ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る   作:竜羽

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GWで帰省していて更新が遅れました。

いつもより少し長めです。いろいろ詰め込みました。


・前回のあらすじ
ウルの町に襲来したデジモン達はイービルスパイラルによる闇黒進化を果たす。
教会を守るハジメの前に、遂に黒幕の一体であるメフィスモンが姿を現した。
恐るべき計画を口にするメフィスモン。果たして、ハジメ達はメフィスモンを退くことが出来るのか。


09話 怒れるハジメ

 ウルの町上空では、無数の有機ミサイルが縦横無尽に飛び交っていた。

 暴走したギガドラモンが、両腕の武装『ギガハンド』から無限に有機ミサイルを発射する必殺技《ジェノサイドギア》を絶え間なく使っているのだ。

 空中という三次元空間で無秩序に飛ぶミサイルは、狙いが定められていないのか滅茶苦茶な場所に飛んでいく。そのまま放置していればウルの町に降り注ぎ、甚大な被害が出てしまう。

 

「《ホーリーアロー》!」

「《紅蓮獣王波(ぐれんじゅうおうは)》!」

 

 それを阻止するために、エンジェウーモンとフレアモンが各々の技で撃ち落とす。

 だが、ミサイルに気を取られているとアトラーカブテリモンが、巨大な角を振りかぶって突撃してくる。必殺技の《ホーンバスター》だ。

 2体は咄嗟に避けるが、さっきからこれの繰り返しだった。

 数の上では2対2の互角であり、完全体同士の戦い。しかし、ウルの町を守らなければならないエンジェウーモン達には不利な状況が続いていた。

 都市を殲滅させるほどの爆撃能力のあるギガドラモンと、高い格闘能力をもつアトラーカブテリモンの組み合わせは、予想以上に厄介だった。

 

 そこに頼りになる救援が駆け付けた。

 

「《円月蹴り》!!」

 

 三日月のような軌跡を描く猛烈な蹴りが、ギガドラモンの右腕に放たれた。

 駆け付けたワーガルルモンの攻撃だ。

 右腕に続き、今度は左腕にも蹴りを加える。これでミサイル攻撃は中断された。

 

「ワーガルルモン!」

「助かったぜ!」

「ハジメからの指示だ。まずはギガドラモンを何とかする」

「わかったわ。早くしないと町が危ない」

「なら俺がアトラーカブテリモンを抑える。2人に任せていいか?」

「おう」

「ええ」

 

 2体にワーガルルモンはハジメからの指示を伝える。2体はそれを了承し、役割を分ける。遠距離が得意なエンジェウーモンがワーガルルモンと一緒にギガドラモンに向かい、格闘戦が得意なフレアモンがアトラーカブテリモンを抑える。

 

「頑張って。エンジェウーモン」

「気合ですよ、フレアモン」

 

 デジモン達の戦いを、少し離れた上空で香織達は見守りながら、不測の事態に備えていた。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 ユエのシュラーゲンから放たれた弾丸はメフィスモンに命中し、込められた魔法を発動させ、爆炎に包み込んだ。

 ハジメ達は油断せずに構えを取り続ける。

 メフィスモンがこの程度で倒れるはずがないからだ。現に、メフィスモンの邪悪な気配が消えていなかった。

 

「ふん。この人間の武器にしてはなかなか」

 

 日傘で爆炎を振り払い、メフィスモンが無事な姿を現した。

 

「いや、地球の武器を模倣したか。ふふっ、異世界の知識で破壊の為の武器を作るか。やはり人間、いや、生き物の業は浅ましく罪深い。《ヘルマニア》!」

 

 ハジメ達をせせら笑いながら、暗黒呪文弾《ヘルマニア》を連発する。

 

「クロスビッド!」

 

 咄嗟に宝物庫から新たなクロスビッドを取り出し、防御結界を展開して《ヘルマニア》を防ぐ。

 しかし、最上級の結界魔法〝聖絶〟であっても、メフィスモンの攻撃には少ししか耐えられない。だが、その少しの隙さえあれば、ユエが間に合う。

 

「カードスラッシュ! 《ブレイブシールド》! 《高速プラグインB》!」

 

 クレシェモンの手に巨大なオレンジ色の盾が現れ、さらに移動速度が上昇する。

 そのタイミングで結界が破れる。だが、クレシェモンが高速で動き、ブレイブシールドで全ての《ヘルマニア》を防ぐ。

 

「それだけでは不十分だぞ」

 

 メフィスモンが手を上げると、デビドラモンとイビルモン達が再び動き出す。

 しかも、ハジメ達の方だけでなく町にまで向かおうとする。

 

「行かせるか!」

 

 全武装を起動させ、町に向かおうとするデジモン達を攻撃するハジメ。

 技能〝並列思考〟と、デジモンの特性を取り込んで得た演算能力によって、完全に制御された兵器群は的確に敵を攻撃していく。近くのイビルモンには銃弾が浴びせられ、飛行しているデビドラモンにはミサイルが着弾する。

 

「〝天灼〟! 〝蒼天〟! 〝嵐帝〟!」

 

 ズガンッ! ズガンッ! ズガンッ!! 

 

 ユエも最上級魔法を連発しながら、シュラーゲンを連射する。魔法の発動と銃撃を同時並行で行うことで、手数を増やすだけでなく、それぞれの攻撃を相乗させることで威力を上げていく。〝蒼天〟に風属性の魔法を付与した銃弾を当てて威力と範囲を増大させたり、〝嵐帝〟の中心で氷属性の銃弾を炸裂させて猛吹雪を巻き起こしたりする。

 

 ハジメ達だけでなく、エンジェモンとピッドモンも教会に近づこうとするデジモン達を打倒していく。彼らの必死な防衛線を、メフィスモンは嗤いながら観察する。

 

「フフフ。よく守っているが、まさか私の手勢がこれだけだとでも? すでに町にもデジモン共が向かっているのだが、いいのかね?」

 

 教会で守るのに手いっぱいなハジメ達に向かって、さらに戦力を分散せるようなことを言うメフィスモン。町には住民や他の生徒が残っている。ハジメ達はさらに戦力を分けざるを得ない状況に追い込まれた。

 

「ハッ」

 

 と思われたが、ハジメはメフィスモンに向かって強気な笑みを浮かべた。訝し気な顔をするメフィスモンに、攻撃の手を緩めずにハジメは言い切る。

 

「お前が来ることは予想していた。だったら対策の1つや2つやっているって思わないのか?」

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 ハジメ達の戦いは町への配慮はしているが、デジモンが相手という事もあり、手加減はしていなかった。

 そのせいで爆発や閃光がとても目立ってしまい、町から異変を察知した神殿騎士達が教会にやってこようとした。

 だが教会に向かう道に、メフィスモンが解き放っていたイビルモンやデビドラモンが現れ、神殿騎士達に襲い掛かった。

 

「ぬおおおおっ!! 待っていてくれ、アイコォ!!」

 

 デビドラモン達に剣を振りかぶり、果敢に挑みかかる騎士隊長デビッド・ザーラーと隊員達4人。彼らが守ると決めている愛子が、教会に行くと言ったきり戻ってこないのだから。

 彼らは護衛以外に、神殿から愛子を懐柔するという任務も帯びていたのだが、小さな体で生徒のために奔走する愛子の一生懸命さに心打たれ、逆に忠誠を捧げてしまった。その愛子が向かった教会で謎の戦闘が起きているのだから、気が気ではないのだ。

 とはいえだ、気持ちだけではどうにもならなかった。

 デビドラモンの体長は5メートルもあり、しかも飛行できる。闇夜に紛れられればデビッド達に感知する術はない。

 デビッド達の剣も魔法も、デビドラモン達に掠りもしない。

 

「キキキッ!!」

 

 攻撃した隙を突かれて、逆にイビルモン達に超音波で攻撃されて体勢を崩す。

 

「ぐううっ!?」

「な、何だ!?」

「立てない。なぜ!?」

「お、おのれぇ」

 

 そこにデビドラモンが現れ、真っ赤な巨大な爪を振り上げる。

 何とか防ごうとするデビッド達だったが、デビドラモンの真紅に燃え上がる四眼で睨まれると動きが取れなくなる。「複眼の悪魔」と呼ばれ畏れられるデビドラモンの能力だ。睨まれ、身動きが取れなくなった相手は、そのまま巨大な爪で血祭りにあげる必殺技《クリムゾンネイル》で止めを刺されてしまう。

 騎士達がそんな末路を辿ろうとしたその時、白と黒の2つの影が飛んできた。

 

「《ディバインピース》!!」

「《ミッキーバレット》!!」

 

 白い影、ブランが三叉槍を振り回し、デビドラモンの爪を弾き上げる。

 黒い影、ノワールが愛銃『アンソニー』の乱れ撃ちで敵デジモン達を攻撃する。

 

「無事ですか? 怪我をしている方はいらっしゃいますか?」

「立てる~? 無理ならそのままでよろ。邪魔だから」

 

 騎士達を気遣うブランに対し、笑いながら辛辣な言葉を投げかけるノワール。

 ブランの気遣いに癒され、ノワールの言葉にカチンとくる騎士達。何とか立ち上がろうとするが、イビルモンの超音波攻撃で平衡感覚を乱されており、足がふらついている。

 ノワールの攻撃で距離を取っていたデビドラモン達が、じりじりと近づいてくる。シスタモン姉妹を警戒しながらも、その目は騎士達を狙っている。悪魔らしく、弱っている方から狙っていくようだ。

 その考えに感づいたノワールが舌打ちしながら、ブランに話しかける。

 

「ブラン。あんたはこいつらを見てなさい。私がやるわ」

「お姉さま。まさかあれをやるつもりですか?」

「ええ。あんたは温存しておきなさいよ」

 

 ノワールは一歩前に出ると、被っているウィンプルの縁に手をかける。そのまま目深に被り、顔を猫のような見た目にする。すると、胸に白く輝く十字架──ホーリースティグマが現れた。同時に体の奥から力が沸き上がってくる。

 

「すぅ──ふぅ──……うぅぅにゃああぁぁ!!」

 

 力を全身に馴染ませるように深呼吸すると、猫背のような体勢になる。次の瞬間、猫のような声を上げながら、デビドラモンに飛び掛かる。あまりの俊敏さにデビドラモンは反応できず、ノワールが頭上に駆け上がるのを許してしまう。気が付いて振り払おうとするが、その前に脳天を撃ち抜かれてしまう。そのままデータとなって消えていく。

 これこそ、ノワールが力を覚醒させた姿。

 野生の力が目覚め、特に俊敏さが高められる。

 闇夜を縦横無尽に駆け回り、標的を撃ち抜くその姿は、聖職者の名前を持ちながらも、まるで死に神のようだ。

 

「か、彼女は一体なんなんだ?」

「私の姉さまです!」

 

 見たことのない武器を使って、自分達でも勝てなかった相手を倒すノワールの姿に、デビッド達が呆然とする。

 思わず疑問を零すと、ブランが力強く答えた。

 そう言う事じゃないと騎士達がブランを見るが、ノワールの言いつけを守るために三叉槍を構えていて気が付かない。

 

(町の方はマミーモンさんが対処してくれています。私達もここが終わればお手伝いに行かなければ。それまで、教会の方をお願いします)

 

 町中にもデビドラモンとイビルモンは出現していたが、マミーモンが対処していた。もっとも、全身包帯だらけのミイラ男が、トータスには無い銃を振り回していることから、住民の恐怖は倍増していたが。

 

 後にウルでは、悪いことをすると包帯男に追い回されるという怪談が生まれ、子供達に言い聞かされるようになった。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

「対策はしていましたか」

 

 メフィスモンは町中でもデジモン達が倒されていることに気が付いた。

 道理でハジメ達が慌てていないわけだ。

 

「来るとわかっていれば対策できる。ここでお前を止めてやる」

 

 とはいえ、メフィスモンの手勢の数がわからない。時間がかかれば被害が出てしまう。戦いが拮抗している今のうちに決着をつけるべきだ。

 デビドラモン達を一掃し、メフィスモンに止めを刺す。

 言葉を交わさずとも、互いの考えを察したハジメとユエ、クレシェモンは武器を構え、最大火力を発揮する準備をする。

 ハジメは宝物庫から追加の兵器を展開する。ユエも追加の弾薬を取り出し、シュラーゲンに装填する。

 クレシェモンは両手の武器を組み合わせ、弓形態にする。

 

 それに対し、メフィスモンは構えも取らず、余裕の態度を崩さなかった。

 

「だが、更なる策は見破れなかったようですね」

「何?」

 

 メフィスモンの言葉をいぶかしむハジメ達に構わず、メフィスモンがパチンと指を鳴らす。

 すると、ギャリギャリという何かを削る音が聞こえてきた。

 

()()()()()()()

 

「まさかっ!?」

 

 ハジメが振り向くのと同時に、教会の一部が崩落した。

 

 一体教会の中で何があったのか。

 少し前。ハジメ達が教会の外でデビドラモン達と戦っている一方、ユエによって教会まで避難してきた雫は、先に教会に来ていた愛子と優花と共にいた。PTSDによって不安定になった精神を二人に落ち着かせてもらいながら、身の安全を守るために息をひそめている。

 雫ほどではないが優花も戦いが怖いので、雫と抱き合って戦いが終わるのを待っていた。

 愛子は震える生徒二人の姿に胸を痛めながら、いざという時は自分の身を盾にしようと、2人を抱きしめている。

 

「ごめんなさい。私、先生なのに、何も出来なくて、皆さんを、帰せなくて……」

 

 抱きしめながら謝罪の言葉を口にする愛子。この世界に来てからずっと感じていたが、最近の襲撃の度に自分の無力さに歯噛みする。

 

「あ、愛ちゃんは悪くないよ。悪いのは……簡単に、戦うって言っちゃった私達だし、なのに、何もできないし」

 

 優花は愛子の言葉を否定しようとする。しかし、それも自分達の無力さを嘆く言葉になっていく。

 いくら強いステータスを持っていても、ただの高校生だったのだ。勇者と神の使徒と祭り上げられても、いざという時には何もできなかった。その結果、戦いの恐怖に心が折れてしまい、愛子のお荷物になっている。そんな自分達に比べれば、教会と交渉して生徒の安全を確保し、精神ケアに取り組む愛子はずっと立派に見えた。優花は愛子を尊敬し始めていた。

 

「いいんです。園部さんも、八重樫さんもまだ子供なんですから。子供を守るのが、大人の義務です。そう、だから守らないといけないんです。なのに……」

 

 なのに、の前後の言葉を口に出せなかった。

 本当ならば、外で戦っているハジメと香織はもちろん、勇者になっている光輝達も守るべきだと愛子は思っているのだ。だが、現実では逆だ。ハジメ達は守ってもらうほど弱くなく、心も強い。愛子の意思も理解したうえで、自分達の意思を貫くために動くだろう。

 光輝は少し酷い言い方になるが、愛子が守ろうとすると屁理屈をこねて拒否するだろう。最悪なのは、それで言い合いになれば教会が割って入ってきて、ややこしい話になってしまうだろう。

 

 ままならない状況に悩む2人の間で、徐々に落ち着きを取り戻してきた雫も、悩んでいた。

 

(私は、どうすればいいの?)

 

 トータスに来てから辛いことばかりだった。何とか乗り越えようと、愛子に付いてきた先で、親友と思い人に再会できた。

 だが、2人は自分が知っている2人とどこか変わっていた。

 なんだか姿が同じ別人なような気がして、思わず香織に声を荒げて食って掛かってしまった。

 

(ハジメもなんだか変わった気がする。もしもそうなら、ハジメ達がまた旅に出るとき、私はどうすればいいんだろう)

 

 雫がハジメを好きになったのは、自分のピンチに駆けつけて守ってくれて、普通の女の子とそして扱ってくれたからだ。香織と同時に告白した時も、雫の事を蔑ろにせず、真剣に考えて悩んでくれた。

 そんな彼が変わってしまったとしたら、同じように好意を寄せることが出来るのか。

 

(そんな不安があったから、香織に詰め寄っちゃったのかな? だとしたら、悪いことをしちゃった。謝らないと。その後は……どうしようか)

 

 心情的にはハジメ達に付いていきたい。しかし、戦いに怯える自分が付いていっても、足手まといにしかならないだろう。

 逆に付いていかずに愛子の下にとどまり離れ離れになるのは、心が耐えられるかわからない。

 果たして、彼女が選ぶ道は何なのか。

 

 三人がそれぞれ悩んでいたその時、教会が小さく揺れ始めた。

 

「な、何!?」

「園部さん顔を上げないで!」

 

 優花の頭を押さえる愛子。

 次の瞬間、教会の床下から何かが飛び出してきた。

 大きな歯車に、四つの小さな歯車が付いた見たことのない生き物だった。

 

「ハ、ハグルモン?」

 

 抱きしめる愛子の腕の隙間から目にした雫は、似ているデジモンの名前を呟いた。

 確かに、現れたのは歯車のような形の成長期デジモンのハグルモンにそっくりなデジモンだった。しかし、ハグルモンと違い2つの『コハグルモン』という別のデジモンがくっついている。さらにドリルに変化した歯車もくっついており、より攻撃的な姿だ。床下から現れたのも、ドリルで地下から掘り進めたのだろう。

 

 雫達は知らないが、メフィスモンの実験によって生まれた暗黒X抗体デジモン。ハグルモンX抗体だった。

 

 メフィスモンは完全体デジモンへの実験には失敗したが、成長期のハグルモンには成功していたのだ。

 そして、当然のことながら、軍団を作ろうとしているのだ。一体だけのはずがなかった。

 

 床下から次々とハグルモン達が現れた。

 愛子達はハグルモンの大群に囲まれてしまう。

 ハグルモン達には自我が無く、インプットされたデータに従って行動する。

 メフィスモンが施した、教会に地下から侵入し、破壊するという命令に従って動き始める。

 

「「「《ダークネスギア》」」」

 

 口からコンピュータウィルスが組み込まれた黒い歯車を吐き出す。

 本来なら歯車を相手の体内に組み込んで、コンピュータウィルスで狂わせてしまう技だが、建物にぶつけて削り取っていく。

 ハグルモン達は機械的に命令を実行していくので、愛子達のことなんて配慮しない。

 彼女達のすぐ近くにも歯車が飛んでくる。

 

「キャアっ!?」

「このままじゃ、教会が壊される」

 

 愛子の言葉通り、教会がグラグラと揺れてきた。

 ハグルモン達が現れたことで床下はボロボロだった。さらに歯車の攻撃で、壁や支柱が傷ついてしまった。そして、遂に教会の一部が崩壊してしまった。

 

「雫! 園部さん! 畑山先生!」

 

 それに気が付いたハジメが、中に入ってきた。

 彼が目にしたのは、教会を破壊するハグルモン達に、その攻撃の中で身を縮めている雫達だった。

 

「雫から、離れろおおおっ!!!」

 

 魔力を放出しながら、咆哮のような声を出すハジメ。自我の無いはずのハグルモン達が、一瞬動きを止める。

 その隙を逃さず、ハジメは雫達の場所に向かって駆けだす。間にはハグルモン達がいたが、殴り飛ばしていく。

 

「大丈夫か!!」

「は、はい。えっと何とか」

 

 ハジメの様子に驚きながらも、愛子が答える。

 それにホッとするハジメだが、ハグルモン達が破壊活動を再開する。

 

「急いでここを出ます。立てますか?」

 

 手を差し出して愛子達を絶たせようとするが、愛子はハジメの背後を見て目を見開く。

 

「隙だらけだな。デジモンテイマー」

「ハジメ!!」

 

 メフィスモンがいた。入り口からユエが叫びハジメが振り返る。だが、メフィスモンの手が振り下ろされた。

 暗黒の魔力が宿ったハジメに直撃した。

 完全体の膂力と暗黒の魔力が、強靭になったハジメの身体を貫く。一撃で肉体はボロボロになり、立っていられなくなって膝をつく。

 目がチカチカして、意識が途切れそうになるのを、必死で繋ぎとめる。

 

「ほう。まさかまだ生きているとは。一目見た時からわかっていたが、お前、人間を止めたな」

「お前、今、雫達を狙ったな」

 

 感心するメフィスモンに対して、ハジメは声を震わせながら話しかける。

 さっきの一撃は、ハジメに向かって振り下ろされていなかった。ハジメが動かなければ雫達に当たっていた。それに気が付いたハジメは身を挺して3人を庇ったのだ。

 

「人間の、それもお前達の行動原理はわかっていたのでな。そんなことよりもその肉体は調味深い。混ざっているのは人間と」

「絶対、許さねえッ!!!!」

 

 メフィスモンの言葉を遮って、ハジメは激昂する。怒りと共に魔力がハジメの肉体から溢れ出し、肉体を覆っていく。

 その様子をメフィスモンは興味深そうに、雫達は呆然としながら見つめる。

 

「〝ハイブリッド化〟!!」

 

 ハジメの肉体を漆黒の機械狼の鎧が覆っていく。

 

『モード・ブラックメタルガルルモン!!』

 

 ブラックメタルガルルモンの力を宿した鎧を身に纏い、左腕を突き出す。

 6連装ガトリングレールガン《ブラックストーム》が展開され、超至近距離でメフィスモンに突き付ける。

 

『死ね』

 

 ズガガガガガガガンッ!!! 

 先ほどのユエのシュラーゲン以上の銃声が響き渡り、まともに受けたメフィスモンを吹き飛ばす。

 それだけでメフィスモンが倒されるはずもなく、体勢を立て直し、空中に浮遊する。

 

『メフィスモオオオオオオン!!!』

 

 背中に飛行ウィングを展開し、飛び掛かるハジメ。

 防御魔法陣を展開し、防御する。

 

「能力、膂力、そして破壊力。クククッ。まさかこのようなことが起こるとは。人とデジモンの可能性とは面白いものだ」

『殺す!! 《コキュートスブレス》!!!』

 

 絶対零度のブレスを浴びせる。メフィスモンの防御魔法陣ごと凍結させようとする。

 ハジメの殺意と攻撃を受けても、メフィスモンの余裕の態度は崩れることない。

 

「私にばかりかまけていていいのかね?」

 

 メフィスモンが手を振り上げると、ハジメの背後に2体のデビドラモンが現れる。

 それをセンサーで察知したハジメは振り向きながら、両手の爪で薙ぎ払う。

 

『邪魔だ!! 《カイザーネイル》!!』

 

 一瞬で、デビドラモンが倒され、データになって霧散する。

 だが、その先で見えた。

 雫達にもデビドラモンとハグルモン達が襲い掛かっているのが。

 デビドラモンの紅い爪が、雫と優花に振り下ろされようとしている。

 愛子が咄嗟に魔法で攻撃しようとしているが、数が多すぎる。

 ブラックストームで薙ぎ払おうと思うが、威力が強すぎて彼女たちまで巻き込んでしまう。

 もはや飛び込んでもう一度身を盾にするしかない。だが、ハジメの身体に闇色の鎖が絡みつく。香織の使う光魔法〝縛煌鎖〟に似ているが、禍々しい暗黒の魔力の鎖だ。

 

「せっかくの悲劇だ。見物したまえ。そして味わうのだ。絶望を。シーサモンの時のように」

『貴様あああ!!!』

 

 絡めとられて身動きが取れないハジメの前で、雫達に複眼の悪魔の魔爪が振り下ろされた。

 

 

 

 そして、白い羽が舞い散った。

 

 




〇あとがき
〇デジモン紹介
ギガドラモン
レベル:完全体
タイプ:サイボーグ型
属性:ウィルス
メガドラモンと同時期に開発された暗黒竜デジモン。更なる改造で完全武装した戦闘竜で、その存在は凶悪なコンピュータウィルスそのものである。得意技は、両腕のギガハンドで攻撃をしかける『ギルティクロー』。必殺技は、有機体系ミサイルを無限に放つ『ジェノサイドギア』。


前半は戦闘パート。中盤にキーパーソンたる雫達の心情。そして最後は怒れるハジメでした。
次回で一段落着けられればいいなと思います。
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