ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る 作:竜羽
徐々に黒幕とかの正体を明かしていきます。
・前回のあらすじ
ウルの町にやってきたハジメ達。そこで愛子と元気な雫の姿を見て安堵する。だが、町の教会からデジモンの気配を察知。そこに向かったところ、天使型デジモンのエンジェモンとピッドモンがいた。
そこに、ハジメと香織の面影を感じた雫がやってきた。
突然の再会に驚くも、離れ離れになっていた大切な人との再会に涙を流すハジメ達だった。
エンジェモンとピッドモンが事情を話した後、続いてシスタモン姉妹のブランとノワールが事情を説明し始める。
デジタルワールドの安定と秩序を司る四聖獣の一体、チンロンモンから異世界トータスの調査を命じられた彼女達は、偶然入り込んだ異空間で、黒幕達の本拠地を見つけた。
「異空間に入り込む。あなた達、そんな力があるの?」
「いえいえ。チンロンモン様が授けてくださった力の一部で、空間が歪んでいた部分を無理やり広げたんですよ。お姉さまが怪しいから突撃だ、って」
異空間に入り込んだことに、魔法に精通するユエが驚く。トータスでは召喚や転移などの空間を操る魔法は、神代魔法だと考えられているからだ。ブランはそんな力はないと言いながら、入り込んだ経緯を説明する。
引っ込み思案で大人しいブランと違い、陽気で活発なノワールは、たまにその場のノリで行動する。彼女は空間が歪んでいる部分に、チンロンモンがもしもの時のためにと授けた力を、歪んでいた空間にぶつけて、無理やり入り込んだ。そのまま空間内を捜索したところ、まさかの黒幕と思しき存在を見つけた。
ノリで大手柄を上げたノワールは、得意げに胸を張る。
ブランはその時の苦労を思い出して、げんなりしている。
なんとも対照的な姉妹だ。
「ちょっと話がそれましたね。黒幕と思われるメフィスモンと正体がわからないデジモン、それから人間を見つけたはいいものの、とても私達2人では何もできませんでした。仕方なく逃げようとしたんだけど……」
「出られなかったんだよねえ♪」
「……もとはといえば、お姉さまがあんな強引な入り方をしたからでしょう……」
カラカラと笑うノワールをジト目で見るブラン。
強引な入り方をしたため、2人が元の空間に戻るための道が消えていたのだ。これではチンロンモンの下に帰還できない。2人が途方に暮れていたその時、メフィスモン達が何かを転送してきた。
それは、意識を失ったウィルス種のメタルグレイモンだった。
姉妹と話を聞いていたハジメ達は知る由は無いが、このメタルグレイモンは王都を襲ったメタルグレイモンだった。
光輝が放った魔法で倒されたように偽装され、転送された先は彼らの本拠地だったのだ。
「メフィスモン達は何かの実験をしていたようでした。メタルグレイモンは一通り調べられた後、力尽きてコロモンに退化してしまいました」
「もう本当にむかつく。デジモンがデジモンで実験とか。むかつきすぎたからコロモン助けちゃった」
ほら。といいながらコロモンを両手に抱えてハジメ達に見せるノワール。
「「「え……ええええええ!?!?」」」
突然取り出された、幼年期デジモンの姿に驚くハジメ達。
手足の無い真ん丸な体に大きな口。2本の触覚が特徴的なレッサー型デジモンだ。
しかし、本来はベビーピンクな体をしているはずなのに、黒色に染まっている。額にはオレンジ色のクリスタルが付いている。
そして何より、その顔には苦し気な苦悶の表情を浮かべ、魘されるように眠っている。
「この、頭のはッ!?」
特に驚いていたのがハジメだった。コロモンの頭に付いているクリスタルは、ハジメのパートナーであるガブモンの幼年期のツノモンの時に頭に付いている青いクリスタルと似ていた。
まさかと思ったハジメはデジヴァイスを取り出す。
「そのコロモン、調べていいか?」
「変なことしない?」
「絶対しない」
「……わかった」
「すまない。ガブモン」
「ああ」
ノワールに断りを入れてから、ハジメのやることを察していたガブモンは、ノワールに抱えられたコロモンを見つめる。
ガブモンの視界を通して、デジヴァイスがコロモンのデータを読み取る。そして、デジヴァイスにコロモンのデータが表示される。
「コロモン。幼年期。レッサー型。……やっぱりか」
コロモンの基本情報の後に、更に読み取られたデータが出てきた。
「X-antibody……X抗体。まさかメフィスモンの実験は、デジモンにX抗体を植え付けることなのか?」
読み取ったデータから考察を始めるハジメ。
なんとこのコロモンにはガブモンと同じX抗体が宿っていたのだ。ガブモン以外にX抗体を持ったデジモンと出会ったことは無かったが、他のデジモンと異なる雰囲気を感じたハジメの予想が当たった。このことから、メフィスモンの企みとは何なのか、ハジメは考えを深めていく。
一方の周りは少しついていけない。
「あのハジメさん。いったいどういう事なのですか?」
「あー。こうなるとハジメ君はなかなか戻ってこないよ」
「考え込むと一直線。変わっていないのね」
話しかけたシアにも気が付かないハジメの様子に、彼をよく知る香織と雫は苦笑する。
「ん。でもそこもハジメの良い所」
「え?」
だが、ユエまでもハジメへの理解を示したことに、雫は驚きまじまじと彼女を見る。
「……何?」
「……ユエ、さん。あなた、まさか」
雫がユエに何かを言おうとしたとき、ノワールが声を張り上げる。
「考えるのは後々!! 話の続きを聞きなさい!!」
「あ、ああ。悪い」
「まったく。まだ私達のターンなんだから。この子を助けた後、流石に私達が潜入しているのがばれちゃったのよ」
コロモンを助けてから、彼女達は何とか脱出しようとした。しかし、コロモンを助けたことで、シスタモン達は見つかってしまった。地の利は向こうにあるため、徐々に追い詰められていった。そこで彼女達を助けたのが、メフィスモン達に従っていた人間の1人、マミーだった。
彼はシスタモン姉妹とコロモンを手助けし、トータスへと繋がる空間の出入り口に案内すると、一緒に逃げ出してきた。
それから一緒に行動を共にしている。
目下の目的は、暗黒のエネルギーに蝕まれて意識が戻らないコロモンの治療だった。
本来ならベビーピンク色の体色が黒くなってしまっているのは、メフィスモン達の実験の影響で、強い暗黒のエネルギーが体内に残ってしまったせいだ。助け出されてから一度も目覚めていない。
四聖獣に仕えているとはいえ、暗黒のエネルギーを除去することはシスタモン姉妹にはできない。何とかして方法を探していたところ、愛子の〝豊穣の女神〟という噂を聞き、万に一つの可能性に賭けてウルにやってきた。
これがシスタモン達のウルにやってきた経緯だった。
話を聞いたハジメはまずはマミーに話しかけた。
「まずははっきりさせておきたい。お前、マミーモンか?」
そう言われたマミーは、立ち上がると青い服を着た人間の姿から本来の姿に戻った。
全身に白い包帯を巻いた、エジプトのミイラのような姿のアンデッド型デジモン、マミーモンだ。右手には愛用の銃『オベリスク』を持っている。
突然人間がデジモンの姿になったのでユエとシアは驚き、パートナーデジモンと共に身構える。何せどう見ても悪役のようにしか見えないのだ。
ハジメと香織も驚いていたが、話を聞いて予想出来ていたので、そこまで驚いていない。
何せ、このマミーモンの事はよく知っているのだ。
「流石は選ばれし子供たち、いやお前達はデジモンテイマーだったか。俺はマミーモン。デジモンだ」
感心したように言うマミーことマミーモン。
ハジメ達もやっぱりと納得する。マミーの正体を察したのはマミーモンというデジモンの知識があったのもあるが、地球で放映されていたアニメ『デジモンアドベンチャー02』で登場していたからだ。マミーの時の姿も、そのアニメでマミーモンが人間に化けていた姿にそっくりだった。
多くの人は『デジモンアドベンチャー02』と前作の『デジモンアドベンチャー』はただのアニメだと思っているが、この二つの作品の世界は別世界として存在していることを、ハジメ達は知っていた。
なぜなら、ウルで騒動を起こしているメフィスモンが生まれるきっかけとなった存在であるアポカリモンこそが、『デジモンアドベンチャー』のラスボスだったからだ。メフィスモンと戦った時に邂逅した、究極体デジモンのオメガモンもアニメに登場していたため、ハジメとタカト達は『デジモンアドベンチャー』と『デジモンアドベンチャー02』の世界が存在することを確信したのだ。そもそもデジモンの存在自体が、ゲームやカードの存在だったのだ。アニメの世界があったところで、不思議でもない。
このことから、マミーモンのことも推察できたのだ。
アニメではマミーモンは主人公たちの前に立ちふさがる悪役として、相棒のアルケニモンと共に登場した。悪役だがアルケニモンの事を思っており、初登場ではアルケニモンのピンチに駆けつけ、応戦しつつ逃走を図るというなかなかかっこいいシーンを見せた。それからもコミカルな面を見せつつ暗躍していたのだが、その最期はかなり強烈だった。ハジメもそれをよく覚えており、そこからさらにある事実がわかって来る。
「俺達はお前がどうやって生まれて何をしてきたのか、ある程度知っている。そこから推察できるんだが……。この事件、暗躍しているのはメフィスモンだけじゃないな」
「ああ。説明する手間が省けていいぜ」
ハジメの言葉にニヤリと笑うマミーモン。
マミーモンの正体をハジメ同様に見破っていた香織と雫は、ハジメが言うメフィスモン以外に暗躍している存在に察しがついている。香織なんて、その存在と別個体だがテイルモンが因縁を持っているので、思わずテイルモンを抱きしめている。
ユエ達はどういうことなのかわからなかったが、オルクス大迷宮のオスカー邸でアニメを見ていたユエとルナモンは心当たりに思い至った。
「マミーモンは、暗躍していたオイカワユキオという男の遺伝子データから生まれたデジモン。オイカワユキオは、あるデジモンに憑依されていた。そのデジモンは……」
「……ベリアルヴァンデモン」
「ああ。そうだ」
ユエとルナモンの呟きに首肯するマミーモン。
アニメではマミーモンと相棒のアルケニモンは、及川由紀夫という男が生み出したデジモンだった。彼には物語のラスボスである究極体デジモンのベリアルヴァンデモンが乗り移って暗躍していたのだ。物語の終盤、復活したベリアルヴァンデモンは用済みとばかりにアルケニモンをマミーモンの目の前で惨殺。激昂したマミーモンは敵討ちとして向かっていった。
『御託は地獄で吐きやがれぇぇっ!!』
悪役ながらアルケニモンへの思いは純粋だったマミーモン。だが、ベリアルヴァンデモンには敵わず、あっという間に殺されてしまった。
そのことを説明され、ユエ達は彼の境遇に沈痛な表情を浮かべるが、マミーモンは構わずに何が起こったのか話し始める。
「俺はアルケニモンと一緒に、ベリアルヴァンデモンによくわからない世界で殺された後、気が付けばヴァンデモン達の拠点にいた。最初はわけがわからなかったし、俺達を殺したヴァンデモンをぶっ殺してやろうとした。だが、メフィスモンに邪魔された。そして何より……アルケニモンが怯えて逆らえなくなっていたんだ」
何故か記憶を持ち、蘇らせられたマミーモンとアルケニモン。マミーモンはヴァンデモンへの敵意を持っていたが、アルケニモンは死ぬ前の経験の影響で、心を折られていた。メフィスモンがいる上、アルケニモンが死にたくない一心で従っていたため、マミーモンは何もできなかった。
「だが、このままあいつらに従っていたって、前の繰り返しだ。ならやることは1つ。今度こそ、ベリアルヴァンデモンを倒して、アルケニモンと自由に生きるんだ。そのためなら、俺はなんだってやってやる。だからお前達に協力してやっている」
強い覚悟を灯した目でマミーモンは言いきった。
シスタモン姉妹も彼の覚悟を感じ取り、行動を共にしているのだろう。
それはハジメ達も同様だった。彼の言葉からは嘘偽りない必死さを感じた。だから、彼の事を信用することにしたのだった。
こうしてシスタモン達の話は終わった。もちろん、まだ話していないことはあるかもしれない。それでも、十分信用できるとハジメ達は判断した。
ハジメ達がこれまで知ってきたことも加味すれば、かなりのことが判明した。
まだまだ考えることはあるが、まず真っ先にやらなければいけないことがあった。
ノワールが抱えているコロモンの治療だ。
もともと彼女達はそのためにウルにやってきたのだ。
偶然だが、エンジェモンとピッドモンという聖なる力を持つデジモンと出会えた。メフィスモンの襲撃の後、彼らにコロモンに宿ってしまった暗黒のエネルギーの浄化を頼んだ。しかし、あまりに強いエネルギーで彼らには浄化できなかった。
どうしたものかと思っていたところに、ハジメ達がやってきた。
地球で学生ながらデジモンの研究をしていたハジメはもちろん、香織とテイルモンの存在は光明だった。
テイルモンの進化したエンジェウーモンも、エンジェモン達と同じ聖なる力を持つ大天使型デジモンだ。協力すれば今度こそコロモンを癒せるかもしれない。
夜になって愛子達が来る前に、治療をすることになった。
目立たないようにこのまま教会の奥で、3体の天使型デジモンによる治療が行われた。神秘的で優しい光に包まれて、コロモンの身体から暗黒のエネルギーが消滅していく。
やがて、コロモンは本来のベビーピンクの身体になった。苦し気だった表情も穏やかになり、安らかに眠っている。
「ありがとう。エンジェウーモン。君のおかげでコロモンを救えた」
「貴女の手を煩わせて、我が身の力不足を恥じるばかりです」
「そんなことは無いわ。私だけの力ではきっと無理だった。それほど、強い力でした。2人の力も必要だった」
浄化を終えた3体は互いの健闘を称えあう。
「本当にありがとうございました!」
「感謝するわ。コロモンが治ったのもそうだけど、メフィスモンのやつの実験の1つを潰せたわ。この調子であいつも倒すわ」
シスタモン姉妹もハジメ達に礼を言う。ノワールの方は少し物騒だが。
「それについてだが、本当にコロモンの身体が治ったのか確認したほうがいい。少し俺に預けてくれないか?」
「あ、それもそうね。これもまだついているし」
ハジメの提案は渡りに船だったので、シスタモン達はコロモンをハジメに預けることにした。
特にノワールの言うとおり、コロモンにはX抗体の証であるクリスタルが付いている。暗黒のエネルギーは消えたが、X抗体はコロモンの身体に根付いてしまったのだ。
デジモンの知識ももちろんだが、X抗体についてはハジメが良く知っている。
ハジメはノワールからコロモンを受け取ると教会を後にした。
雫を伴ってハジメ達は町の郊外まで足を運ぶと、宝物庫からアークデッセイ号を取り出す。中の研究設備でコロモンの検査を行うためだ。
香織達もハジメを手伝いたかったが、愛子達の仕事が終わる時間が迫っていた。
「先生たちへの説明を任せてもいいか?」
「うん。大丈夫だよ。ハジメ君はコロモンの事をお願いね」
「ああ。こいつも被害者だからな」
コロモンを撫でながらハジメはアークデッセイ号に入る。するとアークデッセイ号は周囲に見えないように偽装され、姿が見えなくなった。
ハジメは光輝のせいで神敵認定されている。愛子には悪いが、生きているとばれるリスクを冒しながら生徒達に会うよりも、コロモンの検査の方が重要だと判断した。
香織達もそのことには納得しており、先生への説明を引き受けた。
「じゃあ、行こうか。先生は教会に来るんだっけ?」
「ええ。神殿騎士の人たちには席を外してもらうわ」
「遠目で見たけど、あの人たち先生へのハニートラップ要員なの?」
「ええ。でも今では逆に先生の魅力の虜になっているけれど」
香織と雫はたわいもない話をしながら、教会に向かう。
ユエとシア、デジモン達は久しぶりの親友達のやり取りを見守りながら、後をついていった。
〇デジモン紹介
シスタモン ノワール
レベル:成熟期
タイプ:パペット型
属性:ウィルス
頭の黒猫の形をしたクロブークを被っている修道女のデジモンで、シスタモン ブランとは姉妹の間柄である。とても陽気な性格で天真爛漫な振る舞いから場を和ませる。昔、とあるデジモンからの依頼であるデジモンをブランと共に鍛えていた。ただシスタモン ノワールは鍛錬半分・遊び半分で取り組んでおり、悲痛な言葉をだしても笑い飛ばしながら銃口を向けていた。シエルとは双子の姉妹であり、唯一彼女には頭が上がらない。
“アンソニー”と呼ばれる銃を両手に持ち、必殺技には乱れ撃ちの『ミッキーバレット』と、一直線に弾丸を2連発する『ブレスファイア』、さらに妹と動きを合わせて敵を仕留める『グランドシスタークルス』がある。
二章のエピローグでヴァンデモンが言っていたネズミとはシスタモン達でした。彼女達によってメタルグレイモンことコロモンは助けられました。
さて、次話は……修羅場かな?