ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る 作:竜羽
新年あけましておめでとうございます。
新年早々からバタバタしていたので少し投稿が遅れました。
今年もこの作品をよろしくお願いします。
「間に合ったのか?」
「見た感じ、間に合ったと思うよ」
雫に襲い掛かってきた深き者達を吹き飛ばして現れたハジメとワーガルルモン。
素早くわかる限りの状況を把握した2人は、油断なく戦闘態勢を取る。
「ハ、ハジメ。なんで、どうやって」
「落ち着いて雫」
「で、でもでも、いきなりあんな登場で助けに来てくれて!? まるでお姫様を助けに来た王子様で、そんなの私の妄想の中だけだったはずなのにそれがリアルになって!! どうすればいいのよ!!」
「本当に落ち着いてよ、雫!?」
対照的に、雫は突然の2人の登場に驚いた後は混乱していた。そんなテイマーをパタモンが落ち着かせようと話しかけている。
ハジメは2人の様子と、雫の手に握られているデジヴァイスを見て目を見開く。
行方不明になる前の出来事や伝え聞いていた憔悴した様子から、雫の精神状態を危惧していたが、今の彼女は地球の学校で過ごしていた時のような、素の彼女の雰囲気が少し出ている。
きっと彼女は苦しみから立ち直ったのだろう。
その結果、パートナーデジモンと絆を結んでデジモンテイマーになった。
ハジメはずっと心の中で、雫を立ち直らせるのは自分や親友の香織の役目だと思っていた。傷つけてしまった自分達の責務なのだと。
(でもそれは間違いだった。雫さんは僕達の手なんかなくても立ち上がった。シアや愛子先生、園部さん達みたいな、僕と香織以外にも支えてくれる人がいて、立ち上がれたんだな)
「無事でよかった雫さん。あとできればでいいんだけど、状況を教えてくれないかな?」
「あ、わ、わかったわ。ええっとでも何から話せば?」
「ここはどこかってことと、あとこの周りの敵やデジモン達の事をお願い」
「う、うん!」
慌てながらも雫はここが暗黒の海であることや、襲い掛かってきているダゴモンとその眷属の事、そして自分達より先に迷い込んでいたティオとウィルの事も説明する。
その間にも深き者達やパタモンの事を排除しようとするマリンデビモンとマリンキメラモンが襲い掛かって来るが、ワーガルルモンが深き者達を蹴散らし、シア達が抑え込む。
こんな危険と隣り合わせの状況なのに、PTSDで取り乱すこともなく説明する雫には、もうハジメ達の手助けは必要なさそうだ。
(だったら今僕が、俺がやるべきことは、この暗黒の海から脱出すること)
雫の様子を観察しながら、技能〝並列思考〟を使い説明に耳を傾けていたハジメは自分のやるべきことを決める。
ここがアニメで出てきた暗黒の海であること。竜人族のティオと探し人のウィル・クデタが迷い込んでいたこと。襲い掛かってきているダゴモンとその配下の脅威。どれも頭を抱えたくなるような事ばかりだが、最優先事項はここからの脱出だ。
そのための力がハジメの手にあるなら、迷うことは無い。
「雫さん、確認するけれどデジモンテイマーになったんだな?」
「ええ! パタモンが私のパートナーよ」
「戦えるか?」
「……わからない。でも、パタモンが大丈夫なら、私も戦いたい」
「僕なら大丈夫。雫のおかげで調子が良くなったんだ!」
暗黒の海の環境に弱って苦しんでいたパタモンだが、雫がテイマーとなった時に出現したデジヴァイスの光で回復していた。同様の現象は昔ハジメも見たことがあったので納得する。(※加藤ジュリとレオモンがパートナー契約を結んだ際のこと)
パートナーデジモンが大丈夫なら、テイマーも立ち向かえる。
「カードはある?」
「あるわ。ずっとお守り代わりに持っていたもの」
ハジメにカードケースを見せる雫。香織と同じく雫もデジモンに興味を持った時から、ずっと持っていた。
「なら、頼んだ」
「うん!」
ハジメの横に並ぶ雫。ずっと彼女が夢見ていた光景が実現した。
「まずはこいつらを何とかするか」
「それなんだけど、まずは私達にやらせて」
「任せていいのか?」
雫の提案に確認を取るハジメ。彼女は頷くとカードケースの中から一枚のカードを取り出す。
「さっきパタモンがパートナーになったときから、このカードの事が頭に浮かんだの。回復していてもパタモンにあまり無理はしてほしくないから、きっとこのカードが最善のはず。いくわよ、パタモン!」
「来て、雫!」
パタモンの返事を聞いて雫は手に持ったカードを、ハジメ達がしていたようにデジヴァイスにスラッシュする。
「カードスラッシュ!」
スラッシュされたカードのデータをデジヴァイスが読み取る。
「希望のデジメンタル!! デジメンタルアーップ!!」
──ARMOUR EVOLUTION──
金色の光がデジヴァイスから放たれ、金色の物体が現れる。
それは香織が使う光のデジメンタルと同じ、デジメンタルの一種。邪悪な存在に絶対的な力を授けるという希望のデジメンタルだった。
希望のデジメンタルがパタモンと1つに重なる。
「パタモン! アーマー進化!!」
希望のデジメンタルのパワーを受け、パタモンは進化していく。
短かった四肢が伸びていき、背中から黄色の翼が生える。
首も伸びていき、まるで神話に登場するペガサスのようなシルエットになる。そこにデジメンタルから生まれた鎧が装着される。
希望のデジメンタルが持つ神聖の属性の力を見に着け、天空を自在に駆ける聖獣へと生まれ変わったパタモンの新たな姿。ネフェルティモンと同じアーマー体の聖獣型デジモン。
「天翔ける希望! ペガスモン!!」
暗黒の海に輝く聖なるデジモン。その姿に深き者達は恐れおののき、後退る。本能的にペガスモンが自分達の天敵であると分かっているのだ。
「やっぱりできた。調子はどう? ペガスモン」
「力が溢れてくる。これなら戦える!」
言葉通りに力強く駆けだしたペガスモンは、翼を羽ばたかせると勢い良く飛び上がる。一度上昇した後、急降下しながら体を立てに回転させ、ハジメ達を取り囲む深き者達に突撃する。
「《ロデオギャロップ》!!」
後ろ脚による強烈なキック技《ロデオギャロップ》を、身体を回転させて連続で放ちながら、深き者達をあっという間に蹴散らしていく。
大量に居た深き者達が吹き飛ばされるのを確認したハジメは、ワーガルルモンをシア達の援護に向かわせる。
「先に行ってくれ。俺は雫と灯台の所に行く」
「わかった」
ワーガルルモンが飛び上がると、ペガスモンは残った敵を一掃する。
「《シューティングスター》!!」
両翼の内側に宇宙空間を作り出し、そこから流星を落とすというとんでもない技を使い、言葉通りに深き者達を一掃したペガスモン。
雫とハジメの傍に降り立つと、身をかがめて乗る様に促す。
「さあ、行きましょう。ハジメ」
「ああ」
先に跨った雫に続いて、ハジメも乗り込む。
2人はペガスモンに乗り、拠点にしていた灯台の下に向かった。
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強敵のマリンデビモン、マリンキメラモンと戦うシアとフレアモン、そしてティオ。
パタモンの囮作戦により乱戦となったが、そのおかげで隙が出来、何度か決定打となる技を叩き込んでいた。しかし、深き者達の集合体である二体の水棲型デジモンは、傷を受けた分だけ同族と一体化することで回復してしまう。
このままではいずれ力を使い果たし負けてしまうという時に、ワーガルルモンという心強い援軍が駆け付けた。
「ハアアアアアアア!!」
背中の武装『サジタリウス』から射出した《カウスラッガー》でマリンキメラモンの触手を斬り裂く。深き者達の同化ですぐに回復するが、近接戦闘能力は下がった。
その隙を突いて先ほど身に着けた突進技をティオが繰り出す。
マリンキメラモンは右手の槍で防ごうとするが、懐に潜り込んだワーガルルモンが蹴り上げる。
そのままティオはマリンキメラモンの胴体に突っ込み、マリンキメラモンの巨体を沖の方まで吹っ飛ばす。
「炎の結界を身に纏った突撃。《ブラストスマッシュ》とでも名付けようかのう」
ふと頭に浮かんだ名前を技名にするティオ。いや、浮かんだというよりも盾から流れてきたような感じがした。
少し首をひねりながらも、まだ相手は健在なので気は抜かない。
戦っているのはシア達も同じなのだ。
マリンデビモンは左右の触手に加え、《ギルティブラック》のウォーターカッターの連射で、シアとフレアモンが得意な接近戦をさせないようにしていた。
こうなると炎による遠距離攻撃しかない。
しかし、フレアモンの遠距離技はどれも〝溜め〟を行う必要がある。マリンデビモンはそれを見抜き、それを行わせないように攻撃してきていた。
「こうなったら私が何とかするしかないです。カードを使って……」
近くに自分がいてはフレアモンの負担になると思い、離れて見守っていたシアは、膠着した状況を何とかしようと、デジモンカードを取り出して、どのカードを使うべきか考える。が、
「ど、どのカードを使えばいいのかわからないですぅ」
シアは基本的にパートナーと一緒に殴り込み。カードは進化の時しか使わない。
そんな感じの戦闘スタイルだったので、こういう時にどんなカードを使えばいいのか咄嗟に判断できなかった。
「と、とりあえずあいつに攻撃できるカード。た、例えば……」
焦りながらカードを選ぶシア。そして、遂にあるカードを選んだ。
「これです! カードスラッシュ! 《ランクスモン》!」
シアが選んだカードはアーマー体の獣型デジモン、燃え盛る毛皮を纏った山猫のような姿をしたランクスモンのカードだった。その効果は……。
「え? なんだこれは? 体の中のエネルギーが!?!?」
フレアモンの体内の寝るエネルギーが膨れ上がり、放出される。
やがて、それは爆炎となりフレアモンを中心に大爆発を起こした。
ランクスモンの必殺技は体内の熱エネルギーを最大限に爆発させ、爆炎を発生させる《サーマルメイン》。いわゆる自爆技だ。
その技をランクスモンよりも圧倒的に炎エネルギーの高いフレアモンが使用したら、爆発の規模は桁違いに大きくなってしまった。
それはマリンデビモンまで巻き込むほどだった。ついでに言えばシアの所にまで及んでいた。不幸中の幸いだったのは、戦いの中で灯台から離れていたことだった。
「どっひゃあああっ!?!?」
身体強化全開で爆発から逃げるシア。このままでは自分の選んだカードの所為で、こんがり焼かれてローストウサギになってしまう。そんなのはあまりにも情けない未来だ。
爆発に飲み込まれる寸前に、突然彼女の首根っこを何かが掴み、空に吊り上げられた。その結果、爆発から逃れられた。
何事かと上を見上げてみると、ペガスモンに乗った雫とハジメがいた。灯台に向かっていたが、シアの戦いの様子を見て助太刀に来たのだ。ハジメが左腕の義手からワイヤーアンカーを射出し、シアを引っ張り上げている。
「本当に何やってんだお前は!?」
「ハ、ハジメさん!? た、助けに来てくれたんですか!!」
「ちょっと。私もいるんですけど」
ハジメしか目に入っていない様子のシアに、雫がツッコミを入れる。
やがて爆発は収まり、フレアモンが姿を現す。しかし、エネルギーを使いすぎて消耗しており、片膝をついていた。
「ああ。フレアモン。私の所為で……」
「不用意にパートナーに負担を強いるカードを使ったのは間違いだ。これからは気を付けろ」
「ううぅ、はいですぅ」
ハジメの厳しい言葉に気を落とすシア。
「だが、結果的にはマリンデビモンを退けられたな」
「え?」
「マリンデビモンの姿が無いわ!」
雫の言うとおり、マリンデビモンは影も形もなくなっていた。
途轍もない威力の爆発によって、再生する暇も与えずにマリンデビモンの姿になっていた深き者達を一気に吹き飛ばしたのだ。まさに怪我の功名だった。
「あいつらも無敵の存在なんかじゃないってことだ。よくやったシア」
「ハジメさん……はいです!」
「ちゃんとフレアモンに謝って、そんで労ってやれ。あとは俺とワーガルルモンがやる」
先ほどワーガルルモンとティオによって、沖に吹き飛ばされたマリンキメラモンを見据えながら、宣言するハジメ。
シアはハジメに後を任せて、ペガスモンから降ろしてもらってフレアモンを迎えに向かった。
「フレアモン! ごめんなさい。私が選んだカードの所為で」
「全くだ。次は、ちゃんとしてくれよ」
涙ながらに謝るシアに、フレアモンは苦笑いをしながら返事を返す。
しかし、慣れない技の使用と戦いの疲労から限界が来たのか、コロナモンに退化してしまう。
シアはコロナモンを抱え上げながら、先ほどのハジメの言葉を信じて、灯台に戻る。
一方、雫とペガスモンに乗るハジメは、ワーガルルモンがマリンキメラモンに向かって行くのを見ながら、カードケースの中から数枚のカードを取り出す。
今回はある秘策で戦う。
「切り札を使うぞ。準備は良いかワーガルルモン!」
「もちろんだ。いつでもこい!」
パートナーの頼もしい返事に、ハジメは一枚のカードをデジヴァイスにスラッシュする。
「カードスラッシュ! テイマーズカード《デュークモン》!!」
なんとハジメが使ったのは、テイマーズの松田タカトとパートナーのギルモンが進化した、究極体の聖騎士型デジモン、デュークモンのカードだった。
「力を貸してくれ、ギルモン──デュークモン!!」
ワーガルルモンが友の名前を呼ぶと、右手にデュークモンの聖槍〝グラム〟が、左手に聖盾〝イージス〟が現れる。ハジメがスラッシュしたカードの力で、デュークモンの力がワーガルルモンに宿ったのだ。
頼もしい武器を構えながら、ワーガルルモンはマリンキメラモンに突貫する。
マリンキメラモンが触手を伸ばしてくる。さらに口からは水流を光線のように飛ばしてきた。
それに対し、ワーガルルモンは全く怯まずに向かって行く。
「はぁ! 《ロイヤルセイバー》!!」
触手も水流もグラムの切っ先から繰り出す光の刃、デュークモンの必殺技《ロイヤルセイバー》で纏めて切り払う。
かつて世界を救った聖騎士の武具は、暗黒の攻撃を全く寄せ付けない。
ある程度マリンキメラモンに近づいたワーガルルモンは、イージスを掲げる。
イージスが眩く光り輝き、刻まれた▲の紋章に1つずつ赤い光が灯っていく。そして、全ての紋章が赤く輝く。
「《ファイナル・エリシオン》!!」
イージスから全てを浄化する光線が放たれ、マリンキメラモンに直撃する。
「キュアアアアア!?!?」
苦悶の声を上げるマリンキメラモン。光線の浄化の力の所為か、徐々にその形が崩れていく。だが、さっきフレアモンの技を受けたマリンデビモンと同様に、海の中から深き者達が現れて同化と再生を行っていく。
それを見たワーガルルモンと視界を共有していたハジメは、次のカードを使用する。
「カードスラッシュ! テイマーズカード《サクヤモン》!!」
次にハジメが使ったのは牧野ルキとレナモンが進化した神人型のカード。
デュークモンの武器が消え、今度は金色の錫杖が現れる。ワーガルルモンは錫杖を振るい、空中に打ち付けると、再生途中のマリンキメラモンを囲むように巨大な浄化結界が展開された。
「
結界に包まれたマリンキメラモンは再生を阻害され、再び形が崩れ始める。深き者達が再生させようとするが、結界内にいる者達は動けなくなり、外の者達は結界内には入れない。
やがて、完全にマリンキメラモンの形が崩れ、深き者達の大きな集合体になる。
「これで止めだ。カードスラッシュ! テイマーズカード《セントガルゴモン》!!」
今度は巨大な緑色の砲塔が現れ、ワーガルルモンがミサイルランチャーのように手に取る。本来は巨大なセントガルゴモンの両肩に装備されている代物だが、ワーガルルモンのサイズに合わせて、1つだけ現れた。それでも、大きさはそのままなので威力はとんでもない。照準をマリンキメラモンだった深き者達の集合体に向ける。
そして、再生される前に引き金を引いた。
「《ジャイアントミサイル》!!」
砲塔からメガトン級の巨大ミサイルが発射される。ミサイルはそのまま深き者達に向かって行く。沖の方のダゴモンが撃ち落とそうと三叉槍を投げつけてくるが、手前にあった浄化結界にぶつかり少し軌道が逸れ、さらにミサイルがぐにゃりと曲がって槍を避けた。浄化結界が消えたので、マリンキメラモンは再生しようとするが、その前にミサイルが着弾した。
ミサイルが起爆し、巨大な爆発が起こる。
爆発が収まると、深き者達の姿は跡形もなくなっていた。
戦いを見ていた雫はハジメが使ったカードの力に驚いていた。
「すごい。ねえ、ハジメ。そのカードってもしかして」
「雫と香織に見せたテイマーズカードだ」
香織と雫に出会った当初、テイマーズの皆に引き合わせた際に見せたカードがあった。それぞれのテイマーのパートナーデジモンが描かれた世界にたった一枚しかないカードだ。テイマーズの為に作られたそれらをテイマーズカードという。
テイマーズカードは特別なカードで、通常のデジモンカードと違い各テイマーのデジヴァイスに残されていたパートナーデジモン達のデータが書き込まれている。カードスラッシュで使用すれば、より本物に近い力が再現される。
オルクス大迷宮で暴走したハジメを救う際に、香織がハジメのカードを使用した。
テイマーズカードはそれぞれの本人しか持っていない。ハジメも自分の分しか持ってきていなかった。ではさっきハジメが使ったデュークモン達のカードは何なのかというと。
「正確には、俺のデジヴァイスにあったデータを使って作ったコピーカードだ。ずっと作っていて、最近完成した」
オルクス大迷宮のオスカー邸で旅の準備をしていた時にカードの補充をするために、カードのコピーもしていた。その時に自分のデジヴァイスから、デュークモンを始めとしたテイマーズのパートナーデジモンのデータをサルベージしてカードにすることを思いついた。とはいえ、ただのカードのコピーとは違い、ハジメのデジヴァイスにあるデータだけでは完全なカードにならず、補完するためのデータを計算し、作る必要があった。これまでの冒険の合間に作業を進めて、ウルの町に着く直前に完了した。
完成したのはデュークモン、サクヤモン、セントガルゴモンの三枚の究極体のカードだった。
だが、メフィスモンの襲来の時、ハジメはこれらのカードを咄嗟に使えなかった。
作ったばかりで試していないこと。不具合が起こる可能性があること。他にも理由はあったが、一番の理由はタカト達への申し訳なさだった。
「タカト達のカードのコピーを使うことは、あいつらの力を軽々しく扱っているんじゃないかって思っちまった。でも、その所為で誰かが傷ついたら、きっとあいつらは俺のこと怒るかもしれない。いや、絶対に怒るよな。そう思ったらこのカードの事が、俺達テイマーズを繋ぐ絆の切り札に思えた」
雫がトラウマを乗り越えたのと同じく、ハジメも何か心境に変化が起こるようなことがあったようだ。
気になった雫だが、戦いはまだ終わっていない。
──……イケ……
「なんだ?」
マリンキメラモンを退けたワーガルルモンは、何かの声を感じ取った。
それは海の沖にいる巨大な姿になったダゴモンの方から聞こえた。
──デ……ケ……
「な、なんなんですか。この声」
聴覚が優れているシアも、同じ声を感じていた。まるで光の届かない深海から聞こえてくるような、重くて暗い不気味な声。
──デテイケ!!!! ──
「ダゴモンの声! みんな逃げろ!!!」
ひと際大きな声が響き渡る。そこに込められているのは、強烈な拒絶の意志。
それを感じ取ったワーガルルモンは猛スピードで、ハジメ達の元に戻る。
ワーガルルモンが動くのと同時に、ダゴモンは巨大な大波を起こした。
一面の海全てが盛り上がり、巨大な壁となって、浜辺にいるハジメ達に迫って来る。
まるで自身によって引き起こされた津波のようだ。
いや、この暗黒の海という世界を統べるダゴモンが起こす現象は、天災に匹敵する事象だ。
ダゴモンはずっと一貫した行動をしていた。
この海に迷い込みながら、闇に染まらない異分子の排除だ。
それらが悉く退けられたので、遂に世界そのものの力を使って排除しにきた。
「とにかく合流だ。雫頼む」
「うん!」
急いでハジメ達も灯台に向かう。
迫りくる津波はあまりに範囲が広い。バラバラに巻き込まれたら、離れ離れになってしまう。
灯台の下にハジメ達がたどり着くのと同時に、ワーガルルモンとティオも辿り着いた。
「自己紹介している暇はない。とにかくあの津波から逃げる方法は無いか」
「ペガスモンとティオで飛んで逃げるのは?」
「妾は魔力を使いすぎた。もう竜化できん」
再生する相手との闘いはかなりの消耗をもたらした。余力はもう残っていない。
「でしたらワーガルルモンに抱えてもらうのは?」
「すまない。俺ももう限界だ」
シアが代案を出すが、ワーガルルモンが膝をついてガブモンに退化する。
「テイマーズカードを使ったせいか。究極体の力を使うんだから当然だな」
ガブモンの状態からハジメが分析する。
進化系統が異なるデジモンの究極体の力を連続で使用したのは、かなりの負担をワーガルルモンに与えていた。
これで空に逃げるという手段が完全に無くなった。
ペガスモンに乗れる者だけ逃れるという手もあるが、そんなことは誰も言い出さなかった。
やがて、津波が灯台ごとハジメ達を飲み込んだ。
〇デジモン紹介
マリンキメラモン
世代:完全体
タイプ:合成型
属性:ワクチン
様々な水棲系のデジモンのパーツを組み合わせ創られた合成型デジモン。キメラモンと同様の技術で生み出されたと思われるが、それ以外のことは全くの謎。神出鬼没で嵐のように現れ、凄まじい破壊衝動で生態系を蹂躙し、何処かへと消えていく。
必殺技は全身を高速回転させ大渦を発生させる「ポセイドンボルテックス」と、ツノの先端から放つ大質量のエネルギーで周囲を蒸発させる「アクア・バイパー」。
パタモンの進化一発目はペガスモンでした。香織のテイルモンの初進化に対応しているのを意識しました。
シアの戦闘は前話でのバグ具合とは一転して、久しぶりに残念感を出そうと思ったら、まさかの爆発展開。結果オーライでしたが、まだまだ未熟なのでこれからの成長の糧になっていくでしょう。
最後にずっとやりたかったテイマーズカードのスラッシュ。コピーカードですが、これでテイマーズメンバーのデジモンの技とかも使えます。
津波に飲み込まれたハジメ達の行方も気になりますでしょうが、次話はトータスの話に戻そうと思います。