ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る 作:竜羽
タイトルはふざけていますが、内容はちゃんとしています。
修羅場までもっていきたかったですが、キリがいいので次回以降に持ち越しです。
・前回のあらすじ
シスタモン姉妹の話を聞き、トータスで暗躍するメフィスモンとヴァンデモンの存在を知ったハジメ達。彼らの暗躍による被害者であるコロモンの浄化と治療を行った後、ハジメを除いた面々で愛子達との話し合いを始めるのだった。
農作業を終えた愛子達は生徒達のみを連れて教会にやってきた。
神殿騎士達は同席させなかった。事前に伝えるとごねるかと思われたが、エンジェモン達の事を神の使徒と思っている彼らは、あっさりと納得。教会の周囲を警備することになった。
愛子に連れられてやってきた生徒達は、香織の無事な姿に驚いた。
「無事だったんだね!」
「怪我とかしていないの? あのデジモンは??」
「後ろのあの子達誰!? すっごく可愛いんだけど」
質問攻めしてくる生徒達に、香織は一つ一つ答えていく。
今の香織達は変装のアーティファクトを使っていない。だから、ユエとシアという絶世の美少女に、全員がざわめく。
サラサラの輝く金髪に、ビスクドールの様な愛らしさのユエに、神秘的な銀髪に異世界特有のウサミミのシア。男子も女子も興味津々だった。
「とりあえず、ご飯用意してあるから、食べながら説明するよ」
「白崎さんの言うとおりですよ。皆さん、落ち着いてください」
香織と愛子の言葉に、落ち着きを取り戻す生徒達。
「ありがとうございます。先生」
「いえ。落ち着いたほうがいいですから。……そういえば、南雲君はどうしたんですか? 姿が見えませんが」
「ハジメ君はちょっと用事が出来まして。それに同席していないとはいえ、神殿騎士が近くにいる場に姿を現すのはまずいですから」
「ああ。なるほど」
「後で変装しながら会いに来ると言っていました」
「わかりました」
慎重すぎると愛子は思ったが、危険なトータスを旅する中で身に着けた立ち回りなのだろうと納得した。
その後、教会の広間を借りて、ささやかながら食事会が行われた。
料理は香織とシアが用意していたもので、昼間の内にウルの市場で仕入れた米などの食材を使っている。ウルでは米料理がよく食べられており、全員が気に入っていた。それを日本の味を良く知る香織がさらに手を加えて作ったことで、より日本人が好む味付けになった。その味はウルの食事で故郷を思い出していた生徒達にクリティカルヒットした。
うまいうまいと連呼しながら、料理を堪能する生徒達。
家が洋食レストランの優花は、料理を食べて少し考え込むと、料理を作った香織とシアに話しかける。
「これ調味料は何を使っているの? 日本と同じ味付けなんてトータスじゃ難しいのに」
「オリジナル。ある人達に分けてもらったんだ」
「ある人達? 一体どこの人なの?」
「うーん、そろそろ話してもいいかな」
優花との話の途中で考え込む香織。料理に使っている調味料を分けてくれたある人達とは、オルクス大迷宮のオスカー邸にいるフリージアとエガリだ。目覚めてからハジメ達が大迷宮を攻略するまでの間に、彼女達は生活環境を整えていた。その中には料理の準備もあり、多種多様な香辛料と調味料を用意していた。それらは今のトータスにはない味を出せるものもあり、食べた香織がそれらをさらに組み合わせて、日本の料理の味を再現することに成功したのだ。
そのことを説明するには、オルクス大迷宮の最深部に何があるのか説明する必要がある。
いいタイミングだと思った香織は、立ち上がって生徒達の目に立つ。
「そろそろみんなが気になっていることを話そうと思います。まずはリアライズ。テイルモン」
デジヴァイスを掲げるとそこから光と共にテイルモンが出てきた。
「私はテイルモン。香織のパートナーデジモンだ」
右手をクルリと回してお辞儀をするテイルモン。突然のデジモンの登場に唖然とする生徒達。しかし次の瞬間には騒然となる。
雫達は無用な混乱を避けるために、エンジェモン達がデジモンだという事は秘密にしていた。だから、生徒達は初めて近くで生のデジモンを見たと思っている。
「で、デジモン!?」
「あれの中に入っていたの!?」
「だ、大丈夫なのか?」
何人かは怯えているが、危険はないと香織達が宥める。香織達がデジモンと一緒にいることをすでに知っていた愛子と優花も、生徒達を落ち着けさせる。
ある程度落ち着いたところで、今度はユエとシアもデジヴァイスを掲げて、自分達のパートナーを出す。
「ルナモン」
「コロナモンだぜ! よろしくな」
新たに出てきた二体にまた驚く生徒達。いい加減に驚き疲れそうだったが、ここからが本題だった。
デジモン達を紹介したのは、これからの説明に不可欠だからだ。
香織が中心になって香織達が知ったことを説明した。
香織がテイルモン達と王宮を飛び出してから、オルクス大迷宮に突撃して、ハジメと再会したこと。大迷宮から脱出するために攻略を決意し、道中にユエとルナモンと出会ったこと。最後の試練を乗り越えた先で知りえたトータスの神、エヒトの真実のことを。
ハジメの肉体に起こったことや、香織が傷だらけになりながら治療したことなどは多少表現を抑えて話した。あまりに凄惨過ぎるからだ。
だが、雫だけは香織が説明するときに言い淀んだ気配から、何かを察していたが。
オルクス大迷宮の最深部については、快適な環境と館があったことには全員が驚いた。その気になれば地球と変わらない暮らしが出来ると聞き、心底羨ましく思った。料理の調味料までそこで調達したと聞き、優花は心惹かれていた。
エヒトの真実には誰もが言葉を失っていた。
自分達が召喚された理由である魔人族との戦争が、エヒトの退屈しのぎに過ぎなかったこと。光輝達が勇者として戦い、戦争に勝ったとしても、地球に返してもらえる可能性は限りなく低いこと。この二つの話は、いつか帰れると思っていた彼らの希望を打ち砕く内容だった。
香織の話はさらに続く。
シアに手伝ってもらいながら、亜人族の裏の歴史も話した。亜人族の歴史は神に翻弄された歴史とも言え、エヒトが自分達を地球に戻してくれるような親切な存在とはとても思えないと確信させるものだった。
しかし、樹海の次に訪れたライセン大渓谷の大迷宮で、解放者達が残した神代魔法を全て習得することが出来れば、帰還の望みを叶えられるかもしれない情報を得たとを話すと、生徒達の目には新たな希望が宿った。
なお、香織は解放者のミレディ・ライセンが、コールドスリープから蘇ったことは話さなかった。別に口止めされていないが、無闇に広めない方が良いと思ったのだ。
「白崎さん達は、大迷宮を回って神代魔法を集める旅をしているんですね。だから、私達にも合流しなかったのですか?」
「はい。教会に存在を知られれば監視が付きます。下手をすれば妨害や暗殺をされかねません。だったら、単独行動の方が良いと思ったんです」
「そうですか……確かにそうですね」
腕を組んで香織の言葉に同意する愛子。社会科教師である彼女は、地球における戦争の歴史の知識がある。中にはこのトータスの様な宗教が絡んだ戦争もあった。宗教の違いから起きた弾圧は、時に虐殺を引き起こした。それと同じことが過去の解放者達にも起こり、今は香織やハジメ達に起こり得ると理解できた。
一方の生徒達の表情には、敗北感と劣等感が浮かんでいた。
すでに彼らにもハジメの生存は伝えられている。学校でも特別優秀な生徒だったが、それは異世界でも変わっていなかった。しかも、世界の秘密に迫り、神の思惑にも抗うために香織達と共に動いている。まるでアニメの主人公みたいだと思った。それに比べて自分達は、光輝に同調したとはいえ、愛子が止めるのも聞かずにトータスを救うことに賛同したというのに、戦うのが怖くなって先生の優しさにおんぶに抱っこだ。
そんな生徒達の様子に、後でフォローを入れなくてはと愛子は考えつつ、香織に質問をする。
「このことは天之河君達には……」
「伝えるのは不味いでしょうね。デメリットしかありません」
「確かに。この話を信じても信じなくても問題しか起こさないわ」
幼馴染で、彼の事を知っている香織と雫が断言する。
光輝にこのことを説明しても、彼の性格的にも立場的にも悪手にしかならない。
信じた場合は、教会に直接乗り込んでエヒトが間違っていると訴え始めるだろう。結果、異端者認定まっしぐら。良くて洗脳されて教会に都合のいい勇者にされ、悪くて殺されるだろう。
信じなかった場合は、ハジメを批判して香織を引き離そうとするだろう。教会もそれに乗っかって、さらにハジメ達を処罰しようするだろう。いや、それどころか拘束して、銃火器を量産することを強要されそうだ。
この説明をすると全員が納得した。いつか説明するにしても、地球に帰還する方法を確立させてからの方が良いと、ハジメ達の間でも結論が出ていた。
そして話は、トータス各地で起こっているデジモンの出現と異変に関する内容に移った。
ここでようやくエンジェモン達がデジモンであると説明した。
エンジェモンとピッドモンはともかく、シスタモン姉妹とマミーモンについては、信じられないと驚愕する者達ばかりだった。
いい加減驚き疲れた生徒達のために、デザートのプリンアラモードを振舞った。
一息ついた後、改めて話を再開する。
「今は表面化していませんが、トータスには異変が起きています。デジタルワールドを巻き込む形で」
シスタモン姉妹の話を踏まえて、まとめた内容を話していく。
「最初の異変は、テイルモンとハジメ君のパートナーデジモン、ガブモンが現れたこと。そもそもデジモンは地球と隣接しているデジタルワールドに存在する電子生命体です。異世界のトータスに現れることが異常です」
「その異変はデジタルワールド側でも観測していました。それで私たち姉妹が調査にこの世界に赴いたんです」
ブランも説明に加わる。
昼間にハジメ達にもした内容を説明し、暗躍するメフィスモンとヴァンデモンの存在を伝える。エヒトだけでなく、邪悪な存在が暗躍していることに、生徒達は絶望的な表情を浮かべる。
「二体の暗躍の痕跡は王国以外にもありました。ハルツィナ樹海の近くではダークタワーという建造物が、デジタルワールドからデジモンを呼び出し、操っていました」
シアとの特訓中に襲い掛かってきたマメモン三兄弟のことだ。
彼ら以外にも樹海にはスカルバルキモンもいた。さらに浩介達からも聞いたのだが、樹海には何体かのデジモンがいたそうだ。放置するのは危ないので、フェアベルゲンに気が付かれないように倒していたそうだ。
だが、そのデジモン達も様子がおかしかったそうで、もしかしたらメフィスモン達の暗躍があったのかもしれない。メタルグレイモンで実験をしていたのだから、あり得る話だ。
エヒトに加え、得体の知れない脅威が増えたこと。さらに王国が戦争に向けて大きく動き出している現状を説明し終えた。
食事会が始まった時とは比べ物にならない重い空気が漂う。
トータスが思っていた以上に危険に満ちていることを理解したのだ。
「現状はわかりました。ありがとうございます、危険を伝えてくれて」
愛子が香織達に頭を下げる。
大迷宮から脱出しても、神に見つからないために姿を隠して行動していたのに、見つかる危険を冒して知らせてくれたのだ。
当然、何か他にも考えがあることを察していた。
「そろそろ話してください。危険を伝えるだけじゃないですよね?」
「はい。今皆は先生のお手伝いで戦闘には参加していません。でも、戦争が始まってもこのままだと思えません」
「……それは……そうでしょうね」
少し考えながら、香織の言葉を肯定する。
愛子も薄々だが察していた。戦争が始まってしまえば、戦況によっては光輝達のパーティーだけでなく、愛子達や城に残っている生徒も戦地に赴くことになりかねない。今でさえ王国に無理を言っているのだ。戦争という危機的状況になれば、無理やり約束を破って、神の使徒全員を戦わせられかねない。
「ハジメ君が予想した最悪の展開は、皆を人質に私達を脅すということです。もちろんそうなった場合でも、皆を救出する手段を考えます。でもその分だけ妨害されるリスクも増えますし、帰還まで時間がかかってしまいます。私達はそうなる前に皆を助けた方が良いと判断しました。ウルにやって来て皆に接触したのはそのためです」
もちろん、最優先するべきは雫と愛子だったが、それは言う必要は無いだろう。
「私達が考えたのは──―みんなで王国から逃亡するという作戦です」
「「「「「……は?」」」」」
香織が言ったことが理解できず、全員が呆気にとられる。
そんな反応が返って来ると思っていたので、少し待つ。
「ええっと、どういうことなんですか? いえ、言っていることはわかるんですよ。危なくなる前に、王国から逃げるというのは。ですが、私達には王国以外に後ろ盾がありません。そんな状態で、トータスで生きるのは無理だと思います。それに逃げられたとしてもすぐに王国や帝国、魔人族に見つかってしまいます」
愛子のいう事はもっともだった。そもそも戦争参加に反対なのに王国にいるのは、見知らぬ異世界に身一つで放り出されないためだ。王国が身分を保証してくれなければ、トータスでの常識に疎い彼らは、安全に生きていけない。加えて、王国の庇護下にいなければ、高いステータスを持つ異世界人の集団である彼らは、様々な勢力から狙われかねない。
帝国に奴隷にされたり、教会に異端者認定されたり、魔人族に標的にされたり。王国という後ろ盾があるからこそ、国賓扱いされている部分がある。
それを捨てて逃亡しようと香織は言っているのだ。
「大丈夫です。王国も、他の国や魔人族も手が出せない逃亡先があります」
愛子の懸念事項をひっくり返すことを、笑顔で言う香織。
一体どこなのだろうと首をひねる愛子。他の生徒達も香織の言っている逃亡先とはどこなのかと思い、話の続きを促すように彼女を見つめる。
その時、香織の話を昼間から聞いていた雫が「あっ」と声を上げた。
「もしかして、オルクス大迷宮の最下層?」
「正解♪」
雫の言葉を笑顔で肯定する香織。
「あそこなら王国にもエヒトにも見つからない。しかも召喚された全員が暮らせるくらい広いですし、アーティファクトのおかげで日本並みの生活が送れますよ」
香織の説明を徐々に理解してきた愛子達は、確かにと思った。
オルクス大迷宮はトータスの人間では65階層までしか攻略できなかった。その最深部はそこからさらに135階層も下にある。王国だけでなく、魔人族でも辿り着くのは至難の業だ。そこにあるオスカー・オルクスの隠れ家は、香織が説明した通り、かなり生活水準が高い環境が整っている。逃亡先としては最適だ。
「一度攻略した私達は、最深部へショートカットできるルートを知っています。そこからみんなを案内します」
ライセン大渓谷にある魔法陣の事だ。攻略の証である〝宝物庫〟の指輪があれば、魔法陣まで行くことが出来る。
「皆にはオルクス大迷宮の最下層に避難してもらって、その間に私達が神代魔法を集めて、地球に帰還する方法を確立する。これが私達の考えた計画です」
余談だが、この作戦について話し合った際、浩介が「神の使徒拉致誘拐大作戦」という作戦名を提案した。犯罪染みていたのですぐに却下された。
■■■■■
香織が愛子と生徒達に説明をしている頃。アークデッセイ号の中でコロモンの診察をしていたハジメとガブモンの方では、ちょっとしたトラブルが起こっていた。
「どうしたもんかなあ……」
困った声を出しながら、自身の右手を見つめるハジメ。
その右手には……
「ガジガジッ!」
「離れろ!! ハジメの腕から離れろ!!!」
回復して目覚めたコロモンが鋭い歯を立てて噛みついていた。ガブモンが引き離そうと一生懸命に引っ張っている。
コロモンの体調を検査しながら、介抱していたハジメ達。重大な異常は起きていないことが分かったので、目覚めるまで見守っていた。
やがて、コロモンは目を開けたのだが、目覚めるなりハジメに向かって飛び掛かってきたのだ。「人間!? 敵!!!」と叫びながら。
〇デジモン紹介
マミーモン
レベル:完全体
タイプ:アンデッド型
属性:ウィルス種
エジプトのミイラの様な全身包帯巻きのアンデッド型デジモン。志半ばで消滅したデジモンの霊(残留データ)を召喚し操るところから別名「死霊使い(ネクロマンサー)」と呼ばれている。無口で表情が見えないところから何を考えているか分かりづらいが、攻撃されると武器を振り回し徹底的に敵を叩きのめし、追い詰められると愛用の銃「オベリスク」を乱射するす危険な存在である。得意技は両腕の包帯が蛇のように伸びて敵を締め付ける『スネークバンデージ』。必殺技は死霊を呼び出し敵を狂死させる『ネクロフォビア』。
本作の個体は「デジモンアドベンチャー02」にて及川由紀夫の遺伝子データから生み出された存在。ベリアルヴァンデモンの部下だったが、殺害された。同じ部下だったアルケニモンに好意を持っており、復活してもヴァンデモンに従うことを良しとせず、自由に生きることを目的に、シスタモン姉妹に協力している。
遅れました。説明回でどこまで話すかの構成を練っていたら時間がかかってしまいました。
まえがきでも書きましたが、修羅場までもっていきたかったです。
次回はどうか……。