ありふれた?デジモンテイマーは世界最強を超え究極へ至る   作:竜羽

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本当に遅くなりました。
終わりまでに持っていく展開をまとめられず時間がかかりました。なのに終わらなかったです。一体いつまでエイプリルフールやっているんだ。季節外れなのでここまでの特別編をIfストーリーとしました。



Ifストーリー④ 勇者の選択

 オルクス大迷宮を突き壊して出現した謎の異形の魔物。

 あまりに突然の出来事にホルアドの住人はどうしたらいいのか困惑する。今まで大迷宮から魔物が出てきたことなんて一度もなかった。

 幸いなのは魔物が出てきただけで何もせずにいることだった。

 だが、濁った色のスライムの身体から、無数の魔物の手足や顔が生えている姿は見るだけで恐怖と不快感を煽る不気味さを振りまいている。

 それは精鋭揃いの騎士団や、高いステータスの勇者である天之河光輝を始めとした神の使徒も同様だった。

 誰もが動けない中、行動を起こす者達がいた。

 

「オルニス」

 

 1人はハジメ。過去の余剰データを消去するプログラム生命体デ・リーパーとの戦いの経験から、不気味な雰囲気の相手と相対するのに慣れていた。

 宝物庫から20機のオルニスを取り出し、魔物の周囲に向かわせる。

 それらが観測したデータをDMアナライザーで解析し、魔物の正体を探ろうとする。

 

「ハジメさん。私達はどうします?」

 

 ハジメに話しかけてきたのはシアだ。彼女も暗黒の海で不気味な雰囲気の深き者達と戦ったので、ある程度見慣れている。

 

「正体も目的もまだわからない。住人の避難が最善だろ」

「やっぱりそうですよね」

「でも私達が勝手にやっていいの?」

 

 雫も2人の話に加わる。ティオも話を聞いている。

 ハジメ達は部外者だ。ホルアドの住人を避難させるかどうかは、町長などの町の責任者が判断する。住人が自主的に避難してもいいが、この状況ではパニックになってしまうだろう。

 そこに南雲達が声をかけてきた。

 

「それなら問題ない。メルドが騎士団を動かすとさ」

「あ、そうなんですか」

 

 オルクス大迷宮の底で壮絶な経験をした南雲も、魔物の不気味さに怯まなかった。ハジメと同じことを考えた彼は、騎士団の詰所から出てきていたメルドを正気に戻して住民の避難を促したのだ。

 

「ハジメが調べている間に、私達は町からの避難誘導の手伝いをしましょうか。他にできることも無いし」

「そうじゃの。ああいうのは下手に手を出さん方が良い」

 

 雫達も住人の避難を手伝うことにする。

 

「……ハジメ。私達はどうする?」

「流石にここで見て見ぬふりはちょっとどうかと思うですぅ」

 

 ユエとハウリアが南雲に話しかける。黙って考え込む南雲だが、彼の服の裾をミュウがクイクイと引っ張った。

 

「みゅう、パパ。あれ、とっても怖いの。みんな一緒に速く逃げないと」

「……そうだな、ミュウ」

 

 ミュウの言葉に微笑みながら同意した南雲はユエ達に向き直り、

 

「騎士団の避難誘導を手伝う。グズグズする奴は引き摺ってでも町の外に逃がす。頼めるか?」

「……ん。わかった」

「了解ですぅ!」

「承知したのじゃ、ご主人様」

「ミュウも手伝うの!」

 

 ふと視線を感じた南雲が振り向くと、白崎が微笑みながら自分を見ていた。それを見て、さっき告白されたことと、昨日の夜にハジメが香織を召喚前から受け入れていると聞いた話を思い出し、どうにも変な気持ちになった。

 

(いやいや。俺はユエを選んだんだ。浮気ダメゼッタイ)

 

 気を取り直して避難誘導を手伝おうとした南雲だったが、

 

「おい!南雲!!」

 

 天之河光輝が怒鳴り込んできた。

 そういえば、決闘だ何だと言いがかりをつけられていたが、南雲はハジメの行動が気になって放置していた。

 

「魔物を倒さずに逃げるなんてどういうつもりなんだ!?」

「避難誘導を手伝うっていうつもりだが?」

「それよりあの魔物を倒す方が先だろ!そうすれば町が壊されることもなくなって、避難する必要もない!!」

「そんなうまく事が運ぶ保証がどこにあんだよ。それに避難しない理由にならないだろ。人命第一じゃねえのかよ?勇者様」

「人命優先なのは当然だ!俺が言いたいのは、力のあるお前はあの魔物を倒すために動くべきなんだ!力があるんだからやるべきことをやれ!」

「あっちの俺の話を聞いていなかったな。あんな得体のしれない奴に下手に攻撃してみろ。どうなるかわからないから、攻撃するよりも避難するんだよ。わかったか?」

 

 呆れ果てながら改めて非難する必要性を説く南雲。しかし、勇者は納得しない。

 

「屁理屈を言うな!そんな言い訳で逃げる気だろう!!」

「屁理屈はお前の方だろ。いや、屁理屈以前の言いがかりじゃねえか」

 

 勇者の言動にうんざりしてきた南雲。そこにメルドがやってきた。

 

「コウキ!お前も手伝ってくれ。手が足りていない」

「え?いや、それよりも俺はあの魔物を倒して」

「戦うにしても近くに人がいすぎるんだ。急げ!いつまでも魔物が止まっている保証はないぞ!」

「ちょ、引っ張らないでくださいメルドさん!?」

 

 メルドはちらりと南雲の方を見て、ニヤリと笑った。

 どうやら絡まれている南雲を見かねて助け船を出してくれたようだ。

 

 気を取り直して、南雲はユエ達を連れて騎士団の避難誘導を手伝い始めた。

 当然、雫達も南雲達を手伝う。

 騎士団によって正気に戻された住人は、前代未聞の事態にパニックになった。そうなると当然転んでけがをしたり、どうすればいいのか分からずに家に閉じこもったりし始める。

 ユエが転びそうになる人を風魔法で浮かばせて助けたり、シアとハウリアが優れた聴覚で閉じこもった人を探し出して騎士団に伝えたり、白崎が怪我人を治癒し、雫と八重樫がそれを手助けする。

 南雲も高いステータスを利用して足の不自由な老人を背負って町の外まで運んだ。

 運ばれた老人とその家族は南雲に感謝を込めてお礼を言った。

 

(寂しい生き方をしないで、か)

 

 ふと、ウルの町で伝えられた先生からの言葉を思い出し、避難の手伝いに戻っていった。

 

 騎士団や勇者パーティーの面々によって着々と非難が進む中、ハジメは魔物の解析を進めていった。

 

(あれはやはり暗黒の海で遭遇したダゴモンの眷属。俺達と一緒に流されてきたのか。エネルギーの補充が出来ないから、大迷宮の魔物補っていった結果、ああなったと。だが、おかしい。いくら何でも成長が速すぎる。まだ一日も経っていないのに、ダゴモンのいない世界であれほど大きくなれるはずがない。やはり、取り込まれている重力場に何か理由が……重力場?)

 

 ハッとしたハジメは魔物が取り込んでいる重力場のデータを詳しく解析する。

 

(あの重力場おかしいだろ。なんで、段々とエネルギーが大きくなっているんだ!?普通小さくなって消滅するはずだろ!?逆の現象が起きているってことは、まさかあの重力場の――!!)

 

「重力場の向こうに、何かがいて、エネルギーを送ってきている?」

 

 ハジメが仮説を立てた瞬間、魔物に向かって光の砲撃が発射された。

 

 

 

■■■■■

 

 

 

 メルドに言われて渋々住人の避難を手伝っていた勇者。

 ハジメと南雲達の態度は気に入らないが、メルドにまで窘められると嫌だと強く言えず、住人達を町の外へ案内していた。

 だが、あまりに突然の事態だったこともあり、住人達はすぐには納得しなかった。

 大切な家や職場を離れることに憤ったり、魔物に壊されるかもしれないと不安になって涙を流したりしていた。

 そんな彼らが、神の使徒として大々的に周知されていた勇者の姿を見つけると一斉に詰め寄ってきた。

 

「勇者様、はやくあの魔物を倒してください」

「やっと立てた家があるんだ。守ってくれよ」

「みんなと遊ぶ場所があるの。守って勇者様!」

 

 最後に涙を浮かべた子供に懇願されて、もう我慢できなかった。

 

 彼らの不安や涙を止めることこそ、勇者である自分の使命。

 幸いにも休養をしっかりととったため、昨日の疲労はだいぶ抜けている。聖剣手に魔物が出てきていたオルクス大迷宮の入り口に向かった。

 

「〝限界突破〟――〝神威〟!!」

 

 そして、〝限界突破〟でステータスを三倍にしてから、最強魔法の〝神威〟を放った。

 光属性魔法の砲撃は魔物の柱のような肉体を蹂躙し、ダメージを与えた。魔物の肉体から生えていた無数の頭が同時に悲鳴を上げる。

 

「はぁはぁ。ど、どうだ。これが勇者のちか……ら?」

 

 勇者はこれで倒したと思ったが、砲撃が終わっても魔物は倒れなかった。思っていた通りの結果にならなかったことに硬直していると、悲鳴上げていた全ての頭部が、一斉にぎろりと勇者に睨みつけた。

 

「ひっ」

 

 恐怖を感じて一歩下がる。

 そこに全ての頭部から攻撃が勇者に向かって殺到した。

 火球、水球、雷撃、岩石等々、様々な魔物の攻撃が勇者を襲う。

 

「う、うわああああああああっ!?!?」

 

 今度は勇者が悲鳴を上げながら、必死に攻撃を避ける。

 しかし、勇者が回避したせいで町に攻撃が当たり、建物が破壊されていく。さっき勇者に守ってくれと頼まれた家も、子供達が遊び場にしている広場も、瓦礫の山になっていく。

 しかも勇者が逃げることで魔物の攻撃も移動するので、どんどん被害範囲が広がっていく。

 

 その光景を見た住人達が悲鳴を上げて逃げていく。皮肉にも避難速度は上がったが、魔物の攻撃がいつ避難している住人達に向かって行くかわからない。

 メルドは非戦闘員の命を守るために、勇者の救出に回さなかった。

 そもそもあまりに攻撃が激しいため、普通の騎士はおろかメルドであっても勇者を助け出せない。

 それが出来るとすれば、

 

「カードスラッシュ!マトリックスゼヴォリューション!!」

 

 より大きな力を持つ存在しかできない。

 

「ガブモンX進化!ワーガルルモン!!」

 

 ハジメのデジヴァイスからリアライズしたガブモンが、一気に完全体のワーガルルモンに進化。背中のサジタリウスの機械翼を広げて飛翔して勇者の下に向かう。

 勇者に近づくと魔物攻撃が幾つか当たるが、ワーガルルモンに傷1つつかない。

 そのまま勇者の体を掴み、急上昇する。

 

「ぐへっ!?――」

 

 急に掴まれて上昇したせいで勇者は変な声を上げて気絶する。

 魔物の攻撃も追ってくるが、ワーガルルモンは高度を上げて空中を旋回することで躱していく。攻撃が空中に向かったため、ホルアドの街への攻撃が止む。その間に騎士団によって避難がさらに進められていく。

 

『ワーガルルモン。ちょうどいいからそのまま攻撃を引き付けていてくれ』

「了解!」

 

 デジヴァイスを通してハジメからの指示がワーガルルモンに届く。その通りに勇者を掴んだままワーガルルモンは魔物の周りを飛び回る。おかげでホルアドの町への攻撃は無くなった。

 その町中を、複数の人影が駆け抜ける。

 それは両手にミサイルランチャーのような武器を手に持ったシアや南雲達だった。雫は八重樫と白崎をペガスモンに乗せて低空飛行している。

 彼らはワーガルルモンが魔物の注意を引き付けている間に、魔物の周りを包囲していく。

 

「全員、所定の位置について準備できたか?」

『こちら南雲。ついたぜ』

『こちらシアですぅ。着きました!』

『雫です。八重樫さんと白崎さんを送って、私とペガスモンも着きました。どうぞ』

『あ。俺もやればよかったわ。こういうのの定番じゃん』

『あら。南雲君もハジメみたいに子供っぽいところあるのね。ふふっ』

『……ラスボス?』

『まさか雫ちゃんも?』

『ちょっと待って香織にユエさん。一体何を言っているのよ!?』

 

 念話インカムで全員に呼びかけるハジメ。これから行う作戦の準備ができたか確認しただけなのだが、何やらおかしなやり取りが起きていた。

 少し呆れるハジメだったが、全員準備はできた。

 

「ワーガルルモン。そのまま魔物の真上に行け。みんなはカウント0でアーティファクトを発射だ」

 

 指示を出し終えたハジメは技能〝ハイブリット化〟を使用する。

 ハジメの身体が赤雷に包まれて、黒い装甲に覆われていく。

 ブラックメタルガルルモンの姿を模した機械の装甲を身に纏ったハジメは、両足を錬成で地面に固定させる。

 そして、持てる全ての魔力を高めていく。

 

「カウント5」

 

 徐々にハジメの周囲の気温が低下していく。彼の周囲だけ空気中の水分が凍結し、白い冷気が発生し始める。

 ハジメの高めた魔力が、ブラックメタルガルルモンの力で氷の属性へと変換された影響だ。

 

「4、3、2」

 

 近くの建物の壁や柱の表面が白く凍っていく。地面の中の水分まで凍結し始め、ビキビキと割れていく。

 それほどの余波を放つほどに高めた魔力を頭部のマスクに集め、口を大きく開く。そこには暗い色の光が収束されている。

 

「1――0。漆黒の……」

 

 ハジメのカウントが0になった瞬間、魔物を包囲していた全員がミサイルランチャーの引き金を引いた。

 ミサイルが発射され、全てが魔物に着弾。魔物の周囲を急速に氷結させていく。

 

「『コキュートスブレス』!!!」

 

 そこにハジメの全力全開の『漆黒のコキュートスブレス』が放たれた。あまりの勢いに、もしも地面に足を固定していなければ、体勢を崩してしまっていただろう。

 南雲達の放ったミサイルで氷結され始めていた魔物は、本命と言えるハジメの必殺技を受けてしまい、一瞬で完全に凍結されてしまった。

 

「作戦成功。全員すぐに戻って来てくれ」

 

 うまくいったことを確認したハジメは、ハイブリッド化を解除して座り込む。

 全力で技を使ったせいで酷い倦怠感に襲われるが、DMアナライザーを取り出して、魔物を再スキャンする。

 しばらくしてスキャン結果が表示された。

 

「やっぱり、まだ倒せていないか」

 

 魔物の中からはまだ重力場の反応があった。さらにそこから流れ込んでくるエネルギーも。先ほどの戦闘で消費されているが、どんどん回復している。

休みもなくあれだけの攻撃をし続けられるのもそのせいだ。そして、これがあるからハジメは凍結という手段を取った。

下手に熱攻撃を加えて魔物を倒した場合、送り込まれたエネルギーが解放されて暴走でもしたら、大爆発を起こす可能性があると分かった。

 

「凍結しても計算上だと多く見積もっても1時間。となると残された手段は……」

 

 ハジメは懐のカードデックから一枚のカードを取り出す。

 それはタカト達のテイマーズカードのコピーと同様に、いざという時の切り札になると思って作成したカードだった。

 

 そのカードの名は――〝トリニティバースト〟。

 




ここまで長くなったのも勇者が動かしやすいせいなんですよ。どれだけ変な行動させても無茶苦茶なご都合解釈で説明がついちゃうからどうにでもできるんですよね。
でも、作者的には彼が行動を起こすなら、ハジメ達への不満とかじゃなくて、虐げられる人々から救いを求められたからであってほしいという思いもあり、中々行動が決められませんでした。
結果として、彼は求められたとおりに魔物を倒そうと行動しました。しかし、その結果は本篇の通りとなりました。
まだこのころの勇者って自分の力量とか失敗した時の取り返しとか、そういうところを考えていないイメージです。カトレアに負けたのもハジメへの嫉妬とかで受け止めていなかったと思いますし、こんな事態になったら流されるままにまたやらかしちゃうんじゃないかなと。

そのせいでハジメはぶっつけ本番の博打をすることになりました。次話で今度こそ終わらせたいです。
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