ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る 作:竜羽
原作とは大幅な改変を行ったキャラが登場します。
少しいつもより短いです。
舞い降りた黒竜の体長は7メートル程。漆黒の鱗に全身を覆われ、長い前足には五本の鋭い爪がある。背中からは大きな翼が生えており、薄らと輝いて見えることから魔力で纏われているようだ。
だが、何よりも目を引くのは、黒竜が右腕に携えている巨大な盾だ。紅蓮の炎を纏った真紅の盾は、霧で薄暗い世界の中でより輝いて見える。
かつてシアとコロナモンは、ライセン大渓谷でハイベリアという竜型の魔物を見たことがある。シアのドリュッケンの一振りによって一瞬で倒されたが、この黒竜に対しては同じ認識を持てない。黒竜は完全体デジモンに相対した時と同じくらいの威圧感を放っていた。
突然現れた黒竜の動きにシア達は警戒する。
黒竜はしばし彼女達を見下ろすと、くるりと反対方向を向く。そこには海から上陸してきたダゴモンが向かってきており、黒竜は口を大きく開けて咆哮を上げた。
「グルァアアアッッ!!!!」
霧を吹き飛ばすほどの音量に、深き者達は後ずさり、距離を取る。
しかし、ダゴモンは意にも返さずに、右腕を振り上げる。
先ほどシア達にはなった必殺技、《フォービドゥントライデント》だ。腕のように見えるが、無数の触手を束になっているため、その腕力はすさまじく、投擲された槍の威力は計り知れない。
それに対し、黒竜は右手に持った盾を構える。
「真っ正面から受ける気か!?」
黒竜の行動に驚くコロナモン。
投げられた三叉槍は黒竜に真っ直ぐ飛んでいき、盾と激突した。
ガキイイイイイイイィィィィンンンン────!!!!!
盾と三叉槍がぶつかった音と衝撃が、周囲に広がっていく。
耳を抑えながらシア達は、どっちが勝ったのか確認する。
勝ったのは──黒竜の盾だった。
「グゥルアッ!!!」
盾を振るい、三叉槍を弾き飛ばす黒竜。
三叉槍はくるくる飛んでいき、離れた海面に落ちた。
武器を無くしたダゴモンはどうするか逡巡し、槍が落ちた海面を見る。
その隙を突いて、黒竜は再びシア達の方を向くと、何と彼女達を両手で掴み上げた。
「わわわっ!? 食べられますぅ!?」
「マジかよ! 俺達は旨くないぞ!!」
〝食べんわ。落ちたくなければ、少し大人しくせよ〟
「え? だれ?」
突然掴み上げられて、慌てるシアとコロナモンだったが、突然かけられた声に驚く。
シア達の誰でもない声だった。パタモンがもしかしてと思ったことを口にする。
「まさか、この竜がしゃべった?」
〝そうじゃぞ。とりあえず、ここを離れるから大人しくしておれ〟
黒竜はシア達を掴むと、翼をはためかせて飛び上がる。
深き者達がそうはさせないと群がって来るが、巻き起こる風圧に吹き飛ばされる。
ダゴモンが三叉槍を取り戻す前に、黒竜とシア達はその場を飛び去っていった。
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黒竜が飛び去るのを見届けたダゴモンは、再び槍を投げることもなく、その場をゆっくりと後にした。
海へと帰るダゴモンに従い、深き者達も海の底へと消えていった。
「思わぬ珍客でしたが、良い囮になりましたね」
「ああ」
その一部始終を見ていた影がある。メフィスモンと黒いローブの人物だ。
実はシア達があれほど襲われたのは、彼らのせいだった。ダゴモン達の領域へ侵入して刺激してしまい、その矛先をメフィスモンが魔術によって、この海に迷い込んでいたシア達に逸らした。
「おかげで、目的のものが手に入った」
ローブの人物の手には黒と灰色のカラーリングのデジヴァイスが握られていた。
見た目は恵里が持っているデジヴァイスに近いが、禍々しい気配を放っている。
その名も『暗黒のデジヴァイス』。
暗黒のエネルギーを取り込むことで生まれる特殊なデジヴァイスで、通常のデジヴァイスにはない機能を持つ。
彼らはこのデジヴァイスを手に入れるために、この暗黒の海へのゲートを開いた。
この海はそう簡単にゲートが開く世界ではない。たまたまウルの町が開きやすい場所だったこと。他にも様々な要因と、手順を踏むことでメフィスモン達はやってきた。
雫達は彼らが開いた余波に巻き込まれたのだ。
用事を済ませた彼らは、トータスに戻るためのゲートを開く。
「この海から戻れるかどうか。ふん。俺には関係ないな」
ゲートに入る前に、ローブの人物は少し後ろを振り返ると、メフィスモンの後に続いてその場を後にした。
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黒竜のおかげで窮地を脱したシア達は、背中に乗せてもらって、安全な場所を探して飛んでいた。
といっても、この世界はどこまで行っても海と海岸が続いている。
だが、黒竜は目的地に当てがあるのか、わき目も降らずに飛んでいく。
しばらくすると、シアの鋭敏な感覚が何かを捕えた。
「あれなんですか?」
耳と目を凝らすと、何かがチカチカ光っている。しかし、それは普通の光ではなく、光とは思えない真っ暗な光だった。
さらに近づくと、大きな塔が周囲に黒い光を放っていた。
シアは見たことが無かったが、海の岬にある灯台だった。
黒竜はそこに降り立つと、背中からシア達を下ろす。
すると、黒竜の全身が魔力に包まれ、繭のようになる。やがてその大きさがスルスルと小さくなっていく。そして、人一人くらいの大きさになると魔力が霧散した。
魔力が霧散した後には、1人の女性が佇んでいた。
トータスではまず見ない、日本の着物のような服装をした絶世の美女だった。右手には、黒竜の時にも持っていた盾を携えている。
見た目は二十代前半くらいで、身長は百七十センチ近くあるだろう。艶やかな黒髪と見事なプロポーションが目を引く。どことは言わないが、シアがメロンならスイカだ。
「りゅ、竜人族ですか?」
「うむ。妾は誇り高き竜人族クラルス族の1人、ティオ・クラルスじゃ」
着物の懐から取り出したセンスを広げて名乗る黒竜ことティオ・クラルス。
表の歴史では5百年前に滅んだとされる竜人族の生き残りだった。
「なんで竜人族がこんなところにいるのですか?」
フェアベルゲンのアルフレリックから、竜人族は魔力持ちの亜人達を保護してきたと教えられてから、シアは竜人族に興味を持っていた。しかも、300年前を生きていたユエからも、竜人族の強大な強さと高潔な精神を聞いたことで、憧れを抱いた。
そんな存在が突然目の前に現れ、しかも窮地を助けてくれた。その事実を認識すると、徐々に好奇心を抑えきれなくなってきた。
「ふむ。よかろう。順番に話す。ただ、ちと長くなるのでの。落ち着ける場所で話そう」
そう言うとティオはシア達を灯台の近くに案内する。
彼女の後をついていくと、簡易的なキャンプ地が用意されており、テントの近くに1人の青年が膝を抱えて蹲っていた。
青年はシア達が近づいてきても、ピクリとも動かない。
「あの人は?」
「あやつか。あやつも関係ある」
ティオはシア達をキャンプ地に招き入れると、全員を座らせて話を始める。
ティオはある目的のために竜人族の隠れ里を飛び出してきた。その目的とは、新たに見つかった魔力持ちの亜人の保護のためだ。つまり、
「え!? 私のことですか!?」
「アルフレリックからの連絡が来たからの。シア・ハウリアよ。慣例に則り、我が里に迎え入れに来たのじゃ」
本来シアは北山脈まで行き、竜人族の里に招かれるはずだった。それが紆余曲折あり、ハジメ達の旅に同行することになった。そのため、ティオの役割は無かったことになった。しかし、そのことがティオに伝わることなく、行き違いになってしまったのだ。
「うわぁ~。すみませんですぅ。折角、迎えに来ていただいたのに、とんだ無駄足を」
「よいよい。それに結果的にそなたを助けることが出来た」
恐縮するシアだが、ティオは朗らかに笑う。
彼女の言うとおり、形は異なるが危機に陥ったシアを救うことが出来たので、里を出た甲斐があった。
「妾が里を出た目的は、そなたを迎えに行く以外にもあったのじゃ」
それは異世界から召喚された勇者達の調査だ。竜人族の中には魔力感知に優れた者がおり、数か月前に莫大な魔力の放出と何かがこの世界に現れたことを感知したという。
言うまでもなく、地球から召喚されたハジメ達の事だ。
秘密裏に大陸に張り巡らせていた情報網から、神に召喚された異世界の勇者達の事を知った。
おおよその事態を把握した竜人族の里は、より本格的な調査を実施することを決定した。その人員こそが、ティオだった。
「自慢ではないが妾は竜人族において最強の座についておる」
胸を張りながら自慢するティオ。
確かに、さっきの戦闘で見せた彼女の戦闘力は最強という名に相応しいものだった。この世界で、完全体のダゴモンに匹敵できる強さを発揮できるとは、ハジメ達と同等かそれ以上の規格外だ。
「加えてこの盾を手に入れてからより強くなれたのじゃ」
右手に持っていた盾を抱え上げて見せるティオ。
「その盾何なんですか?」
「ダゴモンの一撃を受け止めるなんて、ただの盾じゃないよな?」
シアとコロナモンがしげしげとティオの盾を眺める。
話の主題からそれるが、盾についても説明をする。
ある日、霧と共にティアの目の前に現れた盾。何故か手に馴染んだ盾を使ってみたところ、ティオの力が増幅され、さらには強大な炎属性の力を得た。
そんな彼女の事を、隠れ里の者達はこう称した。
堅牢無敵の黒鱗に、輝く紅蓮の炎を纏った〝黒炎竜〟の姫と。
「おおっ! カッコいいですぅ!」
「うん。炎っていうところがまたいいぜ!!」
目を輝かせるシアとコロナモンに、さらに得意げになるティオ。
その時、盾を見ていたパタモンがポツリと言葉を零した。
「その盾。見覚えがある」
「なんと? 本当なのか?」
パタモンの言葉に驚愕するティオ。
この盾の事は長い歴史をもつ竜人族の文献を紐解いても何も判らなかったのだ。
それを目の前のデジモンが知っているというのだ。
「デジタルワールドの伝説に出てくる最強の盾にそっくりだ」
「なんと……デジタルワールドとはなんじゃ?」
パタモンの説明に驚くティオだが、すぐに首を傾げた。
「え? デジタルワールドのこと知らないんですか?」
「うむ。初めて知った」
真顔で言うティオだが、そもそもここは異世界だ。知らないのも仕方ない。
とりあえず、コロナモン達デジモンの説明と彼らが住む世界デジタルワールドの説明を簡単に行う。
「理解した。デジタルワールドという異世界の伝説の盾とは」
「名前や能力といった詳しいことはわからない。でも、その盾は伝説に出てくる盾の一部だ」
「一部じゃと?」
「僕が知っている伝説に出てきた最強の盾とは、体が盾で構成された真紅のドラゴンだった。炎を操り、世界の全て包み込むバリアを張ることもできるほどだった」
パタモンの語る凄まじい効果に驚き、全員がティオの持つ盾を見つめる。
特に持ち主のティオは、この盾がそこまでの力を秘めているとは思っていなかったので、マジマジと見つめている。
そんなティオにパタモンが話しかける。
「とはいえ、あくまで似ているというだけだから。本当にそうかも確証はないよ」
「いいや。今まで何も判らなかったのじゃ。真紅の炎のドラゴンの一部というのも、妾が得た力から考えれば、納得できる。教えてくれて感謝するのじゃ」
ティオはうんうんと何度も頷き、パタモンに礼を言った。
話がずれてしまったので、元に戻す。
里を出てきたティオは、まずは目的の1つであるシアの保護のために、山脈地帯にやってきた。そこで目立たないように人の姿になり、シアを探しに市井に紛れ込もうと山を下りている途中だった。
見たこともないモノリスのような黒いタワーを見つけた。怪しいと思い、近づいてみると、6人の人間達が異形の化け物を従えた黒いローブの人間により、痛めつけられていた。いや、すでに5人の人間は息絶えており、最後に残った青年もボロボロにされていた。
ティオは青年を助けるために、割って入ろうとした。だが、その瞬間タワーから猛烈な霧が噴き出して、周囲を包み込んでしまった。
ティオはせめて青年だけでも助けようとして霧の中に飛び込み、何とか青年の元まで辿り着き、無事に保護した。しかし、それまで青年を甚振っていた者達の姿は消えており、周囲がこの暗黒の海の世界になっていたのだ。
それから、ティオは傷ついた青年を抱えて安全な場所を探し、この灯台まで辿り着いた。
青年が持っていた野営道具でキャンプ地を作り、脱出の方法を探っていたのだった。
その途中で、深き者達の動きが活発になったので、黒竜に変身して様子を見に行ってみれば、シア達がいたというわけである。
話を聞き終えたシア達は気になったことを、ティオに話していく。
「黒いタワーっていうのは、ダークタワーですね。見たことがあります」
シアが黒いタワー、ダークタワーのことに思い至る。
もしも、ここにハジメ達がいればダークタワーこそが、この暗黒の海へと転移した原因だと察したかもしれない。なにせ、ダークタワーは元々この暗黒の海にあったものなのだ。加えて、ダークタワーはデジタルワールドへのゲートを開く、ゲートポイントになる機能も持っている。
ティオもダークタワーこそが怪しいと思い、それを探しているのだが、見つけられずにいる。
「さっきの話に出てきた青年ってあの人の事ですか?」
「そうじゃ。よほどひどく痛めつけられての。肉体よりもむしろ心が深く傷ついてしまったのじゃ。未だこやつの名前すらも話そうとしない」
悲痛な顔をしながら説明するティオ。
シア達が話していても、青年は何の反応を示していない。そしてそれは、シア達が連れている雫も同様で、シア達が何を話していても無反応だった。
ただでさえ暗い雰囲気の世界の中で、2人の周囲はより暗く見える。
「そちらにも、心に深い傷を負った者がいるのじゃのう」
「ええ。何とかしたいんですが」
「心の傷は目に見えないゆえ、難しいのう」
なんとも言えない空気が流れたが、ティオが手をパンパンと鳴らして、場を仕切りなおす。
次は一番気になっていたことをパタモンが質問する。
「その異形の化け物って、やっぱりメフィスモン?」
「なんじゃメフィスモンとは?」
話の中に出てきた異形の化け物に心当たりがあったパタモンが、メフィスモンの名前を出す。それはシア達も同意見sだった。
ティオはメフィスモンの事を知らないので、特徴を伝える。それを聞いたティオは自分の記憶を辿り答える。
「いや、そ奴ではない」
「「「え?」」」
ウルの町への襲撃から、メフィスモンが犯人だと思っていたシア達は驚いた。
「あれは何といえば良いのかのう? まるで、無数の目をもった黒い影のドラゴンじゃった」
全く未知の敵の存在に、シア達は息をのんだ。
〇デジモン紹介
パタモン
レベル:成長期
タイプ:哺乳類型
属性:データ
大きな耳が特徴的な哺乳類型デジモン。この大きな羽を使って空を飛ぶことができるが、時速1kmのスピードしか出ないため、歩いたほうが断然に早いと言われている。しかし、必死になって飛んでいる姿が可愛いので人気は高い。とても素直な性格で教えたことはよく守る。またパタモンはホーリーリングを身に着けなくても、秘められた聖なる力を発揮することができる、古代種デジモンの遺伝子を受け継いでいるらしい。必殺技は空気を吸い込んで一気に空気弾を吐き出す『エアショット』。
時系列の調整が難しいです。矛盾が無いか慎重に書いています。
PS
本文とは関係ないですが、原作Web版で光輝がスターウォーズ好きという事実が明らかになり、ダースベイダーに扮したハジメが光輝と戦うというアイデアが湧いてきてしまいます。