ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る   作:竜羽

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お待たせしました。2月中に投稿できないとは思わなかったです。理由はあとがきで。

今回からしばらくハジメ達から離れて香織達によるウルの町での戦いに移ります。



20話 戦争の始まり ウル包囲網

 北山脈に続く道があるウルの町の北門で、愛子は雄大な北山脈を不安げに見つめていた。

 今日の作業が終わってからずっとそうし続けている。理由はもちろん、今朝山脈に向かったハジメ達の身を案じてだ。

 

「愛子。もうすぐ日が暮れる。そろそろ戻らないか」

「いえ。まだ大丈夫です」

 

 神殿騎士のデビッドが声をかけるも、愛子は振り向くことはしない。

 どれだけハジメ達が力をつけていても、愛子にとっては大事な生徒だ。生徒を危険なところに向かうのに、見送ることしかできないのがどうしても心苦しい。

 せめて無事な姿を一目早く見たいと思い、こうして門の前で待っているのだ。

 

 だが、ハジメ達のことをちょっと腕が立つ冒険者風情にしか思っていないデビッドには、一週間足らずでここまで愛子に心配されていることに、激しく嫉妬していた。

 なので、多少力づくにでも愛子を連れていこうと近寄った時だった。

 

「あれは!!」

「愛子!?」

 

 デビッドの手を無意識に躱して、駆けだす愛子。見向きもされずに、対象から逃げられた手が虚しく空中を握る。なんとも言えない気分になったデビッドだが、愛子が見つめる先に目を向けると顔を険しくした。

 門の道の先に砂煙が上がっていた。しかもものすごいスピードで町に向かってきている。一見すると魔物の大群が迫ってきているように見えたデビッドは、剣を抜いて愛子の前に出た。

 

「魔物か!? 危険だ愛子!」

「いえ、あれは魔物じゃないです」

 

 攻撃魔法を使おうとするデビッドだが、愛子が止めようとする。なぜなら、あの砂煙は今朝も見たからだ。

 砂煙が近づいてきて正体が見えてきた。

 魔力駆動二輪に乗る香織だった。北山脈からウルへと通じる街道を爆走してきた。

 

「しらさ」

「愛子さん!!」

 

 香織の名前を言おうとするのを感じた香織は、車体をドリフトさせながら砂煙を巻き上げて言葉を止める。

 変装のアーティファクトは身に着けているので、今の香織は冒険者のビアンカだ。なのに、違う名前を呼ばれたら、正体がばれてしまう可能性がある。

 

「けほけほ。そ、そうでした。……ビアンカさん。無事だったのですね」

「はい! それよりも、至急お伝えしなければならないことがあります! 町長さんの所に行きますので、詳しい説明はそこで! 乗って!」

 

 魔力駆動二輪から降りながら、愛子を急かして魔力駆動二輪に乗せる香織。

 

「き、貴様愛子に対して何という物言いだ! それになんだその乗り物は!! 依頼はどうしたというのだ!?」

 

 それに我慢ならなかったデビッドが突っかかって来る。

 答える時間が惜しかったので、魔力駆動二輪はアーティファクトと言い捨てて、愛子を乗せて町中を疾走する。

 町を復興していた人々がギョッとするが、構わずに町長がいる役所に向かう。

 役所に着くと魔力駆動二輪を乗り捨てて中に入る。

 愛子と共に町長の部屋に入った香織は、北山脈であった出来事の一部を説明する。

 

 主に檜山がウルに魔物をけしかけたと言ったことを伝える。もっとも檜山と清水の事については、混乱を大きくするだけと思い省いた。

 話を聞いた彼らは懐疑的な態度だった。

 いきなり6万の魔物が迫ってきていると言われても、すぐに信じることなんてできない。

 当然、香織もそのことはわかっていたので、今ここにいない仲間(ハジメとユエ)が真偽を調査中だと言っておく。

 

「嘘か本当かはわかりません。でも、備えは必要です。避難する準備をするように通達してください」

「私も同意見です。お願いします」

 

 香織に追従して愛子も訴える。

 彼女も香織の話に驚いていたが、真剣な顔で訴える香織を見て、信じることにした。

 しかし、結局彼女達の訴えが通ることは無かった。

 まず魔物が迫ってきているという明確な証拠が無かった。6万という現実離れした数も真実味が無かった。

 次に愛子の信頼があるとはいえ、ただの香織達がただの冒険者という身分が不確かなことも信用が得られない理由だった。しかも、怪しげなアーティファクトを使っていることとパーティーメンバーを置いて戻ってきたことからも、怪しまれてしまった。

 愛子が弁明しようにも、神殿騎士のデビッド達まで香織の話を訝しんだ。

 香織はこれ以上取り合っても無駄だと思い引き下がった。一応、もう一度魔物の襲来について釘を刺して町長の部屋を後にした。

 

「ど、どうしましょう。このままじゃ町が大変なことに」

「出来ることをやるしかありません。先生には園部さん達を連れて逃げて欲しいんですけど」

「……今ここで私達がいなくなれば、余計な混乱が起こります。そこに魔物襲撃があれば、きっと全滅です」

 

 香織の言葉に少し考えた愛子は、自分が生徒を連れて逃げた場合の事を想像して首を横に振る。

 アークデッセイ号に乗ってウルから逃げた愛子達を捜索するために、デビッドや町の住人が動いたところに魔物が襲来したら、碌な抵抗も出来ないままに蹂躙されるだろう。

 それに後からそのことを聞いたら、生徒達は自分の責任だと自責の念に駆られるかもしれない。ただでさえ心に傷を負っているのに、更なる負担をかけかねない。

 香織も愛子の考えを何となく察する。

 

「私は魔物の襲来に備えて準備をしてきます。先生は園部さん達に説明をお願いします」

「はい。わかりました」

 

 香織と愛子は別れた。

 愛子は香織に北山脈で起こったことを詳しく聞きたかった。何となくだが、愛子はハジメとユエが魔物の調査の続行をしているだけじゃないと思った。その真偽を聞きたかったが、町を守る準備に取り掛かる香織の邪魔はできない。だから、愛子は生徒達への説明に向かった。

 

 一方の香織は現時点でできる限りの備えをウルの町の周りに施したあと、ユエからの連絡を待っていた。もう日は落ちて、もうすぐ夜だ。ユエも魔導二輪を持っているので、そんなに時間はかからないはずだ。もしや、何かあったのかと不安になってきた。

 

「おい!! 貴様!!」

「ん?」

 

 突然かけられた怒声に香織は声の出どころを見下ろした(…………)

 

「いったいこれは何だ!? 降りて説明しろ!!」

 

 香織を見上げて怒鳴っているのはデビッドだった。隣には愛子が心配そうに香織を同じように見上げている。

 香織は2人の下に向かって飛び降りる。

 

「きゃ!?」

 

 香織の行動に驚いた愛子が声を上げるが、香織はちょっと重力魔法を使って体にかかっている重力を軽減して、ふわりと降り立つ。

 

「どうかしましたか?」

「ど、どうかしたかではない!? これはいったいなんなのだ!?」

 

 デビッドはさっきまで香織がいた土壁を指差して問いただす。

 高さ4メートルほどで、このウルの町と北山脈の間を阻むようにできている。しかも一つではなく、二重三重にもなっている多重外壁だ。

 

「襲撃に備えた外壁ですが?」

 

 香織が即席で作ったものだ。使った魔法は〝錬成〟だ。

 魔導二輪の車輪に付与されている悪路を整地しながら進むための〝錬成〟を、逆に地面を盛り上げるように書き換えて使った。

 香織もハジメほどじゃないが生成魔法を使える。魔法の術式もよく勉強していたので、これくらいの魔法付与の改変はすぐに出来た。

 それを使って魔導二輪でウルの町と北山脈の間を何度も走って外壁を築いた。

 

「ふざけるな! これ以上この町の住人の暮らしを邪魔する気か!!」

「備えは必要です。観光都市の防衛力なんて頼りにならないんですよ?」

「6万の魔物の襲撃など与太話もいい加減にしろ! こんなものがあっては商人や通行人の邪魔だ!」

 

 魔物の襲撃の話を信じていないデビッドには、北山脈への道を閉ざす外壁がウルの町の暮らしを邪魔する物にしか思えなかった。

 

「即刻取り壊せ。夜も眠ることは禁ずる!!」

「(相変わらず無駄に偉そう)お断りします。せめて魔物の集団の実在の確認が出来るまで壊すつもりはありません」

「冒険者風情が逆らうつもりか!! 世迷いごとだけでなく、貴様の持つアーティファクト類の事も愛子が庇うから見逃してやろうと思っていたが、もう我慢できん!!」

「デビッドさん! いい加減にしてください! 壁を壊すにしても夜にやらせることじゃありません!!」

 

 デビッドと愛子が言い合うのを聞きつつ、香織は檜山が使役していたアイズモンの事を思い出す。成熟期でありながら、完全体3体と対等に渡り合ったあのデジモンは危険だ。

 アイズモンにとってこの程度の壁なんて紙同然。

 実のところ、香織は居るかどうかわからない魔物よりも、アイズモンへの対策として外壁を作った。

 もちろん。ただの外壁ではない。アーティファクトも仕込んであったりする。

 それほどの作業がやっと一段落したのに、壊すなんて論外だ。

 

 デビッドなんて無視して、愛子先生を引っ張っていこうかなと思ったその時、香織のポケットの中に入れていたスマホから音が鳴った。

 その音にまたデビッドが騒ぐが、香織は構わずに取り出して、通話に出る。相手はもちろんユエだ。

 

「もしもし。ユエ?」

『ん。私。さっき調査が終わった』

「結果は? 魔物は本当に居たの?」

『いた』

 

 香織の問いかけにユエは短く答える。それを聞いて香織はやはり備えをしておいてよかったと思った。あとは何とかして、住人の避難誘導をさせなければ。

 しかし、その考えは次のユエの言葉で吹き飛ぶ。

 

『でも事態はもっと悪い。魔物だけじゃなくて魔人族までいる』

「魔人族!?」

「何だと!?」

「え!?」

 

 思わず声を上げた香織の言葉に、デビッドと愛子も驚く。

 

『魔物はそいつらに指揮されている。一塊になって襲ってくるんじゃなくて、ゆっくりと気づかれないように、町の周りに広がっている』

「つまり、魔物に町は包囲されようとしているの?」

 

 ユエの話を聞いた香織は事態の深刻さを察して、声が低くなる。

 檜山による清水を利用した魔物の襲撃だけなら、向かってくる魔物を迎え撃つだけだった。だが、その裏に魔人族達の暗躍があるのなら、これは話が変わってくる。

 

『これは魔物の襲撃じゃない。魔人族による敵国の農耕地帯への破壊工作。つまり、戦争』

 

 戦争。

 異世界から勇者が召喚された最大の要因が、最前線である国境から遠く離れたウルの町で起ころうとしていた。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

「疲れた……」

 

 明け方の光を浴びながら、香織は腰を下ろす。そこに上着のポケットに入れていたデジヴァイスの中から、テイルモンが声をかけてきた。

 

『大丈夫か香織?』

「うん。徹夜なんて久しぶりだったよ」

『少し休んだ方が良い。いざという時に動けないとどうにもならないぞ』

「あはは。なんだかテイルモンお母さんみたいだよ」

 

 笑っている香織だが、体はかなり重く感じていた。

 高いステータス、特に魔力に至っては5万超えの香織が疲労困憊になっている理由は、ユエの報告を聞いてから急いで始めた魔物対応の続きの所為だった。

 話の詳細を聞きたそうだった愛子とデビッドを放って、香織は魔導二輪による外壁の錬成を再開。今度はウルの町をぐるりと囲むように錬成した。

 とはいえ、ウルの町はそれなりに広い。

 しかも猶予があるかもわからないので、最初に作った多重外壁以外の部分は外壁が1つしか作れなかったので、その分壁の強度を上げる必要があった。

 外壁の錬成が終わった後は、多重外壁にも設置したとあるアーティファクトも用意した。

 全ての作業がようやく終わったのは、ついさっきだった。外壁の上の設置したアーティファクトの傍で横になっている。

 

 遠くから、朝早くに起きた住人が外壁を見て困惑する声が聞こえてきた。

 

「とりあえず、説明をしないと。でも、その前にアーティファクトの起動を……」

 

 疲労で重くなった体を起こしたその時、ウルの町の上空を何かが横切った。

 

 巨大な翼と鋭い鉤爪を持った飛行型の魔物。ライセン大渓谷でも遭遇したハイベリアと呼ばれる魔物だった。

 それが10体。ウルの町の上空を舞っていた。

 しばらく町の様子を見ていたハイベリア達は、一気に急降下してきた。

 

「来た」

 

 突然襲来してきたハイベリアに、香織は直感的に魔人族からの襲撃だとわかった。

 ハイベリア達はウルの町のすぐ上を通過すると、何かを落としてきた。

 どうやら足で掴んで運んで来たらしい。これだけでハイベリア達は野生の魔物じゃない。魔人族により使役されていることが分かった。

 

 ハイベリア達が落とした物はすぐに街に落ちていき──爆炎をまき散らして破裂した。

 

「く、空爆!?」

 

 ハイベリアのまさかの攻撃方法に驚く香織。

 この世界では空の上からの攻撃何て存在していなかった。魔人族が魔物を使役するようになったのも最近の事で、こんな攻撃方法をしてくるなんて知られていない。どういうことかと訝しんでいると、北山脈でハジメ達の前に現れた檜山の事が頭をよぎった。

 

「教えたの? 地球の戦争のこと」

 

 昨日のユエの報告で魔人族がいると聞いたときから、檜山が魔人族と繋がっている可能性は高いと思っていた。彼の入れ知恵で魔人族が地球の戦争での戦術を身に着けたとしたら、脅威度は跳ね上がる。

 

『香織。私があいつらを引き付ける』

「テイルモン。お願いできる?」

『ああ』

 

 この事態になってまで隠している場合ではない。

 さっきの空爆に驚いた住人が家から出てきて、ハイベリアの姿を見てパニックを起こしている。彼らに向かって爆撃を終えたハイベリアがまた急降下してくる。

 香織はデジヴァイスからテイルモンを出してカードを取り出す。

 

「カードスラッシュ! 《光のデジメンタル》! デジメンタルアップ!」

「テイルモン! アーマー進化!! ──微笑みの光! ネフェルティモン!!」

 

 スラッシュしたデジメンタルのカードの力で、テイルモンがネフェルティモンにアーマー進化する。

 飛行型魔物のハイベリアを相手にするなら、エンジェウーモンよりも飛行能力が高いネフェルティモンの方が良いという判断だった。

 ネフェルティモンを目にして住人がさらに騒ぐが、構わずネフェルティモンはハイベリアへ攻撃を仕掛ける。

 香織はネフェルティモンに乗らずに、外壁の上を走ってある場所に向かう。

 外壁を作った時、飛行型の魔物が飛んでくるのは想定していた。そのためにあるアーティファクトを設置していた。

 ギリギリのタイミングだったが、なんとか間に合った。

 あとは起動させるだけだが、起動スイッチになっているアーティファクトに魔力を流さなければいけない。ネフェルティモンがハイベリアを引き付けているうちに、起動させなければ。

 

 しかし、攻撃は始まったばかりだった。

 

 外壁の向こうから大量の魔物の咆哮と足音が聞こえてきた。魔物の軍勢は夜の闇に紛れて町の近くまで接近していたようだ。ハイベリア達は先鋒という事だ。

 夜明けの町への奇襲。図ったようなこのタイミングから、ただの魔物の群れによる襲撃ではないことがはっきりした。

 

「急がないと」

 

 即席で作った外壁では、そう長くはもたないだろう。

 急ぐ香織だが、疲労で少しふらつく。

 そこに何かが飛んできた。

 ドガンという音を立てて、外壁が粉砕される。それは大きな岩だった。

 いきなりの事に足を止めた香織の目の前で、岩が崩れて、手足と頭が出てきた。

 オルクス大迷宮の表層部で遭遇したロックマウントという、岩に擬態する魔物と同種のゴリラのような魔物だ。だが、その姿はロックマウントよりも大きく、色も岩というよりも鋼鉄のような鈍色をしている。明らかにロックマウントよりも強いと分かる。

 香織にはわからないが、この魔物の名前はアイアンマウント。

 ロックマウントよりも固く、今回のように投石の砲弾に擬態して砦や外壁を破壊、その後に内部で擬態を解いて周辺をさらに破壊するという運用を目的に育成された。今回の戦いで試験的に投入された。

 

 香織の姿を見つけたアイアンマウントは腕を振り上げて、襲い掛かって来る。

 

「アイギス!」

 

 愛用のラウンドシールドを〝宝物庫〟から取り出して迎え撃つ。

 アイアンマウントが振り下ろしてきた右腕の拳をアイギスで受け止める。時間がない香織はさっさとアイアンマウントを退けようと、身体強化の魔法を全力で使う。

 

「ハアアアアッ!!」

 

 アイアンマウントの怪力を受け止めながら、アイギスから右手を放す。その右手に宝物庫から取り出した愛銃のリヒトを取る。そのまま銃口をアイギスの隙間から抜き出し、アイアンマウントの腹部へ突き付ける。すかさず発砲する。

 

 ズガンッという音が響き、銃弾がアイアンマウントの鋼鉄並みの皮膚を貫通した。

 ハジメのドンナーと違い、香織のリヒトはレールガンを撃つ機構は無い。香織自身が〝纏雷〟の魔法を得ていないのと、レールガンを扱えるほどの射撃技術をもっていないからだ。そのため攻撃力が低いので、貫通力の高い銃弾を装填して使っている。

 

 銃弾を受けたアイアンマウントは体勢を崩し、力が弱まる。そこに香織はさらに銃弾を2、3発撃ち込んで止めを刺す。

 絶命したアイアンマウントは外壁の外側に落下する。アイアンマウントの最期を見届けた香織は、その時に外壁の外側を見た。

 

 無数の多種多様の魔物の群れが大地を埋め尽くし、ひしめき合っていた。

 

 ほとんどは北山脈の魔物だろう。だが、中には見たことのない特徴を持った魔物も紛れている。おそらくは魔人族の魔物だ。

 

 魔物の群れの中から何かが飛んできた。

 さっきのアイアンマウントの砲弾だ。

 数は多くないが、ウルの町中に落下する軌道を描いている。

 香織だからさっきは簡単に倒せたが、町の衛兵や神殿騎士では、鋼鉄の身体のアイアンマウントの相手は難しい。

 歯噛みする香織だったが、飛んでいる砲弾が何かに撃ち落とされた。

 

「あれは!」

 

 さらに続けて他の砲弾も撃ち落とされていく。

 撃ち落としたのは美しい月の魔人、クレシェモンに抱えられた魔導二輪に乗ったユエだった。魔導対物ライフルのシュラーゲンで狙撃を行ったのだ。

 彼女達は魔物の群れの中を、驚異的な脚力で飛び跳ねながらウルに向かってきている。彼女達が通った後にいた魔物はパニックを起こしている。おかげで少しだけ攻撃に隙が出来た。

 

 香織は急いで目的のアーティファクトを設置した場所に向かう。

 ユエ達の妨害は長く続かないだろう。今のユエは宝物庫を持っていないので、銃弾に限りがあるのだ。

 3つあった宝物庫は、1つは浩介達に貸し出している。残りの2つはハジメと香織が持っている。未知の場所へと向かうハジメに宝物庫を持たせるのは当然であり、ウルの町の防衛も視野に入れていたので、最後の1つを香織が持っていた。

 銃弾が尽きてもユエには魔法があるが、銃弾と同じで魔力もいつか切れる。その前にウルの町に入らなければならない。

 その危険を冒しても彼女達が戦っているのは、香織の意図を理解して、手助けをするためだ。

 喧嘩したばかりなのに、香織の事を信じてくれているユエの信頼にこたえようと、香織は足を動かす。

 そして、ようやく目的のアーティファクトを設置した場所に辿り着いた。

 そこには香織の背丈ほどの巨大な十字架が設置されている。その名も見た目通りの〝聖十字〟だ。手を触れて魔力を流し、起動させる。

 

「〝聖十字〟起動。拠点型結界魔法〝聖絶・金城鉄壁〟発動!!」

 

 アーティファクト〝聖十字〟から光が立ち上る。すると左右にある小型アーティファクト〝聖釘〟も共鳴するように光始め、光の柱になっていく。光はさらに隣の〝聖釘〟へと広がっていき、やがて外壁の上全てで等間隔を開けながら光の柱が上る。

 

 その様子に気が付いたユエ達はその場で一気に大跳躍。外壁を乗り越えて町の中に入った。

 

 光は緩やかに曲がると内側に向かって曲がっていき、ドーム状の籠のように中心で1つに繋がる。そして、光の柱の間に結界が広がり、ウルの町をすっぽりと覆ってしまった。

 〝聖十字〟は拠点防衛用設置型アーティファクトで、ざっくりと説明すると結界魔法の補助道具だ。

 同時使用する〝聖釘〟で囲んだ範囲に最上級の防御魔法〝聖絶〟を展開できる。

 魔法の構築と維持を肩代わりしてくれるので、光魔法の適性を持っていなくても使用できる。効果が無くなりそうになっても、〝聖十字〟にもう一度魔力を注げば、効果は復活する。

 

 展開された聖絶は空だけでなく外壁も覆っているので、外壁の破壊も防げる。

 

「お疲れ」

 

 一安心した香織が胸をなでおろしていると、何時の間にかユエが傍に来ていて労ってくれた。

 クレシェモンはネフェルティモンの援護をしている。結界の展開にハイベリア達も巻き込まれていた。その戦闘もクレシェモンの加勢でハイベリア達は一気に倒されていった。

 

「そっちこそお疲れ。ユエが知らせてくれたから、間に合ったよ」

「ん。カオリもナイス結界建設」

 

 グッと親指を立てるユエに、香織も同じ仕草を返した。

 

「でもここからが大変」

 

 ユエの言葉通り、ここからが大変だ。

 

 2人は少し休んだ後、外壁から降りて町で起こっているパニックをおさめに向かった。




〇デジモン紹介
ペガスモン
世代:アーマー体
タイプ:聖獣型
属性:フリー
“希望のデジメンタル”のパワーによって進化したアーマー体の聖獣型デジモン。“希望のデジメンタル”は“神聖”の属性を持っており、このデジメンタルを身に付けたものは神聖な力を得ることができる。この力を得たものは、邪悪なるものに対して絶対的な強さを発揮することができる。得意技は後ろ足で強烈な一撃を繰り出す『ロデオギャロップ』。必殺技は額から聖なる光線を放つ『シルバーブレイズ』と、両翼の内側に宇宙空間を作り出し、流れ星を打ち出す『シューティングスター』。



正直、エタリそうになっていました。
たまに自分の作品を読み返すと、書き直したくなる衝動に駆られることがあり、ちょっとそれに襲われていました。
あと主人公のいない場面の執筆は、一章の香織による救出劇以来だったのでちょっと感覚を取り戻していました。

何とか次回から週一ペースに戻したいです。
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