ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る   作:竜羽

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またしても遅れてしまいました。申し訳ありません。
特別編③です。よろしくお願いします。




Ifストーリー③ 帰還方法

 南雲はハジメの問いに答えられなかった。

 その様子を見たハジメは、すぐに質問をなかったことにする。

 

「悪い。変なことを聞いた」

「いや、気にすんな」

 

 2人は今度こそ宿に戻り、眠りについた。

 しかし、南雲はハジメからの質問が頭から離れなかった。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

 翌朝。昨夜ぐっすり眠った雫達はすっかり回復した。宿が提供してくれる朝食を食べるために、部屋から食堂に向かうと、南雲達がすでに起きて朝食を食べていた。

 

「すっかり元気になったようじゃの」

「うむ。完全回復じゃ」

 

 この世界のティオの言葉に、ティオが元気よく答えた。

 

「ご一緒してもいいですか?」

「もちろんですぅ!」

 

 シア同士が元気よくやり取りをする。雫達は宿の女将から朝食を受け取って、南雲達の近くの席で食べ始める。

 

「あれ? そちらの世界のハジメさんはどうしたんですか?」

 

 雫達の中にハジメの姿が無いことに気が付いたこの世界のシア(以下ハウリアとする)が尋ねる。ちなみにウィルの姿もない。

 

「ハジメはまだ寝ているわ。起こすのも悪いからそっとしてきたの」

 

 雫が答える。

 昨夜、南雲と共に宿に戻ったハジメは、作業の疲れからまだ目を覚ましていない。

 早く元の世界に戻るために、空間の計測と解析を全力で行った反動だった。

 やるべきことに対して一切妥協しないその姿勢は、三年前に再会した時から変わらないハジメの美点であり、時に自分を顧みない欠点だ。こういう時は香織や雫がフォローしていたのだが、今回は雫が疲れ切っていた為、止められなかったのだ。

 そのことを少し悔やむ雫だが、ハジメがそこまでしてくれるのは自分達の為でもある。だから、せめてゆっくり休ませてあげようと思い、起こさずに出てきたのだ。

 

 その時、シアの服のポケットから声が響いた。

 

『シア! 俺も食いたい!』

「え? え? なんですかこの声!?」

 

 聞いたことのない声に驚く

 

「あーこの声はこの子です」

 

 シアはポケットからデジヴァイスを取り出してハウリア達に見せる。デジヴァイスの画面には赤い子獅子、コロナモンの顔が写っていた。

 

「私のパートナーデジモンのコロナモンです。私もハジメさんと同じ、デジモンテイマーなんですよ」

「マジかよ」

 

 まさかの事実に驚く南雲。

 昨日は勇者の横やりで説明するタイミングを逃したので、シアもデジモンテイマーであることを説明する。

 

「ちなみに私もよ。もっともなったのはつい最近だけど」

『雫のパートナーのパタモンです。よろしく』

 

 シアと同じくデジヴァイスを取り出して見せる雫。画面にはパタモンの顔が映っている。

 南雲達はもしやティオもなのかと、彼女に目を向ける。

 

「妾は違うぞ。デジモンテイマーではない」

 

 ひらひらと手を振りながら答えるティオ。

 

「じゃが昨日は炎の盾を出しておったらしいのう? 妾、そんなもの持っておらぬ」

 

 この世界のティオ(以下クラルスとする)が、寝る前に南雲達から聞いたことを質問する。

 

「これの事かの?」

 

 ティオが右手を掲げると炎が生まれ、真紅の盾が出現した。

 驚く南雲達にティオは盾の事を説明する。

 

「ある日突然現れた盾、か。ティオ、一応聞くが知っているか?」

「知らないのじゃ。もしかしたら妾が里を出てから現れているかもしれんが、少なくとも妾は知らん」

 

 クラルスもティオの盾には見覚えが無かった。錬成師の南雲の目から見ても、ティオの盾は全く見当がつかない。魔眼で見る限り、盾には魔力は宿っていないのだが、途轍もない力を感じる。今の南雲では、この盾と同等のアーティファクトを作成することは無理だと思った。

 

(これが並行世界か)

 

 昨夜は自分との違いを実感したが、他の三人にも大きな違いがある。並行世界というものを強く実感した。

 

『おい! 飯はどうなったんだよ? 腹減ったぞ!!』

 

 シアのデジヴァイスから再度コロナモンの要求が飛んできた。

 他の宿泊客にばれないようにデジヴァイスを仕舞うシア。

 

「ちょ!? 今は我慢してください。流石にここでコロナモンを出すのはまずです!」

『そうだよ。ちょっとは考えなよ』

 

 慌てるシアが言い含める。

 2人の様子が見ていられなかったパタモンが苦言を言う。

 

『だって腹減ったんだぜ! パタモンだって減っているだろう?』

『そうだけど、それで雫達に迷惑はかけられないよ』

 

 パタモンだってお腹がすいている。でも彼らがリアライズして食事をすれば、魔物に間違われて騒ぎになってしまう。

 そうなったら誤魔化すのは雫達なのだ。

 

『今は我慢しよう。ご飯ならあとで雫達が用意してくれるさ』

「もちろんよ。ハジメの分と一緒に2人の分ももらってくるから、後で部屋に持っていって食べましょう」

「はいです。もうちょっと待っていてください」

『むう。わかったよ。絶対だからな!』

 

 納得したコロナモンはデジヴァイスの中で静かになった。

 

「……凄く賑やか」

 

 彼女達のやり取りを見て、ユエがポツリと呟く。自分達のパーティーも賑やかで騒がしいと思っていたが、雫達も負けず劣らずの喧騒だった。

 

 それから少し食べるペースを速めて、完食した雫達はさっき言った通り、部屋で寝ているハジメの分の食事を少し多めに貰って、部屋に戻った。

 南雲達も後についていく。

 部屋に入るとハジメは目を覚まして身支度を整えていた。

 

「ご飯持って来たわよ」

「悪い。寝過ごした」

「いいわよ。寝過ごした甲斐はあったんでしょ?」

 

 雫はハジメが帰る手立てを見つけたから寝ていたと察していた。

 

「まあな。飯を食いながらでいいなら説明するが……」

「時間に余裕があるなら食べた後でいいわ。パタモン達もご飯食べないとだし」

「俺達も話を聞いていいか? 地球に帰る時の参考にさせてもらいたい」

 

 2人の会話に南雲が割り込む。ハジメは承諾し、食事に手を付ける。

 デジモン達もデジヴァイスから出てきて、ご飯を食べ始める。なお、ウィルは相変わらず何も反応していなかった。

 

 ハジメとデジモン達が食べている間、南雲達は雫達と雑談の続きをする。

 

「……聞きたいことがある」

「何ですか? ユエさん」

 

 シアにこの世界のユエが声をかけた。

 

「……そっちの私はどんな感じ?」

「私の世界のユエさんですか? 雰囲気はあなたと変わらないですぅ」

「あと面倒見がいい? っていう感じだよな」

 

 ご飯を食べていたコロナモンが言う。

 

「……面倒見がいい?」

「俺とかルナモンの世話をよくしてくれる」

「ルナモンってそっちのユエさんのパートナーですか?」

 

 ハウリアの質問を肯定する。

 シア達は旅の合間に聞いたユエとルナモンの出会いを教えていた。

 

「なんじゃと──!?!?」

 

 だが、いきなりティオの叫び声が聞こえて思わずそちらを振り返った。

 

「お、おおおぬしは一体何を言っておるのじゃ!?」

「じゃから、お主はご主人様からどのようなご褒美をもらっておるのかと。同じ妾でも違う部分があるという事は、妾のお尻を貫いたものの長さも太さも違う、いや受けたご褒美の種類も異なる可能性もある。ぜひとも教えて欲しいのじゃ!」

 

 恍惚とした顔で語るクラルスとは対照的に、ティオは盛大に引き攣らせた『ドン引き』としか表現できない顔で、自信の同一存在から距離を取ろうとしている。

 一体何があったのかというと、シア達と同じように、ティオとクラルスもお互いの事を話していた。それで先にクラルスの方がハジメ達との出会いを説明し始めたのだが、何とも酷い内容だった。

 クラルスはある人物に洗脳され、南雲達に襲い掛かるという形で出会った。

 襲い掛かってきたクラルスは強力なブレスと堅牢な竜燐で南雲達の手を焼かせた。そこで南雲は竜人族の弱点を攻撃した。

 その時に使用した武器とは、超電導式パイルバンカー。

 攻撃した場所は──尻だった。

 あまりの痛みにクラルスの洗脳が解けるだけでなく、彼女の精神性にまで影響を与えてしまった。

 痛覚を超えて、快楽をクラルスの肉体は感じてしまったのだった。

 それ以来、クラルスは痛みに快楽を感じる超ド級のマゾヒストになった。

 これらの経緯をクラルスはティオに嬉々として語った。語ってしまった。

 当然、聞いてしまったティオの受けた精神的な衝撃はとんでもなかった。姿が同じというのもなお悪い。そのうえでさっきの質問だ。

 もう目の前のもう一人の自分が気持ち悪くて仕方ない。

 あと、彼女をこんな風にした南雲を非難する目を向ける。それに気が付いた南雲がプイッと目を逸らす。

 

 なかなか混沌としてきたところでハジメ達が食べ終えた。

 

「ご馳走様でした」

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

「この世界から出るプランを説明する」

 

 喧々轟々としていた室内はハジメの言葉に一先ず静かになる。

 

「昨日オルクス大迷宮全体をスキャンしたところ、大体101階層辺りに空間の歪みと思われる重力場の歪みを観測した」

 

 奇しくもハジメと南雲が65階層から落ちて辿り着いた階層だった。

 

「重力の歪みはその場所の空間の歪みともいえる。さらに並行世界へと繋がっていることからも考えると、次元も歪んでいるはずだ。そこからなら俺達のいた世界への扉が開くかもしれない」

「開く手段があるのか?」

 

 南雲が疑問に思ったことを声に出す。ハジメ達が習得した神代魔法は生成魔法と重力魔法と南雲達と同じだ。重力魔法を解析して空間に干渉するヒントは得られたと言っていたが、扉を開くとなると勝手が違うはずだ。南雲の指摘にハジメは首を縦に振る。

 

「強引な手だが、歪みに強大なエネルギーをぶつければ開く可能性がある。さらに重力場そのものにも干渉する。計算上だがゲートが開くはずだ。どこに繋がっているかは、わからないがな」

 

 そう言うとハジメは雫達を見回す。

 

「成功するかどうかもわからない。分の悪い賭けだ。さらに開いた先が俺達の世界かもわからない。また暗黒の海かもしれないし、また別の並行世界かもしれない。だが、今扉を開かないと、元の世界に戻れる可能性は極めて低くなる。みんな、やってくれるか?」

 

 ハジメの言うとおり危険な賭けだ。だから雫達に意見を聞く。

 

「やるわ。私も元の世界に戻りたい。香織達にあって、一緒に私達の地球に帰りたいもの」

「私もです! ユエさんとカオリさん、待っている人達がいっぱいいるんですから」

「妾もまだ目的を果たす途中じゃ。それにウィル坊を放ってはおけん」

 

 デジモン達も雫達に続いて声を上げる。

 

「雫を元の世界に帰すのが、今の僕のやることだ。もちろんやるよ!」

「へっ、俺とシアの悪運をなめんなよ。ぜってー元の世界に戻してやるぜ!」

「俺は言うまでもないだろ? そもそも俺達がいないとハジメの計画は成立しないぜ?」

 

 ガブモンの言うとおり、異世界への扉を開けるほどのエネルギーをぶつけるためにはデジモン達の力が必要だ。

 

 こうしてハジメ達は帰還のために動き始めた。

 

 はずだったのだが…………。

 

「ハジメくん、私もハジメくんに付いて行かせてくれないかな? ううん、絶対に付いて行くからよろしくね?」

 

 オルクス大迷宮に向かおうと宿を出た所で、この世界の香織(以下、白崎)が待ち構えており、南雲に告白してきて。

 

「……お前にそんな資格はない」

「資格って何かな? ハジメくんをどれだけ想っているかってこと? だったら、誰にも負けないよ?」

 

 それに対してこの世界のユエが相対し。

 南雲の意思を置き去りにして、あれよあれよという間に白崎も南雲のパーティーに加わることになった。

 

「意味がわからない。香織が南雲を好き? 付いていく? えっ? どういう事なんだ? なんで、いきなりそんな話しになる? 南雲! お前、いったい香織に何をしたんだ!」

「……何でやねん」

 

 勇者が混乱(錯乱?)したり。

 

「君達もだ。これ以上、その男の元にいるべきじゃない。俺と一緒に行こう! 君達ほどの実力なら歓迎するよ。共に、人々を救うんだ。シア、だったかな? 安心してくれ。俺と共に来てくれるなら直ぐに奴隷から解放する。ティオも、もうご主人様なんて呼ばなくていいんだ」

 

 変なことを言ってユエ達にドン引きされた。

 

「ハジメさんハジメさん。あれって私達の世界の勇者さんもあんな感じなんですか?」

「あーそうだなあ」

 

 シアに質問にハジメは自分の世界の勇者、天之河光輝の事を思い返す。印象深いのは召喚される直前での、教室でのやり取り。

 

「あんまり変わんねえかもな」

「同じ反応をするかはともかく、自分の考えだけで解釈するのは同じだと思う」

 

 ハジメだけでなく雫も答える。

 

「うへぇ~。正直あれを言われるのは勘弁ですぅ」

「ううむ。あれが勇者……」

 

 シアは嫌悪感を露わにし、ティオは眉を顰める。

 

 ちなみにウィルの姿はここにはない。相変わらず反応を返さないので、膝を抱えた人が入る魔物の皮で作ったリュックに入れて、ティオが背負っている。

 

 勇者達とのいざこざは南雲達の問題なので、ハジメ達はこの場を離れようかと思った。

 もともと彼らとはここで別れる予定だ。

 何が起こるかもわからない作戦に、先を急ぐ彼らを巻き込むわけにはいかないからだ。

 

 あと、ここにいれば勇者の矛先がこちらに向くかもしれないという懸念もある。

 

(あのアマノゲリオンならやりかねないな)

 

 何せ聖剣を地面に突き刺して「南雲ハジメ! 俺と決闘しろ! 武器を捨てて素手で勝負だ! 俺が勝ったら、二度と香織には近寄らないでもらう! そして、そこの彼女達も全員解放してもらう!」とかイタイこと言い始めているし。

 

(あ、こっち向いた。さっさとこのアーティファクト〝透明マント〟で隠れて)

 

 PiPiPiーPiPiPiーPiPiPiー!!! 

 

「ん?」

 

 突然、ハジメのデジヴァイスから電子音が鳴り響いた。

 ハジメだけでなく、雫とシアのデジヴァイスからも音が鳴り響いている。

 

「これは」

「何の音?」

 

 トータスでは聞きなれない音に、南雲や勇者だけでなくホルアドの人々もハジメ達に目を向ける。

 

『ハジメ! 俺達を出してくれ』

「ガブモン。つまりそう言う事なのか」

『ああ。デジモン、それか近い存在が近づいている』

「まさか……」

 

 ガブモンの言葉にある可能性が過ったハジメはDMアナライザーを取り出し、昨晩にオルクス大迷宮をスキャンした時のデータを起動。現在のオルクス大迷宮を調べる。

 すると驚くべきことが分かった。

 

「重力場の歪みが、上ってきているだと!?」

 

 驚くハジメの様子に、雫達だけでなく勇者を無視して南雲達も近づいてくる。

 

「何があった?」

「オルクス大迷宮から何かが出てくる」

 

 突然、地面が大きく揺れた。

 

「何だ? 何が起こっている!? 南雲お前何をしたんだ!?」

 

 勇者が喚いているが、ハジメも南雲も無視する。

 

 地面がまた揺れる。地面が揺れるという現象に慣れていないホルアドの人々は徐々に混乱に陥っていく。

 

 そして、オルクス大迷宮の入り口が爆発した。

 

 

 ──―化j化hふぁh露和うぃさhwp; @dffsajjああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 

 

 大迷宮を崩壊させながら、異形の怪物が姿を現した。

 

 とても醜悪な見た目をしていた。

 スライムのようなブヨブヨした塊から、多種多様の魔物の口や手足等の部位が生えている。中にはベヒモスのような大型の魔物までいる。

 加えて、その身体はとてつもなく大きい。

 すでに地上には20m以上の高さの身体を出している。

 

「なんだあれは?」

「……深き、者達か?」

 

 流石の南雲も呆然としている横で、ハジメは思い当たる存在を口にした。

 

 並行世界に大きな危機が迫っていた。

 

 

 

 ■■■■■

 

 

 

「歴史の歪みが大きくなってきたね」

「急がないと、世界が崩壊しちゃう」

「パパたちが守った世界。絶対に守ろう」

「私達の手で」

 

 




前話ではハジメ同士の会話だったので、他のキャラのやり取りも入れてみました。
まあ、ほとんどはティオですが。もうちょっと書きたかったんですが、下手をすればガチバトルに発展しそうなので、ここまでです。

あと、本篇ではやらない予定のやり取りであるホルアドの内容も盛り込んでみました。
もう少し長引いていたらハジメ達にも飛び火していたでしょうね。


最後に特別編のボスの登場です。イメージは東宝怪獣のヘドラがベースですね。
果たしてどうなるのかお楽しみに。

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