点に潜り込むことが出来ました。そこでメフィスモンと共に暗躍するもう一体のデジモン、そして……人間を見つけたのです」

 

 




〇デジモン紹介
シスタモン ブラン
レベル:成長期
タイプ:パペット型
属性:ワクチン
白うさぎを被ったような女の子型なデジモンで、姉にシスタモンノワールがいる。姉のノワールとは対照的でやや引っ込み思案で、いつも姉の後ろに隠れていることが多い。姉の暴れっぷりに引き気味になることがしばしばである。武器に持つ三又の槍“クロスバービー”は相手を貫く『ディバインピース』の攻撃面と、石突きを地面に突いて起こす波動『プロテクトウェーブ』で身を守る防御面、両方を兼ね備えている。さらに姉との連携技『グランドシスタークルス』がある。


遂に雫と再会したハジメ達。
ようやくヒロインがそろい踏みです。さあ、ここから修羅場にもっていかないとですね。

エンジェモンとピッドモンがトータスにやってきたのもメフィスモンの仕業でした。その目的とは……?
次回はシスタモン達のお話です。
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