ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る 作:竜羽
そろそろ修羅場に入るかもしれません。
・前回のあらすじ
香織は愛子達にトータスで起こっている異変と、危機的な状況について説明した。そして、召喚された生徒達の安全を確保するために、彼らをオルクス大迷宮のオスカー邸に避難させる作戦を説明する。
一方、ハジメは腕をコロモンにガジガジされていた。
香織達が愛子達に説明した作戦は以下の通りだ。
ウルでの農作業が一段落して王都に戻る途中で、事故を装って姿を消し、ライセン大渓谷に向かう。ショートカットの魔法陣から、最下層のオスカー邸に向かう。事故についてはデジモン達の技を使い、魔物に襲われた様に見せかける。その時に神殿騎士達を気絶させておくのも忘れない。
次に王城にいる生徒達の番だ。先行した浩介達がハジメ達を手引きして潜入する。その際に愛子も同伴してもらい、生徒達の説得を行う。この時説得するのは居残り組だけだ。説得に成功したら、また適当な戦闘で混乱を起こし脱出する。生徒達を引き連れて、今度はホルアドまで向かい、訓練をしている永山重吾率いるパーティーにも声をかける。
なおすでに勇者として活動している光輝のパーティーについては手出ししない。勇者さえいれば、王国は何とかなると考えているからだ。逆に言えば、光輝さえいれば、彼らの身は安全だ。
一先ず、光輝の目が届かない生徒達の安全を確保するのが、この作戦の目的だった。
この説明を受けた愛子は、光輝達を王国に置いておくことに難色を示した。だが、香織達の説明を聞き、渋々だが納得した。それに居残り組の生徒達を優先するというのは、愛子も理解できた。光輝は全員を守ると言っていたが、居残り組は彼の目が届かない場所にいる。そこで王国の人間に脅されて戦争に参加することになっても、彼は王国の人間を疑わず、生徒が自主的に参加したとでも説明されて、それを信じ込むだろう。そうやって、全員が参加することになっても疑問も抱かないかもしれない。
愛子はそれを聞いて、否定できなかった。
学校での教師と教え子という立場でしか接してこなかったが、最近の光輝は勇者の役割に傾倒し、それを周囲にも強要し始めている。おそらく王都の事件での成功体験が、彼に自分のやっていることが正しいと確信させてしまったのだ。勇者としての務めを果たさなければならない、今の自分なら守れるからと、度々愛子に雫を自分のパーティーに入れることを提案する手紙を送って来る。そんな彼なら、取りそうな行動だと思ったのだった。
説明を終えた後、いきなり大量の情報を得てしまった愛子達は、ひどく疲労してしまった。なので、今泊っている宿ではなく、教会で泊ることにした。特に重大な決断を迫られることになった愛子には疲労の色が濃く、早々にベッドに横になってしまった。
このことをハジメに報告するために、香織、ユエ、シアはアークデッセイ号に戻ってきた。
雫もついて来ようとしたが、他の生徒達と同じく疲れていたので休ませた。
デジモン達は目立ってはいけないのでデジヴァイスの中にいる。
三人は迷彩で姿を消しているアークデッセイ号を、樹海でも使った眼鏡(シアはパリピサングラス)で探し出し、中に入る。
「説明終わったよ。ハジメ君の方はコロモンの検査終わった?」
「おう。お疲れ。俺の方も終わった」
「お疲れ~」
「それはよかった……え?」
「ん?」
「はい?」
報告しながらハジメの研究スペースに入ると、ハジメとガブモンが三人を出迎えた。だが、三人はハジメの姿を見て、ポカンと驚いた。
ハジメの頭がピンクになっていたのだ。
「え? なんでハジメ君の頭がピンクに?」
「まさか、ストレスで若ハゲに!?」
「んなわけあるか」
驚く香織に、勘違いするシア。シアの勘違いを早々と否定するハジメに、ユエが近づき頭をよく見る。そしてすぐに気が付いた。
「あ、コロモン」
「ガジガジガジ」
「そうだ。はぁ」
頭をガジガジ噛んでいるコロモンだった。
ハジメはコロモンに頭を噛みつかれていたのだ。隣にいたガブモンがハジメを心配そうに見ている。
とりあえず、ハジメは何が起きたのか香織達に説明する。
「検査の結果ではX抗体がある以外はどこにも異常なし。だから、とりあえず目が覚めるまで見守っていたんだが……」
起きたコロモンはハジメ、正確には人間が目の前にいることに驚き、次の瞬間には「人間!? 敵!!!」と叫んで噛みついてきたのだ。咄嗟に右手で防御したが、コロモンはそのまま右手に噛みついた。最初はガブモンが引き離そうとしたのだが、意地でも離そうとしないので、しばらくはコロモンのしたい様にさせていた。幼年期で攻撃力も低いため、ダメージがないと気が付くと今度は頭に噛みついてきた。
「心配しなくても大丈夫だ。それに病み上がりみたいなもんだからな。そろそろ……」
ハジメがそう言うと同時にポロリとコロモンがハジメの頭から落ちた。
咄嗟にガブモンがコロモンをキャッチする。
「おっと」
「ナイスキャッチ」
「やっぱり疲れていたんだな。全く」
コロモンを抱えて呆れた表情を浮かべるガブモン。
「俺はこいつをベッドに寝かせてくるよ」
「頼む。俺のベッド使ってくれ」
「OK。そのまま俺も寝てもいい?」
「ああ。今日もありがとうな。ガブモン」
「おう」
ガブモンがコロモンを抱えて寝室スペースに向かう。
その後、ハジメは香織達から愛子達に説明したことを聞いた。
「そうか。話は聞いてもらえたか」
「愛子先生も今の状況が不味いことは薄々気が付いていたみたい。みんなの安全が確保できるなら、納得してもらえると思う」
「そのみんなの中に、例の勇者がいるのが厄介」
「生徒思いの良い先生だとは思うのですが、話を聞く限りその勇者さんは厄介どころではないと思いますぅ」
シアの言葉にハジメもその通りだと頷く。勇者こと光輝については、現段階ではノータッチなのが正解だと、ハジメ達も結論付けている。本人の性格もあるが、今の彼の立場が悪すぎる。
「勇者の話はおいておく。明日からは予定通り先生たちの護衛……なんだが」
「言いたいことわかるよ」
「コロモン」
「ですよね。ハジメさん優しいですから」
バツが悪そうに言葉を濁すハジメに、香織達が笑顔を浮かべながら、言いたいことを先取りする。
「悪いな。ちゃんと手伝いはする。それが終わったらあいつのことを任せてくれ」
「うん。いいよ」
「もちろん」
「後の事は私達にお任せですぅ」
それから今後の予定を簡単に確認してから、その日は就寝した。
■■■■■
翌日、ハジメ達は愛子達の手伝いに奔走することになった。
アーティファクトで変装したハジメ達は、冒険者ギルドを介して愛子達の護衛の冒険者となった。愛子がメフィスモンに襲われたことを鑑みて、冒険者の助けを借りたという建前だ。
とはいえ何事もなくとはいかなかった。
事情を知らない神殿騎士達がいい顔をしなかったのだ。そこで模擬試合をして実力を認めさせた。
結果は言うまでもなくハジメ達の圧勝だった。
もちろん、素性と手札を隠さないといけないので制限を課した。それでも神殿騎士達はハジメ達に及ばなかった。
ハジメは拳銃やミサイルなどの銃火器は使わず、太極拳の体裁きで剣や魔法を捌いて接近し、〝錬成〟の技能で剣や鎧を変形させ体を拘束し、無力化した。
香織はアイギスで全ての攻撃や魔法を防ぎ、〝縛煌鎖〟で縛り上げた。
ユエは魔法使いという触れ込みなので、魔法陣の刻まれているように見える杖を構え、棒読みの詠唱をしながら最上級魔法を連発した。相手は頭がチリチリになった。
シアについては一番悲惨なことになった。手加減の度合いを間違えて、ドリュッケンで騎士を殴り飛ばしてしまったのだ。騎士は両手を粉砕骨折し、肋骨を四本も逝ってしまった。もはや騎士としてやっていけない怪我を負わせてしまったのだ。
あわや危険人物として拘束されるところだったが、香織が急いで治療したため騎士は助かった。騎士を救ったことで香織の治癒の腕が証明され、信用を得ることが出来たのは不幸中の幸いだった。
ハジメ達の実力は証明されたが、神殿騎士達は素性も知れない冒険者を雇うことに最後まで渋っていた。そこでブルックでキャサリンさんに浩介が持たされた手紙の写しを冒険者ギルドの支部長に見せた所、騎士達を説得してくれた。ギルドの支部長まで出てきたことで、ようやく騎士達はハジメ達が愛子達の護衛になることを了承した。
護衛になったハジメ達は、護衛だけでなくそれぞれの技能を駆使して、愛子達の作業が早く終わるように手伝うことにした。
騎士達との模擬試合で治癒魔法の腕を証明した香織はもちろん、ハジメは農具を錬成魔法で修復・強化した。ただし、コロモンの経過観察とメンタルケアを行うことに決めたため、あくまで片手間の手伝いだけを行う。
ユエはため池を魔法で生成した水で満たしたり、水やりを手伝ったりした。シアも身体魔法を駆使して力仕事を中心に大活躍をしている。
ハジメ達のおかげで作業は速く進み、愛子達にハジメ達の作戦について考える余裕が出来てきた。
夜になると愛子はハジメ達と作戦について、話し合う時間を取った。
生徒達も作業の合間に話しをして、今後の自分達の身の振り方を考えるようになった。
例えば、ハジメ達が合流した翌日に優花は泊っている〝水妖精の宿〟という高級宿の厨房を借りて、香織と料理をしていた。香織が持っている調味料を使って、日本風の味付けの料理を作ることになった。
「無理言ってごめんなさいね」
「いいよいいよ。私も園部さんと料理してみたかったし」
申し訳なさそうな優花に笑顔を向ける香織。
「さーて、作っちゃおうか。やっぱりお米料理だよね」
「ええ。お店の人に用意してもらったスパイスと、香織達の調味料を使えば何でも作れると思う」
「じゃあカレーやパエリア、チャーハン辺りからかな」
「変わり種でフォーとか? パクチーみたいな香りの香辛料あったわよね?」
「香織だけに?」
「ぷっ、何よそれ」
香織の冗談に噴き出す優花。王城にいた頃に少し話をしていたことと、優花が雫に寄り添っていてくれたことから、2人は友好的な関係を築いていた。
「あ、そうだ。ハジメ君用のちょっと辛めのカレーも作らないと」
「南雲って辛口のカレーが好きなの?」
「うん。いつも辛めのものを食べているよ。麻婆豆腐とか担々麺とか」
「なんか意外。ふーん、南雲は辛いのが……」
「ふふっ」
何やら考え始める優花を香織は微笑みを浮かべながら見ていた。
そんな彼女達を厨房の入り口の陰から見つめる一つの影があった。
香織達が用意した料理はその日の夕食となり、生徒達から大絶賛された。
■■■■■
ハジメ達がやって来てから3日目の夜。
香織とユエは連れ添ってアークデッセイ号から、〝水妖精の宿〟に戻る途中だった。
中に籠っているハジメに食事を持って行った帰りだった。
アークデッセイ号の中にも厨房があり料理もできるが、今のハジメはコロモンにかかりきりになっていた。そこで出来立ての温かい料理を用意して届けたのだ。
「私もハジメに料理を作りたい」
「ユエは勝手にアレンジを加える癖を直してからだよ。基本が出来てからの応用なんだから」
「むぅ」
他愛もない話をしながら、宿へと戻る香織達。そんな彼女達の前に、1人の少女が現れた。
「ちょっと、いいかしら?」
「雫ちゃん?」
雫だった。険しい表情を浮かべて、香織とユエを見据えている。
「香織、教えて。──優花やユエさん、多分あとはシアさんも。なんで、女の子をハジメとくっつけようとしているの? 私と香織、2人だけ。もしもハジメの事を本気で好きになるような子が出てきたとしても、その子の力だけで私と香織、そしてハジメが認めない限り、絶対に傍にいさせないって!」
次第に叫びになっていく雫の言葉。それはかつて香織と雫で決めたこと。ただでさえ、2人でハジメに告白し、優しい彼を深く悩ませてしまったのだ。それでも初めて恋をした相手を、親友とはいえ引き下がるなんてしたくなかった。だから、さんざん悩んで話し合って決めた取り決めだった。
「なのになんで、私に何も言わずに女の子が傍に来るのを容認しているの? 私、香織が何を考えているのか全然わからない。ここに来るまでの旅でユエさん達を認めているとしても、優花にまでハジメの好みを教えたり、見守ったりするのはおかしい。一体、何があったのよ!?」
闇夜に雫の叫びに近い声が響いた。
■■■■■
「興味深いな」
「ああ」
異空間に存在する暗黒の城。シスタモン姉妹が潜入し、コロモンを助け出したメフィスモン達の拠点。その一室でメフィスモンと黒衣を纏ったヴァンデモンが話し合いをしていた。
「上手く駒を動かせれば、事態はより混迷していく。どのような方向に転がろうと計画は先に進む」
「同意だ。ではどう動かそうか」
メフィスモンの言葉に同意しながら、ヴァンデモンは思案に耽る。
そこに、一匹の蝙蝠が飛んできた。ヴァンデモンの使い魔だ。蝙蝠から何かを聞き出したヴァンデモンは、口元をニヤリと歪める。何かを思いついた。
思い付きをメフィスモンにも話し、メフィスモンも同意した。すぐにメフィスモンは準備をするために姿を消す。
「───そろそろ絶望を味わう時間だ」
陰謀はゆっくりと、しかし確実に動き出していた。
〇デジモン紹介
コロモン(X抗体)
レベル:幼年期Ⅱ
タイプ:レッサー型
属性:なし
表面を覆っていた産毛が抜け、体も一回り大きくなった小型デジモン。活発に動き回れるようになったが、まだ戦うことはできない。口から泡を出して敵を威嚇する。
X抗体を得たことで闘争心が強くなった。鋭い牙で相手に噛みつき、勇敢に戦いを挑む。
雑談です。
今日、遂にデジモンゴーストゲームが終わってしまいました。過去シリーズだとスルーされていたデジモン達の恐ろしい設定が表現されていて、個人的には凄く好きなシリーズでした。
最終回についてですが、ネタバレはあまりしたくないので詳しく書きませんが、ある意味ハジメの夢の実現に向けて動き出すのは、びっくりでした。
結末もですが、ガンマモンを地球に発信した別の星の事とか、それを喰らった2000年後に地球にやって来る存在とか、気になる要素がいっぱい残っていました。いつか二期が来ることを期待しています。