ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る   作:竜羽

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遅くなりました。エイプリルフールネタの続きです。
本篇のリハビリも兼ねています。好きに書けるので執筆の練習にちょうどいいです。



Ifストーリー② ハジメと南雲

 暗黒の海から流されたハジメ達がたどり着いたのは、並行世界のトータスだった。

 異なる道筋をたどった自分達と出会い、互いの状況を確認したハジメ達は善は急げと行動を開始した。

 

「何やってんだ?」

「見てわからねえか?」

 

 ハジメにハジメが話しかけてきた。正確にはハジメに、この世界のハジメがだ。(以下南雲とする)

 

 あの後、話し合いをしているうちに日が暮れて夜になってしまったので、休息をとるためにホルアドの宿屋に宿泊した。

 並行世界とはいえ街並みに違いはなく、ハジメ達が持っていた通貨も使えた。

 この世界のメルド騎士団長が宿を用意すると言ったが、ハジメ達は完全なる部外者だ。南雲たちのように過去に召喚されたという繋がりすらない。

 ちなみに、南雲達もハジメ達と同じ宿に宿泊している。彼らもハイリヒ王国と関わりになりたくないらしく、この世界の香織や雫の何か言いたそうな顔を無視して、詰め所を後にした。

 宿についた後、夕食を食べた雫達はすぐにベッドで横になって眠りについた。

 何せ突然暗黒の海に飛ばされて、暗黒の気配に心が晒されていたのだ。さらに強力な闇の眷属たちの襲撃に遭い、命がけの戦いを続けた。止めに大津波に流されて、並行世界への漂流。肉体と精神が限界だった。竜人族のティオまで休息の誘惑に勝てなかった。

 彼女たちと比べて余裕があったハジメは、防音と結界のアーティファクトを設置すると宿屋を後にした。

 

 人目を避けて移動したハジメは、オルクス大迷宮の入り口の近くに気配遮断と隠蔽のアーティファクトを起動させ、人目につかないようにすると、宝物庫から椅子とDMアナライザーを取り出して作業をしていた。そこに南雲がやってきたのだ。

 

「ノートPCか? いや、魔力があるからアーティファクトなのか?」

 

 眼帯の下の右目を光らせながら、DMアナライザーをしげしげと見つめる南雲。

 彼はオルクス大迷宮のラスボスだったヒュドラとの戦いで右目を失い、そこに神結晶を加工した〝魔眼石〟というアーティファクトをはめ込んで魔眼になっている。通常の視界は得ることはできないが、魔力の流れや強弱、属性を色で認識できるようになった。魔法の核も見えるようになっており、アーティファクトで姿を隠していたハジメを探し出せたのも、この魔眼のおかげだった。

 

「召喚の際に持ち込んだPCを改造してアーティファクトにした。魔力や魔法を解析できる。んで、今は空間の歪みを観測、解析している」

「そんなことできるのかよ。まさか空間に関する神代魔法か!?」

「いや。俺が手に入れた神代魔法は生成魔法と重力魔法だけだ」

「んだよ。こっちと同じかよ」

 

 ハジメ達が自分の知らない魔法を持っているのかと思ったが、違ったことに落胆する南雲。旅の目的である地球へ帰還するための魔法探しの手掛かりかもしれないと思ったのだ。とはいえ、勝手に期待して勝手に落ち込まれたことに、少しむっとしたハジメは、「でもな」と口を開く。

 

「そもそも重力と空間には密接なかかわりがある。重力魔法そのものは使えなくても、理論の一部は空間に作用する魔法の原理の解析に利用できるかもしれない」

 

 ハジメの話に目を見開く南雲。その様子にますます気を良くしたハジメは、今やっている作業を説明する。

 

「そもそも俺はリアルワールドとデジタルワールドの行き来を、研究テーマの一つとしていた。次元の壁を超える量子テレポーテーションの理論は『ゼロアームズ・グラニ』のリアライズの成功によってデータがあった。後はこれを次元の壁が厚くなってしまった状況下でも、双方の世界に悪影響が出ないように実用するための理論が必要だったんだ。その時の研究データを応用すれば、俺達が流れ着いた時の影響も観測できる。その可能性が一番高いのは、このオルクス大迷宮だ」

 

 ハジメはビシッと大迷宮への入り口を指さす。

 

「影響は時間がたてば収束しちまう。もっともゲートを開きやすいポイントを早く見つけないと、元の世界に戻れないんだ。だから、話したいことがあるなら手短にしてくれ」

 

 一通り話し終えたハジメは、再び手を動かしてDMアナライザーを操作する。

 

「あ、ああ。その、だな」

 

 説明するハジメの勢いに気圧されていた南雲は、少し言葉に迷う。これを彼の仲間たちが見たら驚くだろう。今までの旅で彼は自分のやることに迷うことなく決断し、実行してきた。

 そんな南雲が迷ったのは、ハジメが自分以上に地球への帰還することを渇望しているように感じたからだった。

 

(何でそこまで帰りたいと思うんだ。俺だって父さんと母さんに会いたい。ユエに地球での生活を送らせてやりたい。それはお前も同じだと感じる。でも、お前はそれ以上に地球を求めている。夢ってやつがあるからなのか?)

 

 南雲は地球での日々を取り戻すことを心の底から焦がれていた。だが、ハジメはそれに加えて、未来を夢見て努力してきた今までの積み重ねがあった。

 だから、何としても地球に帰りたいと思った。

 その思いは、例え並行世界に流されたとしても衰えることはない。

 それを南雲は並行世界の同一人物として感じており、どうにも気になっていたのだ。

 

 とはいえ、自分じゃない自分に夢を聞くということを躊躇った南雲は、咄嗟に思いついたことを聞いてみる。

 

「そのデータ、俺達にも共有することとかできるか? 俺も、地球に帰りたいんだ」

 

 ハジメの作業内容を聞いて、自身の目的に役立つのではないかと思った。

 

「同じ性能のアーティファクトがあればできなくはないが、あいにく手持ちはこれだけなんだ。予備も拠点に置いてきちまった。悪いな」

「……いや。言ってみただけだ。気にすんな」

 

 それに例え渡されても南雲では理解するまで時間がかかりすぎるだろう。ハジメと違って大学レベルの教養を身に着けているわけではない。時間があればハジメと同じ領域に辿り着けるかもしれないが、それよりも神代魔法を集める旅を進めたほうが効率的だ。

 この話はここまでで、南雲は別の話題をハジメに振ってみることにする。

 

「邪魔じゃなければデジモンについて聞きたいんだが、いいか?」

「……別にいいぜ。あいにくガブモンは戦った後だったから、この中でぐっすりだがな」

 

 ハジメはデジヴァイスを掲げて見せる。

 ようやく人心地つけたデジモン達も、それぞれデジヴァイスの中でぐっすりだ。

 

「そいつとはどうやって出会ったんだ?」

「ああ。あれは六年前のことだった……」

 

 それからハジメは南雲に自分とガブモン、そしてデジモンテイマーズの戦いと冒険の日々を語った。

 香織や雫、最近ではユエとシアにも話していたことなので、スラスラと当時のことが口から出てきた。作業の手は止めなかったが、ハジメにしては珍しく饒舌に話していた。南雲もハジメのように椅子を取り出して、真剣に耳を傾けた。ハジメの話の内容に時に驚き、時に笑い、時に感じ入った。

 夜が更けっていき、人通りが完全に消えたホルアドの町中で、二人は久しぶりに穏やかで、楽しい時間を過ごせた。

 

 やがて、ハジメはやるべき作業をすべて終えた。話も丁度終わり、DMアナライザーを閉じる。

 

「話をしていたら意外とはかどった。サンキューな」

「いや、俺の方こそ。面白い話だった」

 

 アーティファクトや椅子を片付けて宿屋に戻る二人。

 その途中で今度はハジメが南雲に話しかけた。

 

「なあ、今度は俺が質問していいか?」

「あ? ああ、いいぜ。あんだけ答えてくれたんだ。何でも聞いてくれ」

「……」

 

 ハジメは少し間をおいてから、静かに南雲に問いかけた。

 

 

 

「体が変わっていく感覚って怖くなかった?」

 

 

 

「え?」

 

 あまりにも意外なことを聞かれて、南雲はきょとんとした顔をした。

 あまりに今更な質問だった。

 ハジメの髪が白いことから、南雲と同じくオルクス大迷宮の奈落の底で魔物を口にしたはずだ。その結果、破壊される肉体を治すために神水を口にしたため、破壊と再生のサイクルが発生。魔物の血肉に適応するために、魔物のような体になってしまった。

 これはハジメと南雲に共通しているが、実は違う点があった。

 南雲は魔物を口にするまでの絶望的な状況と極限状態から、元々の精神が崩壊してしまった。その後、生への渇望から精神を再構築したことで、肉体が変容しても生きていることの前では些末なことと受け入れていた。

 

 しかし、ハジメは違う。

 南雲と同じ状況に陥っても希望を抱き、魔物の肉を口にした。その結果、意識を喪失した暴走状態となり、助けに来た香織とガブモンを傷つけてしまった。その後に正気を取り戻したが、自分の手で大切な存在を傷つけてしまったことを忘れられず、心の中ではずっと自分の肉体の変容に恐怖していた。

 

「僕は怖いよ。体だけじゃない。心まで変わっていって、父さんや母さん、タカト達と過ごした僕が消えてしまうんじゃないかって。何より、変わってしまった僕がガブモンや香織さん、雫さん達を傷つけてしまうんじゃないかって」

「お前……」

 

 南雲は漸く気が付いた。ハジメに彼の夢のことを聞けなかったのは、気恥ずかしかったからじゃない。南雲が失ってしまった『南雲ハジメ』を、ハジメが持っていることを薄っすらと感じていたからだ。

 ハジメは南雲が生きるために無くしたものを持ちながら、奈落の地獄を乗り越えたのだ。

 そのことを知るのが怖かったから、ハジメの夢を聞けなかった。

 聞けば南雲はハジメに抱いてしまう。

 並行世界という、本来なら出会うはずのないもう一人の自分への嫉妬の感情を。

 

 

 

 ■■■■■

 

 ──ミハナサレタ

 ──オイダサレタ

 ──ナゼ? 

 ──ナゼ? 

 ──ナゼ? ──ナゼ? 

 ──ナゼ? ──ナゼ? ──ナゼ? ──ナゼ? ──ナゼ? ──ナゼ? ──ナゼ? ──ナゼ? ──ナゼ? ──ナゼ? ──ナゼ? ──ナゼ? ──ナゼ? ──ナゼ? ──ナゼ? ──ナゼ? ──ナゼ? ──ナゼ? ──ナゼ? ──ナゼ? ──ナゼ? ──ナゼ? ──ナゼ? ──ナゼ? 

 

 オルクス大迷宮の階層深く。不定形の影たちが思考を繰り返していた。

 ハジメ達がこの世界に現れたとき、流れ着いたのは彼らだけじゃなかった。

 ダゴモンの津波に巻き込まれて、彼らも来ていた。

 

 ──ナゼ? 

 ──メイヲハタセナカッタカラ

 

 ──────────────────シカリ

 

 ──────────────────シカリ──────────────────シカリシカリシカリシカリシカリシカリシカリシカリシカリシカリシカリシカリシカリシカリシカリシカリシカリシカリシカリシカリシカリシカリシカリシカリシカリシカリシカリ

 

 ズルズルと彼らは動き出す。彼らの神の命を果たすために。

 形を保てなくなってしまったが、ここにはエネルギーになりそうな生命がいる。

 手始めに、近寄ってきた狼のような生き物を彼らは取り込んだ。

 

 

 




もう少し先の展開まで書きたかったんですが、キリがいいのでこの辺で。慣れないノートパソコンを使用しているので、時間がかかってしまい、これ以上投稿できないのはモチベーション的にまずいと思いました。


今回のお話は原作の南雲ハジメに対してフォーカスを当ててみました。彼って地球への帰還は望んでいますが、地球でやりたいことって、ユエとの生活から先が見えないなって思うんですよ。アフターも日々の生活だけで、将来やりたいことって何だろうって。その点、ありふた?のハジメは将来への展望がはっきりしているので、からませたらどうなるかなと思いました。
これがこの特別編のメインテーマになると思います。

あと二話くらいで終わらせて本篇に戻りたいと思います。次回もよろしくお願いします。
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