ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る 作:竜羽
活動報告で予告したエイプリルフールネタです。
いつかやりたいなと思っていた原作ありふれとのクロスです。
「な、なんだこれは?あいつは誰なんだ!?」
「嘘だろ」
呆然と呟いたのは満身創痍の天之河光輝と坂上龍太郎。
「ユ、ユエさんユエさん! これって私の見間違いですか!?」
「…………」
アワアワと狼狽えながら傍にいるユエの肩を叩くシア。そんなことをされれば、普段ならすぐに手を叩き落としているユエだが、今は状況の推移を見極めている。
「あ、あれってハジメ君だよね。それに向こうにいるのって!?」
杖と白い法衣のような服を着た白崎香織が指さす先には、南雲ハジメがいた。
ただし、南雲ハジメが2人だ。
全く同じ顔の人間が2人、向かい合って同じ銃を突きつけ合っている。
幸いにも服装に少し差異があるので、さっきまでオルクス大迷宮を潜っていた香織達を救出に来たハジメがどっちかはわかった。
だが、それでも困惑が収まるわけではない。
しかも、よく見ればハジメだけではない。
倒れたままだが、シア・ハウリアと八重樫雫らしき人物ももう1人いるのだ。
魔人族に襲われて、危うく死にかけた所を、死んだと思っていたハジメに救われた。そのままハジメと彼の仲間が魔人族と配下の魔物を全て倒した後、話をしていたところに、突然大量の水が流れ込んできて、流されないようにユエが結界で防いでくれた。
そうして、水が引いた後に彼らが横たわっていたのだ。
身元を確認しようとハジメが近づいたら、向こうも起き出して、その顔を見た瞬間お互いに驚愕した。
一体何が起こっているのか、香織達が理解するよりも前に、ハジメが愛銃のドンナーを突き付けた所、もう一人のハジメもドンナーを抜いて突き付けてきた。
そうこうしているうちに他の倒れていた面々も起き上がり、再度の驚愕に見舞われたのだった。
「話し合う気はあるか?」
沈黙を破ったのは、突然現れたほうのハジメだった。黒いコートの裾は短く、動きやすさ重視の格好をしている。何より頭にゴーグルをつけているのが一番の違いだ。
「はあ? 迷宮の魔物の言葉を誰が聞くと思うんだ? さっさと死ね」
一考せずに提案を切り捨てるハジメ。彼にとって目の前の人物は、自分の姿を模した偽物であると結論が出ている。この大迷宮は微塵も油断が出来る場所ではない。だからこそ、冷徹に、冷静に、最悪を想定して行動を決めている。最も高い可能性を考え、それに従って動く姿は冷たくも映るが、必死に生き抜く強い意志も感じさせた。
「よくもまあそこまで余裕のない生き方ができるな。もっと俺をよく見ろよ。魔物に見えるか?」
「神代魔法の産物なら、俺の眼を誤魔化す奴が出てきてもおかしくねえんだよ」
「……問答無用かよ」
ゴーグルのハジメは苦笑いをしながらも、目線と銃口は逸らさない。少しでも隙を見せれば、目の前のもう一人の自分は躊躇いなく引き金を引くと分かっているからだ。
「じゃあ、俺もその流儀に従ってやるよ──ガブモン!!」
「なっ!?」
突然、2人の間に光が結ばれたと思うと、毛皮を被った青いデジモン、ガブモンの姿になった。ガブモンはすでに拳を振りかぶっており、ハジメの引き金が惹かれる前に、技を繰り出した。
「《プチファイヤーフック》!!」
「がふあッ!?」
炎の拳がハジメの腹部に炸裂した。
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暗黒の海から、ダゴモンの津波で流されたハジメは意識を失っていた。しかし、咄嗟に感じた敵意に反応して飛び起きてみれば、自分がいた。
驚きながらも銃口を向けられたので、同じくドンナーを向けた。
同じ顔を睨み合いながらも、ハジメはある可能性に思い至った。
世界とはある時点の出来事の結果によって分岐し、分岐前の世界と同時に存在するという性質がある。いわゆる多世界解釈だ。
ハジメは過去にこの並行世界から来たと思われるデジモン、オメガモンとメフィスモンと邂逅している。
だからこそ、ハジメは一番早くこの状況を理解できた。
今自分達は並行世界にいる。目の前にいるのは自分じゃない南雲ハジメだ。
よく見れば香織とユエを始めとした仲間や、天之河達までいる。
だが、一番の違いは──
(ガブモンが、デジモンがいない)
彼らの傍にパートナーデジモンの姿が無いことだった。
ちなみにガブモンは津波に巻き込まれた際に、咄嗟にデジヴァイスに入れている。
コロナモンとパタモンはシアと雫がそれぞれ抱きしめている。
状況を把握し、何とか穏便に事を進めたかったハジメだが、向こうのハジメは問答無用と戦闘態勢に入った。
何とかガブモンの奇襲で機先を制したハジメは、雫達の身を守るために距離を取る。
「ちぃ!」
ガブモンに殴り飛ばされながらも、向こうのハジメは発砲。錬成魔法で防壁を構築して防ぐ。
「おい! 俺達が戦っても無意味だぞ。話を聞け!!」
ハジメは停戦を訴えるが、向こうのハジメは効く耳を持たない。武器を凶悪な見た目のロケットランチャー、アーティファクト〝オルカン〟を取り出して、防壁を粉砕しようとする。
防壁越しにそれを見たハジメは、ガブモンをガルルモンに進化させるかと考えたその時、
「それまでじゃ!!」
2人の間に黒竜の姿になったティオが割り込んできた。
突然現れた黒竜に天之河達が勿論、ある理由でホルアドの冒険者ギルドにいるティオの黒竜形態が現れたことに、向こうのハジメ達も驚く。
実はティオはずっと意識があった。剣呑な雰囲気になってきたので、インパクトのある竜化した姿で仲裁したのだ。
戦闘が中断されると、ティオは〝竜化〟の魔法を解除する。ただし、盾だけは構えているが。
「どういうことだ。ティオまで、だと」
「無益に争ってどうする。見た所、そちらには負傷者もおるのじゃろう? 冷静に、状況を見よ!」
「……ハジメ」
向こうのハジメの傍にユエが近寄って声をかける。
「……あの人たちは敵じゃない」
「なんでそう思うんだ?」
「……ハジメ達はともかく、ここにいないティオの姿まで化けるのはおかしい。戦わずに防御行動をとったのも魔物らしくない。何より──」
ユエはハジメ達の方を見る。
ティオの登場で攻撃が止んだので、ハジメとガブモンがティオの隣に並び立って、様子を窺っている。
「ティオの時と同じ、嘘つきの眼じゃない」
ユエの言葉に改めてハジメ達を見ると、確かに彼らは理性的な目をしている。行動もこちらを害さずに防御に終始していた。だが、もしもこのまま戦闘が続き、激しくなれば彼らも戦闘を始めるだろう。そうなった時のこちらの被害を考えた。
そうして、向こうのハジメは武器を下ろした。それを見てハジメ達も戦闘態勢を解除。
倒れていたシアと雫も、これまでの戦闘音に目を覚まして、ハジメの傍に近寄ってきた。
ハジメ、雫、シアが自分と瓜二つの人物達と向かい合う。
「お前たちは一体何なんだ?」
「状況からの推測だが、俺達は平行世界からこの世界に流れ着いたみたいだな」
向こうのハジメの言葉に、ハジメは簡潔に答えた。
■■■■■
ホルアドの冒険者ギルドの一室でハジメ達は改めて、この世界のハジメ達と向かい合って座っていた。
向こうの面々の中には冒険者ギルドで待機していたこの世界のティオと、海人族の幼女ミュウもいる。彼女はフューレンで人身売買組織に攫われたところを、この世界のハジメ達に助け出され、故郷であるエリセンへ送り届けられる途中だという。
さらに勇者こと天之河光輝達と騎士団長のメルド・ロギンスも同席している。勇者達の中には、ハジメに暗黒の海へ行くことを提示した檜山大介もおり、ハジメは何とも言えない気持ちになった。
一方のこの世界のハジメ達も、並行世界の自分達の顔ぶれに首を傾げていた。
ハジメとシア、そしてティオはこの世界でも行動を共にしていたからわかるが、勇者パーティの一員である雫が一緒にいる理由がわからなかった。
後ついでに、ウルの町で助けたクデタ伯爵家の三男ウィル・クデタまでいる。ものすごく落ち込んでいて、話しかけても反応しない。もはや別人だ。
お互いの疑問についての答えを、ハジメは平行世界から来たからだと話す。
だから同一人物であっても、似ていない部分や異なった人生を歩んできた、似ているだけの他人だと。
「並行世界。創作とかだと定番だが、本当にそんなものがあるのか?」
「俺達の存在が証拠だ。さっきも確認しただろ?」
ハジメ達はさっきお互いに自分しか知らないような、過去の出来事や隠しておきたい秘密を言い合い、ほとんどあっていた。
状況証拠だけだが、並行世界という概念を知らないトータスの面々も含めて、何とか全員が納得した。
「もっとも一番大きな点、デジモンがいることを考えると、ほとんど異世界かもな」
「それだよ。やっぱそのデジモンって本物なのかよ」
「ああ。ガブモン。リアライズ」
デジモンの存在に食いついてきたこの世界のハジメに対し、ハジメはデジヴァイスからガブモンを出す。現れたガブモンに光輝とメルドが身構える中、ハジメが目を輝かせる。
「マジか。しかもガブモンのX抗体かよ」
「ちょっと待て。なんでX抗体を知っているんだよ」
「あん? いやアニメとかゲームで出てきただろ?」
「いや、出てねえぞ」
あまり知られていないX抗体のことをなんで知っているんだとハジメが聞くと、不思議そうな顔で答えられる。
どういうことかとさらに聞こうとすると、雫が声をかけてきた。
「話が逸れているわよ、ハジメ」
「おっと。そうだった。悪い雫」
雫の言うとおり、確かに今は気にすることじゃなかったと思ったハジメ。
2人の気やすいやり取りに、この世界の面々が驚く。
香織がおずおずと質問をする。
「あのそっちの雫ちゃんと南雲君ってどういう関係なの?」
「え? うーん……友達以上恋人未満? でも告白は済んでいるし」
「告白!? 雫ちゃんが南雲君に!?」
雫の回答に素っ頓狂な声を上げる香織。他の面々も驚きのあまり口を大きく開けている。
「つまりそちらのご主人様は八重樫雫と付き合っているということかの?」
比較的驚きが少なかったこの世界のティオが言う。
「いえ、ハジメはまだ誰とも付き合っていませんよ。今はそんな状況じゃないですし。それに一番に告白したのは香織ですから。私はそれに便乗しちゃいました」
「ええええっっ!? わ、私!?」
「便乗しちゃったってどういうこと!?」
再び驚愕する香織とこの世界の雫。
香織はまあわかる。この世界でもハジメに好意を持っていて、かなりアプローチをかけていた。ハジメがオルクス大迷宮の奈落に落ちたことで恋心を自覚し、ずっと思い続けてきたので、並行世界の自分が告白して思いを伝えたことは受け入れられた。
逆に戸惑っているのは雫だ。香織を通してハジメのことは好意的に見ていたが、親友の思い人であるため、恋愛対象としては見ていない。さっき窮地を救われたことで恩義は感じているが、一体この並行世界の自分は何を思って親友と同じ人へ告白をしたのか、わからなかった。
だが、2人よりももっと驚いている人物がいた。
「そ、そんな、訳が分からない!? 雫と香織が南雲に告白!? いくら並行世界だからって協調性もやる気もない、オタクな南雲を好きになるなんてありえないだろ。おい南雲!! お前一体彼女達に何をしたんだ!!」
そう言っていきり立ったのはこの世界の天之河光輝だった。
いきなりの言葉に唖然としたハジメ達だが、その内容に不機嫌になる。特に顕著なのは雫で光輝を睨みつけながら立ち上がる。
「随分な言いようね。ハジメの何を知っているの? 天之河君」
「いや、だって南雲はいつも授業で寝てばかりだし、この世界でも訓練を受けようとせずいつも書庫に籠ってばかりだったんだ。きっとそっちの世界だって同じだろ」
雫の怒気に気圧されながらも、自分の知っているこの世界でのハジメの事を説明する光輝。それが事実なのか雫がこの世界のハジメに尋ねると「まあ、おおむね間違ってない。だが、訓練の所は書庫でこの世界の情報を得ようとしたからだ」と答えた。
ハジメの答えを聞いて、この世界の光輝も自分達の世界の光輝と同じく、独善的で自分の信じたいことしか見ていないのだと判断した。
とりあえず、この世界のハジメの事については何も言えないので、雫は自分達の世界のハジメの事を語る。
「まず私のハジメは学年トップの成績を誇る優等生よ。学校も国際進学科に所属するだけじゃなく、海外の大学の研究にも参加させてもらっているわ」
教えられたハジメの成績に、この世界の召喚された召喚者の面々は驚く。その驚きの所為で、さらっととんでもないことを雫が言っているのに気が付いていない。
それからも雫の口は止まらず、ハジメの武勇伝を語った。ついでにどこを好きなのかも合わせて。
ベヒモスをほぼ独力で封じ込めた話の後、今度はハジメの方が話の内容が逸れていることを指摘して、雫を止めた。
光輝は雫の話の勢いに気圧されて口をつぐんでいる。
反対に雫は、並行世界とはいえ光輝へと、ハジメに対する思いの丈をぶつけられたことで、かなりすっきりした顔をしていた。
「話を戻すが、お前たちはどうするんだ?」
「帰るさ。俺達の下の世界に」
何でもないことのように言い切るハジメ。彼の中で、この世界にとどまるという選択肢は皆無だった。
「香織とユエがいるんだ。やり残したこともあるし、何より夢を叶えないといけないんだ。絶対に帰ってみせるさ」
強い決意をにじませて、ハジメは断言した。
果たして、ハジメ達は元の世界に帰ることが出来るのか。
急げハジメ。
ウルの町に迫っている危機を救えるのは、君達だけだ。
「もうすぐ特定できるよ。準備はいい?
「いつでもOKだよ
「──モン!」
「──モン!」
「「ジョグレス進化よ!!」」
本当はまだまだ書いてデジモンバトルまでいきたかったんですが、風邪を引いてしまいまして、執筆時間が減ってしまいました。
エイプリルフールに間に合うようにするには、どうしてもここで区切るしかありませんでした。
本当なら最後の所の二人も出したかったんですよ。要望があればエイプリルフールを過ぎてで良ければ、書いてみようと思います。