ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る   作:竜羽

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前回から二週間ちょっと。徐々に頻度を上げていきたいです。
遂に彼が登場します。


16話 突き付けられた選択肢

 町から見えないくらい移動し、誰も見ていないことを確認したハジメ達は、パートナーデジモン達をデジヴァイスから出す。そしてすぐさま進化させて乗り込む。

 ハジメを乗せたガルルモンが地を駆け抜ける。

 ネフェルティモンは香織と共に空を飛ぶ。

 ユエを抱えたレキスモンが自慢の脚力でジャンプする。

 アークデッセイ号を愛子達に預けているのでいつもなら魔導二輪で移動するのだが、一台は浩介達に貸し出しているので相乗りをしなければならない。だが、今は少し距離を置こうと思い、デジモン達に乗ることを選んだ。もちろんデジモン達はテイマーの頼みを快く承諾してくれた。

 

 あっという間もハジメ達は、標高千メートルから八千メートル級の山々が連なる雄大な北山脈の入り口に到達した。

 どういうわけか生えている樹々や植物、環境がバラバラで、若木が生えたばかりに見えるエリアの隣には、紅葉に彩られたエリアがある。そうかと思えば枯れ木ばかりの不毛の地になっているエリアまである。

 山脈もここから見えている山の奥にもさらに山があり、過去には山脈超えを試みた冒険者もいたのだが、終ぞ叶わなかった。

 もっともそれは当然だ。なぜなら、誰も山脈を超えられない理由がある。

 

「あの向こうに竜人族の里があるのか」

「神の目を欺くために山脈を利用した陸の孤島。魔法による偽装や結界もあるらしい」

 

 アルフレリックから聞いたことを思い出すハジメとユエ。

 五百年前にトータスに戻ってきた神エヒトによる被害者である竜人族は、歴史の表舞台から姿を消して生き永らえる為に、北山脈の向こうに隠れ里を作った。神の目を欺くための外界からも隔絶された国を。当然、そのために様々な工作を行ったらしい。

 ハジメはその工作には神代魔法が使用されたのではないかと睨んでいる。

 神の下僕であるエガリ達は高速で飛行する能力がある。いくら険しい山脈があろうと、飛行すれば障害にならない。

 神代魔法が使われたという事は、大迷宮に挑み、攻略した者がいるはずだ。

 もしも竜人族の里に行ければ、大迷宮の攻略の手掛かりになるかもしれない。

 

「まぁ、今はそんな寄り道をしている暇は無いか。確証もないし」

 

 ハジメは考えを中断し、やるべきことに意識を向ける。

 

「少し休憩してから捜索を開始する。何が起こるかわからないからな」

 

 ハジメの言葉に全員が賛成する。

 各々がその辺の岩に腰を下ろして、一息つく。

 デジモン達は進化したままだ。この後の依頼されたウィル・クデタ伯爵令息の捜索には各々の能力を駆使する予定なので、進化を維持している。

 鋭い嗅覚のガルルモン、飛行できるネフェルティモン、聴覚に優れるレキスモン。捜索にはうってつけだ。

 

 いつもなら固まっているのだが、移動時と同じくそれぞれ距離を開けている。

 一見するとギクシャクしているように見えるが、一晩の時間を置いたことと、愛子との面談でそれぞれ心の中での整理は尽きつつあった。ただ、全員が切っ掛けを見つけることが出来ないだけだ。

 

 その時、突然ハジメが背負っていたリュックがゴソゴソ動き始めた。

 

「あ、やべ」

 

 気が付いたハジメが急いでリュックを下ろして開くと、中からピンクの塊が飛び出してきた。

 

「狭い!!」

「わ、わりぃコロモン」

 

 出てきたのはコロモンだった。

 メフィスモンに明確に狙われているコロモンはウルの町に置いておくよりも、ハジメ達と共にいた方が安全だと考えた。そこで、冒険者の変装用のバッグに入れて連れて来たのだ。

 リュックの中にずっと隠れていたのだが、いつまでたってもハジメが出さなかったから怒っている。

 

「腹減った。何か無いの?」

「あるよ。ほら」

 

 空腹を訴えるコロモンに持ってきた昼食のおにぎりを渡す。ウルで愛子達が泊っていた〝水妖精の宿〟のオーナーに愛子が頼んで用意してもらったものだ。ウルの特産である米で作られたおにぎりは、ハジメを始めとした地球出身者に故郷の味を思い起こさせた。当然、ユエ達やデジモン達にも大好評だ。

 差し出されたそれを大きな口を開けて食べるコロモンに倣い、ハジメ達も昼食にする。ガルルモン達も体の大きさと比べると少ないが喜んで口にする。

 

 食事をしながらコロモンはハジメ達を観察する。

 人間とそれに従うデジモン達。

 最初はメフィスモン達のような敵だと見ていたが、今では変な奴らだと思っている。

 デジモンの行動原理は生きることと戦う事だ。

 元々グレイモンだったコロモンはそのことに疑問を持たなかった。

 メフィスモンと人間に捕まり、体を好き勝手にいじられて、操られて戦わされたときは、デジモンとしての生き方を否定されたように思い、怒り狂った。

 その怒りは未だ収まっていない。だが、退化して仕方なく傍にいることにしたハジメ達に対しては少し認識を変えていた。

 自分以外の誰かのために戦って、傷ついて、思い悩む彼らはコロモンには理解し難いものだった。

 

 コロモンはまだ気が付いていないが、少しハジメ達の事が気になりだしていた。

 

「じゃあ私達で空から探すね。何か見つけたら連絡するよ」

「私とレキスモンはあっちに行く」

 

 休憩を終えた後、それぞれが分かれて行動する。

 山脈地帯はそれなりに強い魔物もいるのだが、ハジメ達の強さなら問題ないだろう。

 

 二組を見送ったハジメは、ガルルモンに跨ると、宝物庫から試作したアーティファクトを取り出す。

 全長三十センチの鳥型の模型とスマホだ。

 模型の腹部と頭部には水晶のような石が埋め込まれている。

 

 ハジメがスマホを起動させ、模型を放り投げると、模型はふわりと浮かび上がり、空に飛んでいった。

 さらに同型の模型を19機取り出すと、同じように放り投げて飛ばしていく。

 

 この鳥型の模型の名前は〝オルニス〟。地球で言う無人偵察機、ドローンだ。ミレディから習得した重力魔法と、彼女が使っていたゴーレムを参考に製作した。あのゴーレムには感応石以外にも遠透石(えんとうせき)という鉱物が目の部分に使用されていた。感応石と同じように、同質の魔力を込めると遠隔にあっても片方の鉱物に、片方の鉱物に移り込んだ映像を映すことが出来るという品物だ。この鉱物を解析したハジメは、スマホの画面とリンクさせ、映像を表示させることに成功。さらに感応石の操作の処理もスマホに肩代わりさせることで、ハジメの処理能力の負担を軽減させながら操作できるようにした。

 もしもオルニスの技術がトータスにもたらされれば、大技術革命が巻き起こるだろう。

 

 人の匂いを探るガルルモンの背中で、ハジメはスマホでオルニスを操作しながら、捜索を続ける。

 今回使っているオルニスの数は20機。スマホで処理を補助しているとはいえ、〝並列思考〟の技能と高い演算能力を持つハジメでなければ操れない数だ。全ての機体から送られてくる映像はスマホの画面だけでは見られないので、12機ほどのオルニスからの映像はゴーグルに同期して表示させる。

 

 捜索しながらハジメ達は山脈の不気味な様子にすぐに気が付いた。

 異様に静かなのだ。その原因はどこにも生き物がいないからだった。

 鳥や獣、虫だけでなく魔物まで影も形も見えない。

 まるで身の危険を感じて息を潜めているような、異様な雰囲気が山脈全てを包んでいた。

 

「ん? これは……」

 

 オルニスから送られてくる画像の1つに、何かが写った。

 気になってよく見てみると、罅割れた盾や剣だった。

 手掛かりかもしれないと思い、ガルルモンへその場所へ向かう様に指示をする。

 

「ガルルモン! あっちに向かってくれ」

「わかった」

 

 移動しながら、香織達にスマホで位置情報を知らせるメッセージを送る。

 以前、〝念話〟の魔法が通じなかったことを踏まえて、感応石や遠透石の魔法効果を解析して、異世界でもスマホの通話が使えるようにアーティファクト化した。魔力と電波の両方を併用することで、ジャミングされにくくなっている。

 無事にメッセージは送信され、香織達からも了解の返事が返ってきた。

 

 ハジメ達がほぼ同時に到着した場所は大きな川辺だった。壊れた盾や剣が散乱しており、少し離れた場所には鞄も落ちている。

 何か手掛かりは無いかと探索するハジメ達。

 

「ハジメ君。ペンダントが落ちていたよ」

「遺留品かもしれないな。持ち主の名前とか書いてあるか?」

 

 香織が見つけたペンダントの汚れを拭って調べてみると、ロケットになっていた。開いてみると1人の女性の写真が入っていた。おそらく、誰かの恋人か妻と言ったところか。名前は入っていなかったので大した手がかりではないが、古びた様子はないので最近のものかもしれない。一応回収しておく。

 

「ハジメ。匂いがまだ残っていた。持ち主の後を追える」

「よし。ガルルモン、先導してくれ」

「待って」

 

 ガルルモンが匂いのする方向へハジメ達を先導しようとするが、ネフェルティモンが止める。

 

「この先に、何か嫌な気配がする。進むのなら注意して」

「嫌な気配。それって一体何かわかる?」

「詳しくはわからない。でも例えるなら……暗黒。ダークタワーを見た時の感覚に近いかもしれない」

「ダークタワー!?」

 

 驚愕する香織。ハジメ達も息をのむ。

 フェアベルゲンの近くに何故か立っていたダークタワーの事が頭に浮かぶ。

 もしかしたら、またダークタワーの力で洗脳されたデジモンと戦うことになるかもしれない。

 ハジメ達は慎重に先を進んでいく。

 

 進む先は川の下流だった。進むごとに周囲の様子が変わっていく。木々は倒され、地面には小さいがクレーターのような跡まである。それらの間に人の靴跡が見つかった。おそらく捜索している冒険者たちのものだ。おそらく戦いになり、相手から逃げている跡だ。

 

「変」

「何が?」

「人の足跡はある。でも、魔物の足跡は無い」

 

 ユエが違和感を口にし、聞いてきたレキスモンに説明する。

 さっきから見つかる戦いの痕跡には人間の足跡しかない。ならば人間同士の争いなのかというと、大木が薙ぎ倒されている跡もあるので違うと思われる。

 

「まるで浮遊している相手から逃げている感じだな」

「という事は飛行系の魔物かデジモン?」

「断定はできないが、仮定はしておこう」

 

 川辺を下っていくと、立派な滝に出くわした。

 滝つぼに降りてみると、ガルルモンは匂いが途絶えているのに気が付いた。

 ハジメ達は滝つぼの周辺を重点的に調査する。

 視覚と聴覚、嗅覚に加え魔力を使って重点的に探索するが、何も見つからない。

 だが、さっきから暗黒の気配を感じていたネフェルティモンだけは、落ち着きなく周囲を探っていた。その様子を見ていたハジメはふとあることを思いついた。

 

「ダークタワー……暗黒。確か、あれが元々あった場所は……! ガルルモン!!」

 

 ハジメはガルルモンを呼び、カードデックから一枚のカードを取り出す。そのカードとは……。

 

「暗黒の力を拡散させろ、カードスラッシュ! 《ダゴモン》!!」

 

 奇しくも、ハイリヒ王国で恵里がダークタワーを見つけたのと同じ方法をハジメは思いついた。

 ガルルモンの肉体からダゴモンの暗黒の力が拡散していく。その力に隠されていたダークタワーが共鳴して姿を現した。

 

「はぁはぁ」

「大丈夫かガルルモン!」

「ああ。どうってことない」

 

 暗黒の力の放出により肉体にかかった負荷に息切れするガルルモン。だが、ハジメを心配させないように気を取り直す。

 何せダークタワーはすぐ目の前に現れたのだから。

 

「間違いない。私が感じていた気配はこれだ」

「ハジメ君とガルルモンは休んでいて。私達で調べてみるよ」

「私達もやろう。ユエ」

「ん」

 

 香織達がダークタワーを調べようとしたその時、周囲の物陰から何かが飛び出してきた。

 それは黒い異形だった。

 まるで影そのものが形を得たような姿をしていた。顔に当たる部分には体に比べて大きな赤い目が妖しく輝いている。

 その赤い目を光らせてハジメ達に向かって光線を撃ってきた。

 

「回避!!」

 

 ハジメの言葉とほとんど同時に、全員がその場を飛び退る。

 

「なにこれデジモンなの!?」

「今調べる!」

 

 驚く香織に対して、ユエが急いでデジヴァイスで調べる。その間にもどんどん現れて、光線を撃ってくる。

 

「ガルルモン!」

「《フォックスファイアー》!!」

 

 ガルルモンが青い火炎を放ち、幾らかを追い払う。その隙にユエのデジヴァイスにデータが表示された。

 

「アイズモン:スキャッターモード。魔竜型成熟期? この見た目で??」

 

 表示されたデータと目の前のアイズモンの姿に首をひねるユエ。

 成熟期という割には一体一体の力は弱いからだ。

 

「スキャッターモードということは、別の姿がある。まさか、こいつらは本来の姿から分裂しているのか?」

 

「その通りだ!!!」

 

 ユエが調べたデータから推測するハジメ。突然、それを肯定する声が響き渡る。

 同時にアイズモンたちが攻撃を止めて一か所に集まり始めた。

 

 無数の黒い影が、一つの大きな姿になっていく。

 しかし、赤い目だけは1つにならずに影の表面に無数に蠢いている。あまりにおぞましい姿に、ハジメ達が警戒を強める。

 やがて、全てのアイズモンが合体し、魔竜型の本来の姿をしたアイズモンが現れた。その大きさは高層ビルに匹敵するほど巨大だ。

 全身の全ての目を光らせてハジメ達を見下ろす。

 

「ハハハハハッ!!!!」

 

 再び聞こえてくる謎の声。声の主を探すと、アイズモンの頭上に二つの人影が見えた。

 

「どうだ。驚いただろう? 南雲」

 

 そのうちの一人が話しかけてきた。さっきから聞こえてきた声だ。

 

「お、お前はッ!?」

「久しぶりだなあ。まさかくたばっていなかったとは思わなかったぜ」

 

 ハジメはゴーグルの拡大機能で話しかけてきた人物を確認する。

 黒や藍色を基調とした、王侯貴族のような豪奢な衣装を着た少年だった。その服は、まるでデジモンアドベンチャー02に出てきたデジモンカイザーの意匠に似ている。

 それを身に纏っている人物の顔を目にして、目を見開いた。

 

「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………檜山か?」

 

 脳をフル回転させて記憶を漁り、ようやく思い当たった名前をハジメは口にした。

 

「おい!!! 気が付くのに時間がかかってねえか!?!?」

「いや、すまん。正直、最近いろいろありすぎてお前の印象が薄かった」

 

 偉ぶっていた檜山だが、ハジメの態度に憤慨する。ハジメとしてもシリアスな空気を壊してしまったと思い、ちょっと申し訳なく思う。

 ちなみに香織も檜山の印象が薄くなっており、ハジメが名前を口にしてから、ハジメと同じくらいの時間をかけて、檜山の存在を思い出していた。急所を踏み抜いたりした相手なのに。とはいえ、彼らが檜山の顔を最後に見てからかなりの時間が経っているし、濃厚な時間を過ごしてきたのだ。親しくもない、どころか嫌悪感すら抱いていた人間の顔なんて覚えていなくても仕方ない。

 なお、ユエやデジモン達は全く知らないので「誰あれ?」「さあ?」とか言い合っている。ガルルモンにいたっては「コスプレイヤーオタクか?」と檜山をオタク呼ばわりしていた。

 

 彼らの態度にさらに怒る檜山。気を取り直してハジメはもう一度檜山を見ると、その後ろにいた人物に気が付いた。

 

「隣にいるのは清水か?」

「清水君? 本当?」

「ああ」

 

 愛子からついでに捜索してほしいと頼まれた行方不明の男子生徒、清水幸利。

 ハジメと香織はクラスが違ったが、ウルの町で生徒達と会う時に度々目にしていた。

 内気なのか話しかけてくることは無かったが、デジモンには興味があったのか、ガブモン達をよく見ていた。

 その様子が何となく昔の自分と重なって、ハジメは清水の顔を覚えていた。

 

「清水! お前何をしているんだ?」

「……」

 

 問いかけるハジメに対して、何も答えない清水。

 代わりに檜山が怒りの声を上げる。

 

「この俺を無視しているんじゃねえ!! 殺せ、アイズモン!!!」

 

 咆哮を上げるアイズモン。全身の目を光らせ、呪いの光線《邪念眼》をハジメ達に向かって放とうとする。それに対し、ハジメ達はすかさずカードを取り出してデジヴァイスにスラッシュする。

 

「「「カードスラッシュ!」」」

 

 スラッシュの完了と同時にアイズモンから光線が放たれた。

 光線が着弾し、無数の爆発に巻き込まれるハジメ達。

 

「ふん。死んだか?」

 

 ハジメ達の様子を見て邪悪に嗤う檜山。

 しかし、次の瞬間、爆炎の中から眩い光が迸った。

 

「ガルルモンX進化! ワーガルルモンX!!」

「テイルモン進化! エンジェウーモン!!」

「レキスモン進化! クレシェモン!!」

 

 光の中から飛び出してきたのは、完全体に進化したデジモン達だった。テイマーもそれぞれのパートナーに抱えられている。

 

「話を聞くには、まずあいつを何とかしないといけないみたいだな。ワーガルルモン!」

「おう!」

 

 ワーガルルモンに指示をしながら、抱えられていた腕の中から飛び降りるハジメ。

 

「降ろして、エンジェウーモン。自分の身は自分で守れるから」

「わかったわ」

 

 香織もエンジェウーモンに降ろしてもらい、アイギスを取り出して構える。

 

「〝来翔〟。クレシェモンは下から援護。あいつを撹乱して」

「ん。《アイスアーチェリー》!」

 

 魔法で上昇気流を起こし、落下速度を和らげながら指示を出すユエ。

 クレシェモンの氷の矢がアイズモンの巨体に放たれた。

 

「《カイザーネイル》!!」

「《ホーリーアロー》!!」

 

 飛行していたワーガルルモンとエンジェウーモンの攻撃も命中する。

 完全体の三体による同時攻撃。並みの相手なら倒れる威力の攻撃が、三つ同時に命中した。成熟期のアイズモンなら確実に倒せるはずだったが、なんと多少体勢を崩しただけで、アイズモンは持ちこたえた。

 

「なに?」

「私達の攻撃が!?」

「効いていないの?」

 

 困惑するデジモン達。それを可笑しくて仕方ないと檜山が嗤いながら見下ろす。

 

「クククッ、フハハハハハッ!! どうしたどうした!! アイズモンにはそんな攻撃効いていないぜ!!!」

 

 嘲笑う檜山。自分が圧倒的優位に立っているのが、途轍もなく心地いい。

 

「教えてやるよ。アイズモンはな、データを「アイズモンの特性はデータの貯蔵だ!! その量に比例して力を増している! さっきのスキャッターモードの姿でトータス各地のデータを収集したんだ。成熟期だからって油断するな、完全体だと思って攻撃しろ!!」「わかったハジメ!!」おいこらあ!?!」

 

 自慢げに説明しようとしたら、アイズモンを解析していたハジメに先取りされた。内容も正解だ。デジモン達も檜山を無視してアイズモンに攻撃し始める。

 ワーガルルモンが縦横無尽に飛び回り、アイズモンの体のあちこちを斬り裂き、殴りつける。

 上空からはエンジェウーモンの光の矢が雨あられと降り注ぎ、地上からはクレシェモンの氷と闇の矢が穿っていく。

 それに対しアイズモンは咆哮を上げながら、蓄えたデータを変換する。

 

「城を《愚幻》しろ、アイズモン! あいつらを潰せぇ!!」

 

 檜山の指示に従い、アイズモンは蓄えたデータを物体に変換し攻防に使う必殺技《愚幻》を使う。すると、空中に巨大な石造りの建造物、檜山の言った通りの城壁が現れて、ワーガルルモン達を潰そうと飛んできた。

 

 まさかの攻撃に驚くが、すぐに気を取り直す。回避はしない。何せ、ハジメ達まで巻き込まれかねない。だから、迎え撃つ。

 

「《アルナスショット》! 《カイザーネイル》!!」

「〝聖絶〟!!」

 

 ワーガルルモンがレーザーショットと爪撃で飛んでくる城壁を破壊する。砕けた破片が飛んでくるが、エンジェウーモンが結界魔法で防ごうとする。それでもまだ大きな破片がある。

 

「喰らいやがれ、〝ガルルバースト〟全弾発射!!」

「私も守る! 〝聖絶〟!!」

 

 デジモン達だけではない。ハジメと香織も破片を砕き、防御する。

 

 二体と二人が防御している間に、残るクレシェモンとユエが動いていた。

 砕かれ、宙を飛び交う破片に紛れてアイズモンの足元に接近する。死角から不意打ちを放とうと、ノワ・ルーナとシュラーゲンを構え、アイズモンの巨大な口に狙いを定める。

 

 例え、お互いにギクシャクした関係になっていようと、合図も無しにそれぞれの役割を決めて動く。それほどの絆を育んできたハジメ達の連携だった。

 

 しかし、今はアイズモンの方が上手だった。

 体に浮かぶ無数の目から情報を得ているアイズモンに、死角はなかった。

 ユエとクレシェモンが攻撃をする前に体を逸らし、放たれた《アイスアーチェリー》と銃弾を回避する。

 回避されたのを見たユエ達はすぐさまその場を離脱。反撃の光線から逃れる。

 攻撃は失敗したが、1つ分かったことがあった。

 

「ハジメ、あいつはパートナーデジモンじゃない。証拠に、見て」

 

 ユエがアイズモンの頭上にいる檜山を指差す。

 

「おい! 何勝手に頭を動かしている!? 落とす気かよ!!」

 

 勝手に頭を動かしたアイズモンに文句を言う檜山の姿があった。アイズモンが動かなければ、ユエ達の攻撃が当たっていたかもしれないのに、気が付いていない。

 アイズモンは檜山の指示も無しに動き、檜山はアイズモンの意図を考えようともしていない。

 彼らの姿からはデジモンテイマーとパートナーデジモンにある絆が微塵も感じられない。

 

「確かにな。あれはデジモンテイマーじゃねえ」

「うん。だったら付け入るスキがあるはず」

 

 再び武器を構えるハジメ達。

 

 ダークタワーを見つけた瞬間、問答無用で襲い掛かってきたのだ。確実にダークタワーや山脈に起きた異変に関わっているはずだ。もしかしたら、メフィスモンとも彼らは関係があるかもしれない。起こっている異変を一つずつ解決していけば、行方が分からなくなった雫達にもたどり着けるかもしれない。

 その思いはハジメたち全員の考えだった。

 

 それらを達成するためにも、戦闘を再開しようとしたその時、ダークタワーが赤く光り始めた。

 何事かと思わずダークタワーに目を向けるハジメ達。

 

「ちっ、もう時間かよ。おい南雲ぉ!!」

 

 舌打ちをしながら檜山が話しかけてくる。

 

「いいことを教えてやるよ。今、ダークタワーがゲートを開こうとしている。そのゲートの先に八重樫がいるぜぇ?」

「何だと?」

 

 嘲る様に告げられた内容は、看過できないものだった。

 

「嘘じゃねえ。この先に八重樫がいる。まあもっとも、生きているかはわからねえがな?」

「檜山ッ」

 

 ここにきてハジメは檜山に敵意を抱いた。雫の生死を引き合いに出してきたのだから、当然だろう。香織も檜山を睨みつけている。

 

「ゲートは開いたらすぐに閉まる。行くなら急げよ。ああ、それと」

 

 ニタニタと嗤いながら、檜山は言葉を続ける。

 

「俺達はこの後、町を襲う。このアイズモンと清水が支配下に置いた6万の魔物の大群でな」

 

 その内容に、絶句するハジメ達。

 完全体のワーガルルモン達三体と互角にやり合えるアイズモンと、6万もの魔物の軍勢がウルの町を襲う。そうなれば、観光の町であるウルは碌な抵抗も出来ずに蹂躙されてしまう。

 

「どうする? 八重樫を助けに行くか? それとも町を助けに戻るか?」

 

 檜山はハジメ達に雫の救出とウルの町の救援、どちらを選ぶかという選択肢を突き付けてきた。

 

 




〇デジモン紹介
アイズモン:スキャッターモード
世代:成熟期
タイプ:魔竜型
属性:ウイルス
アイズモンが分散した姿。データが多く流れるSNSを監視し、より大きいデータを食べて蓄えている。分散したため力は強くないが、身の危険を感じると1つに集まり逆襲する。必殺技は、目から発する呪いの光線『邪念眼』と、敵の影に入り動きを操る『影縛り』。



二章ではちょっとだけ登場しましたが、アイズモンの分裂体であるスキャッターモードが本格登場です。アニメで登場した時は、成熟期でありながらデータを蓄えて完全体複数に匹敵する強さを身に着けたとんでもデジモンです。檜山はこれまでトータス中をめぐり、アイズモンにデータを蓄えてきました。能力も凶悪で、魔物6万がいなくてもウルなんて蹂躙できます。

突き付けられた選択肢。果たしてハジメ達はどうするのか……。
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